不動産登記法
最終更新日: 2024-03-17

不動産登記法とは

 
不動産登記法とは、不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度について定めることにより、国民の権利の保全を図り、取引の安全と円滑を図ることを目的とした法律です。


登記とは

 
登記とは、不動産を購入、相続、新築等した場合に、登記官が不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に備えられた登記簿に登記事項を記録し、公示することです。
 
不動産登記には、次のような効力があります。
 

  • 対抗力:物権変動を第三者に対抗できます
  • 推定力:登記記録が一応真実であると推定されます
  • 確定力:すでに登記された事柄と矛盾する事柄は登記できません

 
ただし、不動産登記には公信力がないため、登記記録が真実であると信用して取引しても、法的な保護は受けられません。
ちなみに、公信力とは、登記上の表示を信頼して不動産の取引をした者は、たとえ名義人が本当の権利者でなくとも、規定通りの要件の下、その権利を取得することが認められることです。


登記することができる権利等

 
不動産の表示又は不動産についての次に挙げる権利の保存、設定、移転、変更、処分の制限又は消滅について登記することができます。
 

  • 所有権
  • 地上権
  • 永小作権
  • 地役権
  • 先取特権
  • 質権
  • 抵当権
  • 賃借権
  • 配偶者居住権
  • 採石権

登記申請

 
登記の申請は、次に挙げるいずれかの方法により、申請に必要な情報を登記所に提出しなければなりません。
 

  • 登記所に直接出向く
  • インターネットを利用する
  • 郵送や信書便を利用する

 
登記が完了すると、登記官は、登記識別情報(12桁の英数字)を登記申請者(=登記名義人)に通知しなければなりません。
ただし、登記申請者があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合には、通知されません。
なお、登記識別情報は、登記名義人が登記を申請する場合において、登記名義人自らが登記を申請していることを確認するための本人識別手段として用いられます。


相続等による所有権の移転の登記の申請

 
所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければなりません。
遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により所有権を取得した者も、同様となります。
 
また、登記がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければなりません。


不動産登記記録

 
不動産の登記記録は、一筆の土地または一個の建物ごとに登記簿に記録されます。
そして、原本である登記簿を複写し、証明したものを登記簿謄本といいます。
従来は紙で記録・保管されていましたが、現在はコンピューターで電子的に記録・保管がされています。
電子的に保管されている登記事項を印刷し、証明したものを登記事項証明書といいます。
登記簿謄本と登記事項証明書は、名称は異なりますが、内容は同じです。
 
登記事項証明書には、証明書である旨の認証文及び作成年月日と登記官の職氏名が記載され、職印が押されます。
登記事項証明書と似たような名称の書類として登記事項要約書というものがあります。
登記事項要約書は登記記録の概要を記載したものであるため、登記事項証明書とは異なり認証文の記載や職印の押印はありません。
 
不動産の登記記録は、大きく表題部権利部から構成されています。
さらに権利部は、甲区乙区に分かれています。

表題部

 
表題部には、次に挙げる不動産の表示に関する登記が記録されます。
 

  • 登記原因及びその日付
  • 登記の年月日
  • 所有権の登記がない不動産については、所有者の氏名又は名称及び住所並びに所有者が二人以上であるときはその所有者ごとの持分
  • 不動産を識別するために必要な事項

 
表題部に記録される土地の表示に関する登記事項は、次のとおりです。
 

  • 土地の所する市、区、郡、町、村及び字
  • 地番
  • 地目
  • 地積

 
表題部に記録される建物の表示に関する登記事項は、次のとおりです。
 

  • 建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番
  • 家屋番号
  • 建物の種類、構造及び床面積
  • 建物の名称があるときは、その名称
  • 附属建物があるときは、その所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番並びに種類、構造及び床面積
  • 建物が共有部分又は団地共用部分であるときは、その旨
  • 建物又は附属建物が区分建物であるときは、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の構造及び面積
  • 建物又は附属建物が区分建物である場合であって、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の名称があるときは、その名称
  • 建物又は附属建物が区分建物である場合において、当該区分建物について区分所有法に規定する敷地利用権であって、区分所有者の有する専有部分と分離して処分することができないものがあるときは、その敷地権

 
建物の表示に関する登記記録では、一戸建てのような一般建物の床面積は壁芯面積(壁の厚さの中心線で測った面積)で記録され、分譲マンションのような区分建物の専有部分の床面積は内法面積(壁の内側で測った面積)で記録されます。
 
なお、土地や建物の所有権を取得した場合や、表題部に記録されている土地や建物の物的状況が変化した場合には、1か月以内に表題登記を申請しなければなりません。

権利部

 
権利部には、次に挙げる不動産の権利に関する登記が記録されます。
 

  • 登記の目的
  • 申請の受付の年月日及び受付番号
  • 登記原因及びその日付
  • 登記に係る権利の権利者の氏名又は名称及び住所並びに登記名義人が二人以上であるときは当該権利の登記名義人ごとの持分
  • 登記の目的である権利の消滅に関する定めがあるときは、その定め
  • 共有物分割禁止の定めがあるときは、その定め
  • 他人に代わって登記を申請した者があるときは、当該代位者の氏名又は名称及び住所並びに代位原因

 
権利部の甲区には、所有権に関する事項を記録します。
具体的には、所有権保存登記、所有権移転登記及びその仮登記並びに処分の制限等に関する事項を記録します。
 
権利部の乙区には、所有権以外の権利に関する事項を記録します。
具体的には、地上権、永小作権、地役権、賃借権、配偶者居住権、採石権、先取特権、質権、抵当権、根抵当権の設定、移転及び抹消等の事項を記録します。


不動産登記記録の交付

 
法務局(登記所)で、登記官に対し、手数料を納付すれば、誰でも登記事項証明書(登記簿謄本)や登記事項要約書の交付を請求することができ、登記記録の内容を確認することができます。
交付請求は、郵送又はオンラインでも可能ですが、オンライン請求を行った場合の登記事項証明書は、郵送または受取先として指定した登記所の窓口で受領しなければなりません。


登記事項証明書(土地)の見本

 

登記事項証明書(土地)の見本

登記事項証明書(建物)の見本

 

登記事項証明書(建物)の見本