最終更新日: 2024-03-13

贈与税

 
贈与税のイメージ

贈与税とは

 
贈与税とは、 生存中の人から無償で財産をもらった場合に、財産を取得した人にかかる税金のことです。
法人からもらった財産は、所得税(給与所得や一時所得)の課税対象となります。


贈与税の納税義務者

 
贈与税は、 原則として受贈者である個人に対して課税されます。
社団や公益法人等も個人とみなされ贈与税が課税される場合があります。
 
贈与税の納税義務者と課税対象の範囲は、財産取得時の住所や財産の所在等により、下表のとおりとなります。
 

区分

納税義務者

課税対象の範囲

居住無制限納税義務者

贈与により財産を取得し、その取得時に日本国内に住所がある個人

国内、国外を問わず所得した財産のすべてが課税対象

非居住無制限納税義務者

贈与により財産を取得し、その取得時に日本国内に住所がない人のうち、日本国籍があり、かつ贈与前10年以内に贈与者または受贈者いずれかが日本国内に住んだことがある個人

制限納税義務者

贈与により財産を取得し、その取得時に日本国内に住所がない人のうち、非居住無制限納税義務者に該当しない個人

国内財産のみが課税対象


贈与財産

 
贈与財産のうち、贈与税の課税対象となるものは、本来の贈与財産みなし贈与財産になります。

本来の贈与財産

 
本来の贈与財産とは、贈与によって取得した財産(現金、預貯金、株式、土地、建物、ゴルフ会員権、営業権等)で、金銭に換算できる経済的価値のある財産のことです。

みなし贈与財産

 
みなし贈与財産とは、贈与により取得したものではない財産であっても、実質的には贈与により取得した場合と同様の経済的効果をもつ財産のことです。
 
主なみなし贈与財産は、次のとおりです。
 
生命保険金
生命保険契約の保険事故が発生して保険金を受け取った場合で、その保険料を被相続人または保険金受取人以外の人が負担しているものが該当します。
ただし、被相続人が保険料を負担している場合には、相続等により取得したものとみなして相続税の課税対象となります。
また、保険金受取人が保険料を負担している場合には、一時所得として所得税の課税対象となります。
 
定期金に関する権利
個人年金保険契約で、保険料の負担者以外の人が年金を受け取る場合、保険料の負担者から年金受取人に対して定期金の贈与があったとみなされます。
 
財産の低額譲受による利益
時価と比べて著しく低い価額で財産を譲り受けた場合には、時価と実際に支払った金額との差額に相当する金額を、原則として譲渡人から贈与によって取得したものとみなされます。
 
債務の免除・引き受け等による利益
債務の免除、引き受け、または第三者のためにする債務の弁済による利益を受けた場合には、原則として債務の免除等をした人から、その債務の金額に相当する金額の贈与を受けたものとみなされます。
ただし、債務者が資力を喪失し、債務を弁済できずに債務が免除となる場合には、贈与を受けたものとみなされません。
 
金銭の形式的貸借
親子や夫婦等の間における金銭の貸借で、返済の意思や資力のない場合には、贈与があったものとみなされます。
 
財産の名義変更や他人名義での財産の取得
不動産等の名義を配偶者や子等他人名義に変更したり、これらを配偶者や子等の名義で購入した場合には、贈与があったものとみなされます。
例えば、親の所有する土地を子どもへ無償で名義変更した場合や、夫の資金で妻名義の株式を購入する場合、夫婦共有名義の住宅ローンの返済を夫の資金のみで行う場合等は贈与税の課税対象となります。
土地の使用に関する権利については、無償で土地を貸す使用貸借の場合は、土地借主の権利が弱いため、土地を使用する権利の価値はゼロとされ、贈与税の課税対象とはなりません。
一方、賃貸借契約や地上権設定契約に基づく土地利用においては借地権が発生し、借地権者が対価なく土地を利用する場合には、借地権者に贈与税が発生します。


贈与税の非課税財産

 
贈与財産から差し引くことができる主な非課税財産は、次のとおりです。
 

  • 扶養義務者から取得した通常必要とする生活費や教育費
  • お祝いやお見舞いの金品、年末年始の贈答品、香典等で、社会通念上相当と認められるもの
  • 法人から個人への贈与財産(ただし、一時所得または給与所得として、所得税と住民税の課税対象となります)
  • 相続または遺贈によって財産を取得した人が、相続開始の年に被相続人から取得した贈与財産(ただし、相続税の課税対象となります)
  • 離婚による財産分与によって取得した財産(ただし、その額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他の事情を考慮してもなお過大と見られるときは、その過大な部分が贈与税の対象となります)

特例贈与財産

 
特例贈与財産とは、直系尊属(父母、祖父母等)から直系卑属(子、孫等)が贈与により受けた財産のことです。
ただし、この場合の受贈者(子、孫等)は、財産の贈与を受けた年の1月1日時点において18歳以上である者に限られます。


一般贈与財産

 
一般贈与財産とは、特例贈与財産に該当しない贈与財産のことです。 
具体的には、直系尊属(父母、祖父母等)以外からの贈与や、直系尊属からの贈与財産で、財産の贈与を受けた年の1月1日時点において18歳未満である者への贈与が該当します。


贈与税の計算

 
贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に、贈与により取得した財産の価額の合計額に対して課される暦年課税です。
なお、暦年課税の贈与税の基礎控除額は年間110万円であり、110万円を超えた部分に対して贈与税が課税されます。
したがって、贈与財産が110万円を超えなければ、贈与税の申告をする必要はありません。

同一年中の贈与が特例贈与財産または一般贈与財産いずれか一方のみの場合

 
1.特例(または一般)贈与財産の価額を計算します。
 

特例(または一般)贈与財産の価額 = 本来の贈与財産 + みなし贈与財産 − 非課税財産

 
2.控除後の課税価格を計算します。
 

控除後の課税価格 = 特例(または一般)贈与財産の価額 − 配偶者控除額 − 基礎控除額

※「基礎控除額」は、贈与者ごとではなく、受贈者ごとに1年間で110万円となります。1年間に複数の人から贈与を受けた場合、その贈与を受けた財産の価額の合計額から控除できる基礎控除額の上限は、贈与者の人数にかかわらず110万円となります。

 
3.贈与税額を計算します。
 

贈与税額 = 控除後の課税価格 × 特例(または一般)贈与財産の係る税率 − 控除額

※「税率」は、特例贈与財産と一般贈与財産で異なります。

同一年中の贈与が特例贈与財産と一般贈与財産の両方の贈与を受けた場合

 
1.特例贈与財産の価額を計算します。
 

特例贈与財産の価額 = 本来の贈与財産 + みなし贈与財産 − 非課税財産

 
2.一般贈与財産の価額を計算します。
 

一般贈与財産の価額 = 本来の贈与財産 + みなし贈与財産 − 非課税財産

 
3.合計贈与財産の価額を計算します。
 

合計贈与財産の価額 = 特例贈与財産の価額 + 一般贈与財産の価額

 
4.控除後の課税価格を計算します。
 

控除後の課税価格 = 合計贈与財産の価額 − 配偶者控除額 − 基礎控除額

※「基礎控除額」は、贈与者ごとではなく、受贈者ごとに1年間で110万円となります。1年間に複数の人から贈与を受けた場合、その贈与を受けた財産の価額の合計額から控除できる基礎控除額の上限は、贈与者の人数にかかわらず110万円となります。

 
5.特例贈与税額を計算します。
 

特例贈与税額の計算式

※「税率」は、特例贈与財産と一般贈与財産で異なります。

 
6.一般贈与税額を計算します。
 

一般贈与税額の計算式

※「税率」は、特例贈与財産と一般贈与財産で異なります。

 
7.贈与税額を計算します。
 

贈与税額 = 特例贈与税額 + 一般贈与税額


贈与税の税額

 
贈与税は、特例贈与財産一般贈与財産で異なる税率が適用されます。
贈与税の税額は、次の速算表を用いて計算します。 

特例贈与財産用の贈与税の速算表

 

基礎控除後の課税価格

税率

控除額

200万円以下

10%

200万円超 400万円以下

15%

10万円

400万円超 600万円以下

20%

30万円

600万円超 1,000万円以下

30% 90万円

1,000万円超 1,500万円以下

40% 190万円

1,500万円超 3,000万円以下

45% 265万円

3,000万円超 4,500万円以下

50% 415万円

4,500万円超

55% 640万円

一般贈与財産用の贈与税の速算表

 

基礎控除後の課税価格

税率

控除額

200万円以下

10%

200万円超 300万円以下

15%

10万円

300万円超 400万円以下

20%

25万円

400万円超 600万円以下

30% 65万円

600万円超 1,000万円以下

40% 125万円

1,000万円超 1,500万円以下

45% 175万円

1,500万円超 3,000万円以下

50% 250万円

3,000万円超

55% 400万円

贈与税の配偶者控除

 
贈与税の配偶者控除とは、夫婦間で居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに2,000万円の特別控除が受けられる制度のことです。 
 
この制度の主な適用要件は、次のとおりです。
 

  • 夫婦の婚姻期間が20年以上の配偶者からの贈与であること
  • 過去に同じ配偶者からの贈与について、この制度の適用を受けていないこと
  • 贈与された財産が、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭であること
  • 贈与を受けた配偶者が、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に居住し、その後も引き続き居住する見込みであること
  • 贈与税の申告期限までに、納付税額が0円でも贈与税申告書を提出すること

 
なお、店舗兼用住宅のように居住用でない部分も含む不動産の贈与の場合は、居住用部分だけが控除の適用対象となります。
ただし、居住用部分の面積が贈与された土地または建物の総面積の9/10以上である場合は、全体が控除の適用対象となります。
 
また、贈与後3年以内に相続が発生した場合、贈与財産も相続税の課税価格に加算されますが、贈与税の配偶者控除の適用を受けた贈与財産は、相続税の課税価格に加算されません。


相続時精算課税制度

 
相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子である推定相続人(代襲相続人を含む)および孫に財産を贈与した場合に選択できる制度のことです。
ちなみに、住宅取得等資金の贈与について、相続時精算課税制度を適用する場合には、父母または祖父母の年齢制限はありません。
受贈者は、贈与者ごとに暦年課税にするか、相続時精算課税制度の適用を受けるかを選択することができます。
 
本制度の適用を受けるためには、受贈者が、その選択をした最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、所轄税務署長に対して、「相続時精算課税選択届出書」を贈与税の申告書に添付して提出しなければなりません。
相続時精算課税制度を選択すると、その後適用を受けた贈与者からの贈与については、常に相続時精算課税が適用され、相続時まで取り消すことはできず、暦年課税に変更することはできません。
 
相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。
2,500万円までの贈与財産は、特別控除額として非課税の対象となります。
非課税枠を超える金額については、一律20%の税率が適用されます。
相続時精算課税制度を選択した場合には、暦年課税の基礎控除110万円の適用は受けられません。
 
贈与者の相続時において、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と、相続や遺贈により取得した財産の価額を合計した金額を基に計算した相続税額から、納付済みの相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除し、相続税として納付します。
この場合、相続税額から本制度の贈与税相当額を控除しきれないときは、還付を受けることができます。
なお、相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の時価となります。
 
2023年度税制改正では、相続時精算課税制度の見直しが行われました。
これまでの相続時精算課税制度は、贈与税の基礎控除が受けられず、110万円以下の贈与であっても贈与のたびに申告が必要となっていました。
今回の改正では、相続時精算課税制度を選択した場合でも、年110万円の基礎控除が適用され、毎年110万円以下の贈与であれば、贈与税の申告は不要となります。
この改正は、2024(令和6)年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されます。
 
また、相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産が土地または建物である場合、その土地または建物が災害により一定の被害を受けたときは、その土地または建物の評価額を再計算し、被害を受けた額を贈与時の価額から控除した上で、相続財産に加算できるようになります。
この改正は、2024(令和6)年1月1日以後に生じる災害により被害を受ける場合について適用されます。


直系尊属から住宅取得等資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

 
直系尊属から住宅取得等資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度とは、2003(平成15)年1月1日から2026(令和8)年12月31日までの間に、直系尊属(父母、祖父母等)から住宅用の家屋の新築、取得、増改築等のための金銭を贈与により取得した場合において、一定の要件を満たすときは、取得した金額のうち、一定金額までの贈与税が非課税となる制度のことです。
 
なお、この制度は、申告書を提出することによって適用を受けることができ、暦年課税の基礎控除110万円または相続時精算課税制度のいずれかと併用して適用することができます。
 
この制度の主な適用要件は、次のとおりです。
 

  • 受贈者が、贈与者の直系卑属(養子の場合を含む)であること
  • 受贈者が、贈与を受けたときに日本国内に居住、もしくは日本国籍を有する受贈者、および贈与者がそれ以前10年以内に日本国内に居住したことがあること
  • 受贈者が、贈与を受けた年の1月1日時点において、18歳以上であること
  • 受贈者が、贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下(新築等をする住宅用の家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、1,000万円以下)であること
  • 2009(平成21)年分から2014(平成26)年分までの贈与税の申告で住宅取得等資金の非課税の適用を受けたことがないこと
  • 配偶者や親族等、一定の特別の関係がある人から取得した家屋でないこと、またはこれらの人との請負契約等により新築もしくは増改築等したものでないこと
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与を受けた金銭で住宅家屋の新築・取得・増改築等をすること
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること、または同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること
  • 増改築等の場合、その工事に要した費用が100万円以上であること

 
また、対象となる家屋の主な適用要件は、次のとおりです。
 

  • 住宅用の家屋の床面積が50㎡以上240㎡以下(贈与を受けた年の合計所得金額が1,000万円以下の場合は、40㎡以上240㎡以下)であること
  • 住宅用の家屋の床面積の1/2以上が居住用であること
  • 取得した住宅が次のいずれかに該当すること
    • 建築後使用されたことのない住宅用の家屋
    • 新耐震基準に適合している住宅用の家屋(登記簿上の建築日付が1982(昭和57)年1月1日以降の家屋については、新耐震基準に適合しているとみなす)
    • 建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、地震に対する安全性に係る基準に適合するものであることにつき、一定の書類により証明されたもの
    • 耐震改修を行うことにつき、都道府県知事等に申請をし、かつ、贈与を受けた翌年3月15日までにその耐震改修によりその住宅用の家屋が耐震基準に適合することとなったことにつき一定の証明書等により証明がされたもの
  • 増改築等に係る工事が、自己が所有し、かつ居住している家屋に対して行われたもので、一定の工事に該当することについて、「確認済証の写し」、「検査済証の写し」または「増改築等工事証明書」等の書類により証明されたものであること
  • 増改築等の工事に要した費用の額が100万円以上であること
  • 増改築等の工事に要した費用の額の1/2以上が居住用部分の工事に要したものであること

 
この制度の非課税限度額は、下表のとおりです。
 

住宅の種類

非課税限度額

省エネ等住宅 ※

1,000万円

上記以外の住宅

500万円

※「省エネ等住宅」とは、①省エネ等基準が高い ②耐震等級2以上または免震建築物 ③バリアフリー性の高い住宅 のいずれかを満たす住宅のことです。

 
なお、相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産は、相続財産に加算されますが、直系尊属から住宅取得等資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の適用を受けて非課税とされた金額については、相続税の課税価格に加算されません。


直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度 

 
直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度とは、2013(平成25)年4月1日から2026(令和8)年3月31日までの間に、直系尊属(父母、祖父母等)が一定の要件を満たす受贈者(子、孫等)に対して、教育資金に充てるために金融機関等との一定の契約に基づき、金銭等を一括贈与した場合には、一定金額までの贈与税が非課税となる制度です。
 
受贈者の主な要件は、次のとおりです。
 

  • 30歳未満の子、孫等であること(ただし、30歳以上でも学校等に在籍している場合には、最長40歳に達する日まで)
  • 前年の合計所得金額が1,000万円以下であること

 
教育資金の主な範囲は、次のとおりです。
 

  • 学校等に対して直接支払われる入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費、試験の検定料等
  • 学校等に対して直接支払われる学用品の購入費、修学旅行費、学校給食費等、学校等における教育に伴って必要な費用等
  • 学校等以外に対して直接支払われる学習塾や習い事の費用等で、社会通念上相当と認められるもの
  • 通学定期券や留学渡航費等の交通費

 
受贈者1人につき、1,500万円までの贈与税が非課税となります。
ただし、学校等以外に対して支払われる金銭については、500万円までとなります。
 
次の点は、この制度の大切なポイントです。
 

  1. 受贈者が30歳到達時点で残高がある場合一般税率による贈与税の課税対象となります。
  2. 受贈者が30歳到達前に贈与者が死亡し、残高がある場合、管理残高を贈与者から相続等により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。受贈者が贈与者の子以外(孫、ひ孫等)のときは相続税の2割加算の対象となります。

 

【例外】
上記2の場合において、受贈者が次のいずれかに該当する場合は、相続税の課税対象外となります。
23歳未満である場合
・学校等に在学している場合
・教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合

 

【例外の例外】
例外の条件に該当する場合であっても、贈与者の死亡に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは、その死亡の日における管理残高を贈与者から相続または遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。


直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

 
直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度とは、2015(平成27)年4月1日から2025(令和7)年3月31日までの間に、直系尊属(父母、祖父母等)が一定の要件を満たす受贈者に対して、結婚・子育て資金に充てるために金融機関等との一定の契約に基づき、金銭等を贈与した場合には、一定金額までの贈与税が非課税となる制度です。
 
受贈者の主な要件は、次のとおりです。
 

  • 18歳以上50歳未満であること
  • 前年の合計所得金額が1,000万円以下であること

 
結婚・子育て資金の主な範囲は、次のとおりです。
 

  • 結婚に際して支払う挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用、二次会費用
  • 結婚に際して支払う新居に係る家賃、敷金、共益費、礼金、仲介手数料、契約更新料等(入籍日の1年前後以内に締結した賃貸借契約に関するものに限ります。また、当該契約締結日から3年を経過する日までに支払われたものが対象となります)
  • 結婚に際して支払う転居するための引越し費用(入籍日の1年前後以内に行ったものに限ります)
  • 妊娠に要する不妊治療や妊婦健診に要する費用
  • 出産に要する分娩費、入院費、新生児管理保育料、検査料、薬剤料、出産後1年以内に支払われた産後ケアに要する費用
  • 育児に要する子の医療費、幼稚園・保育所・認定こども園・ベビーシッター業者等へ支払う入園料、保育料、施設設備費、入園試験の検定料、行事への参加や食事の提供等の費用

 
受贈者1人につき、1,000万円までの贈与税が非課税となります。
ただし、結婚に際して支払われる金銭については、300万円までとなります。
 
次の点は、この制度の大切なポイントです。
 

  1. 受贈者が50歳到達時点で残高がある場合一般税率による贈与税の課税対象となります。
  2. 受贈者が50歳到達前に贈与者が死亡し、残高がある場合、管理残高を贈与者から相続等により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。
  3. 受贈者が50歳到達前に死亡し、残高がある場合、管理残高は受贈者の相続財産となります。

直系尊属から一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の比較

 
直系尊属から一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度は、住宅取得等資金、教育資金、結婚・子育て資金それぞれの要件等が紛らわしいので、下表にまとめます。
 

 

住宅取得等資金

教育資金

結婚・子育て資金

贈与者

父母、祖父母等の直系尊属(年齢要件はなし

受贈者

18歳以上の子、孫等

30歳未満の子、孫等

18歳以上50歳未満の子、孫等

受贈者の所得制限

受贈年の合計所得金額が、2,000万円(要件により1,000万円)以下

受贈年の前年の合計所得金額が、1,000万円以下 受贈年の前年の合計所得金額が、1,000万円以下

限度額

1,000万円(要件により500万円)

1,500万円(要件により500万円) 1,000万円(要件により300万円)

贈与期限

2023年12月31日まで

2026年3月31日まで 2025年3月31日まで

贈与税の申告

 
1月1日から12月31日までの1年間に贈与により取得した財産の価額の合計額が、基礎控除額110万円を超える場合には、受贈者の住所地を所轄する税務署長に贈与税の申告書を提出する必要があります。
 
なお、次の特例の適用を受ける場合には、納付税額が0円でも申告書を提出する必要があります。
 

 
贈与税申告書の提出期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までとなります。


申告内容が間違っていた場合等の手続き

 
申告内容が間違っていた場合等の手続きには、次のようなものがあります。

更正の請求

 
申告書を提出した後に、納付すべき税額が過大であるときは、更正の請求という手続きをしてその訂正を求めることができます。
贈与税の更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から6年以内です。
 
相続税所得税法人税の更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内なので混同しないように注意してください。

修正申告

 
申告書を提出した後に、税額を少なく申告していたことに気づいたときは、修正申告をして正しい税額に修正することができます。
修正申告によって新たに納付することになった税額は、修正申告書を提出する日(納期限)までに納めなければなりません。
この納付する税額には、法定納期限の翌日から完納する日までの期間について延滞税がかかりますので、併せて納付します。


贈与税の納付

 
贈与税は、申告書の提出期限までに、金銭一括納付が原則です。
ただし、一定の要件を満たせば、5年以内延納も認められます。

贈与税の延納

 
次の要件をすべて満たす場合には、5年以内の延納が認められます。
 

  • 贈与税額が10万円であること
  • 金銭で一括納付するのに困難な事由があること
  • 担保を提供すること(延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下であれば、担保は不要)
  • 延納申請書に担保提供関係書類を添付して、提出期限までに税務署長に提出すること

 
なお、延納が認められた税額に対しては、利子税が課せられます。

また、本来の納税義務者から贈与税を徴収できない場合には、次の人に連帯納付義務が課されます。
 

  • 財産の贈与者
  • 贈与税が課税された財産を贈与等により取得した人
  • 被相続人に係る贈与税については、その被相続人から相続または遺贈により財産を取得した人