宅地建物取引業法について
宅地建物取引業法は、宅地建物取引業を営む者に免許制度を設け、事業に必要な規制を行うことで、業務の適正な運営と宅地・建物取引の公正を確保し、宅地建物取引業の健全な発展を促進することを目的としています。これにより、購入者などの利益を保護し、宅地・建物の円滑な流通を図ります。
宅地建物取引業について
宅地建物取引業とは、以下の行為を業として行うことをいいます。
- 宅地もしくは建物の売買もしくは交換
- 宅地もしくは建物の売買、交換もしくは賃借の代理
- 宅地もしくは建物の売買、交換もしくは賃借の媒介
宅地建物取引業者について
宅地建物取引業者とは、宅地建物取引業を営むために、以下のいずれかの免許を受けた者をいいます。
- 国土交通大臣の免許:2つ以上の都道府県に事務所を設置して事業を営む場合
- 都道府県知事の免許:1つの都道府県内にのみ事務所を設置して事業を営む場合
免許の有効期間は5年間で、継続して事業を営む場合は更新が必要です。
宅地建物取引業者名簿
国土交通省および都道府県は、それぞれ宅地建物取引業者名簿を備えます。
国土交通大臣・都道府県知事は、免許を受けた業者に関する法定事項を名簿に登載します。業者は、名簿記載事項に変更があった場合、30日以内に免許権者へ届け出なければなりません。
宅地建物取引士の設置義務
業者は、事務所ごとに従事者5名につき1名以上の割合で、成年者の専任の宅地建物取引士を置く必要があります。規定数を満たさなくなった場合、2週間以内に必要な措置を講じなければなりません。
宅地建物取引士について
宅地建物取引士は、宅地建物取引士資格試験に合格し、国土交通省令で定める期間以上の実務経験を有する、または国土交通大臣が同等以上の能力を認めた者で、都道府県知事の登録を受けた者をいいます。
ただし、次のいずれかに該当する場合、登録を受けることはできません。
- 成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 免許取消しから5年を経過しない者(免許を取り消された者が法人である場合、当該取消しの聴聞公示の日前60日以内にその法人の役員であった者で当該取消しから5年を経過しないもの)
- 免許取消処分の聴聞公示後に当該処分をする日または当該処分をしないことを決定する日までの間に廃業の届出があった者で当該届出から5年を経過しないもの
- 合併により消滅した法人または届出があった法人の公示の日前60日以内に役員であった者で当該消滅または届出から5年を経過しないもの
- 禁錮以上の刑の執行終了、または執行を受けることがなくなってから5年を経過しない者
- 宅地建物取引業法や暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反したことにより、又は暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行終了、または執行を受けることがなくなってから5年を経過しない者
- 暴力団員等
- 登録消除処分から5年を経過しない者
- 登録消除処分の聴聞公示日から当該処分をする日または当該処分をしないことを決定する日までに登録消除申請をした者で当該登録消除日から5年を経過しないもの
- 禁止処分期間中にその登録が消除され、その期間が満了しない者
- 心身の故障により宅地建物取引士の事務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定めるもの
登録後の義務
他の都道府県の事務所に従事する場合は、登録移転申請が必要(禁止処分期間中は不可)です。なお、登録事項に変更があった場合は、遅滞なく変更登録を申請する必要があります。また、死亡した場合、相続人は死亡の事実を知った日から30日以内に届け出なければなりません。
宅地建物取引証
登録者は、登録をしている都道府県知事に宅地建物取引士証の交付申請が可能です。なお、交付申請前6か月以内に指定講習を受講(試験合格から1年以内なら不要)しなければなりません。そして、宅地建物取引士証が交付された者は、宅地建物取引士となることができます。宅地建物取引士証の有効期間は5年間で、更新申請が必要です。取引関係者から請求があった場合、宅地建物取引士証を提示しなければなりません。
宅地建物取引士の独占業務
- 重要事項の説明
- 重要事項説明書(35条書面)への記名
- 契約書(37条書面)への記名
重要事項の説明と重要事項説明書(35条書面)について
宅地建物取引業者は、以下の相手方に対し、契約成立までの間に宅地建物取引士による説明を行い、記載事項を含む書面(必要に応じて図面)を交付しなければなりません。
- 宅地建物の売買・交換・貸借の相手方
- 宅地建物の売買・交換・貸借の代理を依頼した者
- 宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買・交換・貸借の各当事者
説明すべき主な事項
- 宅地・建物に存する登記された権利の種類・内容、登記名義人または登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人の場合は名称)
- 都市計画法・建築基準法等による制限の概要
- 私道に関する負担(建物賃借契約以外の場合)
- 水道・電気・ガスの供給、排水施設の整備の状況(未整備の場合は見通しと特別負担)
- 宅地の造成または建築に関する工事の完了前の場合、その完了時の形状・構造等
- 区分所有建物の場合、敷地権の種類・内容、共用部分規約、管理・使用に関する事項
- 既存建物の場合、建物状況調査の有無と結果の概要、設計図書・点検記録等の保存状況
- 代金・交換差金・借賃以外に授受される金銭の額と授受の目的
- 契約解除に関する事項
- 損害賠償額の予定または違約金に関する事項
- 手付金等の保全措置の概要
- 支払金・預り金の保全措置の有無とその措置の概要
- 代金・交換差金に関する金銭貸借のあっせん内容と金銭貸借不成立時の措置
- 種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合の保証保険契約締結の有無とその措置の概要
- その他契約内容や利益保護に必要な事項
割賦販売の場合の追加説明事項
宅地建物取引業者は、宅地建物の割賦販売(代金の全部または一部を、引渡し後1年以上の期間にわたり、かつ2回以上に分割して受領する販売方法)を行う場合、契約成立までに宅地建物取引士に以下の事項を記載した書面を交付し、説明をさせなければなりません。
- 現金販売価格(引渡しまでに代金全額を受領する場合の価格)
- 割賦販売価格(割賦販売の場合の価格)
- 引渡しまでの支払額、賦払金の額、支払時期・方法
信託受益権売買の場合の追加説明事項
宅地建物取引業者が、宅地建物の信託(当該業者を委託者とするものに限る)の受益権の売主となる場合、契約成立までに宅地建物取引士に以下の事項を記載した書面(必要に応じて図面)を交付し、説明させなければなりません。
- 信託財産である宅地・建物に存する登記された権利の種類・内容、登記名義人または登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人の場合は名称)
- 信託財産である宅地・建物に係る都市計画法・建築基準法等の制限の概要
- 信託財産である宅地・建物に係る私道に関する負担
- 信託財産である宅地・建物に係る水道・電気・ガスの供給、排水施設の整備状況(未整備の場合は見通しと特別負担)
- 信託財産である宅地・建物が宅地の造成または建築に関する工事の完了前の場合、その完了時の形状・構造等
- 信託財産である建物が区分所有建物の場合、敷地権の種類・内容、共用部分規約、管理・使用に関する事項
- その他、受益権売買の相手方の利益保護に必要な事項
営業保証金・弁済業務に関する説明
宅地建物取引業者は、宅地建物取引業者に該当しない相手方に対し、契約成立までに以下の事項を説明しなければなりません。
宅地建物取引業者が指定を受けた一般社団法人の社員でない場合
- 営業保証金を供託した主たる事務所の最寄りの供託所とその所在地
宅地建物取引業者が指定を受けた一般社団法人の社員である場合で、弁済業務開始日前ならば
- 営業保証金を供託した主たる事務所の最寄りの供託所とその所在地
- 社員である旨
- 一般社団法人の名称・住所・事務所の所在地
- 供託所とその所在地
宅地建物取引業者が指定を受けた一般社団法人の社員である場合で、弁済業務開始日以降ならば
- 社員である旨
- 一般社団法人の名称・住所・事務所の所在地
- 供託所とその所在地
宅地建物取引士の義務
宅地建物取引士は、重要事項を説明する際、説明相手に宅地建物取引士証を提示しなければなりません。なお、書面を交付する際は、当該書面に記名する必要があります。ただし、取引の相手方が宅地建物取引業者である場合、書面の交付のみで説明は不要です。
37条書面について
宅地建物取引業者は、宅地・建物の売買・交換に関し、
- 自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に
- 当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に
- その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、
遅滞なく、以下の事項を記載した書面を交付しなければなりません。
- 当事者の氏名(法人の場合は名称)および住所
- 宅地・建物の所在、地番、種類、構造など特定に必要な表示
- 既存の建物の場合、構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項
- 代金または交換差金の額、支払時期・方法
- 引渡しの時期
- 移転登記申請の時期
- 代金・交換差金以外の金銭授受に関する定めがあるときは、金額・時期・目的
- 契約解除に関する定めがあるときは、その内容
- 損害賠償額の予定または違約金に関する定めがあるときは、その内容
- 代金・交換差金の金銭貸借のあっせんに関する定めがある場合、あっせんの金銭貸借不成立時の措置
- 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定めがあるときは、その内容
- 種類もしくは品質に関して契約の内容に適合しない場合のその不適合を担保すべき責任または責任の履行に関して講ずべき保証保険契約締結等の措置についての定めがあるときは、その内容
- 租税その他の公課の負担に関する定めがあるときは、その内容
また、宅地建物取引業者は、宅地・建物の貸借に関し、
- 当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、
- その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、
以下の事項を記載した書面を交付しなければなりません。
- 当事者の氏名(法人の場合は名称)および住所
- 宅地・建物の所在、地番、種類、構造など特定に必要な表示
- 既存の建物の場合、構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項
- 引渡しの時期
- 契約解除に関する定めがあるときは、その内容
- 損害賠償額の予定または違約金に関する定めがあるときは、その内容
- 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定めがあるときは、その内容
- 借賃の額、支払時期・方法
- 借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、金額・時期・目的
宅地建物取引士の義務
作成した書面には、宅地建物取引士が記名しなければなりません。
クーリング・オフについて
宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約について、事務所等以外の場所で申込みや契約をした場合、買受けの申込者または買主は、以下の場合を除き、書面により申込みの撤回または契約の解除をすることができます。この場合、宅地建物取引業者は損害賠償や違約金を請求できません。
クーリング・オフできない場合
- 申込みの撤回または売買契約の解除ができる旨と方法について告げられ、その告げられた日から8日を経過したとき。
- 宅地または建物の引渡しを受け、かつ代金を全額支払ったとき。
- 事務所等で申込みをし、事務所等以外で契約を締結したとき。
- 宅地建物取引業者同士の取引の場合。
なお、申込みの撤回または契約の解除は、申込者が書面を発した時点でその効力を生じます。宅地建物取引業者は、申込みの撤回または契約の解除後、速やかに手付金その他受領した金銭を返還しなければなりません。
クリーリング・オフの規定に反し、申込者に不利な特約は無効です。
営業保証金について
宅地建物取引業者は、営業保証金を主たる事務所の最寄りの供託所に供託しなければなりません。営業保証金の額は以下のとおりです。
- 主たる事務所:1,000万円
- その他の事務所:事務所ごとに500万円
営業保証金は、金銭のほか、国債証券、地方債証券、その他国土交通省令で定める有価証券を充てることができます。
供託後の届出義務
営業保証金を供託した場合、供託書の写しを添付して、免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事に届け出る必要があります。この届出を行うまでは、事業を開始できません。
届出遅延時の対応
免許日から3か月以内に届出がない場合、国土交通大臣または都道府県知事は催告を行います。催告到達後1か月以内に届出がない場合、免許を取り消すことができます。
営業保証金による弁済
宅地建物取引業者と取引した者(宅建業者を除く)は、取引により生じた債権について、供託された営業保証金から弁済を受ける権利があります。
不足額の補充
営業保証金が権利行使により不足した場合、宅地建物取引業者は2週間以内に不足額を供託し、供託書の写しを添付して届出を行わなければなりません。
事務所移転時の対応
主たる事務所を移転し、最寄りの供託所が変更した場合、金銭のみを供託しているときは、遅滞なく、営業保証金を供託している供託所に対し、移転後の主たる事務所の最寄りの供託所への営業保証金の保管替えを請求し、金銭と有価証券、または有価証券のみを供託しているときは、遅滞なく、営業保証金を移転後の主たる事務所の最寄りの供託所に新たに供託しなければなりません。
営業保証金の取り戻し
宅地建物取引業の免許の有効期間満了、効力喪失、取り消しの場合、宅地建物取引業者であった者またはその承継人は、供託した営業保証金を取り戻すことができます。また、一部の事務所を廃止した場合、営業保証金の超過額の取り戻しも可能です。なお、営業保証金の取り戻しは、権利を有する者に対し、6か月以上の期間内に申し出る旨を公告し、その期間内に申出がない場合でなければ、取り戻すことができません。ただし、営業保証金を取り戻すことができる事由が発生してから10年経過後は公告は不要です。
弁済業務保証金について
宅地建物取引業者は、弁済業務保証金に充てるため、弁済業務保証金分担金を宅地建物取引業保証協会に納付する義務があります。
分担金の額は以下のとおりです。
- 主たる事務所:60万円
- その他の事務所:事務所ごとに30万円
また、納付期限は以下のとおりです。
- 保証協会に加入しようとする者:加入しようとする日まで
- 保証協会の既存社員:弁済業務開始日の1か月前まで
保証協会の社員は、弁済業務保証金分担金を納付後、新たに事務所を設置した場合は、設置日から2週間以内に追加納付が必要です。
保証協会の供託義務
保証協会は、分担金の納付を受けた日から1週間以内に、同額の弁済業務保証金を法務大臣及び国土交通大臣の定める供託所に供託しなければなりません。
弁済を受ける権利
保証協会の社員と取引をした者(宅建業者を除く)は、その取引により生じた債権に関し、当該社員が社員でないとしたならばその者が供託すべき営業保証金相当額の範囲内で、保証協会が供託した弁済業務保証金から弁済を受ける権利があります。
還付・補充の手続き
弁済が行われた場合、保証協会は2週間以内に不足額を供託し、還付充当金の納付を社員に通知します。通知を受けた社員または社員であった者は、通知を受けた日から2週間以内に納付しなければなりません。
地位喪失と返還
保証協会の社員は、規定期間内に分担金を納付しない場合、社員の地位を失います。地位喪失時、保証協会は社員であった者が納付した弁済業務保証金分担金相当額の弁済業務保証金を取り戻すことができます。また、一部の事務所を廃止した場合、弁済業務保証分担金の超過額の取り戻しも可能です。なお、弁済業務保証金を取り戻したときは、社員であった者または社員に対し、取り戻した分担金を返還します。ただし、保証協会は、社員が地位喪失時、社員であった者との取引により生じた債権に関し権利を有する者に対し、6か月以上の期間内に認証を受けるため申し出る旨を公告し、権利者からの申し出がない場合に限ります。
営業保証金の供託義務
保証協会の社員の地位を失った宅地建物取引業者は、地位喪失日から1週間以内に営業保証金を供託しなければなりません。
広告について
宅地建物取引業者は、業務に関する広告を行う際、事実と著しく異なる表示をしたり、実際よりも著しく優良または有利であると誤認させる表示をしてはいけません。
宅地造成や建物建築の工事が完了する前は、必要な許可等の処分を受けた後でなければ、当該工事に係る宅地や建物の売買その他の業務に関する広告をしてはいけません。
宅地や建物の売買・交換・貸借に関する広告を行う場合は、以下の取引態様を明示する必要があります。
- 自ら契約当事者となり売買・交換を成立させるか
- 代理人として売買・交換・貸借を成立させるか
- 媒介して売買・交換・貸借を成立させるか
そして、宅地や建物の売買・交換・貸借に関する注文を受けたときは、遅滞なく、注文者に対して取引態様を明らかにしなければなりません。
媒介契約について
媒介契約とは、宅地または建物の売買・交換に関して、宅地建物取引業者が売主と買主の間に立ち、取引成立に向けて活動する契約をいいます。
媒介契約には以下の3種類があります。
|
|
一般媒介契約 ※1 |
専任媒介契約 |
専属専任媒介契約 |
|
| 依頼者側 |
複数業者への依頼 |
◯ |
✕ |
✕ |
| 自分で取引相手を探す |
◯ |
◯ |
✕ |
|
| 業者側 |
依頼者への報告義務 |
なし |
2週間に1回以上 |
1週間に1回以上 |
| 指定流通機構への物件登録義務 ※2 |
なし |
休業日を除く7日以内 |
休業日を除く5日以内 |
|
| 契約の有効期間 ※3 |
なし |
3か月以内 |
3か月以内 | |
※1:一般媒介契約には、依頼者が他の業者に依頼した場合、その業者名を通知する義務がある「明示型」と、通知義務がない「非明示型」があります。
※2:指定流通機構への登録を行なった業者は、登録証明書を遅滞なく依頼者に引き渡さなければなりません。
※3:専任媒介契約・専属専任媒介契約の有効期間は、依頼者の申出により更新可能ですが、自動更新は認められていません。さらに、更新後も3か月を超えることはできません。なお、一般媒介契約も、専任媒介契約と専属専任媒介契約の有効期間に準じて、契約書の雛形(標準媒介契約約款)で「3か月を超えない」旨を規定していますが、義務ではありません。
媒介契約締結時の書面交付義務
宅地建物取引業者は、媒介契約を締結した場合、遅滞なく、以下の事項を記載した書面を作成し、記名押印の上、依頼者に交付しなければなりません。
- 宅地の所在、地番その他宅地を特定するために必要な表示
- 建物の所在、種類、構造その他建物を特定するために必要な表示
- 宅地・建物を売買すべき価額、またはその評価額
- 宅地・建物について、依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買・交換の媒介・代理を依頼することの許否、および許可する場合に他の宅地建物取引業者を明示する義務の存否に関する事項
- 既存建物の場合、依頼者に対する建物状況調査(建物の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分の状況の調査であって、経年変化その他の建物に生じる事象に関する知識および能力を有する者が実施するもの)を実施する者のあっせんに関する事項
- 媒介契約の有効期間および解除に関する事項
- 宅地・建物の指定流通機構への登録に関する事項
- 報酬に関する事項
- その他国土交通省令・内閣府令で定める事項
報酬に関する規定
宅地建物取引業者の媒介により売買・交換が成立した場合、宅地建物取引業者は売買契約に基づき、依頼者から報酬を受け取ることができます。ただし、宅地建物取引業法により報酬額の上限が定められおり、以下のとおりです。
| 取引価格 |
報酬限度額(消費税別) |
| 200万円以下 |
取引価格 × 5% |
| 200万円超400万円以下 |
取引価格 × 4% + 2万円 |
| 400万円超 |
取引価格 × 3% + 6万円 |
※代理契約の場合も、媒介契約の規定が準用されます。
依頼者側の義務に関する規定
媒介契約の有効期間満了後2年以内に、契約していた業者が紹介した相手方と依頼者が、その業者を排除して直接売買契約を締結した場合、業者は売買契約成立に寄与した割合に応じた報酬を請求できます。
なお、依頼者が契約に違反し、他の業者に依頼して契約を成立させたり、自ら取引相手を探して契約を成立させた場合、業者は約定報酬相当額の違約金を請求できます。
また、媒介契約の有効期間内に、依頼者の一方的な都合で契約が解除された場合、業者は契約履行のために要した費用(例:現地調査費、権利関係調査費、販売促進費など)を請求できます。
債務不履行について
不動産の売買契約における「債務」とは、以下の義務を指します。
- 代金支払債務:買主が代金を支払う義務
- 不動産引渡債務:売主が不動産を引渡す義務
- 権利移転の対抗要件:登記など、権利移転を第三者に対抗できる状態にする義務
債務不履行とは、債権者が債務の履行をしないことをいい、以下の3つの形態があります。
- 履行不能
債権成立後、債務者の故意または過失により、債務履行が不可能となること。 - 履行遅滞
債務履行可能であるにもかかわらず、履行すべき時期を過ぎても、債務者が故意または過失により債務履行しないこと。 - 不完全履行
債務の履行はされたが、債務者の故意または過失により債務履行が完全でないこと。
債務不履行が生じた場合、債権者は債務者に対して損害賠償請求がすることができます。また、原則として相当の期間を定めて履行の催告をし、期間内に履行されなければ、契約解除をすることができます。なお、履行不能の場合は、催告不要で直ちに契約解除が可能です。
宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地・建物の売買契約で、当事者の債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、または違約金を定める場合、両方を合算した額が代金の額の2/10(20%)を超えることはできません。この規定に反する特約は、代金の額の2/10(20%)を超える部分について無効となります。
手付金について
手付金とは、不動産売買契約の際、買主が売主に支払うお金をいい、以下の3種類があります。
- 解約手付
手付金の授受により、売主・買主双方に解約権を留保させるものです。宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地・建物の売買契約締結に際して手付を受領した場合、買主は手付放棄により、業者は倍額を現実に提供して、契約解除が可能です。ただし、相手方が契約の履行に着手した後は契約解除はできません。 - 違約手付
債務不履行があった場合、買主違約のときには手付金が違約金として没収され、売主違約のときには手付金を返還し、手付金と同額の違約金を支払うというものです。 - 証約手付
不動産売買契約成立の証として、買主から売主に対して交付される手付金です。なお、宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地・建物の売買契約締結に際して、代金の2/10(20%)を超える額の手付を受領することはできません。ただし、宅地建物取引業者同士の取引には適用されません。この規定に反する特約で、買主に不利なものは無効となります。
手付金等の保全義務
宅地建物取引業者は、宅地造成または建築に関する工事の完了前の宅地または建物の売買で自ら売主となる場合、以下の措置を講じた後でなければ、買主から手付金等を受領できません。
- 銀行等との間において、宅地建物取引業者が受領した手付金等の返還債務を負う場合に、銀行等がその債務を連帯保証することを委託する契約(保証委託契約)を締結し、かつその保証内容を記載した書面を買主に交付すること。
- 保険事業者との間において、宅地建物取引業者が受領した手付金等の返還債務の不履行により買主に生じた損害のうち、少なくとも手付金等の額に相当する部分を保険事業者が補償することを約する保証保険契約を締結し、かつ保険証券または代替書面を買主に交付すること。
ただし、以下の場合は、上記の保全措置を講じる必要はありません。
- 当該宅地・建物について、買主への所有権移転登記が完了している場合
- 買主が所有権の登記を済ませている場合
- 業者が受領しようとする手付金等の額(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)が代金の5/100(5%)以下、かつ業者の取引の実情および相手方の利益保護を考慮して政令で定める額以下である場合
契約不適合責任について
契約不適合責任とは、売買契約等に基づき、売主が引き渡した目的物の種類・品質・数量が契約内容に適合していない場合、売主が買主に対して負う責任をいいます。
買主が売主に請求できる権利
- 履行の追完請求(目的物の補修、代替物の引渡し、不足分の引渡し)
- 代金減額請求
- 損害賠償請求(売主に帰責事由がある場合に限る)
- 契約解除
請求のための通知期限
買主が売主へ目的物の種類・品質に関して契約不適合責任を請求するためには、原則として契約不適合の事実を知ったときから1年以内に売主へ通知しなければなりません。ただし、売主が引渡し時にその不適合を知っていた場合、または重大な過失で知らなかった場合は、1年以内の通知は不要です。
通知後でも、権利を行使することができることを知ったときから5年、または権利を行使することができるときから10年を経過すると、消滅時効により請求権は消滅します。また、目的物の数量・権利に関する契約不適合責任を請求する場合、1年以内の通知は不要です。
契約不適合責任は任意規定のため、売主・買主がともに宅建業者でない場合などは、特約により排除・変更が可能です。
危険負担について
改正民法上では、不動産売買契約が成立してから引越しまでの間に、売主・買主双方に責任のない事由(例:自然災害)で物件が滅失した場合、買主は売買代金の支払いを拒むことができます。一方、買主の責任による滅失の場合は、買主は売買代金の支払いを拒むことはできません。
住宅の品質確保の促進等に関する法律について
住宅の品質確保の促進等に関する法律は、住宅の性能表示基準を定め、住宅新築工事の請負人および新築住宅の売主に対し、住宅の一定部位について10年間の契約不適合責任を義務付けることにより、住宅の品質確保を目的としています。
10年間の契約不適合責任の義務付け
新築住宅の構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分の契約不適合(瑕疵)について、売主・工事請負人は、買主に引渡しから10年間、契約不適合責任を負う義務があります。特約により最長20年までに延長可能です。
住宅性能評価書
国土交通大臣に登録された評価専門機関(登録住宅性能評価機関)に依頼することで作成できます。住宅性能評価書には、設計図などをもとに作成される設計住宅性能評価書と、実際の住宅を検査して作成される建設住宅性能評価書があります。
新築住宅の建設工事完了後、新築住宅の売買契約を締結した売主は、建設住宅性能評価書もしくはその写しを売買契約書に添付した場合、または買主に建設住宅性能評価書もしくはその写しを交付した場合、当該建設住宅性能評価書またはその写しに表示された性能を有する新築住宅を引き渡す契約をしたものとみなされます。
指定住宅紛争処理機関・住宅紛争処理支援センター
建設住宅性能評価書が交付された住宅に関する請負契約または売買契約で紛争が発生した場合、当事者は弁護士会内部に設置された指定住宅紛争処理機関に紛争処理を申請できます。
また、弁護士会による紛争処理を支援する目的で、住宅紛争処理支援センターが設置され、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターが国土交通大臣により指定されています。
住宅紛争処理支援センターは、弁護士会に対し、紛争処理業務に要する費用を助成するほか、登録住宅性能評価機関から負担金を徴収するなどの事務を行っています。
壁芯面積と内法面積について
壁芯面積とは、建物の床面積を測定する際、壁の厚みの中心線に囲まれた部分の面積を指します。壁芯面積では、壁の厚みの分が床面積に含まれるため、実際に使用できる面積より大きく表示されるのが特徴です。マンションのパンプレット等は壁芯面積で表示されることが一般的です。
内法面積とは、壁の厚みを除き、壁の内側部分のみの面積を指します。内法面積では、実際に使用できる面積に近い数値となります。
不動産登記法では、一戸建て等は壁芯面積で、分譲マンション等の区分所有建物は内法面積で登記することとされています。
公簿売買と実測売買について
土地の売買価格の決定方法には、公簿売買と実測売買の2種類があります。
公簿売買
登記簿などに記載された土地面積(公簿面積)を基準として売買価格を決めます。後日、調査で面積に増減があっても売買価格の精算は行いません。
実測売買
実際に測量した面積を基準として売買価格を決めます。契約時に実測面積が判明していれば精算は不要です。判明していない場合は、公簿面積で売買価格を決定して契約し、後日、実測面積との差異があれば引渡し時に精算します。