最終更新日: 2024-03-13

株式の評価

 
株式の評価のイメージ

上場株式の相続税評価

 
上場株式とは、金融商品取引所に上場されている株式のことです。
上場株式は、次の4つのうち、最も低い価額で評価します。
 

  1. 課税時期(相続開始の日)の終値
    課税時期の終値がない場合は、その課税時期前後で最も近い日の終値(終値が2つある場合にはその平均額)とする
  2. 課税時期の属する月の毎日の終値の月平均額
  3. 課税時期の属する月の前月の毎日の終値の月平均額
  4. 課税時期の属する月の前々月の毎日の終値の月平均額

 
国内の複数の金融商品取引所に上場されている株式の価額は、納税義務者が選択した金融商品取引所の価格により評価します。 


気配相場等のある株式の評価

 
気配相場等のある株式とは、日本証券業協会の登録銘柄や店頭管理銘柄あるいは公開途上にある株式のことです。
登録銘柄や店頭管理銘柄は、日本証券業協会の公表する課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)の取引価格によって評価します。
その取引価格に高値と安値がある場合は、その平均額となります。
 
ただし、その取引額が次の3つの価額のうち、最も低い価額を超える場合は、その最も低い価額により評価します。
 

  1. 課税時期の月の毎日の取引価格の月平均額
  2. 課税時期の月の前月の毎日の取引価格の月平均額
  3. 課税時期の月の前々月の毎日の取引価格の月平均額

 
公開途上にある株式は、その上場または登録に際して、株式の公募または売出しが行われる場合における公開価格によって評価します。


取引相場のない株式の評価

 
取引相場のない株式とは、上場株式以外の株式のことです。
取引相場のない株式の評価は、次の手順で行われます。
 

  1. 株式取得者の判定
  2. 会社規模区分の判定
  3. 特定の評価会社の判定
  4. 評価方式の判定

1.株式取得者の判定

 
株式取得者の判定は、株式の取得者が会社に対する経営支配権を持つ同族株主か、同族株主以外かによって評価方法が異なります。
 
同族株主とは、株主の1人およびその同族関係者の議決権割合が30%以上である場合における、その株主およびその同族関係者のことです。
ただし、その会社に議決権割合が50%超のグループがある場合には、その50%超のグループに属する株主およびその同族関係者だけが同族株主となります。
 
同族関係者の範囲は、下表のとおりです。
 

親族

配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族

特殊関係にある個人

血縁関係の人、個人的な使用人、生活援助を受けている人

特殊関係にある法人

50%超の持株となる子会社
親会社と子会社で50%超の持株となる孫会社
親会社、子会社、孫会社で50%超の持株となる曾孫会社や兄弟会社

 
中心的な同族株主とは、同族株主の1人ならびにその株主の配偶者、直系血族、兄弟姉妹および1親等の姻族(関係法人を含む)の議決権割合が25%以上である場合におけるその株主のことです。
 
中心的な株主とは、株主の1人およびその同族関係者の議決権割合が15%以上である株主のグループのうち、いずれかのグループに議決権割合が単独で10%以上の株主がいる場合におけるその株主のことです。

2.会社規模区分の判定

 
会社規模区分の判定は、
 

  1. 直前期末以前1年間における従業員数
  2. 直前期末の総資産価額(帳簿価額)
  3. 直前期末以前1年間の取引金額

 
によって大会社中会社小会社に区分して、その区分ごとの評価方法により評価します。
 
従業員数が70人以上の会社は常に大会社となり、70人未満の会社は「直前期末の総資産価額(帳簿価額)」と「直前期末以前1年間の取引金額」に応じて、大会社、中会社、小会社のいずれかに区分されます。

3.特定の評価会社の判定

 
特定の評価会社の種類と判定基準は、下表のとおりです。
 

特定会社の種類

判定基準

土地保有特定会社

評価会社の課税時期における各資産を財産評価基本通達の定めるところにより評価した価額の合計額のうちに占める土地等の価額の合計額の割合(土地保有割合)が、70%以上(大会社、総資産価額が大会社の基準に該当する小会社)または90%以上(中会社、総資産価額が中会社の基準に該当する小会社)

株式等保有特定会社

評価会社の課税時期における各資産を財産評価基本通達の定めるところにより評価した価額の合計額のうちに占める株式等の価額の合計額の割合(株式等保有割合)が、50%以上

開業後3年未満の会社

課税時期において開業後3年未満

比準要素数0の会社

課税時期の直前期末を基準として、類似業種比準方式の3つの比準要素である「1株あたりの配当金額」、「1株あたりの利益金額」、「1株あたりの簿価純資産価額」がすべて0円

比準要素数1の会社

類似業種比準方式の3つの比準要素である「1株あたりの配当金額」、「1株あたりの利益金額」、「1株あたりの簿価純資産価額」を、直前期末を基準とした場合と直前々期末を基準とした場合とでそれぞれ計算し、次のいずれにも当てはまる場合
①直前期末を基準としたときに、3つの比準要素のうちいずれか2つが0円
②直前々期末を基準としたときに、3つの比準要素のうちいずれか2つ以上が0円

開業前・休業中の会社

課税時期において会社設立の登記は完了しているが、事業活動を開始するまでにいたっていない
課税時期において相当長期間にわたり休業している

清算中の会社

課税時期において清算の段階にある

4.評価方式の判定

 
評価方式の判定は、下表のとおりです。
 

株式取得者の判定

会社区分の判定

特定会社の判定

評価方式

同族株主等

大会社 特定会社に非該当 (原則的評価方式)
類似業種比準方式
または
純資産価額方式

中会社

(原則的評価方式)
併用方式
または
純資産価額方式

小会社

(原則的評価方式)
純資産価額方式
または
併用方式

大会社

特定会社に該当

(原則的評価方式)
純資産価額方式

中会社

小会社

同族株主等以外

(特例的評価方式)
配当還元方式

類似業種比準方式

 
類似業種比準方式とは、評価会社の事業内容と類似する事業を行っている上場会社の株価を比較し、当該評価会社の株価を計算する方法のことです。
株価は、「1株あたりの配当金額」、「1株あたりの利益金額」、「1株あたりの簿価純資産価額」の3要素をもとに算出されます。
比準価額は会社規模に応じて、大会社70%、中会社60%、小会社50%の斟酌率を乗じて評価します。
 
1株あたりの類似業種比準価額は、次の式で計算します。
 


 
A:類似業種の株価
B:類似業種の1株あたりの配当金額
C:類似業種の1株あたりの利益金額
D:類似業種の1株あたりの純資産価額
E:斟酌率(大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5)
b:評価会社の1株あたりの配当金額(前2年間の平均)
c:評価会社の1株あたりの利益金額(直前期1年間または前2年間の平均)
d:評価会社の1株あたりの純資産価額(直前期末)

純資産価額方式

 
純資産価額方式とは、会社の全財産を現金化し、債務の弁済や支払うべき税金を支払った後、1株あたりに分配できる現金がどのくらいあるのかを計算し、その算出額を株価とする方法のことです。
会社の全財産を国税庁が定めた財産の評価基準により評価替えし、含み益があれば、それに対する税金相当額を控除した純資産価額とし、これを発行済株式数で割ったものが1株あたりの純資産価額となります。
なお、会社が課税時期前3年以内に取得または新築した土地および土地の上に存する権利、ならびに家屋およびその附属設備または構築物の価額は、課税時期における通常の取引価額で評価します。
 
1株あたりの純資産価額は、次の式で計算します。
 


 
A:課税時期における相続税評価額による総資産価額
B:課税時期における相続税評価額による負債額
C:課税時期における帳簿価額による総資産価額
D:課税時期における帳簿価額による負債額
E:課税時期における発行済株式数

併用方式

 
併用方式とは、類似業種比準方式と純資産価額方式を組み合わせた加重平均による評価方法のことです。
 
併用方式による株式の評価額は、次の式で計算します。
 

1株あたりの評価額 = ( 類似業種比準価額 × Lの割合 ) + { 純資産価額 × ( 1 − Lの割合 ) }

※「Lの割合」とは、類似業種比準価額と純資産価額による評価額の組み合わせを決めた割合のことです。会社の規模によって、中会社の大:0.9、中会社の中:0.75、中会社の小:0.6、小会社:0.5のいずれかになります。

配当還元方式

 
配当還元方式とは、同族株主等以外の経営権に関与し得ない少数株主が取得した株式を評価する方法のことです。
直前期以前の2年間の平均の1株あたりの配当金額を10%で還元した金額が評価額となります。
ただし、1株あたりの資本金等の額を50円とした場合の直前期以前の2年間の平均の配当金額が2円50銭未満または無配当の場合は、年配当金額を2円50銭とし、その金額を10%で還元した金額に1株あたりの資本金等の額÷50円を乗じた金額を1株あたりの価額とします。
 
1株あたりの配当還元価額は、次の式で計算します。
 


 

※年配当金額が2円50銭未満または無配当の場合は、2円50銭として計算します。

 
なお、記念配当や特別配当等の名称等による配当で、将来毎期継続することが予想できない金額は、配当金額に含まれません。