金融商品取引法
最終更新日: 2025-10-23

金融商品取引法とは

 
金融商品取引法は、企業の情報開示制度を整備し、金融商品取引業を営む者に対する必要な規定を設けることで、金融商品取引所の適切な運営を確保し、有価証券の発行や金融商品の取引を公正かつ円滑に行えるようにすることを目的とした法律です。
この法律は、資本市場の機能を十分に発揮させることで、金融商品の公正な価格形成を促し、国民経済の健全な発展と投資者の保護に資することを目指しています。
 
金融商品取引法では、金融商品取引業を以下の4つに分類しています。

  • 第一種金融商品取引業
    有価証券の売買、店頭デリバティブ取引、引受業務、私設取引システムの運営、有価証券等の管理業務などが含まれます。主に証券会社などがこの業務を行っています。
  • 第二種金融商品取引業
    集団投資スキームの自己募集、みなし有価証券の売買、市場デリバティブ取引などが該当します。主に自己募集型のファンドなどがこの業務を担っています。
  • 投資助言・代理業
    投資顧問契約に基づく助言や、投資顧問契約・投資一任契約の締結に関する代理・媒介業務を指します。主に投資顧問業者がこの業務を行っています。
  • 投資運用業
    投資一任契約や投資信託に基づく資産運用、集団投資スキームの運用などが含まれます。主に投資信託委託業者や投資顧問業者がこの業務を担っています。

 
また、金融商品取引業者の顧客は、特定投資家(プロ)一般投資家(アマ)に区分され、それぞれに応じた規制が適用されます。この区分により、投資者の知識や経験に応じた適切な保護が図られています。


金融商品取引業者とは

 
金融商品取引業を営むには、内閣総理大臣の登録を受ける必要があります。登録を受けていない者は、金融商品取引業を行うことはできません。

営業保証金について

 
以下の金融商品取引業者は、営業保証金を供託する義務があります。

  • 第二種金融商品取引業を営む個人
  • 投資助言・代理業のみを営む金融商品取引業者

営業保証金は、主たる営業所または事務所の最寄りの供託所に供託しなければなりません。供託すべき金額は500万円です。
この営業保証金は、金銭のほかにも以下のような有価証券で代替することが可能です。

  • 国債証券
  • 地方債証券
  • その他、内閣府令で定める有価証券

金融商品取引業者等が遵守すべき行為規定

 
金融商品取引法では、金融商品取引業者等が有価証券やデリバティブ取引の販売・勧誘等を行う際に、以下の行為規定を遵守することが義務付けられています。
 

基本的義務

 

  • 顧客に対する誠実義務
    金融商品取引業者等およびその役員・使用人は、顧客に対して誠実かつ公正に業務を遂行しなければなりません。
  • 標識の掲示義務
    営業所または事務所ごとに、公衆の見やすい場所に標識を掲示する必要があります。
  • 名義貸しの禁止
    自己の名義を用いて、他人に金融商品取引業を行わせることは禁止されています。
  • 社債管理業務の禁止
    金融商品取引業者は、社債管理者、社債管理補助者、または信託契約の受託会社となることはできません。

 

広告・表示に関する規制

 

  • 表示義務
    広告を行う際には、以下の事項を明示する必要があります。
    • 商号・名称・氏名
    • 登録番号および業者である旨
    • 顧客の判断に影響を与える重要事項(政令で定めるもの)
  • 誤認表示の禁止
    利益の見込み等について、著しく事実と異なる表示や、著しく誤認させる表示は禁止されています。

 

契約に関する書面交付義務

 

  • 契約締結前
    契約締結前には、以下の事項を記載した書面を顧客に交付する必要があります(上場有価証券等については、一定条件下で交付義務が免除される場合があります)。
    • 業者の商号・名称・住所・登録番号
    • 契約の概要
    • 手数料・報酬等の対価
    • 損失の可能性とその程度
    • 顧客判断に影響を与える重要事項
  • 契約締結時
    契約が成立した際には、遅滞なく契約締結時書面を交付しなければなりません。
  • 保証金受領時
    保証金を受領した場合は、直ちにその旨を記載した書面を交付する必要があります。

 

勧誘・取引に関する規制

 

  • 取引様態の事前明示義務
    注文を受けた際には、自己が相手方となるか、媒介・取次・代理のいずれかを明示する必要があります。
  • 不招請勧誘の禁止
    顧客が勧誘を要請していない場合の訪問・電話による勧誘は禁止されています。
  • 勧誘意思の確認義務
    勧誘前に顧客の意思確認を行わずに勧誘することは禁止されています。

 

禁止行為

 
以下のような行為は禁止されています。

  • 虚偽の告知
  • 断定的判断の提供
  • 登録のない信用格付業者の格付提供
  • 勧誘の継続(顧客が拒否した場合)
  • 特定金融指標への不正な影響
  • 高速取引行為者以外による高速取引
  • 投資者保護・公正性を損なう行為(内閣府令で定めるもの)

 

投資助言業務に関する禁止行為

 
以下のような行為は禁止されています。

  • 他の顧客の利益のために特定顧客の利益を害する助言
  • 根拠のない助言
  • 通常の取引条件と異なる条件での取引で顧客の利益を害する助言
  • 助言を受けた顧客が行う取引に関する情報を利用して有価証券の売買やデリバティブ取引を行うこと
  • 顧客の損失補填・利益追加のための利益提供
  • 投資者保護・公正性を損なう行為(内閣府令で定めるもの)

 

投資運用業務に関する禁止行為

 
以下のような行為は禁止されています。

  • 自己または役員との取引
  • 運用財産間の取引
  • 根拠のない取引
  • 通常の取引条件と異なる条件での取引で顧客の利益を害する運用
  • 運用として行う取引に関する情報を利用して有価証券の売買等を行うこと
  • 顧客の損失補填・利益追加のための利益提供
  • 投資者保護・公正性を損なう行為(内閣府令で定めるもの)

 

損失補填等の禁止

 
金融商品取引業者等は、以下のような損失補填・利益追加の申込み・約束・実行を行ってはなりません。

  • 顧客に対する損失補填の申込み・約束
  • 実際の損失補填・利益追加の提供

 

適合性の原則

 
金融商品取引業者等は、以下のような状況に該当しないよう業務を運営する必要があります。

  • 顧客の知識経験財産の状況および金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘
  • 顧客情報の不適切な取扱い
  • 公益に反する業務運営