デリバティブ取引
デリバティブ取引とは、株式、債券、金利、為替等の原資産となる金融商品から派生した金融派生商品を対象とした取引のことです。
原資産の取引よりも少ない投資金額で大きな取引ができること、投資商品の価格の値上がりによって利益を得られるものだけでなく、値下がりによって利益が得られるものもあり、リスク回避や効率的な投資運用の方法として活用されています。
国内で行われているデリバティブ取引には、金融商品取引所において、当該取引所が定める基準および方法で行われる市場デリバティブ取引と、金融商品取引所以外(店頭市場)で行われる店頭デリバティブ取引があります。
先物取引
先物取引とは、将来の売買について現時点で約束する取引のことです。
現時点では、売買価格や数量等を約束しておいて、約束の日が来たら、売買を行います。
あらかじめ価格を決めておくことで、価格変動する商品について価格変動リスクを回避することができます。
先物取引では、約束の日に対象商品の売買を行い、代金の受け渡しを行う受け渡し決済だけでなく、受け渡しを伴わずに、反対売買を行って決済することもできます。
反対売買とは、約束した取引と反対の取引を行うことで、商品を買うことを約束した場合は、その商品売ることで、商品を売ることを約束した場合は、その商品を買うことをいいます。
売買の決済は、商品の売値と買値の差額だけを受け渡す差金決済制度が一般的です。
主な先物取引には、次のようなものがあります。
リスクヘッジ取引
リスクヘッジ取引とは、保有現物資産が値下がりするリスクを回避するために先物を売ったり(売りヘッジ)、あるいは将来購入予定の現物資産が値上がりしてしまうリスクを回避するために先物を買ったり(買いヘッジ)する取引のことです。
投機取引(スペキュレーション)
投機取引とは、価格の変動そのものに注目して利益を追求する取引のことです。
裁定取引(アービトラージ)
裁定取引とは、先物価格がその理論価格より上方に乖離しているときには現物買い・先物売り(買い裁定)を行い、逆に下方に乖離しているときには現物売り・先物買い(売り裁定)を行う取引のことです。
スプレッド取引
スプレッド取引とは、2つの先物取引が利用できる場合、その価格差が適正な水準から乖離した際に、相対的に割高な先物を売り建て、同時に割安な先物を買い建てる取引のことです。
オプション取引
オプション取引とは、ある金融商品をあらかじめ定められた価格(権利行使価格)で売買するかしないかの選択権を売買する取引のことです。
オプションには、商品を買う権利であるコール・オプションと、商品を売る権利であるプット・オプションがあります。
オプションの取引形態には、金融商品取引所に上場されている上場オプション、相対で取引される店頭オプションがあります。
権利を手に入れるためにはオプション料、いわゆる権利の購入代金を支払う必要があります。
このオプション料のことをオプション・プレミアム(単に、プレミアム)といいます。
コール・オプション
コール・オプションでは、原資産の価格が権利行使価格よりも安くなった場合は、市場で直接その資産を売った方が有利になるので権利を行使せずに放棄することになります。
したがって、コール・オプションの買い手の損失は支払ったプレミアムに限定されます。
一方、原資産の価格が権利行使価格よりも高くなった場合は、コール・オプションの売り手は、高い価格のものを安い権利行使価格で売らなければならなくなります。
理論上は、価格には上限がないので、オプションの売り手は無限の損失を負う可能性があります。
プット・オプション
プット・オプションでは、原資産の価格が権利行使価格よりも高くなった場合は、市場で直接その資産を売った方が有利になるので権利を行使せずに放棄することになります。
したがって、プット・オプションの買い手の損失は支払ったプレミアムに限定されます。
一方、原資産の価格が権利行使価格よりも安くなった場合は、プット・オプションの買い手が権利を行使すると、プット・オプションの売り手は、安い価格のものを高い権利行使価格で買わなければならなくなるため、価格が安くなるほど損失が大きくなります。
権利行使期間
オプション取引には、契約締結日(または権利行使開始日)から権利行使最終日(満期日)まで、いつでも権利行使が可能なアメリカンオプションと、あらかじめ決められた権利行使日(満期日)にのみ権利行使が可能なヨーロピアンオプションがあります。
オプション・プレミアムの変動要因
プレミアムは、原資産価格、ボラティリティ(値動きの大きさ)、満期までの期間等の変動要因によって上がったり、下がったりします。
プレミアムの変動要因をまとめると、下表のとおりになります。
変動要因 |
オプション・プレミアムの増減 |
||
コール・オプション |
プット・オプション |
||
原資産価格 |
上昇 |
増加⬆ |
減少⬇ |
下落 |
減少⬇ |
増加⬆ |
|
権利行使価格 |
高い |
減少⬇ |
増加⬆ |
低い | 増加⬆ | 減少⬇ |
|
満期までの期間 | 長い | 増加⬆ | |
短い | 減少⬇ | ||
ボラティリティ (価格変動率) |
大きい | 増加⬆ | |
小さい | 減少⬇ |
スワップ取引
スワップ取引とは、将来のキャッシュフローを交換することを約束する取引のことです。
主なスワップ取引には、固定金利と変動金利を交換する金利スワップや、異なる通貨のキャッシュ・フローを交換する通貨スワップがあります。
将来の金利変動リスクを回避する手法として、スワップ取引が行われています。
金取引
金は国際的に取引されている金融派生商品のひとつで、次に掲げる特徴があります。
- 金は実物資産であるため発行体が存在しないため、デフォルトリスクがない
- 預貯金の利息、債券の利子、株式の配当等のようなインカムゲインがない
国際的に金は、トロイオンス(TOZ:31.1035g)あたりの米ドル建てで取引されており、米国の金利の影響を受けます。一般的に金利が高いときは、インカムゲインがない金は価格が下落する傾向にあります。
国内では米ドル建てで取引されている金をグラムあたりの円に換算して取引されているため、国内の金価格は円ドル為替相場の変動リスクがあります。
また、地政学リスクも金価格の変動要因となります。「有事の金」といわれるように、国際情勢が不安定になったり経済状況が悪化したりしたときに金が買われて価格が上昇する傾向にあります。
金取引には、次に掲げるような商品があります。
金地金
実物の金地金は、貴金属会社や地金商等が販売をしています。金地金には、購入するときに適用される「小売価格」と、売却するときに適用される「買取価格」があり、1kgバー、500gバー以外のものは、売買時にバーチャージと呼ばれる手数料がかかります。購入時は消費税がかかり、売却時は売却価格に消費税が上乗せされます。売却益は原則、譲渡所得として総合課税の対象となります。
地金型金貨
地金型金貨は、地金より少額での購入や売却が可能な商品です。地金型金貨にも小売価格と買取価格があります。購入時は消費税がかかり、売却時は売却価格に消費税が上乗せされます。売却益は原則、譲渡所得として総合課税の対象となります。
純金積立
毎月一定額で金を購入していく商品で、高値づかみの心配がなく、ドルコスト平均法によって購入価格が平準化される効果も見込めます。貴金属会社や地金商のほか一部のネット証券会社でも扱っています。購入時には一定の手数料がかかりますが、売却時の手数料は無料となっている場合が多いです。積立購入した金は、取り扱い会社が保管することになります。混合(混蔵)寄託の場合は、預けた金が購入者の名義で保管され、取り扱い会社の資産と分別管理されます。消費寄託の場合は、金の所有権が取り扱い会社に移転し、取り扱い会社の名義で保管され、購入者は返還請求権を持つ形となります。
金ETF
金ETFとは、金価格に連動する上場投資信託のことです。少額から低コストの投資が可能で、購入者が金を保管する必要がないため、盗難や自然災害等で失われるリスクがありません。