生命保険に係る税金
最終更新日: 2025-10-11

生命保険料控除(個人契約の場合)

 
1月1日から12月31日までの間に支払った生命保険料(自動振替貸付による支払い分も含む)は、支払額に応じて、その年の所得から控除することができます。
ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 未払いの保険料:払込期日が到来していても、実際に支払っていない保険料は控除対象外です。
  • 復活時の保険料:失効した契約を復活させるために支払った保険料は、支払った年の控除対象となります。
  • 前納保険料:前納した保険料は、申告年に対応する期間分のみが控除対象となります。
  • 一時払保険料:一時払保険料は、支払った年に限り全額が控除対象となります。
  • 配当金の控除:配当金を受け取った場合は、その金額を差し引いた保険料が控除対象となります。
  • 少額短期保険契約:この契約の保険料は、生命保険料控除の対象外です。

生命保険料控除額

 
控除額は、契約締結日によって以下の2つの制度に分かれます。

  • 旧制度:2011(平成23)年12月31日以前に締結された契約
  • 新制度:2012(平成24)年1月1日以降に締結された契約

新制度が適用される主な手続き

 
旧制度に該当する契約であっても、2012年1月1日以降に以下の手続きが行われた場合は、契約全体に新制度が適用されます。

  • 契約転換
  • 保障内容の見直し
  • 主契約および特約の更新
  • 特約の変更
  • 特約の中途付加
    ※新制度が適用されない特約の中途付加は、以下を参照

 

新制度が適用されない主な手続き

 
以下の手続きでは、新制度は適用されません。

  • 特約の付加によらない保険金額の増減
  • 契約者の変更
  • 契約の復活
  • 払込方法や回数の変更
  • 特約の非更新
  • 保険料のない特約(例:代理請求特約、リビング・ニーズ特約、重度がん保険金前払特約、個人年金保険料税制適格特約など)のみの中途付加
  • 身体の傷害のみを原因とする保険金支払いに関する特約(例:傷害特約、災害割増特約など)のみの中途付加

生命保険料控除額の上限額

 
生命保険料控除の上限額は、契約の締結時期(旧制度・新制度)によって異なります。以下の表に、所得税および住民税における控除額の上限をまとめています。
 

 契約区分

 

一般の生命保険料控除

個人年金保険料控除

介護医療保険料控除

合計

旧制度(2011年12月31日以前の契約)

所得税の控除上限

50,000 50,000 100,000

住民税の控除上限

35,000円

35,000円

70,000円

新制度(2012年1月1日以降の契約)

所得税の控除上限

40,000

40,000

40,000

120,000

住民税の控除上限

28,000円 28,000円 28,000円

70,000円

※一般の生命保険料控除:生存または死亡により保険金・給付金が支払われる契約に対する保険料
※個人年金保険料控除:税制適格特約が付加された個人年金保険契約に対する保険料
※介護医療保険料控除:入院・通院等により保険金が支払われる保険契約に対する保険料

新旧制度が混在する場合の控除額の取り扱い

 
旧制度と新制度の両方の契約がある場合、以下のいずれかの方法で申告する必要があります。
 

 申告方法

所得税控除額の上限

住民税控除額の上限

旧制度(2011年12月31日以前の契約)のみを申告

50,000 35,000円

新制度(2012年1月1日以降の契約)のみを申告

40,000

28,000円

両制度を申告

40,000

28,000円

個人年金保険料控除が受けられる保険契約

 
通常、個人年金保険に加入している場合、その保険料は「一般の生命保険料控除」の対象となります。ただし、個人年金保険料税制適格特約を付加している場合は、その契約は個人年金保険料控除の対象となります。
この特約を付加しても保障内容に変更はなく、特約保険料も無料です。なお、特約は契約後に中途付加することは可能ですが、特約のみを解約することはできません。
この特約を付加するには、以下の5つの要件すべてを満たす必要があります。

  1. 年金の受取人が契約者本人またはその配偶者であること
  2. 年金の受取人が被保険者であること
  3. 保険料の払込期間が10年以上であること
  4. 年金の受取開始年齢が60歳以上であること(確定年金・有期年金・終身年金の場合)
  5. 年金の受取期間が10年以上であること(確定年金・有期年金・終身年金の場合)

 
変額個人年金保険の保険料は、個人年金保険料控除の対象とはならず、一般の生命保険料控除の対象となるため、申告時にはご注意ください。


死亡保険金の課税関係(個人契約の場合)

 
死亡保険金にかかる税金の種類は、契約者・被保険者・保険金受取人の関係によって異なります。
以下の表に代表的なケースを示します。
 

契約者

被保険者

保険金受取人

課税される税金

Aさん

Aさん

Bさん 相続税

Aさん

Bさん

Aさん

所得税(一時所得)・住民税

Aさん

Bさん

Cさん

贈与税


満期保険金・解約返戻金の課税関係(個人契約の場合)

 
満期保険金や解約返戻金にかかる税金の種類は、契約者・被保険者・受取人の関係によって異なります。
代表的なケースは以下のとおりです。
 

契約者

被保険者

受取人

課税される税金

Aさん

誰でも

Aさん 所得税(一時所得)・住民税

Aさん

誰でも

Cさん

贈与税

 
以下の要件をすべて満たす一時払養老保険などの満期保険金や解約返戻金は、金融類似商品として扱われ、利子所得と同様に20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)の源泉分離課税が適用されます。

  • 保険期間が5年以下、または保険期間が5年超でも5年以内に解約した場合
  • 保険料の支払方法が一時払い、または以下のいずれかに該当する場合
    • 契約日から1年以内保険料総額の50%以上を払い込んでいる
    • 契約日から2年以内保険料総額の75%以上を払い込んでいる
  • 死亡保険金の額が満期保険金と同額以下かつ災害死亡保険金等が満期保険金の5倍未満

個人年金保険の課税関係(個人契約の場合)

 
年金受給開始前に被保険者が死亡した場合、死亡給付金にかかる税金は、契約者・被保険者・受取人の関係によって異なります。
 

契約者

被保険者

受取人

課税される税金

Aさん

Aさん

Bさん 相続税

Aさん

Bさん

Aさん

所得税(一時所得)・住民税

Aさん

Bさん

Cさん

贈与税

 
年金の受け取り方法によって、課税される税金の種類が異なります。
 

契約者

被保険者

受取人

課税される税金

Aさん

誰でも

Aさん 年金を毎年受け取る場合:所得税(雑所得)
年金を一括で受け取る場合:所得税(一時所得)※

Aさん

誰でも

Bさん

年金受給権に対する贈与税

※保証期間付終身年金において、保証期間内の年金を一括で受け取る場合は雑所得として課税されます。この場合、契約は消滅せず、保証期間終了後に被保険者が生存していれば、再び年金の受け取りが開始され、死亡するまで継続して受け取ることができます。

 
年金受給権の評価は、契約の種類によって以下のように算出されます。
 

確定年金の場合

以下のうち、最も高い金額
①解約返戻金の金額
②一時金相当額
③年金年額 × 残存期間に応じた予定利率の複利年金原価率

終身年金の場合

以下のうち、最も高い金額
①解約返戻金の金額
②一時金相当額
③年金年額 × 平均余命に応じた予定利率の複利年金現価率

保障期間付終身年金の場合

以下のうち、最も高い金額
①上記「確定年金の場合」で算出した金額
②上記「終身年金の場合」で算出した金額


非課税となる保険金や給付金(個人契約の場合)

 
以下のような保険金や給付金は、所得税・住民税の課税対象とはならず、非課税となります。

  • 入院給付金
  • 手術給付金
  • 高度障害保険金
  • 特定疾病保険金
  • リビング・ニーズ特約保険金

これらの保険金や給付金は、生活保障や療養費用の補填を目的としているため、税法上、非課税扱いとされています。


生命保険と税金(法人契約の場合)

 
法人契約の保険とは、契約者が法人で、被保険者が役員や従業員となる保険契約を指します。法人が支払う保険料の経理処理は、保険の種類や契約形態によって異なります。

法人契約における保険料の経理処理

 
保険の種類や契約形態による保険料の経理処理は、以下のとおりです。
 

保険の種類

契約者

 被保険者 満期保険金受取人

死亡保険受取人

経費処理

定期保険(貯蓄性なし)

法人

役員・従業員

法人 定期保険料として全額損金算入

遺族

給与として損金算入(従業員への退職金等)

終身保険(貯蓄性あり)

法人

役員・従業員

法人

保険料積立金として資産計上

遺族 給与として損金算入
養老保険(貯蓄性あり) 法人 役員・従業員 法人 法人 保険料積立金として資産計上
役員・従業員 遺族 給与として損金算入
1/2養老保険(貯蓄性あり) 法人 役員・従業員 法人 遺族 保険料の1/2を保険料積立金として資産計上、1/2を福利厚生費として損金算入

 
なお、2019(令和元)年7月8日以降の契約における保険期間が3年以上で、最高解約返戻率が50%超の定期保険や第三分野の保険(医療保険・がん保険・介護保険等)については、以下のように経費処理が定められています。
 

最高解約返戻率

50%超70%以下

 70%超85%以下 85%超

資産計上期間

保険期間の当初40%相当期間

最高解約返戻率となる期間

資産計上期間の処理

前払い保険料として40%を資産計上 前払い保険料として60%を資産計上

最初の10年間:支払保険料 × 最高解約返戻率 × 90% を前払い保険料として資産計上
11年目以降:支払保険料 × 最高解約返戻率 × 70% を前払い保険料として資産計上

定期保険料として60%を損金算入

定期保険料として40%を損金算入

資産計上の残額を定期保険料として損金算入

取崩期間 保険期間の75%相当期間経過後 解約返戻金相当額が最も高くなる期間経過後
取崩期間の処理 資産計上期間終了後、取崩期間に入ると、資産計上した金額を均等に取り崩して損金算入します。
取崩期間中に支払った保険料は全額損金算入されます。
資産計上期間・取崩期間以外の期間の処理 資産計上期間・取崩期間以外に支払った保険料は全額損金算入されます。

 
個人年金保険の保険料の経理処理は、以下のとおりです。
 

契約者

 被保険者 死亡保険金受取人

年金受取人

経費処理

法人

役員・従業員

法人

法人 保険料積立金として資産計上

遺族

役員・従業員

給与として損金算入

遺族
法人 保険料の90%を保険料積立金として資産計上、10%を給与として損金算入

法人が保険金・解約返戻金を受け取った場合の経理処理と課税

 
法人が受け取った保険金や解約返戻金は、全額雑収入として益金に算入され、法人税の課税対象となります。
ただし、支払保険料が資産計上されている場合は、受け取った保険金・解約返戻金から資産計上額を差し引いた残額が益金となります。