労働者災害補償保険(労災保険)のバナー

労災保険とは?FPがわかりやすく解説

最終更新日: 2026-08-22

労働者災害補償保険(労災保険)とは

 
労働者災害補償保険(通称:労災保険)とは、労働者が業務中や通勤途中に負傷したり、疾病にかかったり、障害を負ったり、または死亡したりした場合に、必要な保険給付を行う制度です。
また、被災した労働者の社会復帰を支援するための事業も実施されています。
この保険制度の保険者は国であり、各種手続きの窓口は労働基準監督署です。
 
なお、労災保険と雇用保険は、あわせて「労働保険」と総称されます。保険給付はそれぞれの制度に基づいて個別に行われますが、保険料は一体的に徴収されています。
事業主は、労働者を1人でも雇用している場合、原則として労働保険に加入し、労働保険料を納付する義務があります。


労災保険の加入対象者

 
労災保険は、正社員、パート、アルバイト、派遣労働者、日雇い労働者など、雇用形態を問わず、すべての労働者が加入対象となります。
一方、事業主や法人の役員は、原則として労災保険の対象外です。ただし、役員であっても「使用人兼務役員」のように、実態として労働者として業務に従事している場合は、労災保険の対象となることがあります。
 

労災保険の特別加入制度

 
特別加入制度とは、労働者ではないものの、業務内容や災害発生のリスクなどの観点から、労働者に準じた保護が必要と認められる人について、一定の要件のもとで労災保険への加入を認める制度です。
特別加入の対象者は、次の4つの区分に分類されます。

  • 中小事業主等
  • 一人親方等
  • 特定作業従事者
  • 海外派遣者

労災保険料の負担者と計算方法

 
労災保険料は、事業主が全額を負担するものであり、労働者の給与から天引きされることはありません。
保険料は、次の式により計算されます。
 

労災保険料 = 年度内における全従業員の賃金総額 × 労災保険率

 
賃金総額には、基本給のほか各種手当なども含まれます。
また、労災保険率は業種ごとに定められており、建設業や運送業など災害リスクの高い業種ほど高く設定される傾向があります。


労災保険の給付対象となる業務災害・通勤災害とは

 
労災保険の給付対象となる災害は、「業務災害」と「通勤災害」の2つに分類されます。
 

業務災害

 
業務災害とは、労働者が業務に起因して負った負傷、疾病、障害、または死亡をいいます。
業務災害として認定されるためには、次の2つの要件を満たす必要があります。

  • 業務起因性
    災害が業務に起因して発生したと認められることをいいます。つまり、業務と災害との間に相当因果関係があることが必要です。
  • 業務遂行性
    労働者が労働契約に基づき、事業主の指揮命令下で業務を遂行している状態にあることをいいます。

 

通勤災害

 
通勤災害とは、労働者が通勤中に負った負傷、疾病、障害、または死亡をいいます。
労災保険における「通勤」とは、合理的な経路および方法により行う次のいずれかの移動をいいます。

  • 住居と就業場所との往復
  • 就業場所間の移動
  • 単身赴任先の住居と帰省先の住居との間の移動

ただし、移動中に経路を逸脱または中断した場合は、その逸脱または中断の間およびその後の移動について、原則として通勤とは認められません
 
なお、例外として、次のような日常生活上必要な行為のために一時的に経路を逸脱または中断した場合には、その行為終了後に合理的な経路へ戻った後の移動については、通勤と認められることがあります。

  • 日用品の購入その他これに準ずる行為
  • 職業訓練または定時制高校等における教育を受ける行為
  • 選挙権の行使その他これに準ずる行為
  • 病院または診療所において診療または治療を受ける行為その他これに準ずる行為
  • 要介護状態にある配偶者、子、父母等の介護

労災保険で受けられる給付一覧

 
労災保険には、次のような給付があります。なお、括弧内は通勤災害の場合の給付名称です。

療養補償給付(療養給付)

 
業務災害または通勤災害により負傷したり疾病にかかったりした場合には、その治療のために、労災病院や労災保険指定医療機関などにおいて必要な療養を受けることができます。

  • 業務災害の場合:治療費の自己負担はありません。
  • 通勤災害の場合:初回に限り、200円の自己負担があります。

休業補償給付(休業給付)

 
療養のために休業し、賃金の支払いを受けられない場合には、休業4日目から給付基礎日額の60%が支給されます。
なお、休業した最初の3日間は待期期間とされるため、給付は支給されません。また、待期期間は通算3日で完成するため、必ずしも連続している必要はありません

傷病補償年金(傷病年金)

 
療養を開始してから1年6か月を経過しても治癒せず、傷病等級1級から3級までのいずれかに該当する場合に支給されます。

介護補償給付(介護給付)

 
障害により常時または随時介護を必要とする場合に、介護に要した費用の全部または一部が支給されます。

障害補償給付(障害給付)

 
負傷または疾病が治癒した後に、一定の障害が残った場合に支給されます。
ここでいう「治癒」とは、完全に回復した状態だけでなく、医学上これ以上の改善が見込めない「症状固定」の状態も含みます。

遺族補償給付(遺族給付)

 
業務災害または通勤災害により労働者が死亡した場合には、遺族の人数などに応じて、年金または一時金が支給されます。
年金の支給対象となる遺族は、死亡した労働者によって生計を維持されていた、次の順位の者です。

  1. 配偶者
  2. 父母
  3. 祖父母
  4. 兄弟姉妹

 
なお、年金を受給できる遺族がいない場合には、一時金が支給されます。

葬祭料(葬祭給付)

 
死亡した労働者の葬祭を行った者に対して、一時金が支給されます。

二次健康診断等給付

 
一次健康診断において、脳血管疾患または心臓疾患に関連する検査項目に異常が認められた場合には、二次健康診断および特定保健指導を無料で受けることができます。


給付基礎日額とは

 
給付基礎日額とは、労災保険の給付額を算定する際の基準となる1日当たりの金額であり、原則として、労働基準法に定める平均賃金に相当する額をいいます。
平均賃金は、次の方法により算出されます。

  • 事故や疾病の原因となった業務災害または通勤災害が発生した日、または医師の診断により疾病の発生が確定した日(賃金締切日がある場合は、その直前の賃金締切日)を基準日とします。
  • 基準日の直前3か月間に支払われた賃金の総額(賞与や臨時的に支払われた賃金を除く)を、その期間の暦日数で除した額が1日当たりの平均賃金となり、これが給付基礎日額となります。

算定基礎日額とは

 
算定基礎日額とは、原則として、業務災害または通勤災害による負傷もしくは死亡の原因となった事故が発生した日、または医師の診断により疾病の発生が確定した日の直前1年間に、労働者が事業主から支給を受けた特別給与の総額(算定基礎年額)を365で除した額をいいます。
ここでいう特別給与とは、給付基礎日額の算定対象から除外される賃金のうち、賞与など3か月を超える期間ごとに支払われるものをいいます。算定基礎日額は、主に賞与(ボーナス)を基準に算定される金額です。
なお、臨時的に支払われた賃金は特別給与には含まれません。


FP試験での出題ポイント

 
FP試験では、特に次のポイントはよく問われるため、しっかり押さえておきましょう。

  • 労災保険の保険者は「国」であり、手続きは労働基準監督署で行う。
  • 労災保険料は事業主が全額負担し、労働者負担はない。
  • 原則として、労働者を1人でも雇用している事業は労災保険の適用事業となる。
  • 正社員だけでなく、パート、アルバイト、派遣労働者、日雇い労働者も加入対象となる。
  • 事業主や法人役員は原則として対象外だが、一定の要件を満たす場合は特別加入制度を利用できる。
  • 特別加入制度の対象者
    • 中小事業主等
    • 一人親方等
    • 特定作業従事者
    • 海外派遣者
  • 労災保険の給付対象は「業務災害」と「通勤災害」。
  • 業務災害の認定要件
    • 業務起因性
    • 業務遂行性
  • 通勤の範囲
    • 住居と就業場所の往復
    • 就業場所間の移動
    • 単身赴任先と帰省先との間の移動
  • 通勤経路の逸脱・中断があった場合は原則として通勤災害と認められない。
  • 日用品購入や病院受診などの日常生活上必要な行為による一時的な逸脱・中断は例外。
  • 休業補償給付:休業4日目から支給(最初の3日間は待期期間)
  • 傷病補償年金:療養開始後1年6か月経過後も治癒せず、傷病等級1~3級に該当した場合
  • 通勤災害の療養給付:初回に200円の一部負担