宅地の評価
最終更新日: 2025-12-27

相続や贈与における宅地の評価について

 
相続財産や贈与財産の価額を算定する際、宅地は登記上の「1筆」単位ではなく、実際の利用単位である「1区画(=1画地)」ごとに評価します。
所有する宅地に、自用部分のほか、借地権や借家権を設定している部分がある場合には、それぞれを独立した1画地として評価します。


宅地の評価方式について

 
宅地の評価には、路線価方式倍率方式の2種類があります。
市街地に所在する宅地は路線価方式で評価し、それ以外の宅地は倍率方式で評価します。


路線価方式について

 
路線価方式とは、宅地が接する路線ごとに定められた路線価に基づき、評価額を算定する方法です。
路線価は、国税局が毎年1月1日時点で、1㎡あたりの評価額を定めます。
以下に、路線価方式の計算方法を具体例を用いて説明します。

一方のみが道路に面している宅地の場合

 
下図のように、一方のみが道路に面している宅地の評価額について説明します。
 

一方のみが道路に面している宅地

 
図中の「200C」の「200」は道路ごとに定められた路線価を示します。
単位は千円であるため、この場合の路線価は200,000円/㎡です。
「C」は借地権割合を表す記号で、借地権が設定されている場合、通常の土地と同様に利用できないため、宅地の評価額は低くなります。
借地権割合は、下表のとおり7段階に区分されています。

 

記号

借地権割合

A

90%

B

80%

C

70%

D

60%

E

50%

F

40%

G

30%

 
また、宅地は道路から奥行きが長いほど評価が低くなるため、奥行価格補正率を用いて補正します。
 
一方のみが道路に面している宅地の評価額は、以下の式で算出されます。
 

自用地の評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 面積

 
この例での評価額は、以下のとおりです。
 

200,000円/㎡ × 0.98 × 600㎡ = 117,600,000円

正面と側面が道路に面している宅地の場合 

 
下図のように、正面と側面が道路に面している宅地の評価額について説明します。
 

正面と側面が道路に面している宅地

 
この場合、側方路線に接していることによる宅地の価値の増加を考慮し、側方路線影響加算率を用いて評価額を補正します。
 
正面と側面が道路に面している宅地の評価額は、以下の式で算出されます。
 

自用地の評価額 = { ( 正面路線価 × 奥行価格補正率 ) + ( 側方路線価 × 奥行価格補正率 × 側方路線影響加算率 ) } × 面積

 
正面路線価と側方路線価の判定は「路線価 × 奥行価格補正率」の値を比較し、大きい方を正面路線価とします。
 
この例では、
 

200,000円/㎡ × 1 = 200,000円/㎡
300,000円/㎡ × 0.98 = 294,000円/㎡

 
となるため、300Cの道路の路線価が正面路線価となります。
 
この例での評価額は、以下のとおりです。
 

{ ( 300,000円/㎡ × 0.98 ) + ( 200,000円/㎡ × 1 × 0.03 ) } × 600㎡ = 180,000,000円

正面と裏面が道路に面している宅地の場合

 
下図のように、正面と裏面が道路に面している宅地の評価額について説明します。
 

正面と裏面が道路に面している宅地

 
この場合、両側の道路に接していることによる宅地の価値の増加を考慮し、二方路線影響加算率を用いて評価額を補正します。
 
正面と裏面が道路に面している宅地の評価額は、以下の式で算出されます。
 

自用地の評価額 = { ( 正面路線価 × 奥行価格補正率 ) + ( 裏面路線価 × 奥行価格補正率 × 二方路線影響加算率 ) } × 面積

 
正面路線価と裏面路線価の判定は「路線価 × 奥行価格補正率」の値を比較し、大きい方を正面路線価とします。
 
この例では、
 

200,000円/㎡ × 0.98 = 196,000円/㎡
300,000円/㎡ × 0.98 = 294,000円/㎡

 
となるため、300Cの道路の路線価が正面路線価となります。
 
この例での評価額は、以下のとおりです。
 

{ ( 300,000円/㎡ × 0.98 ) + ( 200,000円/㎡ × 0.98 × 0.02 ) } × 600㎡ = 178,752,000円

不整形地や崖地の宅地の場合

 
路線価方式で評価する宅地が不整形地の場合、整形地に比べて経済的価値が低下するため、不整形地補正率を用いて評価額を補正します。また、崖地などの場合も、崖地補正率などの各種補正率を適用し、評価額を調整します。


倍率方式について

 
倍率方式とは、宅地の固定資産税評価額に、国税局長が地域ごとに定めた倍率を乗じて算定した金額により、宅地の価額を評価する方法です。
この倍率は、路線価が設定されていない地域の宅地を評価するために国税局長が定めた割合であり、国税庁のウェブサイトに掲載されている評価倍率表で確認できます。
固定資産税評価額には、宅地の面積や形状などの個別事情が考慮されているため、路線価方式のような宅地の形状などによる補正は不要です。
倍率方式による宅地の評価額は、以下の式で算出されます。
 

自用地の評価額 = 固定資産税評価額 × 国税局長が定める倍率


宅地の分類と評価について

 
宅地は利用形態によって分類され、評価額が異なります。 
主な分類は自用地借地権貸宅地貸家建付地の4種類で、借地権と貸家建付地が組み合わさった貸家建付借地権も含めると5種類です。

自用地

 
自用地とは、土地の所有者が自己のために使用している宅地です。
評価額は、路線価方式または倍率方式で算定します。
残りの4種類の宅地は、この自用地評価額を基準に計算します。

借地権

 
借地権とは、Aさんの土地をBさんが借りている場合の、Bさんの権利です。
評価額は、以下の式で算出されます。
 

借地権評価額 = 自用地評価額 × 借地権割合

貸宅地

 
貸宅地とは、Aさんの土地をBさんに貸している場合の、Aさんの宅地です。
評価額は、以下の式で算出されます。
 

貸宅地評価額 = 自用地評価額 × ( 1 − 借地権割合)

貸家建付地

 
貸家建付地とは、Aさんが自己の土地にアパートや貸家を建て、賃貸している場合の、Aさんの宅地です。
評価額は、以下の式で算出されます。
 

貸家建付地評価額 = 自用地評価額 × ( 1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合 )
※借家権割合とは、家を借りる権利の割合で、一律30%です。
※賃貸割合とは、全体のうち賃貸されている割合です(例:10室あるアパートで5室埋まっていれば50%)。

貸家建付借地権

 
借地権と貸家建付地が組み合わさったケースです。
Aさんの土地をBさんが借り、その土地にBさんがアパート等を建てて賃貸している場合の、Bさんの権利です。
評価額は、以下の式で算出されます。
 

貸家建付借地権評価額 = 自用地評価額 × 借地権割合 × ( 1 − 借家権割合 × 賃貸割合 )

宅地の分類と評価のまとめ

 

分類

使用形態

評価額の算定方法

自用地

自分の宅地

路線価方式または倍率方式で算定

借地権

借りている宅地

自用地評価額 × 借地権割合

貸宅地

他人に貸している宅地

自用地評価額 × ( 1 − 借地権割合 )

貸家建付地

アパートや貸家等を建てて貸している宅地

自用地評価額 × ( 1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合 )

貸家建付借地権

借りた土地にアパート等を建てて貸している宅地

自用地評価額 × 借地権割合 × ( 1 − 借家権割合 × 賃貸割合 )


土地の使用貸借について

 
土地の使用貸借とは、土地を無償で貸し借りすることをいいます。
例えば、親が子に無償で土地を貸し、子がその土地に家を建てる場合です。
この場合、貸主の土地の評価額は自用地としての評価額となります。
一方、借主の土地使用権の評価額は無償で使用しているため0円です。


私道の評価について

 
宅地を評価する際、その宅地に隣接する私道を別途評価する必要が生じる場合があります。
私道の評価は、利用者の範囲によって以下のとおり分類されます。
 

私道の利用者

評価額

不特定多数の人

評価しない(0円)

特定の人

自用地評価額の30%

所有者のみ

自用地としての評価額


家屋の評価について

 
家屋は、原則として1棟ごとに評価します。

自用家屋(居住用・店舗用など)

 
自用家屋とは、自己の居住や店舗などに使用している家屋です。
評価額は、以下の式で算出されます。
 

自用家屋の評価額 = 固定資産税評価額 × 1.0

貸家

 
評価額は、以下の式で算出されます。
 

貸家の評価額 = 自用家屋評価額 × ( 1 − 借家権割合 × 賃貸割合 )

 
家屋と構造上一体となっている構造物や設備は、家屋の価額に含めて評価します。
それ以外の構造物は、取得から課税までの期間に応じた償却費または減価額を再建築価額から控除し、70%を乗じた価額で評価します。
また、建築中の家屋は、費用現価の70%相当額で評価します。


小規模宅地等に関する相続税の課税価格の特例について

 
この特例は、被相続人等が事業または居住のために使用していた建物や構築物のある宅地等を、相続または遺贈により取得し、申告期限まで引き続き所有し、かつ事業または居住を継続した場合に、一定の評価減を認める制度です。
 

宅地の利用区分ごとの限度面積と減額割合

 

利用区分

限度面積

減額割合

居住用

特定居住用宅地等

330㎡ 80%

事業用

特定事業用宅地等

400㎡

80%

特定同族会社事業用宅地等

400㎡

80%

貸付事業用

貸付事業用宅地等

200㎡

50%

 
宅地の利用区分ごとの限度面積と減額割合は、以下のように覚えましょう!
 

FP検定語呂合わせ暗記_小規模宅地等の評価減の特例

 

複数の宅地を保有する場合の限度面積の計算方法

 
特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等、特定居住用宅地等、貸付事業用宅地等を併せて保有する場合、限度面積は以下の式で算出されます。
 
貸付事業用宅地等がない場合
 

A + B ≦ 730㎡
A:特定事業用宅地等・特定同族事業用宅地等の適用面積
B:特定居住用宅地等の適用面積

 
貸付事業用宅地等がある場合
 

貸付事業用宅地等がある場合の計算式

A:特定事業用宅地等・特定同族事業用宅地等の適用面積
B:特定居住用宅地等の適用面積
C:貸付事業用宅地等の適用面積

特定居住用宅地等の主な適用要件

 

区分

適用要件

被相続人が居住していた宅地等 

被相続人の配偶者が取得した宅地であること。
被相続人と同居していた親族がその宅地等を取得し、相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで所有していること。
配偶者も同居親族もいない場合、相続開始前3年以内に日本国内にある取得者やその配偶者、三親等内の親族、または特別の関係法人が所有する家屋に居住したことがないこと。
相続開始時に、所得者が居住している家屋を、相続開始前に所有していたことがないこと。
その宅地を相続開始時から相続税の申告期限まで所有していること。

被相続人と生計を一にしていた親族が居住していた宅地等

被相続人の配偶者が取得した宅地であること。

被相続人と同居していた親族がその宅地等を取得し、相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで所有していること。

※被相続人が老人ホームに入所していた場合でも、一定の要件を満たせば特例の適用が可能です。

特定事業用宅地等の主な適用要件

 

区分

適用要件

被相続人が事業を営んでいた宅地等 

事業承継要件 その宅地等で営まれていた被相続人の事業を、相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ申告期限まで事業を継続していること。
保有継続要件 その宅地等を相続税の申告期限まで所有していること。

被相続人と生計を一にしていた親族が事業を営んでいた宅地等

事業継続要件

相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等で事業を営んでいること。

保有継続要件

その宅地等を相続税の申告期限まで所有していること。

相続開始前3年以内に事業のために使用された宅地等は、一定の場合を除き、この特例を適用できません。

特定同族会社事業用宅地等の主な適用要件

 

区分

適用要件

一定の法人が事業を営んでいた宅地等 

法人役員要件 相続税の申告期限において、その法人の役員であること。
保有継続要件 その宅地等を相続税の申告期限まで所有していること。

貸付事業用宅地等の主な適用要件

 

区分

適用要件

被相続人が貸付事業を営んでいた宅地等 

事業承継要件 その宅地等に係る被相続人の貸付事業を、相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ申告期限まで貸付事業を継続していること。
保有継続要件 その宅地等を相続税の申告期限まで所有していること。

被相続人と生計を一にしていた親族が貸付事業を営んでいた宅地等

事業継続要件

相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等に係る貸付事業を営んでいること。

保有継続要件

その宅地等を相続税の申告期限まで所有していること。

相続開始前3年以内に貸付事業のために使用された宅地等は、一定の場合を除き、この特例を適用できません。 

この特例によって宅地の評価額から減額される金額は、以下の式で算出されます。