中小企業の資金計画
最終更新日: 2024-10-12

財務状況の把握

 
財務諸表から得られる財務データを分析することにより、企業の財務状況の把握を行うことができます。
財務諸表には、貸借対照表損益計算書キャッシュフロー計算書株主資本等変動計算書等があります。


貸借対照表

 
貸借対照表とは、決算日等の一定時点における企業の財産や債務を一覧表にまとめ、企業の財務状況を表したものです。
表の左側には、1年以内に現金化する資産(流動資産)と、1年超で現金化する資産(固定資産)が記述され、表の右側には、1年以内に返済期限が到来する負債(流動負債)、1年超で返済期限が到来する負債(固定負債)と、会社の元手である資本金や経営活動によって生じた剰余金である株主資本が記述されます。


損益計算書

 
損益計算書とは、一定期間における収益と費用の差額から利益を計算した書類のことで、企業の経営成績を表したものです。
 
損益計算書には、次の項目が記述されます。
 

  • 売上高
  • 売上原価
  • 売上総利益(= 売上高 − 売上原価)
  • 販売費及び一般管理費
  • 営業利益(= 売上総利益 − 販売及び一般管理費)
  • 営業外収益
  • 営業外費用
  • 経常利益(= 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用)
  • 特別利益
  • 特別損失
  • 税引前当期純利益(= 経常利益 + 特別利益 − 特別損失)
  • 法人税等
  • 当期純利益(= 税引前当期純利益 − 法人税等)

キャッシュフロー計算書

 
キャッシュフロー計算書とは、資金の流入と流出を表す財務諸表のことです。
 
キャッシュフロー計算書は、
 

  • 営業活動によるキャッシュフロー
  • 投資活動によるキャッシュフロー
  • 財務活動によるキャッシュフロー

 
の3区分によって構成されています。
 
なお、キャッシュフロー計算書は、金融商品取引法に基づき、有価証券報告書提出企業に対してのみ作成および開示が義務付けられています。


株主資本等変動計算書

 
株主資本等変動計算書とは、純資産の部の変動状況を表す財務諸表のことです。


資金運用表

 
資金運用表とは、2つの時点の貸借対照表の残高の増減を比較することにより、資本の運用と調達の状況を分析する資金表のことです。
年次・月次等、一定期間の資金の運用と調達の結果を把握したり、検討したりすることができます。


資金繰り表

 
資金繰り表とは、一定期間の現金収入と現金支出をとらえて、実際の現金の収支を総合的に表したものです。
日次、週次、月次等の期間で、過去の資金の動きを把握するほか、将来の資金の動きを予想するために作成されます。


資金調達の方法

 
企業は、経営活動のためにさまざまな資金を必要とします。
資金需要には、その必要とする資金の源泉に応じて、運転資金と設備資金の2種類があります。
これらの資金の調達には、次のような方法があります。

自己資金

 
自己資金とは、企業内部で獲得した資金のことです。
 
自己資金の額は、次の式で計算します。
 

自己資金 = 留保利益 + 減価償却費 = ( 税引前当期純利益 − 法人税等 − 配当金 ) + 減価償却費

直接金融

 
直接金融とは、借り手が資金の提供者である貸し手から直接調達する方法のことです。
直接金融による資金調達の主な方法は、下表のとおりです。
 

株主割当

新株の発行に際して、その新株を取得できる権利(新株予約権)を既存の株主に与える増資形態

第三者割当増資

新株を取得できる権利を既存の株主であるか否かに関係なく、企業の取引先や関係銀行あるいは役職員等、会社に何らかの関係のある特定の第三者に与える贈与形態
特定の取引先との関係強化や資本提携、経営が不振な会社の再建方法として利用

公募増資

新株の発行にあたり、不特定多数の投資家から応募を募る増資形態
株式公開会社が資金調達を行う場合、主流となっている方法

私募債の発行

金融機関や取引先等の特定の投資家を引受けの対象として社債を発行し、資金調達を行う方法
私募債には、金融機関等の適格機関投資家を引受先とするプロ私募と、企業の取引先や親族等の縁故者等、少数(50人未満)の投資家を引受先とする少人数私募債がある
私募債は無担保でも発行することができる

公募債の発行

特定の投資家を対象とした私募債に対し、不特定多数の投資家を対象として社債を発行し、資金調達を行う方法

間接金融

 
間接金融とは、金融機関等からの借入れによって資金を調達する方法のことです。
間接金融による資金調達の主な方法は、下表のとおりです。
 

手形貸付

借用証書としての約束手形を金融機関に差し入れ、融資を受ける方法

証書貸付

借用証書である金銭消費貸借契約証書を差し入れ、融資を受ける方法

当座貸越

企業が振り出した手形や小切手が金融機関に支払いのために呈示された場合に、当座預金の残高が不足していても金融機関がその支払いに応じる融資形態

インパクトローン

外貨建てで融資を受ける方法

デリバティブローン

スワップ、オプション、先物等のデリバティブ取引をさまざまな形態で組み入れた借入れ方法

ABL(動産・債権担保融資)

企業が保有する在庫や売掛金等、流動性の高い資産を担保として融資を受ける方法

その他の資金調達方法

 
その他の資金調達の主な方法は、下表のとおりです。
 

リース

リース会社が機械設備等を購入し、それを必要とする企業に対して賃貸する取引

ファクタリング

企業が売掛債権を金融機関等に売却し、その金融機関等が債権の回収を代行する方法