最終更新日: 2024-03-13

労働者災害補償保険(労災保険)

 
労災保険のイメージ

労働者災害補償保険(労災保険)とは

 
労働者災害補償保険(労災保険)とは、労働者の業務上または通勤による労働者の病気、怪我、障害、死亡等に対して必要な保険給付を行い、あわせて被災労働者の社会復帰の促進等の事業を行う制度のことです。
労災保険の保険者は政府で、窓口は労働基準監督署となっています。
労災保険と雇用保険を総称して労働保険といいます。
保険給付は両保険制度で個別に行われていますが、保険料の徴収については、両保険は労働保険として一体のものとして取り扱っています。
事業主は、労働者を一人でも雇っていれば労働保険に加入し、労働保険料を納付する必要があります。


労災保険の加入対象者

 
正社員、パート、アルバイト、派遣労働者、日雇い等、労働や雇用形態に関係なく、すべての労働者が対象となります。
ただし、事業主法人役員は労災保険の対象外ですが、使用人兼務役員であれば対象となります。

労災保険の特別加入制度

 
労災保険の特別加入制度とは、労働者以外のうち、業務の実態や災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいとみなされる人に、一定の要件の下に労災保険に特別に加入することを認めている制度のことです。
特別加入できる人は、中小事業主等、一人親方等、特定作業従事者、海外派遣者の4種に大別されます。


労災保険の保険料

 
労災保険料は、事業主全額負担します。
労災保険料は、次の式で計算します。
 

労災保険料 = 全従業員の年度内の賃金総額 × 労災保険率


労災保険の保険給付の対象

 
労災保険の保険給付の対象となるのは、業務災害通勤災害になります。

業務災害

 
業務災害とは、労働者の業務上の怪我、疾病、障害、死亡のことです。
業務災害と判断する基準として業務起因性業務遂行性があり、業務災害と認められるためには、業務起因性と業務遂行性の両方が認められなければなりません。
 
業務起因性
業務起因性とは、その業務に従事していなければ、災害は発生しなかったであろうと認められ、その業務に従事していれば、そのような災害の発生の可能性があるだろうと認められることです。
業務と災害の間に因果関係が認められるときに、業務起因性が成立します。
 
業務遂行性
業務遂行性とは、労働者が労働契約に基づいて、事業主の支配下にある状態のことです。

通勤災害

 
通勤災害とは、労働者の通勤による怪我、疾病、障害、死亡のことです。
 
労災保険における通勤とは、
 

  1. 住居と就業の場所との間の往復
  2. 就業の場所から他の就業の場所への移動
  3. 単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動

 
を合理的な経路および方法で行うことをいい、業務上でないものとされています。
移動の経路を逸脱または中断した場合には、逸脱または中断の間およびその後の移動は通勤とはなりません。
 
ただし、次のような日常生活上必要な行為については、その間は通勤とはなりませんが、例外的にその後の移動は通勤となります。
 

  • 日用品の購入その他これに準ずる行為
  • 職業訓練、学校における教育等を受ける行為(定時制高校等)
  • 選挙権の行使その他これに準ずる行為
  • 病院または診療所で診療や治療を受けること、およびこれに準ずる行為
  • 要介護状態にある配偶者、子、父母等の介護

労災保険の給付の種類

 
労災保険の給付には、次のような種類があります。
カッコ( )内は、通勤災害の場合の名称です。

療養補償給付(療養給付)

 
業務災害または通勤災害による怪我や疾病のため療養するとき、労災病院または労災保険指定医療機関での療養の給付が行われます。
業務災害の場合は、治療費の自己負担はありません。
通勤災害の場合は、初回のみ200円の一部自己負担となります。

休業補償給付(休業給付)

 
業務災害または通勤災害による療養のため休業し、賃金が受けられないとき、休業4日目から、給付基礎日額の60%相当額が支給されます。
休業初日から3日間(連続である必要はない)を待機期間といい、休業(補償)給付は支給されません。

傷病補償年金(傷病年金)

 
療養開始後1年6か月を経過しても治癒せず、傷病等級1級から3級に該当する場合に支給されます。

介護補償給付(介護給付)

 
常時または随時介護が必要な場合に、介護の費用として支出した金額の全部または一部が支給されます。

障害補償給付(障害給付)

 
業務災害または通勤災害による怪我や疾病が治癒したが、一定の障害が残った場合に支給されます。

遺族補償給付(遺族給付)

 
業務災害または通勤災害による怪我や疾病により死亡したとき、遺族の数に応じた年金または一時金が支給されます。
 
年金は、生計を維持されていた
 

  1. 配偶者
  2. 父母
  3. 祖父母
  4. 兄弟姉妹

 
の順位で支給されます。
 
一時金は、年金を受けられる遺族がいないときに支給されます。

葬祭料(葬祭給付)

 
業務災害または通勤災害により死亡した労働者の葬祭を行った人に対して、一時金が支給されます。

二次健康診断等給付

 
一次健康診断において、脳血管疾患および心臓疾患に関連する一定の項目について異常の所見があると認められたとき、二次健康診断および特定保健指導が実施されます。


給付基礎日額

 
給付基礎日額とは、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額のことです。
平均賃金とは、原則として業務上または通勤による怪我や死亡の原因となった事故が発生した日または医師の診断によって疾病の発生が確定した日(賃金締切日が定められているときは、その日の直前の賃金締切日)の直前3か月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時に支払われる賃金を除く)を、その期間の暦日数で割った、1日あたりの賃金額のことです。

算定基礎日額

 
算定基礎日額とは、原則として業務上または通勤による怪我や死亡の原因である事故が発生した日または診断によって病気にかかったことが確定した日の前1年間にその労働者が事業主から受けた特別給与の総額(算定基礎年額)を365で割った額のことです。
特別給与とは、給付基礎日額の算定の基礎から除外されているボーナス等、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金をいい、臨時に支払われた賃金は含まれません。