不動産所得について
不動産所得とは、以下のような資産の貸付けによって得られる所得を指します。
- 土地や建物などの不動産の貸付け
- 借地権、地上権、永小作権など、不動産に関する権利の設定および貸付け
- 船舶や航空機の貸付け
これらの貸付けによって生じる収入が「不動産所得」として扱われます。
不動産所得の計算方法について
不動産所得の金額は、以下の式で算出されます。
不動産所得 = 総収入金額 − 必要経費
総収入金額に含まれる主な項目
- 資産の貸付けによる賃貸料収入
- 名義書換料、承諾料、更新料、頭金、礼金などの名目で受け取る金銭
- 敷金や保証金などのうち、賃借人に返還する必要のないもの
- 共益費などの名目で受け取る電気代、水道代、掃除費など
必要経費として認められる主な項目
- 固定資産税
- 都市計画税
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 損害保険料
- 貸家に係る減価償却費
- 貸家に係る修繕費
- 賃地・貸家に係る借入金の利子(賃貸開始後)
- 管理費
- 仲介手数料
- 立ち退き料
- 事業専従者控除額(白色申告者)
- 青色事業専従者給与(青色申告者)
資産損失の取り扱い
貸付けを事業的規模で行っている場合、建物の老朽化に伴う取り壊しによって生じた資産損失(除去損失など)は、全額を必要経費として算入できます。
一方、事業的規模でない場合は、資産損失を控除できるのは不動産所得の金額が限度となり、赤字が生じても他の所得との損益通算はできません。
事業的規模の判断基準
事業的規模かどうかは、社会通念上「事業」と認められる程度かどうかで判断されます。形式的な目安としては、以下のような基準があります。
- 独立家屋の貸付け:おおむね5棟以上
- アパート等の貸室:おおむね10室以上
- 駐車場の貸付け:おおむね50台以上
- 貸地:おおむね50件以上
専従者控除・給与の取り扱い
貸付けが事業的規模であり、生計を一にする配偶者や親族がマンション管理などの業務に専従している場合は、以下のとおりです。
- 白色申告者:事業専従者控除額を必要経費に算入可能
- 青色申告者:青色事業専従者給与を必要経費に算入可能
【参考】青色申告・白色申告
不動産所得の規模による取扱いの違い
| 項目 | 事業的規模 |
事業的規模以外 |
| 青色申告 |
可能 |
可能 |
| 青色申告特別控除額 |
55万円または65万円 ※ |
10万円 |
| 青色事業専従者給与・白色事業専従者控除 |
必要経費に算入可能 |
必要経費に算入不可 |
| 資産損失 |
全額を必要経費に算入可能 | 所得金額を限度に控除 |
| 貸倒引当金 |
回収不能となった年の必要経費 |
収入計上年に遡って処理 |
| 損益通算 |
可能 |
可能 |
| 純損失の繰越控除 |
可能(青色申告のみ) |
可能(青色申告のみ) |
| 事業税 |
課税対象 |
非課税 |
| 延納に係る利子税 |
必要経費に算入可能 |
必要経費に算入不可 |
※「65万円の青色申告特別控除額」は、55万円の要件に加え、e-TAXによる申告等を行うことで適用されます。
不動産所得の税額の計算について
不動産所得は総合課税の対象となり、確定申告が必要です。
また、不動産所得が赤字(損失)となった場合には、他の所得(給与所得や事業所得など)の黒字と損益通算することが可能です。
ただし、赤字のうち、土地等の取得に要した借入金の利子に相当する部分については、損益通算の対象外となります。