老齢厚生年金
最終更新日: 2024-03-30

老齢厚生年金の受給要件

 
老齢厚生年金の受給要件は、次のとおりです。
 


特別支給の老齢厚生年金

 
1985(昭和60)年の法律改正により、厚生年金保険の支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられました。
法律改正の混乱を避けるために、支給開始年齢を段階的に引き上げるために設けられた制度が、特別支給の老齢厚生年金です。

特別支給の老齢厚生年金の受給要件

 
特別支給の老齢厚生年金の受給要件は、次のとおりです。
 

  • 男性の場合、1961(昭和36)年4月1日以前に生まれたこと
  • 女性の場合、1966(昭和41)年4月1日以前に生まれたこと
  • 老齢基礎年金の受給要件を満たしていること
  • 厚生年金保険の被保険者期間が1年以上あること
  • 60歳以上65歳未満であること

特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢

 
特別支給の老齢厚生年金部分は報酬比例部分と定額部分とに分かれます。
それぞれの受給開始年齢は生年月日によって段階的に引き上げれ、最終的には65歳からの老齢基礎年金と老齢厚生年金のみになります。
支給開始年齢は男性と女性で異なり、女性は男性よりも5年遅れで引き上げられます。
 


老齢厚生年金の受給開始年齢

 
老齢厚生年金は、受給資格期間を満たす人が65歳になったときに受給権が発生し、年金を受け取ることができるようになります。
ただし、65歳よりも受給を早めたい場合や65歳よりも受給を遅らせてもいい場合には、受給開始時期を変更することができます。


老齢厚生年金の繰上げ支給

 
老齢厚生年金の繰上げ支給とは、老齢厚生年金の支給開始時期を60歳から65歳になるまでの間の任意の時期に繰り上げて支給を受けることです。
ただし、繰上げ支給をすることにより、支給される年金額が1か月につき0.4%減額となり、生涯減額された年金額が支給されます。
老齢厚生年金の繰上げは、老齢基礎年金の繰上げと同時に行わなければなりません。
なお、付加年金は同率で減額されますが、振替加算は減額されません。
 

繰上げによる減額率 = 0.4% ✕ 繰上げ月数

※1962(昭和37)年4月1日以前生まれの人の減額率は、0.5%(最大30%)となります。

 
裁定請求時の年齢と繰上げによる減額率は、下表のとおりです。
 
1962(昭和37)年4月2日以後生まれの人(ひと月あたりの減額率0.4%)
 

 

60歳

61歳

62歳

63歳

64歳

0か月

24.0%

19.2%

14.4% 9.6% 4.8%

1か月

23.6%

18.8%

14.0% 9.2% 4.4%

2か月

23.2%

18.4%

13.6% 8.8% 4.0%

3か月

22.8%

18.0%

13.2% 8.4% 3.6%

4か月

22.4%

17.6%

12.8% 8.0% 3.2%

5か月

22.0%

17.2% 12.4% 7.6% 2.8%

6か月

21.6%

16.8% 12.0% 7.2% 2.4%

7か月

21.2%

16.4% 11.6% 6.8% 2.0%

8か月

20.8% 16.0% 11.2% 6.4% 1.6%

9か月

20.4% 15.6% 10.8% 6.0% 1.2%

10か月

20.0% 15.2% 10.4% 5.6% 0.8%

11か月

19.6% 14.8% 10.0% 5.2% 0.4%

 
1962(昭和37)年4月1日以前生まれの人(ひと月あたりの減額率0.5%)
 

 

60歳

61歳

62歳

63歳

64歳

0か月

30.0%

24.0%

18.0% 12.0% 6.0%

1か月

29.5%

23.5%

17.5% 11.5% 5.5%

2か月

29.0%

23.0%

17.0% 11.0% 5.0%

3か月

28.5%

22.5%

16.5% 10.5% 4.5%

4か月

28.0%

22.0%

16.0% 10.0% 4.0%

5か月

27.5%

21.5% 15.5% 9.5% 3.5%

6か月

27.0%

21.0% 15.0% 9.0% 3.0%

7か月

26.5%

20.5% 14.5% 8.5% 2.5%

8か月

26.0% 20.0% 14.0% 8.0% 2.0%

9か月

25.5% 19.5% 13.5% 7.5% 1.5%

10か月

25.0% 19.0% 13.0% 7.0% 1.0%

11か月

24.5% 18.5% 12.5% 6.5% 0.5%

 
繰上げ支給を請求する場合の主な注意事項は、次のとおりです。
 

  • 寡婦年金の受給権を有する人の繰上げの裁定請求が受理された場合、寡婦年金の受給権は消滅します
  • 繰上げの裁定請求が受理された後は、任意加入被保険者となることができません
  • 繰上げの裁定請求が受理された後は、障害基礎年金の受給権を取得することができません
  • 受給権発生(請求受理日)後は、裁定請求の取消しや変更はできません

老齢厚生年金の繰下げ支給

 
老齢厚生年金の繰上げ支給とは、老齢基礎年金の支給開始時期を66歳から75歳になるまでの間の任意の時期に繰り下げて支給を受けることです。
繰下げ支給をすることにより、支給される年金額が1か月につき0.7%増額となり、生涯増額された年金額が支給されます。
繰下げにより増額の対象となる年金額は、在職老齢年金の支給調整後の年金額となります。
また、老齢厚生年金の繰下げは、老齢基礎年金の繰下げと別々に行うことができます。
特別支給の老齢厚生年金は、繰下げの対象外となります。
特別支給の老齢厚生年金を受給して、本来の老齢厚生年金を繰り下げて受給することはできます。
なお、付加年金は同率で増額されますが、振替加算は増額されません。
 

繰下げによる増額率 = 0.7% ✕ 繰下げ月数

 
裁定請求時の年齢と繰下げによる増額率は、下表のとおりです。
 

 

66歳

67歳

68歳

69歳

70歳

71歳

72歳

73歳

74歳

75歳

0か月

8.4%

16.8%

25.2% 33.6% 42.0% 50.4% 58.8% 67.2% 75.6% 84.0%

1か月

9.1%

17.5%

25.9% 34.3% 42.7% 51.1% 59.5% 67.9% 76.3%  

2か月

9.8%

18.2%

26.6% 35.0% 43.4% 51.8% 60.2% 68.6% 77.0%  

3か月

10.5%

18.9%

27.3% 35.7% 44.1% 52.5% 60.9% 69.3% 77.7%  

4か月

11.2%

19.6%

28.0% 36.4% 44.8% 53.2% 61.6% 70.0% 78.4%  

5か月

11.9%

20.3% 28.7% 37.1% 45.5% 53.9% 62.3% 70.7% 79.1%  

6か月

12.6%

21.0% 29.4% 37.8% 46.2% 54.6% 63.0% 71.4% 79.8%  

7か月

13.3%

21.7% 30.1% 38.5% 46.9% 55.3% 63.7% 72.1% 80.5%  

8か月

14.0% 22.4% 30.8% 39.2% 47.6% 56.0% 64.4% 72.8% 81.2%  

9か月

14.7% 23.1% 31.5% 39.9% 48.3% 56.7% 65.1% 73.5% 81.9%  

10か月

15.4% 23.8% 32.2% 40.6% 49.0% 57.4% 65.8% 74.2% 82.6%  

11か月

16.1% 24.5% 32.9% 41.3% 49.7% 58.1% 66.5% 74.9% 83.3%  

※1952(昭和27)年4月1日以前生まれの人(または2017(平成29)年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受取る権利が発生している人)は、繰下げの上限年齢が70歳までとなるため、増額率は最大で42%となります。


老齢厚生年金の年金額

 
特別支給の老齢厚生年金の年金額は、次の式で計算します。
 

年金額 = 定額部分 + 報酬比例部分 + 加給年金額

 

2024(令和6)年度
1956(昭和31)年4月2日以後生まれの人
定額部分 = 1,701円 ✕ 生年月日に応じた率 ✕ 被保険者期間の月数
 
1956(昭和31)年4月1日以前生まれの人
定額部分 = 1,696円 ✕ 生年月日に応じた率 ✕ 被保険者期間の月数

 

※平均標準報酬月額とは、2003(平成15)年3月以前の被保険者期間中の標準報酬月額の総額を、2003(平成15)年3月以前の被保険者期間の月数で除した額です。
※平均標準報酬額とは、2003(平成15)年4月以降の被保険者期間中の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、2003(平成15)年4月以降の被保険者期間の月数で除した額です。
※乗率A・Bは、生年月日に応じて異なります。 

 
65歳以上の老齢厚生年金の年金額は、次の式で計算します。
 

年金額 = 報酬比例部分 + 経過的加算額 + 加給年金額

 

※平均標準報酬月額とは、2003(平成15)年3月以前の被保険者期間中の標準報酬月額の総額を、2003(平成15)年3月以前の被保険者期間の月数で除した額です。
※平均標準報酬額とは、2003(平成15)年4月以降の被保険者期間中の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、2003(平成15)年4月以降の被保険者期間の月数で除した額です。
※乗率A・Bは、生年月日に応じて異なります。

 
経過的加算額とは、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の額と老齢基礎年金の額の差額であり、差額がある場合に支給されます。
 

 
ちなみに、2024(令和6)年度の老齢基礎年金(満額)の年金額は、次のとおりです。
 

  • 1956(昭和31)年4月2日以後生まれの人は、月68,000円 ✕ 12 = 年816,000
  • 1956(昭和31)年4月1日以前生まれの人は、月67,808円 ✕ 12 = 年813,700

加給年金

 
加給年金とは、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人に、65歳(または特別支給の老齢厚生年金の定額部分支給開始年齢)到達時点で生計を維持している下表に該当する配偶者または子がいるときに加算される年金のことです。
 

対象者

加給年金額

年齢制限

配偶者

234,800円

65歳未満であること

第1子・第2子

各234,800円

18歳到達年度の3月31日までの間の子
または、障害等級1級・2級の状態にある20歳未満の子

第3子以降

各78,300円

配偶者加給年金の特別加算額

 
受給権者が1934(昭和9)年4月2日以後生まれで、かつ加給年金の対象となる配偶者がいる場合には、受給権者の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額に特別加算額が加算されます。
 

受給権者の生年月日

特別加算額

1934(昭和9)年4月2日〜1940(昭和15)年4月1日

34,700円

1940(昭和15)年4月2日〜1941(昭和16)年4月1日

69,300円

1941(昭和16)年4月2日〜1942(昭和17)年4月1日

104,000円

1942(昭和17)年4月2日〜1943(昭和18)年4月1日

138,600円

1943(昭和18)年4月2日以後

173,300円

加給年金の停止と経過措置

 
年金制度の改正により、2022(令和4)年4月以降は、配偶者の老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上または共済組合等の加入期間を除いた期間が40歳(女性の場合は35歳)以降15年以上の場合に限る)、退職共済年金(組合員期間20年以上)を実際に受け取っていなくても、受け取る権利がある場合(在職により支給停止となっている場合等)は、配偶者加給年金額は支給停止となります。
ただし、次の要件を満たす場合には、2022(令和4)年以降も引き続き加給年金の支給を継続する経過措置が設けられています。
 

  1. 2022(令和4)年3月時点で、本人の老齢厚生年金または障害厚生年金に加給年金が支給されている
  2. 2022(令和4)年3月時点で、加給年金額の対象者である配偶者が、厚生年金保険の被保険者期間が240月以上ある老齢厚生年金等の受給権を有しており、全額が支給停止されている

 
経過措置は加給年金が不該当(配偶者の65歳到達・離婚・死亡等)となった時のほか、以下の場合に終了します。
 

  1. 本人の老齢厚生年金または障害厚生年金の全額が支給停止されることとなったとき
  2. 配偶者が失業給付の受給終了により老齢厚生年金の全額支給停止が解除されたとき(失業給付の受給により、配偶者の2022(令和4)年3月分の老齢厚生年金が全額支給停止されていた場合に限る)
  3. 配偶者が年金選択により他の年金の支給を受けることになったとき

振替加算

 
厚生年金保険では、老齢厚生年金等の受給権者によって生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合には、老齢厚生年金等に加給年金(年金に対する扶養手当のようなもの)が加算されます。
加給年金の対象となっている配偶者が老齢基礎年金を受給できる65歳に達すると、加給年金は打ち切られて配偶者の老齢基礎年金振替加算が加算されます。
振替加算の対象となる配偶者は、1926(大正15)年4月2日から1966(昭和41)年4月1日までに生まれた人に限られ、振替加算の額は生年月日により異なります。


在職老齢年金

 
在職老齢年金とは、老齢厚生年金の受給開始年齢以降も厚生年金保険の被保険者等として在職中の人に対して支給される老齢厚生年金のことです。
在職老齢年金は、総報酬月額相当額と基本月額の合計が50万円超の場合には、年金額の全部または一部が支給停止となります。
支給額の調整対象となる年金は、老齢厚生年金のみで、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止となっても、老齢基礎年金は全額支給されます。
 
支給停止額(月額)は、次の式で計算します。
 

支給停止額 = ( 総報酬月額相当額 + 基本月額 − 50万円 ) ✕ 1/2

※1:総報酬月額相当額 = その月の標準報酬月額 + その月以前1年間の標準賞与額の合計 ÷ 12
※2:65歳未満の基本月額とは、加給年金額を除いた特別支給の老齢厚生(退職共済)年金の月額のことです。
※3:65歳以上の基本月額とは、加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額のことです。


離婚時の年金分割制度

 
離婚時の年金分割制度とは、夫婦のいずれか、もくしは夫婦両方が婚姻期間中に厚生年金保険に加入していた場合、離婚の際に、厚生年金保険の保険料納付記録を当事者間で分割することができる制度のことです。
分割の種類には、当事者の合意または裁判所の決定が必要な合意分割と、双方の合意等が不要な3号分割があります。

合意分割

 
合意分割とは、離婚をしたときから2年以内に当事者間の合意または当事者いずれかの請求による裁判所の決定により、婚姻期間中の夫婦の厚生年金保険の保険料納付記録を婚姻時までさかのぼって分割する制度のことです。
分割割合は、当事者間の合意または裁判手続きによって決められますが、夫婦の婚姻期間の標準報酬総額合計の50%が上限となります。

3号分割

 
3号分割とは、2008(平成20)年4月1日に施行された当事者間の合意が不要な分割制度のことです。
第3号被保険者であった人からの請求で、施行日以降の第3号被保険者期間における相手方の厚生年金保険の保険料納付記録を分割することができます。
分割割合は、一律50%となります。
離婚したときから2年以内に請求する必要があります。