最終更新日: 2024-03-13

宅地の評価

 
宅地のイメージ

相続や贈与における宅地の評価

 
相続財産や贈与財産の価値の計算において、宅地の評価は、登記上の1筆ごとではなく、利用の単位となっている「1区画 = 1画地」の宅地ごとに評価します。
所有する宅地のうち、自用の部分と借地権、借家権を設定させている部分がある場合は、それぞれの部分を1画地の宅地として評価します。


宅地の評価方式

 
宅地の評価方式には、路線価方式倍率方式があります。
市街地にある宅地については路線価方式で、それ以外の宅地については倍率方式で評価します。


路線価方式

 
路線価方式とは、宅地の面する路線ごとに定められた路線価に基づいて評価額を求める方法のことです。
路線価は、国税局ごとに、毎年1月1日時点の1㎡あたりの評価額が定められます。
路線価方式の計算方法について、具体例を挙げて説明します。

一方のみが道路に面している宅地の場合

 
下図のように、一方のみが道路に面している宅地の評価額についてです。
 

一方のみが道路に面している宅地

 
図中の「200C」の「200」は、道路ごとに定められた路線価です。
単位は千円なので、この場合の路線価は、200,000円であることを表しています。
 
「C」は、借地権割合を表す記号です。
借りた土地に建物を建てている場合、通常の土地と同じように土地を使うことができないため、宅地の評価額が低くなります。
 
借地権割合は、下表のとおり7段階あります。

 

記号

借地権割合

A

90%

B

80%

C

70%

D

60%

E

50%

F

40%

G

30%

 
宅地は、道路からの奥行きが長いほど評価が低くなります。
奥行価格補正率を用いて、宅地の評価額を補正します。
 
一方のみが道路に面している宅地の評価額は、次の式で計算します。
 

自用地の評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 面積

 
よって、この例での宅地の評価額は、
 

200,000円 × 0.98 × 600㎡ = 117,600,000円

 
となります。

正面と側面が道路に面している宅地の場合 

 
下図のように、正面と側面が道路に面している宅地の評価額についてです。
 

正面と側面が道路に面している宅地

 
正面と側面が道路に面している宅地の場合には、側方路線に接していることが宅地の価値に与える影響を加味して側方路線影響加算率を用いて、宅地の評価額を補正します。
 
正面と側面が道路に面している宅地の評価額は、次の式で計算します。
 

自用地の評価額 = { ( 正面路線価 × 奥行価格補正率 ) + ( 側方路線価 × 奥行価格補正率 × 側方路線影響加算率 ) } × 面積

 
どちらが正面路線価で、どちらが側方路線価になるかは、「路線価 × 奥行価格補正率」の値を計算して、大きい値の道路の路線価が正面路線価となります。
 
この例では、
 

200,000 × 1 = 200,000円
300,000 × 0.98 = 294,000円

 
となるので、300Cの道路の路線価が正面路線価となります。
 
よって、この例での宅地の評価額は、
 

{ ( 300,000 × 0.98 ) + ( 200,000 × 1 × 0.03 ) } × 600㎡ = 180,000,000円

 
となります。

正面と裏面が道路に面している宅地の場合

 
下図のように、正面と裏面が道路に面している宅地の評価額についてです。
 

正面と裏面が道路に面している宅地

 
正面と裏面が道路に面している宅地の場合には、両方の道路に接していることが宅地の価値に与える影響を加味して二方路線影響加算率を用いて、宅地の評価額を補正します。
 
正面と裏面が道路に面している宅地の評価額は、次の式で計算します。
 

自用地の評価額 = { ( 正面路線価 × 奥行価格補正率 ) + ( 裏面路線価 × 奥行価格補正率 × 二方路線影響加算率 ) } × 面積

 
どちらが正面路線価で、どちらが裏面路線価になるかは、「路線価 × 奥行価格補正率」の値を計算して、大きい値の道路の路線価が正面路線価となります。
 
この例では、
 

200,000 × 0.98 = 196,000円
300,000 × 0.98 = 294,000円

 
となるので、300Cの道路の路線価が正面路線価となります。
 
よって、この例での宅地の評価額は、
 

{ ( 300,000 × 0.98 ) + ( 200,000 × 0.98 × 0.02 ) } × 600㎡ = 178,752,000円

 
となります。

不整形地や崖地の宅地の場合

 
路線価方式により評価する宅地が不整形地である場合は、整形地に比べ経済価値が下がるので、不整形地補正率を用いて、宅地の評価額を補正します。また、崖地等についても、それぞれの補正率(崖地補正率等)を用いて、宅地の評価額を補正します。


倍率方式

 
倍率方式とは、宅地の固定資産税評価額に、国税局長が一定の地域ごとに定めた倍率を乗じて計算した金額によって、宅地の価額を評価する方式のことです。
倍率方式による宅地の評価に用いる倍率とは、路線価が定められていない地域の宅地を評価するために国税局長が定めた割合のことで、国税庁のウェブサイトに掲載されている評価倍率表で確認することができます。
固定資産税評価額には、宅地の面積や形状等の個別事情が考慮されているため、路線価方式のような宅地の形状等による補正は必要ありません。
 
倍率方式による宅地の評価額は、次の式で計算します。
 

自用地の評価額 = 固定資産税評価額 × 国税局長が定める倍率


宅地の分類と評価

 
宅地は、使用の仕方によって分類され、評価額が異なります。 
宅地は主に、自用地借地権貸宅地貸家建付地の4つに分類して評価します。

自用地

 
自用地とは、土地の所有者が自分のために使用している宅地のことです。
自用地評価額は、上記で説明した路線価方式または倍率方式で計算します。
残りの3種類の宅地は、自用地評価額を基に計算をします。

借地権

 
借地権とは、Aさんの土地をBさんが借りている場合のBさんの権利のことです。
 
借地権の評価額は、次の式で計算します。
 

借地権評価額 = 自用地評価額 × 借地権割合

貸宅地

 
貸宅地とは、Aさんの土地をBさんが借りている場合のAさんの宅地のことです。
 
貸宅地の評価額は、次の式で計算します。
 

貸宅地評価額 = 自用地評価額 × ( 1 − 借地権割合)

貸家建付地

 
貸家建付地とは、Aさんの土地にAさんがアパートや貸家等を建てて賃貸している場合のAさんの宅地のことです。
 
貸家建付地の評価額は、次の式で計算します。
 

貸家建付地評価額 = 自用地評価額 × ( 1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合 )

※「借家権割合」とは、家を借りる権利の割合のことで、一律30%です。
※「賃貸割合」とは、全体のうち実際に賃貸されている割合のことです。例えば、10室あるアパートで5室埋まっていれば、賃貸割合は50%となります。

貸家建付借地権

 
宅地の4つの分類のうち、借地権と貸家建付地が合わさったパターンです。
Aさんの土地をBさんが借りていて、その土地にBさんがアパートや貸家等を建てて賃貸している場合のBさんの権利のことです。
 
貸家建付借地権の評価額は、次の式で計算します。
 

貸家建付借地権評価額 = 自用地評価額 × 借地権割合 × ( 1 − 借家権割合 × 賃貸割合 )

宅地の分類と評価をまとめると、下表のとおりです。
 

分類

使用形態

評価額

自用地

自分の宅地

路線価方式または倍率方式で計算された評価額

借地権

借りている宅地

自用地評価額 × 借地権割合

貸宅地

貸している宅地

自用地評価額 × ( 1 − 借地権割合 )

貸家建付地

アパートや貸家等を貸している宅地

自用地評価額 × ( 1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合 )

貸家建付借地権

借りている土地にアパート等を建てて貸している宅地

自用地評価額 × 借地権割合 × ( 1 − 借家権割合 × 賃貸割合 )

土地の使用貸借 

 
土地の使用貸借とは、土地を無償で貸し借りすることです。
例えば、親が子に無償で土地を貸して、子がその土地に家を建てるというような場合です。
この場合、貸主の土地の評価額は、自用地としての評価額となります。
一方、借主の土地の使用権の評価額は、無償で使用しているので0円となります。


私道の評価

 
宅地の評価をする場合に、その宅地に隣接している私道を別途評価する必要が生じる場合があります。
私道は、どのような人が利用しているかによって、下表のとおりに分類されます。
 

私道の利用者

私道の評価額

不特定多数の人

評価しない(0円)

特定の人

自用地評価額の30%

所有者のみ

自用地としての評価額


家屋の評価

 
家屋は、原則として1棟ごとに評価します。

自用家屋(居住用・店舗用等)

 
自用家屋とは、自分が居住している家屋や店舗等に利用している家屋のことです。
 
自用家屋の評価額は、次の式で計算します。
 

自用家屋の評価額 = 固定資産税評価額 × 1.0

貸家

 
貸家の評価額は、次の式で計算します。
 

貸家の評価額 = 自用家屋評価額 × ( 1 − 借家権割合 × 賃貸割合 )

 
また、家屋と構造上一体となっている構造物や設備は、家屋の価額に含んで評価されます。
それ以外の構造物の場合は、当該構造物を取得してから課税されるまでの期間に応じる償却費の額または減価の額を再建築価額から控除したものに70%を乗じた価額となります。
なお、建築中の家屋の価額は、その家屋の費用現価の70%相当額によって評価されます。


小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例

 
小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例とは、被相続人等が事業または居住のために用いてきた建物または構築物がある宅地等を、相続や遺贈により取得し、申告期限まで引き続き所有し続け、引き続き事業もしくは居住を継続した場合、一定の評価減を認める制度のことです。

宅地の利用区分ごとの限度面積と減額割合は、下表のとおりです。
 

利用区分

限度面積

減額割合

居住用

特定居住用宅地等

330㎡ 80%

事業用

特定事業用宅地等

400㎡

80%

特定同族会社事業用宅地等

400㎡

80%

貸付事業用

貸付事業用宅地等

200㎡

50%

 
宅地の利用区分ごとの限度面積と減額割合は、次のように覚えましょう!
 

FP検定語呂合わせ暗記_小規模宅地等の評価減の特例

 
なお、特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等および特定居住用宅地等ならびに貸付事業用宅地等をあわせて保有する場合の限度面積は、次の式で計算します。
 
特例を適用する宅地等のうち、貸付事業用宅地等がない場合
 

A + B ≦ 730㎡
A:特定事業用宅地等・特定同族事業用宅地等の適用面積
B:特定居住用宅地等の適用面積

 
特例を適用する宅地等のうち、貸付事業用宅地等がある場合
 

貸付事業用宅地等がある場合の計算式

A:特定事業用宅地等・特定同族事業用宅地等の適用面積
B:特定居住用宅地等の適用面積
C:貸付事業用宅地等の適用面積

特定居住用宅地等の主な適用要件は、下表のとおりです。
 

区分

適用要件

被相続人が居住していた宅地等 

被相続人の配偶者が取得した宅地であること
被相続人と同居していた親族がその宅地等を取得し、相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで所有していること
配偶者も同居親族もいない場合、相続開始前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族または取得者の特別の関係がある一定の法人が所有する家屋に居住したことがないこと
相続開始時に、所得者が居住している家屋を相続開始前に所有していたことがないこと
その宅地を相続開始時から相続税の申告期限まで所有していること

被相続人と生計を一にしていた親族が居住していた宅地等

被相続人の配偶者が取得した宅地であること

被相続人と同居していた親族がその宅地等を取得し、相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで所有していること

※被相続人が、老人ホームへの入所等により居住することができない宅地については、一定の要件を満たせば特例を適用することができます。

特定事業用宅地等の主な適用要件は、下表のとおりです。
 

区分

適用要件

被相続人が事業を営んでいた宅地等 

事業承継要件 その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその事業を営んでいること
保有継続要件 その宅地等を相続税の申告期限まで所有していること

被相続人と生計を一にしていた親族が事業を営んでいた宅地等

事業継続要件

相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等の上で事業を営んでいること

保有継続要件

その宅地等を相続税の申告期限まで所有していること

※相続開始前3年以内に事業のために使用された宅地等は、一定の場合を除いてこの特例を適用することができません。

特定同族会社事業用宅地等の主な適用要件は、下表のとおりです。
 

区分

適用要件

一定の法人が事業を営んでいた宅地等 

法人役員要件 相続税の申告期限において、その法人の役員であること
保有継続要件 その宅地等を相続税の申告期限まで所有していること

貸付事業用宅地等の主な適用要件は、下表のとおりです。
 

区分

適用要件

被相続人が貸付事業を営んでいた宅地等 

事業承継要件 その宅地等に係る被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその貸付事業を営んでいること
保有継続要件 その宅地等を相続税の申告期限まで所有していること

被相続人と生計を一にしていた親族が貸付事業を営んでいた宅地等

事業継続要件

相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等に係る貸付事業を営んでいること

保有継続要件

その宅地等を相続税の申告期限まで所有していること

※相続開始前3年以内に貸付事業のために使用された宅地等は、一定の場合を除いてこの特例を適用することができません。 

この特例によって、宅地の評価額から減額される金額は、次の式で計算します。