借地借家法
最終更新日: 2024-03-17

借地借家法とは

 
借地借家法とは、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めた法律です。


借地権とは

 
借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権のことです。
 
借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者(借主)登記されている建物所有するときは、第三者に対抗することができます。
 
地代又は土地の借貸が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相応となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができます。なお、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従います。ただし、一定の期間地代等を減額しない旨の特約は、賃借人が不利となるため、無効となります。
 
借地権には、普通借地権定期借地権があります。


普通借地権

 
普通借地権とは、借地契約の更新のある借地権のことです。
 
普通借地権の存続期間30年となります。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間となります。
 
当事者が普通借地契約を更新する場合、その期間は、借地権の設定後の最初の更新にあっては20年それ以降の更新については10年となります。ただし、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間となります。
 
普通借地権の存続期間が満了する場合、借地権者(借主)が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、更新後の契約期間を除いて、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなします。ただし、借地権設定者(貸主)が遅滞なく正当な事由による異議を述べたときは、更新することができません。
 
普通借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失取壊しがあった場合において、借地権者(借主)が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物の築造するにつき借地権設定者(貸主)の承諾がある場合に限り、普通借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続します。ただし、残存期間がこれより長いとき、又は当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間となります。
 
借地権者(借主)が借地権設定者(貸主)に対し残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造する旨を通知した場合において、借地権設定者がその通知を受けた後2か月以内異議を述べなかったときは、その建物を築造するにつき借地権設定者の承諾があったものとみなします。ただし、契約の更新の後通知があった場合には、認められません。
 
普通借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者(借主)は、借地権設定者(貸主)に対し、建物その他借地権者(借主)が土地に附属させた物を時価買い取るべきことを請求することができます。


定期借地権

 
定期借地権には、一般定期借地権事業用定期借地権等建物譲渡特約付借地権の3種類があります。

一般定期借地権

 
一般定期借地権とは、存続期間を50年以上として借地権を設定する場合において、
 

  • 契約の更新をしない
  • 建物の築造による存続期間の延長をしない
  • 存続期間が満了した場合において、借地権者(借主)は借地権設定者(貸主)に建物その他土地に附属させた物の買取りを請求しない

 
3つの特約を定めることができる借地権のことです。
この場合においては、その特約は、公正証書等の書面によってしなければなりません。

事業用定期借地権等

 
事業用定期借地権等とは、専ら事業用の建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する事業用定期借地権と、存続期間を10年以上30年未満として借地権を設定する事業用借地権の総称のことです。
 
事業用定期借地権は、
 

  • 契約の更新をしない
  • 建物の築造による存続期間の延長をしない
  • 存続期間が満了した場合において、借地権者(借主)は借地権設定者(貸主)に建物その他土地に附属させた物の買取りを請求しない

 
3つの特約を定めることができます。
 
事業用定期借地権等として借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければなりません。

建物譲渡特約付借地権

 
建物譲渡特約付借地権とは、借地権を消滅させるため、借地権設定後30年以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者(貸主)に相当の対価譲渡する旨を定めた借地権のことです。


借地権の比較

 
借地権の主な違いは、下表のとおりです。
 

  普通借地権

定期借地権

一般定期借地権

事業用定期借地権

事業用借地権

建物譲渡特約付借地権

存続期間

30年以上

50年以上

30年以上50年未満 10年以上30年未満 30年以上

更新

1回目は、20年以上
2回目以降は、10年以上

なし

目的

建物の所有

建物の所有

事業用建物の所有

建物の所有

権利の内容

ー 

契約において、次に挙げる3つの特約を定めることができる
①契約の更新をしない
②建物の築造による存続期間の延長をしない
③建物買取請求権を行使しない

借地借家法の次に挙げる規定が排除される
①契約の更新
②建物の築造による存続期間の延長
③建物買取請求権

借地権設定時に、設定後30年以上経過した日に建物を借地権設定者(貸主)に相当の対価で譲渡する旨を定めることができる

契約方法

 制限なし

上記3つの特約は書面による

公正証書による

制限なし

存続期間満了時

建物買取請求

原則として更地にして返還

建物の譲渡


借家権とは

 
借家権とは、旧借家法で定められた、建物の賃借権のことです。
なお、借地借家法においては、「借家権」という用語は定義されていませんが、ここでは借地権にならって借家権という用語を使って説明をしています。
 
借家権は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、対抗することができます。
 
建物の借貸が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相応となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができます。なお、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従います。ただし、普通借家契約の場合において、一定の期間建物の借賃を減額しない旨の特約は、賃借人が不利となるため、無効となります。
 
借家権には、普通借家権定期借家権があります。


普通借家権

 
普通借家権とは、借家契約の更新のある借家権のことです。
 
普通借家権の契約期間は、原則として1年以上です。ただし、期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めのない建物の賃貸借とみなします。
 
建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなします。ただし、期間は、定めがないものとします。
 
建物の賃貸人が賃貸借の約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6か月を経過することによって終了します。
 
ただし、賃貸人による更新をしない旨の通知、条件を変更しなければ更新をしない旨の通知、解約の申入れは、正当な事由があると認められる場合でなければ、することができません。
 
建物の賃貸借について期間の定めのない場合において、建物の賃借人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から3か月を経過することによって終了します。賃借人からの解除の申入れは、正当な事由は必要ありません


定期借家権

 
定期借家権とは、借家契約に期間の定めがある借家権のことです。
 
定期借家権の契約期間は自由に設定することができ、1年未満の期間を定めることもできます。ただし、期間の定めがない契約は、無効となります。
 
期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、契約の更新がないこととする旨を定めることができます。この場合、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければけれなりません。説明をしなかった場合には、定期借家契約として成立せず、普通借家契約となります。
 
建物の賃貸借において、期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6か月前までの間に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができません。
 
ただし、床面積200㎡未満居住用の建物の賃貸借において、転勤療養親族の介護その他やむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができます。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から1か月を経過することによって終了します。


造作買取請求権

 
造作買取請求権とは、建物の賃貸人の同意を得て、賃借人が建物に付加した造作(畳、襖、エアコン等)がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対して、その造作を時価買い取るべきことを請求することができる権利のことです。
 
なお、普通借家契約及び定期借家契約において、賃借人に造作買取請求権をあらかじめ放棄させる旨の特約を定めることができます。


借家権の比較

 
借家権の主な違いは、下表のとおりです。
 

 

普通借家権

定期借家権

期間

原則として1年以上
期間が1年未満の場合、期間の定めのない契約とみなされる

自由に設定できる
ただし、期間の定めのない契約は、無効

更新

あり
賃貸人は、正当な事由がなければ更新の拒絶はできない

なし

契約方法

制限なし

書面による

借賃増減請求権

特約により、借賃増減請求権を排除することはできない

特約により、借賃増減請求権を排除することはできる

造作買取請求権

特約により、造作買取請求権を排除することはできる