都市計画法について
都市計画法は、都市計画の内容や決定手続、都市計画制限、都市計画事業など、都市計画に関する必要事項を定めることで、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする法律です。
都市計画は、農林漁業との調和を保ちつつ、健康で文化的な都市生活と機能的な都市活動を確保することを基本理念としています。そのため、適正な制限のもとで土地の合理的な利用を図ることが求められます。
以下の都市計画は都道府県が、その他の都市計画は市町村が定めます。
- 都市計画区域の整備、開発および保全の方針
- 区域区分
- 都市再開発方針等
- 都市計画法で定める一部の地域地区
- 市町村の区域を超える広域的な地域地区等
- 市街地開発事業
- 市街地開発事業等予定区域
市町村が都市計画を決定する場合は、市町村都市計画審議会の議を経る必要があります。
また、都道府県や市町村が都市計画を決定した際は、その旨を告示し、告示の日から効力が生じます。
さらに、複数の都府県にまたがる都市計画区域に関する都市計画は、国土交通大臣および市町村が定めます。
都市計画区域と準都市計画区域について
都市計画区域
都市として総合的に整備・開発・保全する必要がある区域で、都道府県が指定します。
都市計画区域には、以下の区分があります。
- 線引都市計画区域:市街化区域と市街化調整区域に区分する区域
- 非線引都市計画区域:上記の区分を行わない区域
市街化区域
すでに市街地を形成している区域、およびおおむね10年以内に優先的・計画的に市街化を図るべき区域で、必ず用途地域を定める必要があります。
市街化調整区域
市街化を抑制すべき区域で、原則として用途地域は定めません。
準都市計画区域
都市計画区域外のうち、土地利用の整序や環境保全の措置を講じないまま放置すると、将来の都市整備・開発・保全に支障が生じるおそれがある区域で、都道府県が指定します。市街化区域や市街化調整区域の区分は定められませんが、用途地域は定めることができます。
用途地域について
用途地域とは、土地の利用目的を定めた地域地区を指します。
市街化区域では、市街化を計画的に進めるため、用途地域の指定が義務付けられています。一方、市街化調整区域は市街化を抑制する区域であり、原則として用途地域は定めません。
用途地域の分類
用途地域は、住居系・商業系・工業系の3つに大別され、以下のように細分されます。
| 区分 |
用途地域名 |
定義 |
| 住居系 |
第一種低層住居専用地域 | 低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 |
| 第二種低層住居専用地域 |
主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 |
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| 第一種中高層住居専用地域 |
中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 |
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| 第二種中高層住居専用地域 |
主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 |
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| 第一種住居地域 |
住居の環境を保護するため定める地域 |
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| 第二種住居地域 |
主として住居の環境を保護するため定める地域 |
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| 準住居地域 |
道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域 |
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| 田園住居地域 | 農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 | |
| 商業系 | 近隣商業地域 | 近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため定める地域 |
| 商業地域 | 主として商業その他の業務の利便を増進するため定める地域 | |
| 工業系 | 準工業地域 | 主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域 |
| 工業地域 | 主として工業の利便を増進するため定める地域 | |
| 工業専用地域 |
工業の利便を増進するため定める地域 |
その他の地域地区について
都市計画区域では、用途地域のほか、以下のような地域・地区・街区を都市計画で定めることができます。
| 区分 |
定義 |
| 特別用途地区 |
用途地域内の一定の地区における当該地区の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護等の特別の目的の実現を図るため当該用途地域の指定を補完して定める地区 |
| 特別用途制限地域 |
用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く)内において、その良好な環境の形成または保持のため当該地域の特性に応じて合理的な土地利用が行われるよう、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域 |
| 特例容積率適用地区 |
第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域または工業地域内の適正な配置及び規模の公共施設を備えた土地の区域において、建築基準法の規定による建築物の容積率の限度からみて未利用となっている建築物の容積の活用を促進して土地の高度利用を図るため定める地区 |
| 高層住居誘導地区 |
住居と住居以外の用途とを適正に配分し、利便性の高い高層住宅の建設を誘導するため、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域又は準工業地域でこれらの地域に関する都市計画において建築基準法に規定する建築物の容積率が40/10または50/10と定められたものの内において、建築物の容積率の最高限度、建築物の建蔽率の最高限度および建築物の敷地面積の最低限度を定める地区 |
| 高度地区 |
用途地域内において、市街地の環境を維持し、または土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度または最低限度を定める地区 |
| 高度利用地区 |
用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため、建築物の容積率の最高限度および最低限度、建築物の建蔽率の最高限度、建築物の建築面積の最低限度並びに壁面の位置の制限を定める地区 |
| 特定街区 |
市街地の整備改善を図るため街区の整備または造成が行われる地区について、その街区内における建築物の容積率並びに建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限を定める街区 |
| 都市再生特別地区 | 都市再生特別措置法の規定により定める地区 |
| 居住調整地域 | |
| 居住環境向上用途誘導地区 | |
| 特別用途誘導地区 | |
| 防火地域 | 市街地における火災の危険を防除するため定める地域 |
| 準防火地域 | |
| 特定防災街区整備地区 | 密集市街地整備法の規定により定める地区 |
| 景観地区 | 景観法の規定により定める地区 |
| 風致地区 | 都市の風致を維持するため定める地区 |
| 駐車場整備地区 | 駐車場法の規定により定める地区 |
| 臨港地区 | 港湾を管理運営するため定める地区 |
| 歴史的風土特別保存地区 | 古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法の規定により定める地区 |
| 第一種歴史的風土保存地区 | 明日香村における歴史的風土の保存および生活環境の整備等に関する特別措置法の規定により定める地区 |
| 第二種歴史的風土保存地区 | |
| 緑地保全地域 | 都市緑地法の規定により定める地域地区 |
| 特別緑地保全地区 | |
| 緑化地域 | |
| 流通業務地区 | 流通業務市街地の整備に関する法律の規定により定める地区 |
| 生産緑地地区 | 生産緑地法の規定により定める地区 |
| 伝統的建造物群保存地区 | 文化財保護法の規定により定める地区 |
| 航空機騒音障害防止地区 | 特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法の規定により定める地区 |
| 航空機騒音障害防止特別地区 |
開発行為等の規制について
開発行為とは、主として建築物の建築または特定工作物の建設を目的として行う、土地の区画形質の変更を指します。
都市計画区域または準都市計画区域内で開発行為を行う場合、事前に都道府県知事の許可が必要です。
開発許可が必要な開発行為の規模
| 市街化区域 |
1,000㎡以上の開発行為 |
| 市街化調整区域 |
規模に関係なく許可が必要(ただし、農林漁業用建築物やこれらの業務従事者の居住用建築物、鉄道施設等の公益上必要な建築物の建築を目的とする開発行為は許可不要) |
| 非線引区域 |
3,000㎡以上の開発行為 |
| 準都市計画区域 |
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| 上記以外の区域 | 10,000㎡(1ha)以上の開発行為 |
許可不要となる主な開発行為
- 規模が政令で定める基準未満のもの。
- 農林漁業用建築物や業務従事者の居住用建築物。
- 鉄道施設、図書館、公民館、変電所など公益上必要な建築物。
- 都市計画事業、土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅街区整備事業、防災街区整備事業の施行によるもの。
- 公有水面埋立法の免許の受けた埋立地で告示のないもの。
- 非常災害に伴う応急措置
- 通常の管理行為や軽易な行為、その他の行為で政令の定めるもの。
開発行為の申請者は、開発行為に関係する公共施設管理者と事前協議し、同意を得る必要があります。
開発許可を受けた者は、開発行為の内容を変更する場合は、都道府県知事の許可が必要です。ただし、軽微な変更の場合は、都道府県知事の許可は不要です。
開発許可を受けた者は、開発行為の工事が完了した際、都道府県知事への届出が必要です。都道府県知事は届出を受けると、遅滞なく、工事が開発許可の内容に適合しているか検査し、適合が確認された場合は検査済証を交付しなければなりません。
また、都道府県知事は、検査済証を交付した際、遅滞なく、工事完了の旨を公告しなければなりません。公告があるまで、開発許可を受けた開発区域内では建築物の建築や特定工作物の建設は原則禁止です。ただし、都道府県知事が支障なしと判断した場合や、開発行為の施行または工事の実施に同意していない者は、建築・建設をすることができます。
開発許可を受けた者は、開発行為の工事を廃止した場合、遅滞なく、都道府県知事への届出が必要です。
都市計画事業について
都市計画事業とは、都市計画法に基づき認可または承認を受けて行う、都市計画施設の整備事業および市街地開発事業を指します。
原則として、都市計画事業は市町村が都道府県知事の認可を受けて施行します。ただし、市町村による施行が困難または不適当な場合、その他特別な事情がある場合には、都道府県が国土交通大臣の認可を受けて施行することができます。