預貯金者の保護等に関する法律とは
 
正式名称は「偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律」です。この法律は、偽造されたキャッシュカードや盗難カードを使った不正なATM取引による被害が多発している現状を踏まえ、預貯金者の保護を目的として制定されました。
法律では、こうした不正な取引に関して民法の特例を定めるとともに、金融機関に対して防止措置の実施を求めています。これにより、預貯金者が偽造や盗難による被害を受けた場合でも、一定の条件を満たせば金融機関に補償を求めることが可能となります。たとえば、盗難カードによる不正な払戻しがあった場合、預貯金者が速やかに金融機関へ通知し、事情説明や被害届の提出などを行えば、原則として被害額の全額が補償されます。ただし、預貯金者に重大な過失がある場合や、家族などの近親者による使用があった場合などには、補償の対象外となることもあります。
このように、法律は預貯金者の権利を守ると同時に、金融機関の責任を明確にし、預貯金制度への信頼を高めることを目指しています。結果として、国民経済の健全な発展と国民生活の安定にも寄与することが期待されています。
盗難カード等を用いた不正な機械式預貯金払戻しに対する補てんについて
 
預貯金者が、自身の預貯金契約に係る真正なカード等が盗取されたと認められる場合で、以下のすべての条件を満たすときは、当該預貯金契約を締結している金融機関に対し、盗難カード等を用いて行われた機械式預貯金払戻しに相当する金額の補てんを請求することができます。
- 真正カード等が盗取されたと認識した後、速やかに金融機関へ盗取の事実を通知したこと。
 - 金融機関の求めに応じ、遅滞なく、盗取の経緯その他関連する状況について十分な説明を行ったこと。
 - 捜査機関への届出を行った旨を金融機関に申し出たこと、または、盗取が行われたと推測される事実(内閣府令で定めるもの)を示したこと。
 
 
ただし、金融機関が以下の両方を証明した場合には、補てん額は不正払戻し額の4分の3(75%)に相当する金額となります。
- 不正な機械式払戻しが盗難カード等を用いて行われたことについて、金融機関が善意かつ過失がないこと。
 - 不正払戻しが預貯金者の過失(重大な過失を除く)によって行われたこと。
 
 
さらに、金融機関が以下のいずれかに該当することを証明した場合には、補てん義務は生じません。
- 不正な機械式払戻しについて、金融機関が善意かつ過失がなく、かつ以下のいずれかに該当する場合。
 - 不正払戻しが預貯金者の重大な過失によって行われたこと。
 - 不正払戻しが預貯金者の配偶者、二親等以内の親族、同居の親族、その他の同居人または家事使用人によって行われたこと。
 - 預貯金者が金融機関への説明において、重要な事項について虚偽の説明を行ったこと。
 - 当該盗難カード等の盗取が、戦争、暴動等による著しい社会秩序の混乱に乗じて、またはこれに付随して行われた場合。
 
金融機関の補償割合について
 
預貯金者の過失の有無やその程度に応じて、金融機関が補償する割合は以下のとおりです。
 
偽造カードによる被害
|   預貯金者の状況  |  
                   補償割合  |  
                
| 故意または重過失がない場合 | 100% |  
                
|   故意または重過失がある場合  |  
                   0%(補償対象外)  |  
                
盗難カードによる被害
|   預貯金者の状況  |  
                   補償割合  |  
                
| 過失がない場合 | 100% |  
                
|   過失がある場合  |  
                   75%  |  
                
|   重過失がある場合  |  
                   0%(補償対象外)  |  
                
※盗難カードによる被害については、「盗難の通知を行った日の30日前」以降に発生した不正利用が補償の対象となります。
金融機関が補償しない(免責となる)主なケース
 
以下のいずれかに該当する場合、金融機関は補償を行いません。
- 預貯金者に故意または重過失がある場合
 - 預貯金者の配偶者、2親等以内の親族、同居の親族・同居人、または家事使用人による盗難
 - 被害状況について虚偽の説明があった場合
 
重過失と判断される主な例(偽造・盗難カード共通)
- 本人が暗証番号を他人に教えた場合
 - 本人が暗証番号をカードに記載していた場合
 - 本人がカードを他人に渡した場合
 
過失と判断される主な例(盗難カード被害)
- 金融機関から、推測されやすい暗証番号(生年月日、自宅住所、電話番号、車のナンバーなど)を避けるよう、個別かつ具体的に複数回注意喚起されていたにもかかわらず、それらを暗証番号として使用し、かつ、それを推測可能な書類(免許証、健康保険証、パスポート等)と一緒にカードを携行・保管していた場合
 - 暗証番号をメモ等に記載し、それをカードと一緒に携行・保管していた場合