保険の基本的原則について
大数の法則
少数の事例では傾向を把握しにくいものの、多数の事例を集めることで一定の法則性が現れます。保険においては、この統計的法則を活用して将来のリスクを予測し、保険料を算定します。
収支相当の原則
保険制度を健全に運営するためには、保険料収入と保険金支出のバランスを保つことが重要です。原則として、集めた保険料(収入)と支払う保険金(支出)が均衡するように設計されます。
給付・反対給付均等の原則
死亡率は年齢や性別などにより異なるため、すべての契約者が同一の保険料を負担すると不公平が生じます。そのため、契約者ごとのリスクに応じて保険料を設定し、負担の公平性を確保します。
利得禁止の原則
損害保険の目的は、被った損害を補償することにあります。そのため、被保険者が保険金の受取によって利益を得ることは認められていません。保険金はあくまで損害の補填を目的とするものであり、利得を目的とするものではありません。
保険契約者保護機構について
保険契約者保護機構とは、保険会社が破綻した場合に契約者を保護することを目的として設立された法人です。国内で保険業を営む保険会社には、次の機構への加入が義務付けられています。
- 生命保険会社:生命保険契約者保護機構
- 損害保険会社:損害保険契約者保護機構
日本国外に本店を有する保険会社や、民営化後のかんぽ生命も対象に含まれます。また、銀行窓口で契約した保険についても、保険契約者保護機構による補償の対象となります。
ただし、次の事業者は補償の対象外です。
- 少額短期保険業者
- 共済(例:全労済、都道府県民共済、JA共済、CO・OP共済など)
保険会社が破綻した場合の補償内容
保険契約者保護機構による補償の対象となる主な保険契約および補償割合は、以下のとおりです。
| 保険の種類 |
補償割合 |
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| 生命保険 |
責任準備金等の90% ※ | |
| 損害保険(下記以外) |
自動車損害賠償責任保険(自賠責保険) |
破綻後3か月間:保険金額の100% |
| 家計地震保険 |
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| 自動車保険 |
破綻後3か月間:保険金額の100% 破綻後3か月以降:責任準備金等の80% |
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| 火災保険 |
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| その他の損害保険(賠償責任保険、動産総合保険、海上保険、運送保険、信用保険、労働者火災補償責任保険など) |
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| 疾病・傷害に関する保険 |
短期傷害保険 |
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| 海外旅行傷害保険 |
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| 年金払型積立傷害保険 |
責任準備金等の90% ※ | |
| 財産形成貯蓄傷害保険 |
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| 確定拠出年金傷害保険 |
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| その他の疾病・傷害保険、上記以外の傷害保険、所得補償保険、医療・介護(費用)保険など |
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※破綻時において、過去5年間継続して予定利率が基準利率を上回っている「高予定利率契約」の場合、補償割合は90%を下回ることがあります。
クーリングオフ制度について
クーリングオフ制度とは、一定の契約について、所定の条件のもと一定期間内であれば、消費者が申込みの撤回または契約の解除を行うことができる制度です。
保険契約においては、契約の申込日またはクーリングオフに関する事項を記載した書面の受領日のいずれか遅い日から起算して8日以内であれば、申込みの撤回または契約の解除を行うことが可能です。
従来は書面による申出のみが認められていましたが、2022年5月9日施行の改正保険業法により、電磁的記録(例:Webフォーム等)による申出も可能となりました。この改正を受け、多くの保険会社が自社ホームページ上にクーリングオフ専用フォームを設置しています。
クーリングオフが適用されない契約
次のような契約はクーリングオフの対象外となるため、注意が必要です。
- 営業または事業のため、もしくは営業・事業として締結された契約
- 法人、法人でない社団・財団、国または地方公共団体が申込者である契約
- 保険期間が1年以下の契約
- 自動車損害賠償責任保険契約など、法令により加入が義務付けられている契約
- 申込者があらかじめ訪問日時を指定し、保険契約の申込みを目的として保険会社等の営業所等を訪問し、その場で申込みを行った場合
- 申込者が自ら指定した場所(営業所・自宅以外)において申込みを行った場合
- 郵便・インターネット等により申込みを行った場合
- 振込みにより保険料等を保険会社の口座へ支払った場合(ただし、保険会社の使用人等に依頼して行った場合を除く)
- 医師による診査を要する契約で、その診査がすでに完了している場合
- 勤労者財産形成促進法に基づく勤労者財産形成貯蓄契約、勤労者財産形成年金貯蓄契約、勤労者財産形成住宅貯蓄契約
- 金銭消費貸借契約や賃貸借契約など、他の契約に係る債務の履行を担保する契約
- 既契約の更改・更新、または保険金額や保険期間などの変更に関する契約
ソルベンシー・マージン比率について
ソルベンシー・マージン比率とは、通常の予測を超える突発的なリスク(自然災害や大規模事故、経済危機など)が発生した場合に、保険会社がどの程度の支払余力を有しているかを示す指標です。
この比率が高いほど、保険会社の財務的な健全性の目安は高いとされています。一般に、200%以上であれば健全性確保の一つの基準とされています。
ただし、ソルベンシー・マージン比率が200%を上回っていても、過去には破綻に至った保険会社が存在します。そのため、この指標のみで健全性を判断するのではなく、他の財務指標や経営状況とあわせて総合的に評価することが重要です。
また、ソルベンシー・マージン比率が100%以上200%未満の場合には、金融庁などの監督当局が、保険会社に対して経営の健全性確保を目的とした合理的な経営改善計画の提出およびその実行を命じることがあります。
保険業法について
保険業法とは、保険業に携わる者が遵守すべき基本的なルールを定めた法律です。保険業は、不特定多数の人々に保障サービスを提供するという公共性を有しているため、業務の健全性・適正な運営および公正な保険募集を確保し、保険契約者の保護を図ることを目的としています。なお、共済契約には保険業法は適用されません。
保険業法では、保険募集人や保険会社等が保険契約の募集・締結に際して、次のような行為を禁止しています。
- 虚偽説明・重要事項不告知の禁止
保険契約者や被保険者に対して虚偽の説明を行なったり、契約の判断に重要な影響を及ぼす事項について説明を行わないことは禁止されています。 - 告知妨害・不告知を勧める行為の禁止
契約者または被保険者が病歴などの重要事項を保険会社に告知することを妨げたり、告知しないよう勧める行為は禁止されています。 - 不当な比較表示の禁止
他社の商品と比較する際に、誤解を招くような説明や表示を行うことは禁止されています。 - 不当な乗換募集の禁止
契約者に不利益となる重要な事項を告げずに、保険契約の乗換えを勧める行為は禁止されています。 - 特別利益の提供の禁止
保険料の割引や割戻しなど、契約者に対して特別な利益を提供することは禁止されています。なお、2025年の改正により、契約者と密接な関係を有する者(例:グループ企業)への利益提供についても禁止の対象とされました。 - 断定的判断の提供の禁止
将来の配当金や変額保険の保険金額など、不確実な事項について断定的な判断を示すことは禁止されています。
保険法について
保険法とは、保険契約に関する基本的なルールを定めた法律であり、契約の締結から終了に至るまでの過程における当事者の権利・義務などを規定しています。この法律は、保険契約に加えて共済契約にも適用されます。
また、生命保険契約および損害保険契約に加え、近年普及している傷害疾病保険契約も対象とされており、傷害や疾病を原因として保険金が支払われる契約についても、保険法の規定が適用されます。
さらに、保険契約者・被保険者・保険金受取人の保護を図る観点から、各種の規定が整備されています。具体的には、告知制度の見直しや、保険金の支払時期に関する規定が新設されました。これらを含む多くの規定は、「片面的強行規定」とされています。
片面的強行規定とは、保険契約者等の保護を目的とし、法律の規定に反して契約者等に不利な内容の約款や特約が定められている場合には、その部分を無効とするルールをいいます。
このような規定により、契約者等の権利が不当に制限されることを防止し、保険契約の公正性が確保されています。
保険の分類について
保険の分類方法は、保険業法と保険法において次のように異なります。
保険業法における保険の分類
保険業法では、保険を次の3つの分野に大別しています。
- 第一分野:生命保険固有分野
- 第二分野:損害保険固有分野
- 第三分野:第一分野にも第二分野のいずれにも属さない分野
生命保険とは、人の生存または死亡に関して、あらかじめ定めた一定の金額を支払う保険をいい、生命保険会社のみが引き受けることができます。
損害保険とは、偶然の事故によって生じた損害額に応じて保険金を支払う保険をいい、損害保険会社のみが引き受けることができます。
第三分野の保険とは、生命保険および損害保険のいずれにも該当しない保険をいい、生命保険会社・損害保険会社の双方が取り扱うことができます。具体的には、傷害保険や医療保険などが該当します。
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第一分野 |
第二分野 |
第三分野 |
| 保険の種類 |
生命保険 |
損害保険 | 傷害保険・医療保険など |
| 取扱い主体 |
生命保険会社 |
損害保険会社 | 生命保険会社および損害保険会社 |
| 保険事故 |
人の生存・死亡 |
偶然の事故 | 傷害・疾病など |
| 保険金の支払方式 |
定額払い |
実損払い | 定額払いおよび実損払い |
保険法における保険の分類
保険業法では「生命保険」「損害保険」「第三分野の保険」の3区分でしたが、保険法では主に保険金の支払方法に着目して、より細かく分類しています。
第三分野の保険については、次の2つに区分されます。
- 傷害疾病定額保険契約
ケガや病気による入院・通院などに対して、契約時に定めた一定額を支払うもの - 傷害疾病損害保険契約
ケガや病気により実際に支出した費用を補償するもの
この結果、保険法では保険契約を次の4つに分類しています。
- 生命保険契約
- 傷害疾病定額保険契約
- 損害保険契約
- 傷害疾病損害保険契約
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人保険 |
物(財産)保険 |
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| 生命 |
傷害・疾病など |
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| 生命保険 |
生命保険契約 |
傷害疾病定額保険契約 | − |
| 損害保険 |
− |
傷害疾病損害保険契約 | 損害保険契約 |