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遺族厚生年金とは?FPがわかりやすく解説

最終更新日: 2026-09-22

遺族厚生年金とは

 
遺族厚生年金とは、厚生年金保険の被保険者や老齢厚生年金の受給権者などが亡くなった場合に、その方によって生計を維持されていた遺族の生活を支えるために支給される公的年金です。なお、一定の要件を満たす場合は、遺族基礎年金とあわせて受給できます。


遺族厚生年金の受給要件

 
遺族厚生年金を受給するためには、死亡した方が次のいずれかの要件を満たしている必要があります。

  • 厚生年金保険の被保険者が死亡したとき
  • 厚生年金保険の被保険者期間中に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき
  • 1級または2級の障害厚生年金(障害共済年金)の受給権者が死亡したとき
  • 老齢厚生年金の受給資格期間を満たした人が死亡したとき

 
なお、老齢厚生年金の受給資格期間を満たした人とは、保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間および65歳以降の厚生年金保険の被保険者期間を合算した期間が25年以上ある人をいいます。
 
また、上記の要件に加えて、次のいずれかの保険料納付要件を満たしている必要があります。

  • 死亡日の前日において、保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が、国民年金加入期間の3分の2以上あること
  • ただし、死亡日が2036(令和18)年3月31日までのときは、死亡した人が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が属する月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと

遺族厚生年金の受給対象者

 
遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者や老齢厚生年金の受給権者などが死亡した場合に、その方によって生計を維持されていた遺族に支給されます。
 

遺族の優先順位

 
遺族厚生年金は、次の遺族のうち、最も優先順位の高い方が受給できます。

  1. 子のある配偶者(事実婚を含む)
  2. 子
  3. 子のない配偶者(事実婚を含む)
  4. 父母
  5. 孫
  6. 祖父母

 
なお、夫、父母または祖父母が遺族厚生年金の受給権を取得するためには、死亡した方の死亡当時に55歳以上であることが必要です。また、実際に年金の支給が開始されるのは60歳からとなります。
ただし、子のある夫が遺族基礎年金の受給要件を満たしている場合は、遺族基礎年金とあわせて遺族厚生年金を受給できます。
 
また、夫の死亡時に30歳未満で子のない妻が受給する遺族厚生年金は有期給付とされており、受給権を取得した日から5年を経過すると受給権が消滅します。
 
遺族厚生年金の受給対象となる「子」または「孫」とは、次のいずれかに該当する人をいいます。

  • 18歳到達年度の末日(3月31日)までの子または孫
  • 20歳未満で、障害等級1級または2級の障害状態にある子または孫

なお、死亡した方の死亡当時に胎児であった子は、出生後に受給対象となります。


遺族厚生年金の年金額

 
遺族厚生年金の年金額は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3相当額を基本として計算されます。
そのため、死亡した方の厚生年金への加入期間や給与・賞与の水準によって、受給できる年金額は異なります。
 

老齢厚生年金の報酬比例部分の計算方法

 
遺族厚生年金の基礎となる「老齢厚生年金の報酬比例部分」は、次の計算式により算出されます。
 

老齢厚生年金の報酬比例部分の年金額の計算式

 
※ 被保険者期間が300か月(25年)未満の場合でも、300か月加入したものとして計算されます。この仕組みを「300か月みなし期間」といい、加入期間が短い場合でも遺族の生活保障に配慮した制度となっています。

中高齢寡婦加算とは

 
中高齢寡婦加算とは、一定の要件を満たす妻が受給する遺族厚生年金に加算される年金です。夫の死亡後の生活保障を目的として設けられた制度で、一定の要件を満たす40歳以上65歳未満の妻に対して加算されます。
 

対象となる妻

 
次のいずれかに該当する場合は、中高齢寡婦加算の対象となります。

  • 夫の死亡時に40歳以上65歳未満であり、生計を同じくする子がいない妻
  • 子のある妻が、遺族厚生年金と遺族基礎年金を受給していたものの、次のいずれかに該当したことにより遺族基礎年金の受給権を失った場合(40歳到達時点で遺族基礎年金を受給していた場合に限る)
    • 子が18歳到達年度の末日(3月31日)に達したとき
    • 障害等級1級または2級の障害の状態にある子が20歳に達したとき

 
なお、老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間を満たしている夫が死亡した場合は、死亡した夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年以上あることが必要です。ただし、中高齢者の期間短縮の特例などにより20年未満で老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている場合は、その要件を満たすものとして取り扱われます。
 

子の定義

 
中高齢寡婦加算における「子」とは、次のいずれかに該当する人をいいます。

  • 18歳到達年度の末日(3月31日)までの子
  • 20歳未満で、障害等級1級または2級の障害の状態にある子

なお、死亡した夫の死亡当時に胎児であった子は、出生後に受給対象となります。
 

加算額

 
2026(令和8)年度の中高齢寡婦加算額は、年額635,500円です。


経過的寡婦加算とは

 
経過的寡婦加算とは、中高齢寡婦加算を受給していた妻が65歳に達し、自身の老齢基礎年金の受給を開始したことにより中高齢寡婦加算が終了し、年金額が減少する場合に、その減額分の一部を補うために設けられた加算制度です。
次のいずれかに該当する場合は、遺族厚生年金に経過的寡婦加算が加算されます。

  • 1956(昭和31)年4月1日以前生まれの妻が、65歳以降に遺族厚生年金の受給権を取得した場合
  • 中高齢寡婦加算が加算されていた1956(昭和31)年4月1日以前生まれの妻が、65歳に達した場合

年金の併給調整とは

 
公的年金制度では、「1人1年金」が原則とされています。そのため、同一人物が複数の年金の受給権を有する場合は、原則としていずれか1つの年金を選択して受給します。
ただし、一定の要件を満たす場合には、複数の年金をあわせて受給できるケースがあります。
例えば、国民年金(基礎年金)は全国民共通の制度であり、厚生年金保険などの被用者年金は基礎年金に上乗せして支給される仕組みとなっているため、老齢基礎年金と老齢厚生年金はあわせて受給できます。
また、遺族年金や障害年金についても、一定の要件を満たす場合は他の年金との併給が認められています。
このように、複数の年金の受給権がある場合に行われる支給額の調整を「併給調整」といいます。
 

年金の併給可否一覧

 

 

老齢厚生年金

障害厚生年金

遺族厚生年金

老齢基礎年金

◯

×

◯(65歳以上)

障害基礎年金

◯(65歳以上)

◯

◯(65歳以上)

遺族基礎年金

×

×

◯

 

 
年金の併給調整は、次のように覚えましょう!

FP検定暗記術_年金の併給調整

 

遺族厚生年金と老齢厚生年金との調整 

 
65歳以降に遺族厚生年金と老齢厚生年金の両方の受給権を有する場合は、遺族厚生年金について所定の併給調整が行われます。
併給調整後の遺族厚生年金額は、次の計算式により算出します。
 

併給調整後の遺族厚生年金額 = ①または②のいずれか多い額 − 本人の老齢厚生年金額
① 遺族厚生年金額
② 遺族厚生年金額 × 2/3 + 本人の老齢厚生年金額 × 1/2

 

雇用保険の基本手当と特別支給の老齢厚生年金の調整

 
雇用保険の基本手当(失業給付)と特別支給の老齢厚生年金は、原則として同時に受給することができません。
そのため、基本手当を受給している期間は、特別支給の老齢厚生年金が全額支給停止となります。
一方、老齢基礎年金については、基本手当を受給している期間であっても支給停止とはならず、通常どおり受給できます。
 

高年齢雇用継続給付と在職老齢年金の調整

 
高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者で、60歳到達時と比較して賃金が一定割合以上低下した場合に支給される給付です。
高年齢雇用継続給付を受給している期間は、在職老齢年金の一部が支給停止される場合があります。
なお、高年齢雇用継続給付の支給率や在職老齢年金の支給停止率は制度改正の対象となるため、最新の取扱いを確認するようにしてください。


FP試験での出題ポイント

 
FP試験では、次のポイントを重点的に押さえておくと得点源になります。
 
① 遺族厚生年金の基本

  • 遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者等が死亡した場合に、生計維持関係のある遺族に支給される。
  • 遺族基礎年金の受給要件を満たす場合は、遺族基礎年金と併給できる。

 
② 受給要件
次のいずれかに該当すること。

  • 厚生年金保険の被保険者が死亡したとき
  • 被保険者期間中に初診日がある傷病により、初診日から5年以内に死亡したとき
  • 1級または2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき
  • 老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間を満たす人が死亡したとき

保険料納付要件

  • 保険料納付済期間+保険料免除期間が加入期間の3分の2以上
  • または特例として、死亡日前日時点で直近1年間に保険料未納がないこと

 
③ 遺族の優先順位
受給順位は次の順番。

  1. 子のある配偶者
  2. 子
  3. 子のない配偶者
  4. 父母
  5. 孫
  6. 祖父母

 
④ 年齢要件
夫・父母・祖父母が受給する場合

  • 死亡当時55歳以上であること
  • 実際の支給開始は60歳から
  • 子のある夫は遺族基礎年金との併給可

 
⑤ 30歳未満の子のない妻

  • 夫死亡時に30歳未満
  • 子がいない

→ 遺族厚生年金は5年間の有期給付
 
⑥ 子・孫の要件
次のいずれか

  • 18歳到達年度末まで
  • 20歳未満で障害等級1級または2級

※ 胎児は出生後に対象
 
⑦ 年金額

  • 遺族厚生年金 = 老齢厚生年金の報酬比例部分 × 3/4

 
⑧ 中高齢寡婦加算

  • 40歳以上65歳未満の子のない妻
  • 子の失権により遺族基礎年金が終了した妻
  • 妻のみ対象
  • 40歳から65歳までの生活保障
  • 老齢厚生年金の受給権者等が死亡した場合、原則として被保険者期間20年以上

 
⑨ 経過的寡婦加算

  • 1956(昭和31)年4月1日以前生まれ
  • 65歳到達により中高齢寡婦加算が終了した際の減額補填

 
⑩ 年金の併給調整

  • 遺族厚生年金と老齢厚生年金の調整
  • 雇用保険の基本手当(失業給付)を受給している期間は、特別支給の老齢厚生年金が全額支給停止
  • 高年齢雇用継続給付を受給している期間は、在職老齢年金の一部が支給停止される場合がある