確定拠出年金
最終更新日: 2025-07-17

確定拠出年金とは

 
確定拠出年金とは、拠出された掛金が個人ごとに明確に区分され、加入者個人が自己責任のもと掛金を運用し、掛金とその運用収益との合計額を基に年金給付額が決定する年金制度のことです。確定拠出年金には、掛金を原則として事業主が拠出する企業型と加入者自身が拠出する個人型の2種類があります。なお、個人型確定拠出年金は、iDeCoイデコ)の愛称で知られています。


確定拠出年金の加入対象者

 

確定拠出年金

加入対象者

備 考

企業型

実施企業に勤務する従業員

個人型

国民年金の第1号被保険者

農業者年金の被保険者、国民年金の保険料免除者を除く。

国民年金の第2号被保険者 ・公務員や私立学校教職員共済制度の加入者を含む
・企業年金加入者においては、以下の全てにあてはまる場合に限る。
①iDeCoの掛金額が、企業型DCの事業主掛金額と他制度(確定給付企業年金、厚生年金基金、石炭鉱業年金基金、私立学校教職員共済制度)の掛金相当額と合算して各月の拠出限度額を超えていない。
②企業型・個人型確定拠出年金の掛金が各月拠出である。
③企業型確定拠出年金の加入者掛金を拠出していない。

国民年金の第3号被保険者

国民年金の任意加入被保険者

・60歳以上65歳未満で、国民年金の保険料の納付済期間が480月に達していない者。
・20歳以上65歳未満の海外居住者で、国民年金の保険料の納付済期間が480月に達していない者。


確定拠出年金の掛金

 

企業型確定拠出年金の掛金

 
企業型確定拠出年金の掛金は、原則として事業主が拠出します。なお、企業型年金規約に定めた場合は、加入者が一定の範囲内で事業主掛金に上乗せして拠出できます。ただし、掛金額は、次の2つの要件を満たす必要があります。
 

  • 事業主掛金の額と企業型年金加入者掛金の額の合計が拠出限度額の範囲内であること
  • 企業型年金加入者掛金の額が事業主掛金の額を超えないこと

 

個人型確定拠出年金の掛金

 
個人型確定拠出年金の掛金は、加入者が拠出します。毎月の掛金は5,000円以上1,000円単位で設定することができます。
 

確定拠出年金の拠出限度額

 

確定拠出年金

条 件

掛金の拠出限度額

企業型

企業型確定拠出年金のみに加入

年額660,000円(月額55,000円)

確定給付企業年金や個人型確定拠出年金を併用

年額660,000円(月額55,000円 − 他制度掛金相当額)

個人型

国民年金の第1号被保険者・任意加入被保険者

年額816,000円(月額68,000円)

厚生年金保険の被保険者で、企業型確定拠出年金や他制度 (※) のいずれにも未加入

年額276,000円(月額23,000円)

厚生年金保険の被保険者で、企業型確定拠出年金と他制度 (※) に加入

年額240,000円(月額20,000円)

厚生年金保険の被保険者で、企業型確定拠出年金のみに加入

厚生年金保険の被保険者で、他制度 (※) のみに加入(公務員を含む)

国民年金の第3号被保険者

年額276,000円(月額23,000円)

※他制度には、確定給付企業年金のほか、厚生年金基金、私立学校教職員共済制度、石炭鉱業年金基金を含みます。


iDeCo+

 
iDeCo+(イデコプラス)とは、正式には中小事業主掛金納付制度といい、
企業型確定拠出年金、確定給付企業年金及び厚生年金基金を実施していない中小企業の事業主が、従業員の老後の所得確保を支援できるよう、iDeCoに加入している公的年金の厚生年金被保険者である従業員が拠出するiDeCoの掛金に上乗せして、事業主が掛金を拠出する制度のことです。
 

事業主の要件

 

  • 企業型確定拠出年金、確定給付企業年金及び厚生年金基金を実施していない、従業員が300人以下の中小企業の事業主であること
  • 事業主が複数の事業所を経営している場合、全ての事業所の従業員の合計が300人以下であること
  • iDeCo+を導入する際は、あらかじめ事業主払込用の登録事業所番号を取得しておくこと

 

対象となる従業員

 

  • iDeCoに加入している従業員のうち、事業主掛金を上乗せして拠出されることに同意した者

 

掛金について

 

  • 加入者掛金と事業主掛金の合計額月額5,000円以上23,000円以下の範囲で、加入者と事業主がそれぞれ1,000円単位で決定できます
  • 事業主掛金の額は、基本的に、拠出対象者全員が同額となるように決定します
  • iDeCoに加入していない従業員に対して、iDeCoへの加入を強制したり、事業主掛金のみを拠出したりすることはできません
  • 加入者掛金を0円とすることはできませんが、事業主掛金が加入者掛金を上回ることはできます
  • 加入者掛金と事業主掛金を、事業主がとりまとめて納付します

確定拠出年金の運用

 
確定拠出年金の運用商品は、加入手続きした運用管理機関(金融機関等)が選定・提示します。運用管理機関ごとに特色のある運用商品を揃えているので、加入者又は運用指図者の判断で運用商品を選択します。
運用商品には、元本確保商品(定期預金、保険商品等)のほかに、投資信託(国内株式、外国株式、国内債券、外国債券、バランス型等)のような元本変動商品もあります。運営管理機関は、必ず3以上(簡易企業型年金においては2以上)35以下の商品を選択肢として選定し、加入者等に提示することとなっています。加入者等は、複数の運用商品を選ぶこともでき、運用の途中で運用商品を変更することもできます。


確定拠出年金の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)

 
確定給付企業年金、企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金、通算企業年金、中小企業退職金共済では、加入者等が離転職した場合や、勤務先の年金・退職金共済制度が変わった場合に、その積み立てた資産を他の年金制度へ持ち運べる場合があります。これをポータビリティといいます。
 

私的年金制度における年金資産のポータビリティ

 

 

離転職先で導入している制度・資産移管先の制度

確定給付企業年金

企業型確定拠出年金

個人型確定拠出年金

通算企業年金

中小企業退職金共済

離転職前に加入していた制度等

確定給付企業年金


(※2)


(※1 ※3)


(※1 ※2)


(※1)

企業型確定拠出年金


(※2)


(※3)

個人型確定拠出年金


(※2)

× ×

通算企業年金


(※2)

×

中小企業退職金共済


(※2 ※3)


(※3)

× ×

◯:個人の申出により移換
△:事業主の手続きにより移換
ー:対象外
×:移換不可
※1 離転職前等に加入していた規約の定めによる
※2 離転職先等で導入している規約の定めによる
※3 合併等の場合に限る


確定拠出年金の給付

 
確定拠出年金の給付には、老齢給付金障害給付金死亡一時金脱退一時金があります。 
 

老齢給付金

 
老齢給付金は、60歳までの通算加入者等期間10年以上ある場合は、60歳から受給できます。ただし、60歳時点で確定拠出年金の通算加入者等期間10年に満たない場合は、支給開始年齢が下表のとおり段階的に先延ばしになります。
 

通算加入者等期間

支給開始年齢

10年以上

60歳

8年以上10年未満

 61歳 

6年以上8年未満

62歳

4年以上6年未満

63歳

2年以上4年未満

64歳

1月以上2年未満

65歳

 
老齢給付金は、受給権者本人の選択により、5年以上20年以下の有期又は終身年金として給付されます。なお、規約の規定により一時金としての給付を選択することもできます。
 

障害給付金

 
障害給付金は、75歳到達前傷病によって一定以上の障害状態になった加入者等が、傷病の状態で1年6か月を経過した場合に受給することができます。
障害給付金は、受給権者本人の選択により、5年以上20年以下の有期又は終身年金として給付されます。なお、規約の規定により一時金としての給付を選択することもできます。
 

死亡一時金

 
加入者等が死亡した場合に、その遺族資産残高死亡一時金として受給することができます。
 

脱退一時金

 
例外として、以下の3つのケースの場合に、60歳未満資産脱退一時金として受給することができます。
 

  • 企業型確定拠出年金加入者の資格を喪失した後に企業型記録関連運営管理機関に請求するケース(個人別管理資産額が15,000円以下の場合)で、以下のすべての要件に該当する者
    1. 企業型及び個人型確定拠出年金の加入者及び運用指図者でないこと
    2. 資産額が15,000円以下であること
    3. 最後に企業型確定拠出年金加入者の資格を喪失してから6か月を経過していないこと

  • 企業型確定拠出年金加入者の資格を喪失した後に企業型記録関連運営管理機関に請求するケース。(個人別管理資産額が15,000円を超える場合)で、以下のすべての要件に該当する者
    1. 企業型及び個人型確定拠出年金の加入者及び運用指図者でないこと
    2. 最後に企業型確定拠出年金加入者の資格を喪失してから6か月を経過していないこと
    3. 60歳未満であること
    4. 個人型確定拠出年金に加入できない者であること
    5. 日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でないこと
    6. 障害給付金の受給権者でないこと
    7. 企業型及び個人型確定拠出年金加入者として掛金を拠出した期間が5年以下であること、又は、個人別管理資産額が25万円以下であること

  • 個人型記録関連運営管理機関又は国民年金基金連合会に請求するケースで、以下のすべての要件に該当する者
    1. 60歳未満であること
    2. 企業型確定拠出年金加入者でないこと
    3. 個人型確定拠出年金に加入できない者であること
    4. 日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でないこと
    5. 障害給付金の受給権者でないこと
    6. 企業型及び個人型確定拠出年金加入者として掛金を拠出した期間が5年以下であること、又は、個人別管理資産額が25万円以下であること
    7. 最後に企業型又は個人型確定拠出年金加入者の資格を喪失した日から起算して2年を経過していないこと

確定拠出年金の税法上の取扱い

 
確定拠出年金の税法上の取扱いは、下表のとおりです。
 

 

企業型確定拠出年金

個人型確定拠出年金

拠出時

非課税
事業主が拠出した掛金は、全額損金算入
加入者が拠出した掛金は、全額所得控除小規模企業共済等掛金控除

非課税
加入者が拠出した掛金は、全額所得控除小規模企業共済等掛金控除
iDeCo+を利用し、事業主が拠出した掛金は、全額損金算入

運用時

・運用中の運用益は、非課税
・積立金は、特別法人税課税(現在、課税は停止されています)

給付時

年金として受給する場合、雑所得となり、公的年金等控除の対象
一時金として受給する場合、退職所得となり、退職所得控除の対象

 
また、老齢給付金以外の給付は、次のとおりです。
 

  • 障害給付金は、非課税です。
  • 死亡一時金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。
  • 脱退一時金は、原則として一時所得として課税対象となります。