金融派生商品のきほん
最終更新日: 2025-11-01

デリバティブ取引

 
デリバティブ取引とは、株式、債券、金利、為替などの原資産(基礎となる金融商品)から派生した「金融派生商品」を対象とする取引です。原資産の価格変動を利用して、比較的少ない投資資金で大きな取引が可能となる点が特徴です。
また、価格の上昇によって利益を得るだけでなく、価格の下落によっても利益を得ることができるため、リスクヘッジや効率的な資産運用の手段として広く活用されています。
日本国内で行われているデリバティブ取引には、以下の2種類があります。

  • 市場デリバティブ取引:金融商品取引所において、取引所が定める基準と方法に従って行われる取引。
  • 店頭デリバティブ取引:金融商品取引所以外の場所(店頭市場)で、個別に契約を結んで行われる取引。

先物取引

 
先物取引とは、将来の一定期日に、あらかじめ定めた価格と数量で資産を売買することを約束する取引です。現時点で売買条件を決めておき、将来の約定日にその条件に従って取引を実行します。
このように、価格を事前に固定することで、価格変動のリスクを回避することが可能になります。先物取引には、実際に資産の受け渡しを行う「受け渡し決済」のほか、反対売買によってポジションを解消し、差額のみを決済する「差金決済」が一般的です。
反対売買とは、当初の取引と逆の取引を行うことを指します。たとえば、先物の買い契約を結んでいた場合は売り契約を行い、売り契約を結んでいた場合は買い契約を行うことで決済します。
主な先物取引の種類には、以下のようなものがあります。

リスクヘッジ取引

 
価格変動による損失を回避するための取引です。
保有する現物資産の値下がりリスクに備えて先物を売る「売りヘッジ」や、将来購入予定の資産の値上がりリスクに備えて先物を買う「買いヘッジ」があります。

投機取引(スペキュレーション)

 
価格の変動そのものを利用して利益を追求する取引です。資産の保有や調達の意図はなく、純粋に値動きから収益を狙います。

裁定取引(アービトラージ)

 
先物価格が理論価格から乖離した際に、価格差を利用して利益を得る取引です。
先物価格が理論価格より高い場合は、現物買い・先物売り(買い裁定)を行います。逆に、先物価格が理論価格より低い場合は、現物売り・先物買い(売り裁定)を行います。

スプレッド取引

 
2つの先物契約の価格差に着目し、その差が適正水準から乖離したときに行う取引です。割高な先物を売り建て、割安な先物を買い建てることで、価格差の収束による利益を狙います。


オプション取引

 
オプション取引とは、特定の金融商品を、あらかじめ定められた価格(権利行使価格)で「売買するかどうかの選択権」を売買する取引です。
オプションには以下の2種類があります。

  • コール・オプション:原資産を「買う権利
  • プット・オプション:原資産を「売る権利

オプション取引には、金融商品取引所に上場されている「上場オプション」と、相対取引で行われる「店頭オプション」があります。オプションの権利を取得するには、オプション料(プレミアム)を支払う必要があります。

コール・オプション

 
原資産価格が権利行使価格より低い場合は、市場で直接購入した方が有利なため、権利は行使されず放棄されます。したがって、買い手の損失は支払ったプレミアムに限定されます。
原資産価格が権利行使価格より高い場合は、売り手は、より高価な資産を安い価格で売らなければならず、損失が発生します。理論上、価格に上限がないため、売り手の損失は無限になる可能性があります。

プット・オプション

 
原資産価格が権利行使価格より高い場合は、市場で直接売却した方が有利なため、権利は行使されず放棄されます。買い手の損失は支払ったプレミアムに限定されます。
原資産価格が権利行使価格より低い場合は、買い手が権利を行使すると、売り手は安い資産を高い価格で買わなければならず、損失が発生します。原資産価格が下がるほど、売り手の損失は大きくなります

権利行使期間

 
オプションには、権利行使可能な期間に応じて以下の2タイプがあります。

  • アメリカン・オプション:契約締結日から満期日まで、いつでも権利行使が可能。
  • ヨーロピアン・オプション:満期日にのみ権利行使が可能。

オプション・プレミアムの変動要因

 
オプションのプレミアム(価格)は、以下の要因によって変動します。
 

変動要因

オプション・プレミアムの増減

コール・オプション

プット・オプション

原資産価格

上昇

増加

減少

下落

減少

増加

権利行使価格

高い

減少

増加

低い 増加

減少

満期までの期間 長い 増加
短い 減少
ボラティリティ(価格変動率) 大きい 増加
小さい 減少

スワップ取引

 
スワップ取引とは、将来のキャッシュフロー(資金の流れ)を相互に交換することを約束する金融取引です。主に、金利や通貨の交換を目的として利用されます。
代表的なスワップ取引には以下の2種類があります。

  • 金利スワップ:固定金利と変動金利の支払いを交換する取引。企業や金融機関が金利変動リスクを回避するために利用します。
  • 通貨スワップ:異なる通貨建てのキャッシュフローを交換する取引。為替リスクのヘッジや資金調達の効率化を目的としています。

これらのスワップ取引は、将来の金利や為替の変動によるリスクを軽減し、安定した資金運用を実現する手段として活用されています。


金取引

 
金は、国際的に取引されている代表的な金融派生商品のひとつで、以下のような特徴があります。

  • 実物資産であるため、発行体が存在せず、デフォルトリスクがない
  • 預貯金の利息、債券の利子、株式の配当といったインカムゲインがない

国際的には、金はトロイオンス(TOZ:31.1035g)あたりの米ドル建てで取引されており、米国の金利の影響を受けます。一般的に、金利が高いとインカムゲインのない金の魅力が低下し、価格が下落する傾向があります。
国内では、米ドル建ての金価格をグラムあたりの円建てに換算して取引されるため、円ドル為替相場の変動リスクがあります。また、地政学リスクも金価格の変動要因です。いわゆる「有事の金」と言われるように、国際情勢が不安定になったり、経済が悪化したりすると、金が買われて価格が上昇する傾向があります。
主な金取引商品には、以下のようなものがあります。

金地金

 
実物の金地金は、貴金属会社や地金商などが販売しています。売買には「小売価格(購入時)」と「買取価格(売却時)」があり、1kgバーや500gバー以外にはバーチャージ(手数料)がかかります。購入時には消費税が課され、売却時には売却価格に消費税が上乗せされます。
売却益は原則として譲渡所得となり、総合課税の対象です。

地金型金貨

 
地金型金貨は、金地金よりも少額での売買が可能な商品です。小売価格と買取価格があり、消費税の扱いや課税方法は金地金と同様です。
売却益は原則、譲渡所得として総合課税の対象となります。

純金積立

 
毎月一定額で金を購入していく積立型の商品です。高値づかみのリスクを抑え、ドルコスト平均法により購入価格の平準化が期待できます。貴金属会社や地金商、一部のネット証券会社が取り扱っています。購入時には手数料がかかりますが、売却時は手数料無料のケースが多いです。
積立金は取り扱い会社が保管し、保管方法には以下の2種類があります。

  • 混合(混蔵)寄託:購入者名義で保管され、会社の資産とは分別管理される。
  • 消費寄託:所有権が会社に移転し、会社名義で保管される。購入者は返還請求権を持ちます。

金ETF

 
金ETFは、金価格に連動する金融商品で、証券取引所に上場されています。少額からの投資が可能で、保管の必要がないため、盗難や災害によるリスクがありません。低コストで金に投資できる手段として人気があります。