遺族厚生年金の受給要件
遺族厚生年金の主な受給要件は、次のとおりです。
短期要件
- 厚生年金保険の被保険者が死亡したとき
- 厚生年金保険の被保険者期間中に初診日がある傷病により、初診日から5年以内に死亡したとき
- 死亡した人について、死亡日の前日において、保険料納付済期間と保険料免除期間を合計した期間が全期間の2/3以上あること
- 死亡日が2026(令和8)年3月31日までのときは、死亡した人が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの1年間に保険料の滞納がないこと
- 障害等級1級・2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき
長期要件
- 老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある人が死亡したとき
遺族厚生年金の受給対象者
遺族厚生年金の受給対象者は、死亡した人によって生計を維持されていた遺族になります。
遺族の優先順位は、
- 配偶者(内縁関係も含む)
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
となっており、優先順位の高い人に支給されます。
夫・父母・祖父母に支給される場合、死亡時において55歳以上であることが条件であり、60歳から支給が開始されます。
ただし、夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も合わせて受給できます。
また、夫の死亡時に、30歳未満で子のない妻については、遺族厚生年金の受給権を得てから5年を経過したときに受給権が消滅します。
「子・孫」の定義は、次のとおりです。
- 18歳到達年度の3月31日までの子または孫
- 20歳未満で障害等級1級・2級の障害の状態にある子または孫
なお、受給要件を満たした国民年金の被保険者または被保険者であった人が死亡した当時、胎児であった子も出生以降に対象となります。
遺族厚生年金の年金額
遺族厚生年金の年金額は、次の式で計算します。
遺族厚生年金の年金額 = 老齢厚生年金の報酬比例部分の年金額 ✕ 3/4
「老齢厚生年金の報酬比例部分の年金額」は、次の式で計算します。
※被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。
中高齢寡婦加算
次のいずれかに該当する妻が受給する遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまでの間、中高齢寡婦加算が加算されます。
- 夫の死亡時、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻
- 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受給していた子のある妻が、子が18歳到達年度の3月31日に達した(または、障害等級1級・2級の状態にある子が20歳に達した)ため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき(ただし、40歳到達時点で遺族基礎年金を受給していた場合に限る)
ただし、長期要件による遺族厚生年金の場合は、死亡した夫の厚生年金保険の被保険者期間が、原則として20年以上あることが必要です。
「子」の定義は、次のとおりです。
- 18歳到達年度の3月31日までの子
- 20歳未満で障害等級1級・2級の障害の状態にある子
なお、受給要件を満たした国民年金の被保険者または被保険者であった人が死亡した当時、胎児であった子も出生以降に対象となります。
2024(令和6)年度の中高齢寡婦加算の金額は、年額612,000円です。
経過的寡婦加算
経過的寡婦加算とは、寡婦が65歳になり自身の老齢基礎年金を受給し始めると、中高齢寡婦加算の打ち切られるため、減額した年金を補うための制度のことです。
次のいずれかに該当する場合、遺族厚生年金に経過的寡婦加算が加算されます。
- 1956(昭和31)年4月1日以前生まれの妻に65歳以上で遺族厚生年金の受給権が発生したとき
- 中高齢寡婦加算が加算されていた1956(昭和31)年4月1日以前生まれの遺族厚生年金の受給権者である妻が65歳に達したとき
年金の併給調整
現在の年金制度では、1人1年金が原則となっています。
同一の人が複数の年金を受給する場合には、どれか1つの年金を選択しなければなりません。
しかしながら、国民年金は国民共通の基礎年金を支給する制度とされ、厚生年金保険等の被用者年金は基礎年金に上乗せして支給する制度とされたため、老齢基礎年金と老齢厚生年金については併給されます。
また、遺族年金を含んだ複数の年金の受給権がある場合には、特例的に併給される等いくつかの例外もあります。
その場合、年金額の調整が行われ、このことを併給調整といいます。
併給の組み合わせは、下表のとおりです。
|
老齢厚生年金 |
障害厚生年金 |
遺族厚生年金 |
老齢基礎年金 |
◯ |
× |
◯(65歳以上) |
障害基礎年金 |
◯(65歳以上) |
◯ |
◯(65歳以上) |
遺族基礎年金 |
× |
× |
◯ |
年金の併給調整は、次のように覚えましょう!
雇用保険の基本手当と特別支給の老齢厚生年金の併給調整
雇用保険の基本手当と特別支給の老齢厚生年金を併給することはできません。
基本手当を受給している期間は、原則として特別支給の老齢厚生年金は、全額支給が停止されます。
ただし、老齢基礎年金については、全額支給されます。
雇用保険の高年齢雇用継続給付と在職老齢年金の併給調整
雇用保険の高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者のうち、賃金額が60歳到達時の75%未満になった人を対象に、最高で賃金額の15%に相当する額を支給するものです。
したがって、65歳未満の在職老齢年金との併給調整ということになります。
高年齢雇用継続給付を受給している期間は、在職老齢年金の一部(最高で標準報酬月額の6%相当額)が支給停止されます。