金融商品取引法とは
金融商品取引法とは、企業内容等の開示の制度を整備するとともに、金融商品取引業を行う者に関し必要な事項を定め、金融商品取引所の適切な運営を確保すること等により、有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り、国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的とした法律です。
金融商品取引法では、金融商品取引業について、
- 第一種金融商品取引業
- 第二種金融商品取引業
- 投資助言・代理業
- 投資運用業
の4つの区分を設けています。
第一種金融商品取引業は、有価証券の売買、店頭デリバティブ取引等、引受業務、私設取引システムの運営、有価証券等管理業務などを指し、主に証券会社等が営んでいます。
第二種金融商品取引業は、集団投資スキーム等の自己募集、みなし有価証券の売買等、市場デリバティブ取引などを指し、主に自己募集のファンド等が営んでいます。
投資助言・代理業は、投資顧問契約に基づく助言、投資顧問契約や投資一任契約締結の代理・媒介などを指し、主に投資顧問業者等が営んでいます。
投資運用業は、投資一任契約等に基づく運用、投資信託等の運用、集団投資スキーム等の運用などを指し、主に投資信託委託業者や投資顧問業者等が営んでいます。
また、金融商品取引業者の顧客は、特定投資家(プロ)と一般投資家(アマ)に区分して規制しています。
金融商品取引業者
金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができません。
営業保証金
第二種金融商品取引業を行う個人及び投資助言・代理業のみを行う金融商品取引業者は、営業保証金を主たる営業所又は事務所の最寄りの供託所に供託しなければなりません。営業保証金の額は、500万円となります。営業保証金は、金銭以外にも、国債証券、地方債証券その他の内閣府令で定める有価証券を充てることができます。
金融商品取引業者等が遵守すべき行為規定
金融商品取引法では、金融商品取引業者等が有価証券・デリバティブ取引の販売や勧誘等を行う際には、次のような行為規定を遵守しなければならない旨を定めています。
顧客に対する誠実義務
金融商品取引業者等並びにその役員及び使用人は、顧客に対して誠実かつ公正に、その業務を遂行しなければなりません。
標識の掲示
金融商品取引業者等は、営業所又は事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、標識を掲示しなければなりません。
名義貸しの禁止
金融商品取引業者等は、自己の名義をもつて、他人に金融商品取引業(登録金融機関にあっては、登録金融機関業務)を行わせてはなりません。
社債の管理の禁止等
金融商品取引業者は、社債管理者、社債管理補助者又は信託契約の受託会社となることができません。
広告等の規制
金融商品取引業者等は、その行う金融商品取引業の内容について広告その他これに類似する行為をするときは、次に掲げる事項を表示しなければならなりません。
- 金融商品取引業者等の商号、名称又は氏名
- 金融商品取引業者等である旨及び金融商品取引業者等の登録番号
- 金融商品取引業者等の行う金融商品取引業の内容に関する事項であって、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものとして政令で定めるもの
金融商品取引業者等は、その行う金融商品取引業に関して広告その他これに類似する行為をするときは、金融商品取引行為を行うことによる利益の見込み等について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはなりません。
取引様態の事前明示義務
金融商品取引業者等は、顧客から有価証券の売買又は店頭デリバティブ取引に関する注文を受けたときは、あらかじめ、その者に対し自己がその相手方となって当該売買もしくは取引を成立させるか、又は媒介し、取次ぎし、もしくは代理して当該売買もしくは取引を成立させるかの別を明らかにしなければなりません。
契約締結前の書面の交付
金融商品取引業者等は、金融商品取引契約を締結しようとするときは、あらかじめ、顧客に対し、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければなりません。
- 金融商品取引業者等の商号、名称又は氏名及び住所
- 金融商品取引業者等である旨及び金融商品取引業者等の登録番号
- 金融商品取引契約の概要
- 手数料、報酬その他の金融商品取引契約に関して顧客が支払うべき対価に関する事項であつて内閣府令で定めるもの
- 顧客が行う金融商品取引行為について金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動により損失が生ずることとなるおそれがあるときは、その旨
- 損失の額が顧客が預託すべき委託証拠金その他の保証金その他内閣府令で定めるものの額を上回るおそれがあるときは、その旨
- 金融商品取引業の内容に関する事項であって、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものとして内閣府令で定める事項
契約締結時等の書面の交付
金融商品取引業者等は、金融商品取引契約が成立したときは、遅滞なく、書面を作成し、これを顧客に交付しなければなりません。
保証金の受領に係る書面の交付
金融商品取引業者等は、その行う金融商品取引業に関して顧客が預託すべき保証金を受領したときは、顧客に対し、直ちに、その旨を記載した書面を交付しなければなりません。
禁止行為
金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはなりません。
- 金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為
- 顧客に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げて金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為
- 顧客に対し、信用格付業者以外の信用格付業を行う者の付与した信用格付について、当該信用格付を付与した者が登録を受けていない者である旨及び当該登録の意義その他の事項を告げることなく提供して、金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為
- 金融商品取引契約の締結の勧誘の要請をしていない顧客に対し、訪問し又は電話をかけて、金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為
- 金融商品取引契約の締結につき、その勧誘に先立って、顧客に対し、その勧誘を受ける意思の有無を確認することをしないで勧誘をする行為
- 金融商品取引契約の締結の勧誘を受けた顧客が当該金融商品取引契約を締結しない旨の意思を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続する行為
- 自己又は第三者の利益を図る目的をもつて、特定金融指標算出者に対し、特定金融指標の算出に関し、正当な根拠を有しない算出基礎情報を提供する行為
- 高速取引行為者以外の者が行う高速取引行為に係る有価証券の売買又は市場デリバティブ取引の委託を受ける行為その他これに準ずるものとして内閣府令で定める行為
- 投資者の保護に欠け、もしくは取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるものとして内閣府令で定める行為
金融商品取引業者等は、その行う投資助言・代理業又は投資運用業に関して、次に掲げる行為をしてはなりません。
- 投資顧問契約、投資一任契約もしくは契約の締結又は解約に関し、偽計を用い、又は暴行若しくは脅迫をする行為
- 顧客を勧誘するに際し、顧客に対して、損失の全部又は一部を補てんする旨を約束する行為
損失補填等の禁止
金融商品取引業者等は、次に掲げる行為をしてはなりません。
- 有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引につき、当該有価証券又はデリバティブ取引について顧客に損失が生ずることとなり、又はあらかじめ定めた額の利益が生じないこととなった場合には自己又は第三者がその全部又は一部を補塡し、又は補足するため当該顧客又は第三者に財産上の利益を提供する旨を、当該顧客又はその指定した者に対し、申し込み、もしくは約束し、又は第三者に申し込ませ、もしくは約束させる行為
- 有価証券売買取引等につき、自己又は第三者が当該有価証券等について生じた顧客の損失の全部若しくは一部を補塡し、又はこれらについて生じた顧客の利益に追加するため当該顧客又は第三者に財産上の利益を提供する旨を、当該顧客又はその指定した者に対し、申し込み、もしくは約束し、又は第三者に申し込ませ、もしくは約束させる行為
- 有価証券売買取引等につき、当該有価証券等について生じた顧客の損失の全部若しくは一部を補塡し、又はこれらについて生じた顧客の利益に追加するため、当該顧客又は第三者に対し、財産上の利益を提供し、又は第三者に提供させる行為
適合性の原則
金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が次のいずれかに該当することのないように、その業務を行わなければなりません。
- 金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており、又は欠けることとなるおそれがあること
- 業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じていないと認められる状況、その他業務の運営の状況が公益に反し、又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがある状況にあること
投資助言業務に関する禁止行為
金融商品取引業者等は、その行う投資助言業務に関して、次に掲げる行為をしてはなりません。
- 顧客相互間において、他の顧客の利益を図るため特定の顧客の利益を害することとなる取引を行うことを内容とした助言を行うこと
- 特定の金融商品、金融指標又はオプションに関し、顧客の取引に基づく価格、指標、数値又は対価の額の変動を利用して自己又は当該顧客以外の第三者の利益を図る目的をもつて、正当な根拠を有しない助言を行うこと
- 通常の取引の条件と異なる条件で、かつ、当該条件での取引が顧客の利益を害することとなる条件での取引を行うことを内容とした助言を行うこと
- 助言を受けた顧客が行う取引に関する情報を利用して、自己の計算において有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引を行うこと
- その助言を受けた取引により生じた顧客の損失の全部又は一部を補てんし、又はその助言を受けた取引により生じた顧客の利益に追加するため、当該顧客又は第三者に対し、財産上の利益を提供し、又は第三者に提供させること
- 投資者の保護に欠け、もしくは取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるものとして内閣府令で定める行為
投資運用業に関する禁止行為
金融商品取引業者等は、その行う投資運用業に関して、次に掲げる行為をしてはなりません。
- 自己又はその取締役若しくは執行役との間における取引を行うことを内容とした運用を行うこと
- 運用財産相互間において取引を行うことを内容とした運用を行うこと
- 特定の金融商品、金融指標又はオプションに関し、取引に基づく価格、指標、数値又は対価の額の変動を利用して自己又は権利者以外の第三者の利益を図る目的をもって、正当な根拠を有しない取引を行うことを内容とした運用を行うこと
- 通常の取引の条件と異なる条件で、かつ、当該条件での取引が権利者の利益を害することとなる条件での取引を行うことを内容とした運用を行うこと
- 運用として行う取引に関する情報を利用して、自己の計算において有価証券の売買その他の取引等を行うこと
- 運用財産の運用として行つた取引により生じた権利者の損失の全部もしくは一部を補塡し、又は運用財産の運用として行つた取引により生じた権利者の利益に追加するため、当該権利者又は第三者に対し、財産上の利益を提供し、又は第三者に提供させること
- 投資者の保護に欠け、もしくは取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるものとして内閣府令で定める行為