生命保険契約の成立
告知義務
保険契約者または被保険者となる方は、生命保険契約を締結する際に、保険事故の発生に関わる重要な事項について、保険会社から告知を求められた場合は、事実を正確に告知する義務があります。
なお、この義務に反する特約で、保険契約者または被保険者に不利益となる内容が含まれている場合、その特約は無効となります。
被保険者の同意
生命保険契約において、契約者本人以外の方を被保険者とする死亡保険契約を締結する場合は、必ずその被保険者本人の同意が必要です。被保険者の同意がない契約は、効力を持ちません。
契約の責任開始日
生命保険契約では、契約を結んだ日(契約日)からすぐに保障が始まるわけではありません。保障が開始されるのは、以下の3つの手続きがすべて完了した日、すなわち責任開始日からとなります。
- 保険契約の申込み
- 告知または診査の完了
- 第1回保険料の払込み
これら3項目がすべて完了し、かつ保険会社が審査の結果として契約を承諾した場合に、告知または診査、もしくは第1回保険料の払込みのうち、最も遅い日が責任開始日となります。
生命保険契約の効力
保険金受取人の変更
保険契約者は、保険事故が発生する前であれば、保険金受取人を変更することができます。変更は、保険会社に対する意思表示によって行われ、その通知が保険会社に到達した時点で、通知を発した時にさかのぼって効力を生じます。ただし、通知が到達する前にすでに行われた保険給付の効力を取り消すことはできません。
保険金受取人の変更は、遺言によっても可能です。この場合、遺言が効力を生じた後に、保険契約者の相続人が保険会社へ変更の通知を行わなければ、保険会社に対してその変更を主張することはできません。
なお、死亡保険契約において保険金受取人を変更する場合は、被保険者の同意が必要です。被保険者の同意がない変更は、効力を持ちません。また、保険事故の発生前に保険金受取人が死亡した場合、その相続人全員が保険金受取人となります。
死亡保険契約における通知義務および保険給付の制限
死亡保険契約において、保険契約者または保険金受取人は、被保険者の死亡を知った際には、遅滞なく保険会社に対してその旨を通知しなければなりません。
以下のいずれかに該当する場合、保険会社は保険金の支払い責任を負いません。
- 被保険者が自殺をした場合
- 保険契約者が被保険者を故意に死亡させた場合
- 保険金受取人が被保険者を故意に死亡させた場合
ただし、故意に死亡させた保険金受取人以外の受取人に対しては、保険会社は保険金の支払い責任を負います - 戦争その他の変乱によって被保険者が死亡した場合
生命保険契約の終了
保険契約者は、いつでも生命保険契約を解除することができます。
保険会社は、保険契約者または被保険者が、告知義務に違反し、故意または重大な過失により事実を告げなかった場合、あるいは虚偽の告知を行った場合には、生命保険契約を解除することができます。
ただし、以下のいずれかに該当する場合には、保険会社は契約を解除することはできません。
- 契約締結時に、保険会社が告知事項の事実を知っていた場合、または過失により知らなかった場合
- 保険会社の代理人(保険媒介者)が、保険契約者または被保険者による告知を妨げた場合
- 保険媒介者が、保険契約者または被保険者に対して、告知をしないよう、または虚偽の告知をするよう勧めた場合
保険会社による解除権は、解除の原因を知った日から1か月以内に行使されなければなりません。また、契約締結から5年を経過した場合には、解除権は消滅します。
保険料の払込み
保険料の払込み方法には、一括払い・前納・一時払い・年払い・半年払い・月払いがあります。
一括払いとは、月払いの保険料を複数回分まとめて支払う方法です。
前納とは、半年払いや年払いの保険料を複数回分まとめて支払う方法です。
保険料は、選択した払込み方法に応じて、契約応当日が属する月の月初から月末までの間に支払う必要があります。この保険料を支払うべき月を払込期月と呼びます。
払込猶予期間
払込期月に保険料の支払いが行われなかった場合でも、契約が直ちに失効するわけではなく、一定の猶予期間が設けられています。
月払いの場合には、払込期月の翌月1日から末日までが猶予期間となります。
半年払いや年払いの場合には、払込期月の翌月1日から翌々月の契約応当日までが猶予期間となります。
この猶予期間内に保険料を支払えば、契約は継続されます。
契約の失効
保険料が払込猶予期間内に支払われなかった場合、生命保険契約は失効し、契約の効力を失います。
契約の復活
失効した生命保険契約でも、一定の期間内に所定の手続きを行うことで、契約を元の状態に復活させることが可能です。
契約を復活させるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 未払いの保険料および所定の利息の支払い
- 再度の告知または医師による診査の実施
なお、健康状態によっては、契約の復活が認められない場合もあります。
復活が認められた場合でも、契約内容や保険料率に変更はありません。契約は失効前と同じ条件で継続されます。
自動振替貸付制度
自動振替貸付制度とは、保険契約者が保険料を払込期月内に支払わなかった場合に、保険会社が契約の解約返戻金の範囲内で保険料を自動的に立て替え、契約の効力を継続させる制度です。
この制度によって立て替えられた保険料は貸付金として扱われ、所定の利息が加算されます。
なお、契約者はあらかじめ申し出ることにより、この制度の適用を停止することも可能です。
保険金額の増額・減額
契約中の生命保険に特約を追加したり、既存の特約を解約したりすることで、保険金額を増額または減額することが可能です。
たとえば、死亡保障の保険では、子どもが独立した後など、必要な保障額が減少するタイミングで保障額を見直すことで、保険料の負担を軽減することができます。
このような保険金額の調整は、ライフステージや保障ニーズの変化に応じて柔軟に対応するための有効な手段です。
払済保険・延長保険
契約中の保険料の払込みを中止し、その時点の解約返戻金を一時払い保険料として充当することで、契約内容を変更する方法として払済保険と延長保険があります。
それぞれの違いは以下のとおりです。
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払済保険 |
延長保険 |
| 保険の種類 |
元の契約と同じ種類の保険 |
元の契約の保険金額と同額の一時払定期保険 |
| 保険期間 |
変更なし |
短くなる |
| 保険金額 |
減額される |
変更なし |
| 特約 |
消滅する |
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契約転換制度
契約転換制度とは、現在加入している保険の積立部分や積立配当金を新しい保険の保険料の一部に充当し、新たな保険契約へ切り替える制度です。いわば、既存の保険を「下取り」して、新しい保障内容に変更する仕組みです。
新しい保険の保険料は、転換時点の契約者の年齢および保険料率に基づいて計算されます。また、契約転換には、健康状態に関する告知や医師による診査が必要となる場合があります。
契約者貸付制度
契約者貸付制度とは、生命保険契約における解約返戻金を担保として、保険会社から資金の貸付けを受けることができる制度です。
借入可能な金額は、一般的に解約返戻金の7〜8割程度とされています。ただし、解約返戻金の額が大きい保険商品やプランを契約している場合は、より多くの金額を借りることが可能です。貸付であるため、借入金には所定の利息が発生します。
なお、掛け捨て型の定期保険など、解約返戻金が発生しない保険契約では、この制度を利用することはできません。