最終更新日: 2024-03-13

成年後見制度

 
成年後見制度のイメージ
 

成年後見制度とは

 
成年後見制度とは、知的障害、精神障害、認知症等により、事理を弁識する能力が不十分であり、契約締結等の法律行為を行うことが困難な人に対して、家庭裁判所に申立てをして、本人の権利を守る援護者を選ぶことで、本人を法律的に支援する制度のことです。
 
成年後見制度には、法定後見制度任意後見制度があります。


法定後見制度

 
法定後見制度には、後見保佐補助の3種類があり、与えられる権限や職務の範囲が異なります。
 

 

後見

保佐

補助

意義

事理を弁識する能力が欠く常況にある者

事理を弁識する能力が著しく不十分な人

事理を弁識する能力が不十分な人

対象者

成年被後見人

被保佐人

被補助人

保護者 ※1

成年後見人

保佐人

補助人

申立者

本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、検察官、市町村長等

本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人、検察官、市町村長等

本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、検察官、市町村長等

保護者の権限

代理権
追認権
取消権

同意権
代理権 ※2
追認権
取消権

同意権 ※3
代理権 ※3
追認権
取消権

※1:保護者となる成年後見人、保佐人、補助人は複数人でもよく、また法人も認められます。
※2:代理権は当然に付与されるものではなく、一定の者の請求により、保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができます。なお、請求者が被保佐人本人でない場合、被保佐人本人の同意が必要になります。
※3:同意権、代理権は当然に付与されるものではなく、一定の者の請求により補助人に同意権、代理権を付与する旨の審判をすることができます。なお、請求者が被補助人本人でない場合、被補助人本人の同意が必要になります。

 
法定後見制度において、本人の同意が必要かどうかについては、下表のとおりです。
 

 

後見

保佐

補助

開始手続き

不要

不要

必要

同意権・取消権

不要

不要

必要

代理権

不要

必要

必要

 
法定後見は、本人の住民票上の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行うことで開始します。
申立てができる人は、本人、配偶者、4親等内の親族等のほか、身寄りのない人や親族の協力が得られない人等の福祉の観点から検察官や市町村長も行うことができます。
申立ての際は、成年後見人の候補者の希望を裁判所に伝えることができます。
ただし、本人に法律上または生活面での課題や、本人の財産管理が複雑困難といった事情が判明している場合には、弁護士や司法書士等の専門職が成年後見人に選任されることがあります。
また、希望どおりに親族後見となった場合でも、家庭裁判所の裁量で後見監督人を専任することがあります。

成年被後見人

 
成年被後見人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた者のことです。
 
成年被後見人が単独で行った法律行為は、原則として取り消すことができます。
ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、成年被後見人は単独で行うことができます。
 
日用品の購入その他日常生活に関する行為とは、次のようなことが該当します。
 

  1. 食料品、日用品の購入
  2. 水道光熱費の支払い
  3. 家賃・地代の支払い
  4. 介護サービス利用料金の支払い
  5. 医療費の支払い
  6. 電車・バスの乗車
  7. 嗜好品の購入
  8. 書籍・趣味への支払い
  9. 家族(孫等)への小遣い
  10. 年金の管理・処分
  11. 上記1〜9のための預貯金の払出し

 
上記については、成年被後見人になる前の生活習慣や生活水準、資産状況を配慮して、日常生活に関することかどうかを判断します。
 
後見開始の審判がなされると、家庭裁判所は、職権で、成年被後見人の保護者となる成年後見人を選任します。
成年後見人には、代理権取消権追認権が認められます。

被保佐人

 
被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者で、家庭裁判所から保佐開始の審判を受けた者のことです。
 
被保佐人は、原則として単独で有効な法律行為をすることができます。
ただし、次のような財産上重要な行為をするためには、保佐人の同意が必要です。
 

  1. 元本を領収し、または利用すること
  2. 借財または保証をすること
  3. 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること
  4. 訴訟行為をすること
  5. 贈与、和解または仲裁合意をすること
  6. 相続の承認もしくは放棄または遺産の分割をすること
  7. 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、または負担付贈与を承認すること
  8. 新築、改築、増築または大修繕をすること
  9. 民法602条に定める期間を超える賃貸借をすること
  10. 上記1〜9に掲げる行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること
  11. 家庭裁判所が、特別の審判により、保佐人の同意を要するとした事項

 
なお、被保佐人が保佐人の同意を得ずにした上記の法律行為は、取り消すことができます。
 
保佐開始の審判がなされると、家庭裁判所は、職権で、被保佐人の保護者となる保佐人を選任します。
保佐人には、代理権同意権取消権追認権が認められます。
ただし、代理権は当然に付与されるものではなく、一定の者の請求により、保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができます。
なお、請求者が被保佐人本人でない場合、被保佐人本人の同意が必要になります。

被補助人

 
被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者で、家庭裁判所から補助開始の審判を受けた者のことです。
 
被補助人は、原則として単独で有効な法律行為をすることができます。
ただし、次のような財産上重要な行為をするものの中から、家庭裁判所が定めた特定の一部の行為については、補助人の同意を必要とすることができます。
 

  1. 元本を領収し、または利用すること
  2. 借財または保証をすること
  3. 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること
  4. 訴訟行為をすること
  5. 贈与、和解または仲裁合意をすること
  6. 相続の承認もしくは放棄または遺産の分割をすること
  7. 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、または負担付贈与を承認すること
  8. 新築、改築、増築または大修繕をすること
  9. 民法602条に定める期間を超える賃貸借をすること
  10. 上記1〜9に掲げる行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること
  11. 家庭裁判所が、特別の審判により、保佐人の同意を要するとした事項

 
なお、被補助人が補助人の同意を得ずにした上記の中から家庭裁判所が定めた特定の一部の法律行為は、取り消すことができます。
 
補助開始の審判がなされると、家庭裁判所は、職権で、被補助人の保護者となる補助人を選任します。
補助人には、代理権同意権取消権追認権が認められます。
ただし、代理権は当然に付与されるものではなく、一定の者の請求により、補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができます。
なお、請求者が被補助人本人でない場合、被補助人本人の同意が必要になります。


任意後見制度

 
任意後見制度とは、将来、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分となったときに備えて、本人が事理を弁識する能力があるうちに、任意後見人を選任し、後見事務処理を委託する制度のことです。
 
任意後見人には同意権取消権はなく、契約時に当事者間で合意した特定の法律行為の代理権によって被後見人を支援することができます。

任意後見契約の手続き

 
任意後見契約の手続きは、次のとおりです。
 

  1. 任意後見受任者と委任内容の検討
    将来、事理を弁識する能力が不十分になったときにどのような生活を送りたいか、誰にどのような支援を受けたいかを検討し、本人と任意後見受任者との話し合いにより、委任する内容を決める。

  2. 任意後見契約
    本人と任意後見受任者が一緒に公証役場で、公正証書による任意後見契約を結びます。
    公証人の職権で法務局に登記されます。

  3. 任意後見監督人の申立て
    その後、本人の事理を弁識する能力が低下し、任意後見制度を利用する必要が生じた場合、本人の住所地の家庭裁判所任意後見監督人の選任を申し立てます。
    申立権者は、本人、配偶者、4親等内の親族、任意後見受任者となります。

  4. 任意後見開始
    家庭裁判所による調査や審問等の手続きが行われ、任意後見監督人が選任されます。
    任意後見監督人が選任され、任意後見受任者が任意後見人となり、任意後見が開始されます。
    登記事項には、任意後見監督人の住所・氏名等が追記されます。

 
任意後見監督人とは、任意後見人が委任された内容の事務を行っているかどうかを監督する人のことです。
任意後見監督人には、弁護士、司法書士、社会福祉士、税理士等の専門職や法律、福祉に関わる法人等、第三者が選ばれるのが一般的です。
任意後見受任者本人、配偶者、直系血族、兄弟姉妹は、任意後見監督人になることはできません。
また、未成年者、本人に対して訴訟をし、または、訴訟をした人、破産者で復権していない人等も任意後見監督人になることはできません。

任意後見契約の終了

 
任意後見契約は、次の理由によって終了します。
 
任意後見契約の解除
任意後見監督人が選任される前は、公証人の認証を受けた書面によっていつでも契約を解除することができます。
合意解除の場合には、合意解除書に認証を受ければすぐに解除の効力が発生します。
当事者の一方からの解除の場合は、解除の意思表示のなされた書面に認証を受け、これを相手方に送付してその旨を通告します。
任意後見監督人が選任された後は、正当な理由があるときに限り、かつ、家庭裁判所の許可を受けて、契約を解除することができます。
 
任意後見人の解任
任意後見人に財産の使い込み等の不正行為があって、任務に適しない事由が認められるときは、家庭裁判所は、本人、親族、任意後見監督人の請求により、任意後見人を解任することができます。
 
法定後見(後見、補佐、補助)の開始
任意後見監督人が選任され、任意後見が開始した後に、法定後見開始の審判がされた場合は、任意後見が終了します。
任意後見契約が登記されている場合には、任意後見契約を選択した本人の自己決定権を尊重することとなっていますが、本人の利益のために特に必要があると認められる場合には、家庭裁判所は法定後見開始の審判がすることができます。
 
本人や任意後見人の死亡、破産
本人が死亡したときは、任意後見契約は終了します。
また、任意後見人が死亡したとき、破産手続き開始の決定を受けたときも任意後見契約は終了します。
 
任意後見契約が終了すると、後見終了の登記をする必要があります。
また、任意後見人の解任の場合は、裁判所が登記を嘱託するため手続きは必要ありません。


成年後見登記制度

 
成年後見登記制度とは、成年後見人等の権限や任意後見契約の内容等を登記官がコンピュータ・システムを用いて登記し、登記官が登記事項を証明した登記事項証明書を交付することによって登記情報を開示する制度のことです。
 
登記事項証明書の交付請求できる人は、成年被後見人、成年後見人、成年後見監督人等の当事者、成年被後見人等本人の4親等内の親族、委任を受けた代理人等、一定の人に限定されています。