最終更新日: 2023-04-03

借地借家法

 
借地借家法のイメージ

  借地借家法とは

 
借地借家法とは、借地権者(建物の所有を目的とする地上権者と土地の賃借権者)と建物の賃借人を保護することを目的として定められた法律です。
借地借家法は、建物が事業用か居住用かにかかわらず適用されます。


  借地権とは

 
借地権とは、第三者の土地を借りて建物を所有することを目的とする地上権または土地の賃借権のことです。
ただし、耕作用の農地を借りる場合等には適用されません。
借りた土地に建物を建てると、土地は貸主のもの、建物は借主のものになります。
借地権には、普通借地権定期借地権があります。


  普通借地権

 
普通借地権とは、契約更新のある借地権のことです。
普通借地権の存続期間は30年以上でなければなりません。
普通借地権の存続期間が満了する場合、借地権者(借主)が契約の更新を請求したときは、建物が存在する場合に限り、原則として従前の契約と同一条件(更新後の期間を除く)で契約を更新したものとみなされます。
建物が存在していない場合は、土地の使用継続であっても更新することはできません。
普通借地権の設定後、1回目の更新は存続期間が20年、2回目以降の更新は10年となります。
なお、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間となります。
ただし、借地権設定者(地主)が遅滞なく正当な事由による異議を述べたときは、更新することはできません。
また、普通借地権の存続期間が満了し、契約の更新がない場合、借地権者(借主)は借地権設定者(地主)に対し、借地上の建物を時価で買い取るように請求することができます。
 
普通借地権のポイントは、下表のとおりです。
 

契約の存続期間

30年以上

更新

1回目は、20年以上
2回目以降は、10年以上

土地の利用目的

制限なし

契約方法

制限なし


  定期借地権

 
定期借地権には、一般定期借地権事業用定期借地権等建物譲渡特約付借地権の3種類があります。

一般定期借地権

 
一般定期借地権とは、存続期間50年以上で、公正証書等の書面により、次の3つの特約を付して初めて定期借地権として有効となる借地権のことです。
 

  • 契約の更新をしない
  • 存続期間の延長をしない
  • 存続期間が終了しても、借主は貸主に建物の買い取りを請求しない

事業用定期借地権等

 
事業用定期借地権等とは、存続期間10年以上30年未満事業用借地権と存続期間30年以上50年未満事業用定期借地権の総称のことです。
事業用定期借地権は、次の3つの特約を定めることにより定期借地権の効果を得ることができます。
 

  • 契約の更新をしない
  • 建物築造による存続期間の延長をしない
  • 存続期間が終了しても、借主は貸主に建物の買い取りを請求しない

 
事業用定期借地権等を契約するときは、必ず公正証書によって行わなければなりません。
事業用定期借地権等は、事業用建物の所有を目的とするもので、居住用建物の所有を目的として設定することはできません。

建物譲渡特約付借地権

 
建物譲渡特約付借地権とは、借地権を消滅させるため、借地権設定後30年以上を経過した日に借地上の建物を地主に相当の対価で譲渡する旨を定めた借地権のことです。

定期借地権の違い

 
3種類の定期借地権の違いは、下表のとおりです。
 

 

一般定期借地権

事業用定期借地権等

建物譲渡特約付借地権

契約の存続期間

50年以上

30年以上50年未満 10年以上30年未満 30年以上

土地の利用目的

制限なし

事業用建物のみ

制限なし

契約方法

特約は書面によって行わなければならない

公正証書に限る
特約は任意

公正証書に限る
特約は必要

制限なし

契約期間終了時

原則として更地で返還

原則として更地で返還

建物付きで返還


  借家権とは

 
借家権とは、お金を払って第三者から建物を借りる権利のことです。
借家権には、普通借家権定期借家権があります。


  普通借家権

 
普通借家権とは、契約更新のある借家権のことです。
普通借家権の存続期間は、原則1年以上です。
存続期間が1年未満の場合には、期間の定めのない契約とみなされます。
期間の定めのある契約の場合、その契約は期間の満了をもって終了します。
期間の定めのない契約の場合、契約を中途解約するためには、賃貸人は6か月前(正当な事由が必要)、賃借人は3か月前(正当な事由は不要)に解約申入れをする必要があります。
なお、普通借家権の存続期間満了時、賃貸人が更新を拒絶するためには正当事由が必要となります。
 
普通借家権のポイントは、下表のとおりです。
 

契約の存続期間

1年以上
契約期間が1年未満の場合、期間の定めのない契約とみなされる

更新

更新あり
賃貸人は、正当な事由がなければ更新の拒絶はできない

契約方法

制限なし

借賃増減請求権

賃料改定に関する特約がある場合でも、借賃増減請求権の行使が可能

その他

期間の定めのない契約の場合、
賃借人は正当な事由は不要で、3か月前に通知すれば解約は可能
賃貸人は正当な事由が必要で、6か月前に通知すれば解約が可能


  定期借家権

 
定期借家権とは、契約で定めた期間の満了により、更新することなく契約が終了する借家権のことです。
定期借家権の存続期間は自由に設定することができ、1年未満の期間を定めることもできます。
ただし、期間の定めがない契約無効となります。
定期借家契約を締結する場合には、賃貸人は賃借人に対して、契約の更新がなく期間満了によって契約が終了することを事前に書面を交付の上、説明しなければなりません。
説明を行わなかった場合、定期借家契約として成立せず、普通借家契約となります。
また、賃貸借期間が1年以上の定期借家契約の場合、賃貸人は、原則として期間満了の1年前から6か月前までの間に、賃借人に対して契約が終了する旨の通知をしなければなりません。
 
定期借家権のポイントは、下表のとおりです。
 

契約の存続期間

自由に設定可能
ただし、期間の定めのない契約は無効

更新

更新なし

契約方法

公正証書等の書面による契約

借賃増減請求権

賃料改定に関する特約を付することにより、借賃増減請求権は排除可能

その他

契約期間が1年以上の場合、賃貸人は期間満了の1年前から6か月前までの間に、賃借人に対して契約が終了する旨の通知をしなければならない
また、特約がないと中途解約は原則不可だが、床面積が200㎡未満の居住用建物で、転勤・療養・介護等のやむを得ない事情があるときには、特約がなくても中途解約が可能


  造作買取請求権

 
造作買取請求権とは、賃貸人の同意を得て、賃借人が建物に付け加えた造作(畳、襖、エアコン等)を、借家契約終了時に賃貸人に時価で買取請求ができる賃借人の権利のことです。
なお、普通借家契約および定期借家契約において、賃借人に造作買取請求権をあらかじめ放棄させる旨の特約を定めることができます。


  借賃増減請求権

 
借賃増減請求権とは、土地建物に対する租税負担の増減や土地建物の価格の上昇・下落、近隣建物の賃料と比較して不相当となったとき等に、賃貸人および賃借人が将来に向かって賃料の増減を請求することができる権利のことです。
なお、一定の期間、賃料を増額しない旨の特約が定めてある場合には、その期間については増額請求をすることができません。
しかし、一定の期間、賃料を減額しない旨の特約は、賃借人が不利になる内容のため、無効となります。


  借地権および借家権の対抗力

 
借地権は、登記により第三者に対抗可能となりますが、借地権の登記がなくても借地上の建物の登記があれば、第三者に対抗可能です。
借家権は、登記により第三者に対抗可能となりますが、登記がなくても引渡しがあれば、第三者に対抗可能です。
なお、「第三者に対抗可能」とは、その土地や建物の所有権を取得した第三者に対して自己の賃借権を主張することができ、第三者に土地や建物を明け渡す必要がないということです。