宅地建物取引業法
最終更新日: 2024-06-08

宅地建物取引業法とは

 
宅地建物取引業法とは、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、その業務の適正な運営と宅地及び建物の取引の公正とを確保するとともに、宅地建物取引業の健全な発達を促進し、それによって購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ることを目的とした法律です。


宅地建物取引業

 
宅地建物取引業とは、
 

  • 宅地もしくは建物売買もしくは交換
  • 宅地もしくは建物売買交換もしくは賃借代理
  • 宅地もしくは建物売買交換もしくは賃借媒介

 
をする行為で業として行うもののことです。


宅地建物取引業者

 
宅地建物取引業者とは、国土交通大臣2以上の都道府県の区域内に事務所を設置してその事業を営もうとする場合)又は都道府県知事1つの都道府県の区域内にのみ事務所を設置してその事業を営もうとする場合)の免許を受けて宅地建物取引業を営む者のことです。
 
免許の有効期間は5年で、有効期間満了後に引き続き宅地建物取引業を営もうとする者は、免許の更新を受けなければなりません。
 
国土交通省及び都道府県には、それぞれ宅地建物取引業者名簿を備えなければなりません。
国土交通大臣及び都道府県知事は、宅地建物取引業者名簿に、その免許を受けた宅地建物取引業者に関する宅地建物取引業法で規定された事項を登載しなければなりません。
なお、宅地建物取引業者は、宅地建物取引業者名簿に登載されている事項について変更があった場合においては、30日以内に、その免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければなりません。
 
宅地建物取引業者は、事務所ごとに従事者5名に対して1名以上の割合で、成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければなりません。設置する宅地建物取引士の規定数を満たさなくなったときは、2週間以内に規定に適合させるため必要な措置をとらなければなりません。


宅地建物取引士

 
宅地建物取引士資格試験に合格した者で、宅地もしくは建物の取引に関し国土交通省令で定める期間以上の実務の経験を有するもの又は国土交通大臣がその実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認めたものは、当該試験を行った都道府県知事の登録を受けることができます。
 
ただし、次のいずれかに該当する者については、登録を受けることができません。
 

  • 宅地建物取引業係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 免許を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者(免許を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前60日以内にその法人の役員であった者で当該取消しの日から5年を経過しないもの)
  • 免許の取消処分の聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分をする日又は当該処分をしないことを決定する日までの間に届出があった者(宅地建物取引業の廃止について相当の理由がある者を除く)で当該届出の日から5年を経過しないもの
  • 合併により消滅した法人又は届出があった法人(合併、解散又は宅地建物取引業の廃止について相当の理由がある法人を除く)の公示の日前60日以内役員であった者で当該消滅又は届出の日から5年を経過しないもの
  • 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  • この法律もしくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反したことにより、又は暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から5年を経過しない者
  • 暴力団員等
  • 登録の消除の処分を受け、その処分の日から5年を経過しない者
  • 登録の消除の処分の聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分をする日又は当該処分をしないことを決定する日までの間に登録の消除の申請をした者(登録の消除の申請について相当の理由がある者を除く)で当該登録が消除された日から5年を経過しないもの
  • 禁止の処分を受け、その禁止の期間中にその登録が消除され、まだその期間が満了しない者
  • 心身の故障により宅地建物取引士の事務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定めるもの

 
登録を受けている者は、当該登録をしている都道府県知事の管轄する都道府県以外の都道府県に所在する宅地建物取引業者の事務所の業務に従事し、又は従事しようとするときは、当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事に対し、当該登録をしている都道府県知事を経由して、登録の移転の申請をすることができます。ただし、禁止の処分を受け、その禁止の期間が満了していないときは、移転の申請をすることはできません。
 
なお、登録を受けている者は、登録を受けている事項に変更があったときは、遅滞なく、変更の登録を申請しなければなりません。
 
また、登録を受けている者が死亡した場合、その相続人死亡の事実をしった日から30日以内に、その旨を当該登録をしている都道府県知事に届け出なければなりません。
 
登録を受けている者は、登録をしている都道府県知事に対し、宅地建物取引士証の交付を申請することができ、宅地建物取引士証の交付を受けようとする者は、登録をしている都道府県知事が指定する講習で交付の申請前6月以内に行われるものを受講しなければなりません。ただし、試験に合格した日から1年以内に宅地建物取引士証の交付を受けようとする者については、受講する必要はありません。そして、宅地建物取引士証の交付を受けた者は、宅地建物取引士となることができます。
 
宅地建物取引士証の有効期間は5年で、申請により更新します。
 
宅地建物取引士は、取引の関係者から請求があったときは、宅地建物取引士証を提示しなければなりません。
 
宅地建物取引業において、次に掲げる業務は、宅地建物取引士の独占業務です。
 

  • 重要事項の説明
  • 重要事項説明書(35条書面)への記名
  • 契約書(37条書面)への記名

重要事項の説明と重要事項説明書(35条書面)

 
宅地建物取引業者は、
 

  • 宅地建物の売買、交換、貸借の相手方
  • 宅地建物の売買、交換、貸借の代理を依頼した者
  • 宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換、貸借の各当事者

 
に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地建物に関し、その売買、交換、貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士に、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければなりません。
 

  • 当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあっては、その名称)
  • 都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買もしくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要
  • 当該契約が建物の貸借の契約以外のものであるときは、私道に関する負担に関する事項
  • 飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)
  • 当該宅地又は建物が宅地の造成又は建築に関する工事の完了前のものであるときは、その完了時における形状構造その他国土交通省令・内閣府令で定める事項
  • 当該建物が建物の区分所有等に関する法律に規定する区分所有権の目的であるものであるときは、当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容、共用部分に関する規約の定めその他の一棟の建物又はその敷地(一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又はこれに関する権利がそれらの建物の所有者の共有に属する場合には、その土地を含む)に関する権利及びこれらの管理又は使用に関する事項で契約内容の別に応じて国土交通省令・内閣府令で定めるもの
  • 当該建物が既存の建物であるときは、次に掲げる事項
    イ 建物状況調査(実施後国土交通省令で定める期間を経過していないものに限る)を実施しているかどうか、及びこれを実施している場合におけるその結果の概要
    ロ 設計図書点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定めるものの保存の状況
  • 代金、交換差金、借賃以外に授受される金銭の額及び当該金銭の授受の目的
  • 契約の解除に関する事項
  • 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
  • 手付金等を受領しようとする場合における措置の概要
  • 支払金又は預り金(宅地建物取引業者の相手方等からその取引の対象となる宅地又は建物に関し受領する代金、交換差金、借賃その他の金銭(保全の措置が講ぜられている手付金等を除く)であって国土交通省令・内閣府令で定めるものをいう)を受領しようとする場合において、保証の措置その他国土交通省令・内閣府令で定める保全措置を講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要
  • 代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあっせんの内容及び当該あっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置
  • 当該宅地又は建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結その他の措置で国土交通省令・内閣府令で定めるものを講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要
  • その他宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護の必要性及び契約内容の別を勘案して、次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める命令で定める事項
    イ 事業を営む場合以外の場合において宅地又は建物を買い、又は借りようとする個人である宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に資する事項を定める場合 国土交通省令・内閣府令
    ロ イに規定する事項以外の事項を定める場合 国土交通省令

 
また、宅地建物取引業者は、宅地建物の割賦販売(代金の全部又は一部について、目的物の引渡し後1年以上の期間にわたり、かつ、2回以上に分割して受領することを条件として販売することをいう)の相手方に対して、その者が取得しようとする宅地建物に関し、その割賦販売の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士に、先に掲げた事項のほか、次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければなりません。
 

  • 現金販売価格(宅地建物の引渡しまでにその代金の全額を受領する場合の価格)
  • 割賦販売価格(割賦販売の方法により販売する場合の価格)
  • 宅地又は建物の引渡しまでに支払う金銭の額及び賦払金(割賦販売の契約に基づく各回ごとの代金の支払分で目的物の引渡し後のもの)の額並びにその支払の時期及び方法

 
さらに、宅地建物取引業者は、宅地建物に係る信託(当該宅地建物取引業者を委託者とするものに限る)の受益権の売主となる場合における売買の相手方に対して、その者が取得しようとしている信託の受益権に係る信託財産である宅地建物に関し、その売買の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士に、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければなりません。
 

  • 当該信託財産である宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあっては、その名称)
  • 当該信託財産である宅地又は建物に係る都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で政令で定めるものに関する事項の概要
  • 当該信託財産である宅地又は建物に係る私道に関する負担に関する事項
  • 当該信託財産である宅地又は建物に係る飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)
  • 当該信託財産である宅地又は建物が宅地の造成又は建築に関する工事の完了前のものであるときは、その完了時における形状、構造その他国土交通省令で定める事項
  • 当該信託財産である建物が建物の区分所有等に関する法律に規定する区分所有権の目的であるものであるときは、当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容、共用部分に関する規約の定めその他の一棟の建物又はその敷地(一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又はこれに関する権利がそれらの建物の所有者の共有に属する場合には、その土地を含む)に関する権利及びこれらの管理又は使用に関する事項で国土交通省令で定めるもの
  • その他当該信託の受益権の売買の相手方の利益の保護の必要性を勘案して国土交通省令で定める事項

 
宅地建物取引業者は、宅地建物取引業者の相手方等(宅地建物取引業者に該当する者を除く)に対して、当該売買、交換、貸借の契約が成立するまでの間に、
 
当該宅地建物取引業者が指定を受けた一般社団法人の社員でないときは、
 

  • 営業保証金を供託した主たる事務所の最寄りの供託所及びその所在地

 
当該宅地建物取引業者が指定を受けた一般社団法人の社員であるときは、
弁済業務開始日前においては、
 

  • 営業保証金を供託した主たる事務所の最寄りの供託所及びその所在地
  • 社員である旨、当該一般社団法人の名称、住所及び事務所の所在地並びに供託所及びその所在地

 
弁済業務開始日以後においては、
 

  • 社員である旨、当該一般社団法人の名称、住所及び事務所の所在地並びに供託所及びその所在地

 
を説明するようにしなければなりません。
 
宅地建物取引士は、重要事項の説明をするときは、説明の相手方に対し、宅地建物取引士証提示しなければなりません。
また、書面の交付にあたっては、宅地建物取引士は、当該書面に記名しなければなりません。
なお、取引の相手方等が宅地建物取引業者である場合には、書面の交付のみ説明は不要です。


37条書面

 
宅地建物取引業者は、宅地建物の売買交換に関し、
 

  • 自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に
  • 当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に
  • その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、

 
遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければなりません。
 

  • 当事者の氏名(法人にあっては、その名称)及び住所
  • 当該宅地の所在地番その他当該宅地を特定するために必要な表示又は当該建物の所在種類構造その他当該建物を特定するために必要な表示
  • 当該建物が既存の建物であるときは、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項
  • 代金又は交換差金の額並びにその支払の時期及び方法
  • 宅地又は建物の引渡しの時期
  • 移転登記の申請の時期
  • 代金及び交換差金以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、その額並びに当該金銭の授受の時期及び目的
  • 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
  • 損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容
  • 代金又は交換差金についての金銭の貸借のあっせんに関する定めがある場合においては、当該あっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置
  • 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定めがあるときは、その内容
  • 当該宅地若しくは建物が種類若しくは品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置についての定めがあるときは、その内容
  • 当該宅地又は建物に係る租税その他の公課の負担に関する定めがあるときは、その内容

 
また、宅地建物取引業者は、宅地建物の貸借に関し、
 

  • 当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、
  • その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、

 
次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければなりません。
 

  • 当事者の氏名(法人にあっては、その名称)及び住所
  • 当該宅地の所在地番その他当該宅地を特定するために必要な表示又は当該建物の所在種類構造その他当該建物を特定するために必要な表示
  • 当該建物が既存の建物であるときは、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項
  • 宅地又は建物の引渡しの時期
  • 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
  • 損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容
  • 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定めがあるときは、その内容
  • 借賃の額並びにその支払の時期及び方法
  • 借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、その額並びに当該金銭の授受の時期及び目的

 
なお、宅地建物取引業者は、上記の規定により交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士に、当該書面に記名させなければなりません。


クーリング・オフ

 
宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所等以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除を行うことができます。この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができません
 

  • 買受けの申込みをした者又は買主が、申込みの撤回又は売買契約の解除を行うことができる旨及びその申込みの撤回又は売買契約の解除を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して8日を経過したとき
  • 買受けの申込みをした者又は買主が、当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払ったとき
  • 事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結したとき
  • 宅地建物取引業者相互間の取引の場合

 
なお、申込みの撤回又は売買契約の解除は、申込者等が書面を発した時に、その効力を生じます。

申込みの撤回又は売買契約の解除が行われた場合には、宅地建物取引業者は、申込者等に対し、速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければなりません。
 
クリーリング・オフの規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効となります。


営業保証金

 
宅地建物取引業者は、営業保証金を主たる事務所最寄りの供託所に供託しなければなりません。営業保証金の額は、主たる事務所につき1,000万円その他の事務所につき事務所ごと500万円となります。営業保証金は、金銭以外にも、国債証券、地方債証券その他の国土交通省令で定める有価証券を充てることができます。
 
宅地建物取引業者は、営業保証金を供託したときは、その供託物受入れの記載のある供託書の写しを添附して、その旨をその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならず、届出をした後でなければ、その事業を開始することはできません。
 
国土交通大臣又は都道府県知事は、免許をした日から3か月以内に宅地建物取引業者が届出をしないときは、その届出をすべき旨の催告をしなければなりません。そして、催告が到達した日から1か月以内に宅地建物取引業者が届出をしないときは、その免許を取り消すことができます。
 
宅地建物取引業者と宅地建物取引業に関し取引をした者(宅地建物取引業者に該当する者を除く)は、その取引により生じた債権に関し、宅地建物取引業者が供託した営業保証金について、その債権の弁済を受ける権利を有します。
 
宅地建物取引業者は、権利を有する者がその権利を実行したため、営業保証金が不足することとなったときは、2週間以内にその不足額を供託し、その供託物受入れの記載のある供託書の写しを添附して、その旨をその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければなりません。
 
宅地建物取引業者は、その主たる事務所移転したためその最寄りの供託所が変更した場合において、金銭のみを営業保証金として供託しているときは、遅滞なく、営業保証金を供託している供託所に対し、移転後の主たる事務所の最寄りの供託所への営業保証金の保管替えを請求し、金銭と有価証券又は有価証券のみを営業保証金として供託しているときは、遅滞なく、営業保証金を移転後の主たる事務所の最寄りの供託所に新たに供託しなければなりません。
 
宅地建物取引業の免許の有効期間が満了したとき、免許が効力を失ったとき、免許を取り消されたときは、宅地建物取引業者であった者又はその承継人は、当該宅地建物取引業者であった者が供託した営業保証金を取り戻すことができます。
また、一部の事務所を廃止した場合において、営業保証金の超過額についても取り戻すことができます。
なお、営業保証金の取りもどしは、権利を有する者に対し、6か月を下らない一定期間内に申し出るべき旨を公告し、その期間内にその申出がなかつた場合でなければ、取り戻すことができません。ただし、営業保証金を取りもどすことができる事由が発生した時から10年を経過したときは、広告の必要はありません。


弁済業務保証金

 
次に掲げる者は、次の掲げる日までに、弁済業務保証金に充てるため、弁済業務保証金分担金を当該宅地建物取引業保証協会に納付しなければなりません。弁済業務保証分担金の額は、主たる事務所につき60万円その他の事務所につき事務所ごと30万円となります。
 

  • 宅地建物取引業者で宅地建物取引業保証協会に加入しようとする者
    その加入しようとする日
  • 指定を受けた宅地建物取引業保証協会の社員である者
    弁済業務開始日の1か月前の日

 
宅地建物取引業保証協会の社員は、弁済業務保証金分担金を納付した後に、新たに事務所を設置したときは、その日から2週間以内に、弁済業務保証金分担金を当該宅地建物取引業保証協会に納付しなければなりません。
 
宅地建物取引業保証協会は、弁済業務保証金分担金の納付を受けたときは、その日から1週間以内に、その納付を受けた額に相当する額の弁済業務保証金を法務大臣及び国土交通大臣の定める供託所に供託しなければなりません。

宅地建物取引業保証協会の社員と宅地建物取引業に関し取引をした者(宅地建物取引業者に該当する者を除く)は、その取引により生じた債権に関し、当該社員が社員でないとしたならばその者が供託すべき営業保証金の額に相当する額の範囲内において、当該宅地建物取引業保証協会が供託した弁済業務保証金について、弁済を受ける権利を有します。
宅地建物取引業保証協会は、弁済を受ける権利の実行があった場合においては、2週間以内に、その権利の実行により還付された弁済業務保証金の額に相当する額の弁済業務保証金を供託し、当該還付に係る社員又は社員であった者に対し、当該還付額に相当する額の還付充当金を宅地建物取引業保証協会に納付すべきことを通知しなければなりません。
そして、通知を受けた社員又は社員であった者は、その通知を受けた日から2週間以内に、その通知された額の還付充当金を当該宅地建物取引業保証協会に納付しなければなりません。
 
宅地建物取引業保証協会の社員は、規定する期間内に、弁済業務保証金分担金を納付しないときは、その地位を失います。
 
宅地建物取引業保証協会は、社員が社員の地位を失ったときは当該社員であった者が納付した弁済業務保証金分担金の額に相当する額の弁済業務保証金を取り戻すことができます。
また、一部の事務所を廃止した場合において、弁済業務保証分担金の超過額についても取り戻すことができます。
宅地建物取引業保証協会は、弁済業務保証金を取り戻したときは、当該社員であった者又は社員に対し、その取り戻した額に相当する額の弁済業務保証金分担金を返還します。
ただし、宅地建物取引業保証協会は、社員が社員の地位を失ったときは、当該社員であった者に係る宅地建物取引業に関する取引により生じた債権に関し権利を有する者に対し、6か月を下らない一定期間内に認証を受けるため申し出るべき旨を公告しなければなりません。
 
宅地建物取引業者は、宅地建物取引業保証協会の社員の地位を失ったときは、その地位を失つた日から1週間以内に、営業保証金を供託しなければなりません。


広告

 
宅地建物取引業者は、その業務に関して広告をするときは、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはいけません。
 
宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる許可等の処分があった後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告をしてはいけません。
 
宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する広告をするときは、
 

  • 自己が契約の当事者となって売買もしくは交換を成立させるか
  • 代理人として売買、交換もしくは貸借を成立させるか
  • 媒介して売買、交換もしくは貸借を成立させるか

 
取引様態を明示しなければなりません。そして、宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する注文を受けたときは、遅滞なく、その注文をした者に対し、取引態様を明らかにしなければなりません。


媒介契約

 
媒介契約とは、宅地又は建物の売買又は交換の取引に関して、宅地建物取引業者が売主と買主の間に立って取引成立に向けて活動する契約のことです。
 
媒介契約には、一般媒介契約専任媒介契約専属専任媒介契約の3種類があり、契約内容の主な違いは、下表のとおりです。
 

 

一般媒介契約

専任媒介契約

専属専任媒介契約

依頼主側

複数業者への依頼

自分で取引相手を探す

業者側

依頼主への報告義務

なし

2週間に1回以上

1週間に1回以上

指定流通機構への物件登録義務 ※1

なし

休業日を除く7日以内

休業日を除く5日以内

契約の有効期間 ※2

なし

3か月以内

3か月以内

※1:指定流通機構に登録をした宅地建物取引業者は、登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡さなければなりません。
※2:専任媒介契約と専属専任媒介契約の有効期間は、依頼者の申出により、更新することができます。ただし、更新のときから3か月を超えることはできません。

 
宅地建物取引業者は、媒介契約を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければなりません。
 

  • 宅地の所在、地番その他宅地を特定するために必要な表示
  • 建物の所在、種類、構造その他建物を特定するために必要な表示
  • 宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額
  • 宅地又は建物について、依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することの許否及びこれを許す場合の他の宅地建物取引業者を明示する義務の存否に関する事項
  • 建物が既存の建物であるときは、依頼者に対する建物状況調査(建物の構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分の状況の調査であって、経年変化その他の建物に生じる事象に関する知識及び能力を有する者が実施するもの)を実施する者のあっせんに関する事項
  • 媒介契約の有効期間及び解除に関する事項
  • 宅地又は建物の指定流通機構への登録に関する事項
  • 報酬に関する事項
  • その他国土交通省令・内閣府令で定める事項

 
宅地建物取引業者の媒介により、売買、交換が成立した場合、宅地建物取引業者は売買契約に基づき、依頼者から報酬を受け取ることができます。ただし、宅地建物取引業法により報酬額の上限が定められおり、下表のとおりとなっています。
 

取引金額

報酬限度額(消費税別)

200万円以下

取引金額 ✕ 5%

200万円超 400万円以下

取引金額 ✕ 4% + 2万円

400万円超

取引金額 ✕ 3% + 6万円

 
なお、宅地建物取引業者に宅地又は建物の売買又は交換の代理を依頼する代理契約においても媒介契約の規定が準用されます。


債務不履行

 
債務とは、不動産の売買契約において
 

  • 買主の代金を支払う債務(代金支払債務)
  • 売主の不動産を引渡す債務(不動産引渡債務)
  • 権利の移転についての対抗要件(登記等)

 
を備えさせる義務のことです。
 
債務不履行とは、債権者が債務の履行をしないことで、次の3つの形態があります。
 
履行不能
履行不能とは、債権の成立後、債務者の故意または過失により、債務の履行が不可能となることです。
 
履行遅滞
履行遅滞とは、債権を履行することが可能であるにもかかわらず、債務を履行すべき時期を過ぎても、債権者の故意または過失により、債務を履行しないことです。
 
不完全履行
不完全履行とは、債務の履行がなされたが、債権者の故意または過失により、その履行が完全なものでないことです。
 
債務不履行が生じた場合には、債権者は債務者に対して損害賠償請求をすることができます。
また、原則として相当の期間を定めて履行の催告をし、期間内に履行されなければ、契約解除をすることができます。
なお、履行不能の場合には、催告なく直ちに契約解除をすることができます。
 
宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の2/10(20%)を超えることはできません。
この規定に反する特約は、代金の額の2/10(20%)を超える部分について、無効となります。


手付金

 
手付金とは、不動産の売買契約の際に買主が売主に支払うお金のことで、次の3種類があります。
 
解約手付
解約手付とは、手付金の授受により、売主と買主に解約権を留保させるものです。
 
宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであっても、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取引業者その倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができます。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、契約を解除することはできません
 
違約手付
違約手付とは、債務不履行があった場合、買主違約のときには手付金が違約金として没収され、売主違約のときには手付金を返還しなければらないとともに、手付金と同額を違約金として支払わなければならないというものです。
 
証約手付
証約手付とは、不動産売買契約が成立した証として、買主から売主に対して交付される手付金のことです。契約の成立を明確にするために支払いが行われます。
 
なお、宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の2/10(20%)を超える額の手付を受領することができません。ただし、宅地建物取引業者相互間の取引には適用されません。

この規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効となります。
 

手付金等の保全

 
宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建築に関する工事の完了前において行う当該工事に係る宅地又は建物の売買で自ら売主となるものに関しては、次に掲げる措置を講じた後でなければ、買主から手付金等を受領することはできません。
 

  • 銀行等との間において、宅地建物取引業者が受領した手付金等の返還債務を負うこととなった場合において当該銀行等がその債務を連帯して保証することを委託する契約(保証委託契約)を締結し、かつ、当該保証委託契約に基づいて当該銀行等が手付金等の返還債務を連帯して保証することを約する書面を買主に交付すること
  • 保険事業者との間において、宅地建物取引業者が受領した手付金等の返還債務の不履行により買主に生じた損害のうち少なくとも当該返還債務の不履行に係る手付金等の額に相当する部分を当該保険事業者がうめることを約する保証保険契約を締結し、かつ、保険証券又はこれに代わるべき書面を買主に交付すること

 
ただし、次の場合には、措置を講じる必要はありません。
 

  • 当該宅地若しくは建物について買主への所有権移転の登記がされたとき
  • 買主が所有権の登記をしたとき
  • 当該宅地建物取引業者が受領しようとする手付金等の額(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)が代金の額の5/100(5%)以下であり、かつ、宅地建物取引業者の取引の実情及びその取引の相手方の利益の保護を考慮して政令で定める額以下であるとき

契約不適合責任

 
契約不適合責任とは、売買契約等に基づいて、売主が引き渡した目的物の種類・品質・数量に関して契約内容に適合していなかった場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。
 
買主は売主に対して、次の4つの権利を請求することができます。
 

  • 履行の追完請求(目的物の補修、代替物の引渡し、不足分の引渡し)
  • 代金減額請求
  • 損害賠償請求(売主に帰責事由がある場合に限る)
  • 契約解除

 
なお、買主が売主へ目的物の種類品質に関して契約不適合責任を請求するためには、原則として契約不適合の事実を知ったときから1年以内に売主に通知しなければなりません。
ただし、売主が引渡し時にその不適合を知っていたとき、または重大な過失によって知らなかったときは、1年以内の通知は必要ありません。
通知後でも、権利を行使することができることを知ったときから5年、または権利を行使することができるときから10年を経過すると、消滅時効により請求権は消滅します。
また、目的物の数量権利に関して契約不適合責任を請求するためには、1年以内の通知は必要ありません。
 
契約不適合責任の規定は任意規定となっており、売主および買主がともに宅建業者でない場合等は、特約により排除、変更が可能です。


危険負担 

 
改正民法上では、不動産の売買契約が成立してから引越しまでの間に、当該物件が売主および買主の責任でない事由(自然災害等)で滅失した場合、買主は、売買代金の支払いの履行を拒むことができます。
なお、買主の責任である事由によって滅失した場合には、買主は売買代金の支払いの履行を拒むことはできません。


住宅の品質確保の促進等に関する法律 

 
住宅の品質確保の促進等に関する法律とは、住宅の性能の表示基準を定めるとともに、住宅新築工事の請負人および新築住宅の売主に対して、住宅の一定部位について10年間の契約不適合責任を義務付けることにより、住宅の品質確保を目指す法律のことです。
 
この法律の主な内容は、次のとおりです。
 

10年間の契約不適合責任の義務付け等

 
新築住宅の構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分の契約不適合(瑕疵)について、売主・工事請負人は、買主に引渡しした時点から10年間、契約不適合責任を負うことを義務付けられ、特約により20年以内に延長することができます。
 

住宅性能評価書

 
国土交通大臣により登録を受けた評価専門会社等(登録住宅性能評価機関)に依頼することにより、住宅性能評価書を作成することができます。
住宅性能評価書には、設計図等をもとに作成される設計住宅性能評価書と、実際に住宅を検査することにより作成される建設住宅性能評価書があります。
 
新築住宅の建設工事完了後に、当該新築住宅の売買契約を締結した売主は、建設住宅性能評価書もしくはその写しを売買契約書に添付し、または買主に対し建設住宅性能評価書もしくはその写しを交付した場合においては、当該建設住宅性能評価書またはその写しに表示された性能を有する新築住宅を引き渡すことを契約したものとみなすとされています。
 

指定住宅紛争処理機関・住宅紛争処理支援センター

 
建設住宅性能評価書が交付された住宅について、請負契約または売買契約に関する紛争が発生した場合には、紛争の当事者は弁護士会内部に設置されている指定住宅紛争処理機関に対して、紛争の処理を申請することができます。
 
また、弁護士会による紛争処理を支援する等の目的で、住宅紛争処理支援センターを設置することとされ、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターが国土交通大臣により指定されています。
 
住宅紛争処理支援センターは、弁護士会に対して紛争処理の業務に要する費用を助成するほか、登録住宅性能評価機関から負担金を徴収する等の事務を行っています。


壁芯面積と内法面積

 
壁芯面積とは、建物の床面積を測定する際に、壁の厚みの中心線に囲まれた面積のことです。
壁芯面積の場合、壁の厚みの分が床面積に加算されるので、実際に使用可能な部分よりも床面積が大きくなります。
マンションのパンプレット等は、壁芯面積で表示されています。
 
内法面積とは、壁の厚みを考慮せず、壁の内側部分の面積のことです。
不動産登記法では、一戸建て等は壁芯面積で、分譲マンション等の区分所有建物は内法面積で登記することとされています。


公簿売買と実測売買

 
土地の売買価格の決定方法には、公簿売買と実測売買があります。
 
公簿売買とは、登記簿等に記載されている土地の面積である公簿面積を基準として売買価格を決める方式のことです。
後日、調査等によって土地面積に増減があったとしても、売買価格の精算は行いません。
 
実測売買とは、実際に測量した面積を基準として売買価格を決める方式のことです。
契約時において実測面積が判明している場合には精算の必要はありませんが、判明していない場合は公簿面積で売買価格を決定して契約し、後日、公簿面積と実測面積に差異が生じた場合は、引渡し時に精算を行います。