最終更新日: 2024-03-13

遺言

 
遺言書のイメージ
 

遺言とは

 
遺言とは、一定の方式で表示された個人の意志に、この者の死後、それに即した法的効果を与えるという法技術のことです。
遺言は、本人の最終の真意であることを確認し、また、偽造、変造を防止するため、法令に定める一定の形式に従って行為を行う必要がある要式行為とされています。
したがって、一定の形式に違反する遺言は、無効となります。
遺言は、相手方のいない単独行為であり、承諾なくして効力が生じます。
 
遺言は、15歳以上で意思能力があれば誰でも作成することができます。
ただし、代理は認められません。
 
制限行為能力者が遺言をする場合、法定代理人等の同意は必要ありません。
ただし、成年被後見人は、事理弁識能力を一時回復したときにおいて、医師2人以上の立会いのもとで、単独で遺言することができます。
また、被保佐人、被補助人は、単独で遺言をすることができます。
 
なお、遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができません。
数人が同一の証書で遺言をすると、遺言者の真意があらわれず、また、各自が自由に撤回できなくなるからです。
 
また、複数の遺言が存在する場合には、作成日の新しい遺言が有効となります。
 
なお、遺言者(被相続人)は、遺言により、相続開始の時から5年以内の期間を定めて、遺産の分割を禁止することができます。


遺言の方式

 
遺言の方式には、普通方式と特別方式があります。
普通方式と特別方式の遺言の種類は、下表のとおりです。
 

遺言の方式・種類 内容

普通方式

自筆証書遺言

本人が遺言の全文、日付(年月日)、氏名を自署し、押印する
財産目録は、ページ毎に署名押印をすれば、パソコンでの作成や代筆、通帳のコピー等が認められる
氏名は、姓だけ、通称でも本人確認ができればよい
家庭裁判所の検認が必要であるが、自筆証書遺言保管制度を利用する場合は、検認が不要です

公正証書遺言

原則として本人が遺言内容等を口述し、公証人が筆記する
遺言者および証人に読み聞かせ確認をとる
公証人が方式に従った旨を付記し、本人、公証人、証人が署名押印する
2人以上の証人が必要である
原本の作成、保管は、公証役場となる
家庭裁判所の検認は不要です

秘密証書遺言

本人が遺言書に署名押印の後、遺言書を封じ同じ印で封印する
公証人の前で自己の遺言書の旨と住所氏名を申述する
公証人が日付と本人が述べた内容を筆記する
本人、公証人、証人が署名押印する
2人以上の証人が必要である
原本の作成は、公証役場となる
家庭裁判所の検認が必要です
遺言の存在を明確にし、その内容の秘密を保つことができる
パソコンでの作成や代筆も可能である

特別方式

隔絶地遺言

遺言者が一般社会との交通が断たれた場所におり、普通方式による遺言ができない場合に認められる遺言

危急時遺言

疾病その他の事由によって死期が差し迫った人がする遺言

※印鑑は、公正証書遺言については実印でなければなりませんが、自筆証書遺言と秘密証書遺言については実印のほか認印でもかまいません。
※遺言者の推定相続人および受遺者ならびにこれらの配偶者および直系血族のほか、未成年者、公証人の配偶者、4親等内の親族、書記および使用人は、いずれも証人になることができません。
※検認とは、家庭裁判所が相続人に対し遺言の存在とその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名等の遺言の状態を調査して内容を明確にし、遺言書の変造、偽造を防止するための手続きのことです。遺言の有効、無効を判断しているわけではありません。


遺言の効力

 
遺言の効力が発生するのは、原則として遺言者の死亡のときです。
遺言によって定めることのできる事項は、相続および財産処分に関する事項と身分上の事項に限られます。
 
遺言により法的効力が生ずる主な事項は、次のとおりです。
 

  • 非嫡出子(婚外子)を認知すること
  • 未成年者の後見人等を指定すること
  • 相続分の指定をすること
  • 遺産分割の方法を指定すること
  • 遺産の分割を一定期間禁止すること(最長5年)
  • 相続人相互の担保責任の変更をすること
  • 特別受益持戻しの免除をすること
  • 相続人の廃除およびその取消しをすること
  • 祭祀等の承継者を指定すること
  • 遺言執行者を指定すること
  • 遺贈すること
  • 寄附行為をすること
  • 信託の設定をすること
  • 遺留分侵害額請求の順序を指定すること

遺贈

 
遺贈とは、遺言によって自らの財産を無償で他人に与えることです。
遺言によって財産を与える人を遺贈者といい、その財産を受け取る人を受遺者といいます。 
胎児は、遺贈については、すでに生まれたものとみなされるので、胎児を受遺者とする遺贈も有効です。


遺贈の種類

 
遺贈には、包括遺贈特定遺贈があります。
 
包括遺贈とは、遺言者の遺産の全部または一部を一定の割合で示してする遺贈のことです。 
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するとされるため、相続と同様に遺贈の承認または放棄が認められます。
包括受遺者が遺贈を放棄する場合には、自己のために包括遺贈があったことを知ったときから3か月以内に放棄する必要があります。
 
特定遺贈とは、遺言者の遺産に属する特定の具体的な財産的利益の遺贈のことです。
特定遺贈の受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができます。
 
包括遺贈と特定遺贈の違いは、下表のとおりです。
 

 

包括遺贈

特定遺贈

遺贈形態

遺産の全部または一部を一定の割合で示して遺贈する

特定の具体的な財産的利益を遺贈する

放棄

相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ申述する
承認放棄がない場合は、承認したものとみなす

いつでも放棄できる
ただし、遺贈義務者、利害関係者等から催告を受けた場合は、その期間内に決定する
回答がない場合は、承認したものとみなす

地位

相続人と同一の権利義務を有する

受遺者

分割協議

遺産分割協議に参加する義務がある

相続人でない場合は、参加できない

債務の負担

包括割合で負担、債務控除可

なし

受遺者が以前死亡したとき

受遺者の相続人には遺贈は引き継がれない(遺贈は消滅し、受遺者の相続人に代襲はない)

遺留分

なし


遺言の撤回

 
遺言者の最終意思を確保するため、遺言は、いつでも、遺言の方式に従って、全部または一部撤回することができます。
 
ただし、遺言者は、遺言を撤回する権利を放棄することができません。
 
また、遺言者が遺言の趣旨と抵触する行為をした場合、当該遺言は、本人の最終意思を反映したものとは考えられないので、抵触した部分は、撤回したものとみなされます。
 
遺言の趣旨と抵触する行為の具体的な例は、次のとおりです。
 

  • 前の遺言が後の遺言と抵触する場合
  • 遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合
  • 遺言者が故意に遺言書を破棄した場合
  • 遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した場合