最終更新日: 2024-03-13

配偶者居住権

 
配偶者居住権のイメージ

配偶者居住権とは

 
配偶者居住権とは、相続開始時に被相続人所有の建物に配偶者(被相続人の法律上の配偶者)が居住していた場合、終身または一定期間、その建物を無償で使用および収益をすることができる法定の権利のことです。
 
この権利は、遺産分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判のいずれかによって取得することができます。
被相続人が居住建物を配偶者以外の人と共有していた場合には、配偶者居住権を設定することができません。
 
災害等の理由により居住建物の全部が滅失してしまった場合には、配偶者居住権は消滅します。
 
居住建物の所有者が配偶者よりも先になくなった場合には、居住建物の所有者の相続人が配偶者居住権の目的とされた居住建物等を相続することになります。
相続により居住建物の所有者が変わっても配偶者居住権はそのまま存続します。

配偶者居住権の登記

 
居住建物の所有者は、配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います。
配偶者居住権は、建物に対して登記することにより、第三者に対抗することができます。

配偶者による使用および収益

 
配偶者は、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用および収益をしなければなりません。
 
配偶者居住権は、帰属上の一身専属権であり、その帰属主体は配偶者に限定され、譲渡することはできません。
 
配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、建物の改築もしくは増築をすることはできません。
また、居住建物の所有者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用もしくは収益をさせることができません。
配偶者がこれらの規定に違反した場合、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正を勧告し、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、配偶者居住権を消滅させることができます。

居住建物の修繕

 
配偶者は、居住建物の使用および収益に必要な修繕をすることができます。
居住建物の修繕が必要である場合、配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、居住建物の所有者は、その修繕をすることができます。

配偶者居住権の放棄および合意解除

 
配偶者は、配偶者居住権を放棄することができます。
その場合、居住建物の所有者の「配偶者居住権付き居住建物の所有権」が「完全所有権」となります。
その結果、配偶者居住権が設定されていたときより居住建物の価値が増加し、売却も容易になります。
したがって、無償で放棄した場合には、放棄時の配偶者居住権の価額に相当する利益を、居住建物の所有者が贈与により受けたものとみなされ、贈与税の課税対象となります。
 
また、合意解除によりその時点の配偶者居住権の価額に相当する対価を、居住建物の所有者から配偶者が受けた場合には、配偶者の譲渡所得(総合課税)となり、所得税と住民税の課税対象となります。


配偶者短期居住権

 
配偶者短期居住権とは、配偶者以外の人が、遺言または死因贈与により遺産に属する建物の所有権を取得した場合、配偶者は相続開始のときから遺産分割終了時までの一定期間(最短6か月)に限り、その建物を無償で使用することができる法定の権利のことです。