法人税のきほん
最終更新日: 2024-11-03

法人税とは

 
代表的な法人は、次のとおりです。
 

  • 株式会社
  • 有限会社(現在の会社法では新たに設立することはできません)
  • 合同会社
  • 合名会社
  • 合資会社
  • 一般社団法人
  • 一般財団法人
  • 公益社団法人
  • 公益財団法人
  • NPO法人

 
法人税とは、これら法人が行った事業の所得に対して課税される国税のことです。


会計上と税法上の利益の違い

 
会計上の利益は、次の式で計算します。
 

会計上の利益 = 収益 − 費用

 
ただし、法人税は単純に会社が得た会計上の利益に対して課税されるわけではありません。
法人税法上では、法人税は会社の所得金額に対して課税されます。
 
会社の所得金額(税法上の利益)は、次の式で計算します。
 

税法上の利益 = 益金 − 損金

 
収益費用益金損金は、それぞれ範囲が若干異なるため、会計上の利益と税法上の利益は一致しません。
そこで、会計上の利益に調整を行い、税法上の利益(所得金額)を算出します。この調整を税務調整といいます。
 
税務調整には、次の4つがあります。
 

税務調整の種類

会計上は

税法上は

益金算入

収益ではない

益金である

損金不算入

費用である

損金ではない

益金不算入

収益である

益金ではない

損金算入

費用ではない

損金である

 
税務調整による所得金額は、次の式で計算します。
 

所得金額 = 会計上の利益 + ( 益金算入 + 損金不算入 ) − ( 益金不算入 + 損金算入 )


益金

 
法人税における主な益金の扱いは、次のとおりです。

受贈益

 
法人が他の者から金銭等の贈与を受けたり、経済的利益の供与を受けたりしたときは、その時価に相当する金額が受贈益として益金算入となります。

資産の評価益

 
法人が有する資産について評価換えを行い帳簿価額を増額した場合、増額部分は益金不算入となります(会社更生法の規定による評価換えの場合等は除く)。
なお、売買目的有価証券や一定のデリバティブ取引等の評価損益については、別途規定が設けられており、評価益・評価損の益金・損金算入が認められます。

債務免除益

 
業績不振等のために法人が債権者から債務免除を受けたときは、その免除額は債務免除益として益金算入となります。

受取配当等

 
受取配当等の額のうち、負債利子を控除する等した一定額は、二重課税を排除するために、次のとおり益金不算入となります。
 
内国法人から受ける配当等

区分

株式保有割合

負債利子控除

益金不算入額

完全子法人株式等

100%

受取配当等の全額

関連法人株式等

33%超

受取配当等の全額 − 負債利子

その他の株式等

5%超33%以下

受取配当等の50%

非支配目的株式等

5%以下

受取配当等の20%

 
外国子会社から受ける配当等
内国法人が外国子会社(株式保有割合が25%以上)から受ける配当等の額は、益金不算入(負債利子控除なし、受取配当等の95%)となります。
また、国際的二重非課税の解消措置(配当支払い時に外国子会社の所得金額計算上損金算入される配当については、益金不算入の対象から除外)が導入されています。
なお、益金不算入の適用を受ける場合には、外国源泉税等は損金不算入となり、かつ、外国税額控除の適用はありません(一定のものを除く)。

※外国子会社の株式保有割合(25%)は、租税条約で緩和されている場合があります(米国10%等)。


損金

 
法人税における主な損金の扱いは、次のとおりです。

棚卸資産の評価方法等

 
棚卸資産の評価方法には、次の3つがあります。
 
原価法
原価法とは、

  • 個別法
  • 先入先出法
  • 総平均法
  • 移動平均法
  • 最終仕入原価法
  • 売価還元法


のいずれかの方法によって算出した取得価額をもって期末評価額とする方法のことです。
 
低価法
低価法とは、「原価法による評価額」または「期末時の価額」のいずれか低い方とする方法のことです。
 
税務署長の承認を受けた特別の評価方法
 
なお、評価方法の選定については、あらかじめ税務署長に届け出なければなりません。
その届け出がない場合、または届け出た方法によっていない場合には、最終仕入原価法によって評価します。
また、評価方法を変更するには、変更事業年度の開始日の前日までに申請書を税務署長に提出しなければなりません。

減価償却資産の償却費

 
減価償却とは、使用することにより価値が減少する資産(減価償却資産)について、その取得価額を使用可能期間に費用として配分するための計算手続きのことです。
このため、土地、借地権、書画、骨董等、時の経過や使用によって価値の減少しないものや事業のために使用しないものは減価償却の対象とはなりません。
法人税法上、減価償却するか否かは法人の任意であり、減価償却資産の一部についてのみ減価償却をすることも可能です。
所得金額の計算上損金算入となる減価償却費は、法人が確定した決算において償却費として損金経理した金額のうち、税法上の償却限度額に達するまでの金額となります。
ただし、減価償却資産の損金算入について、貸付の用に供した資産はその対象資産から除外されます(資産の貸付を主要な事業として行う場合を除く)。
 
税務上の償却限度額は、取得価額、残存価額、耐用年数等をもとに、定額法定率法等の償却方法に基づいて計算されます。
届け出のない場合の法人の法定償却方法は、定率法になります。
ただし、1998(平成10)年4月1日以降に取得した建物および2016(平成28)年4月1日以降に取得した建物附属設備および構築物については定額法でしか償却することができません。
なお、減価償却資産の種類ごとに耐用年数が定められています。
また、耐用年数に応じて償却方法ごとに償却率が定められています。
中古資産を取得した場合には、法定耐用年数によらないで取得後の見積もり耐用年数によることができます。
しかし、その見積もりが困難な場合には、次の式で計算した年数を残存耐用年数することが認められます。
 
法定耐用年数の全部を経過したもの

残存耐用年数 = 法定耐用年数 × 20%

 
法定耐用年数の一部を経過したもの

残存耐用年数 = ( 法定耐用年数 − 経過年数 ) + 経過年数 × 20%

 
減価償却資産が少額等の場合は、次のような処理も認められています。
 
少額の減価償却資産
「使用可能期間1年未満」または「取得価額10万円未満」の減価償却資産は、その取得価額の全額を損金に算入することができます。
また、資本金1億円以下で、常時する使用する従業員の数が500人以下の青色申告法人の中小企業者等は、取得価額30万円未満の減価償却資産について、取得価額の全額(事業年度につき合計額300万円以内。2024(令和6)年3月31日まで)を損金に算入することができます。
 
一括償却資産
取得価額20万円未満の減価償却資産は、通常の減価償却のほか、取得価額の合計額を原則として3年間均等に損金に算入する方法も選択することができます。
 
なお、実際の損金経理を行った償却額が税務上の償却限度額に満たない場合(償却不足)、翌期に繰り越すことはできません。
ただし、償却不足額は翌期に繰り越す帳簿価額に含まれるので、翌期以降に最終的には償却可能となります。
また、実際の損金経理を行った償却額が税務上の償却限度額を上回った場合(償却超過)、その超過額は損金処理が認められず、税務上の帳簿価額もその分の減価償却は行われなかったものとみなされます。

繰延資産の償却費

 
法人が支出する費用のうち、支出の効果が支出の日以降1年以上に及ぶ一定のものが繰延資産とされます。
法令では、繰延資産として、
 

  1. 創立費
  2. 開業費
  3. 開発費
  4. 株式交付費
  5. 社債等発行費
  6. 上記1から5のほか資産を賃借し、または、使用するために支出する権利金等支出の効果が1年以上に及ぶもの(長期前払費用等)

 
が定められており、支出の効果の及ぶ期間を基礎として償却します。

資産の評価損

 
法人が有する資産について評価換えを行い、帳簿価額を減額した場合、減額部分は損金の額に算入されません。
なお、災害による著しい損傷を受けた場合、会社更生法の規定による評価換えの場合等は除きます。
また、売買目的有価証券やデリバティブ取引等については、別途規定が設けられています。

役員に対する給与

 
法人がその役員に対して支給する給与については、次のいずれかの要件を満たした金額のみが損金の額に算入されます。
なお、役員給与には、経済的利益の額が含まれ、ストックオプションや使用人兼務役員に支給する賞与のうち、使用人職務に対するもので一定の要件を満たすものは、損金の額に算入されます。
ただし、不相当に高額な部分の金額は、損金の額に算入されません。
 
定期同額給与
定期同額給与とは、法人が役員に対して支給する給与に関して、その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額又は支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額である給与のことです。
定期同額給与の改定については、次の場合に限り、改定前・改定後のそれぞれの期間中の支給額が同額であれば、損金の額に算入されます。
 

  • 事業年度開始の日から3か月を経過する日までにされた改定(特別の事情があればその後の改定)
  • 役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更等によりされた改定
  • 法人の経営状況が著しく悪化したこと等による減額改定

 
事前確定届出給与
事前確定届出給与とは、その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭または確定した数の株式(出資を含みます。以下同じです。)もしくは新株予約権もしくは確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式もしくは特定新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給される給与のことで、納税地の所轄税務署長にその内容に関する届出をしているものです。
次のいずれか早い日が届出期限となります。
 

  • 事前確定届出給与の定めをした株主総会等の決議日(その決議日が職務執行開始日の後である場合にはその開始日)から1か月を経過する日
  • その会計期間開始の日から4か月を経過する日

 
業績連動給与
業績連動給与とは、利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標その他の法人またはその法人との間に支配関係がある法人の業績を示す指標を基礎として算定される額または数の金銭または株式もしくは新株予約権による給与および特定譲渡制限付株式もしくは承継譲渡制限付株式または特定新株予約権もしくは承継新株予約権による給与で無償で取得され、または消滅する株式または新株予約権の数が役務の提供期間以外の事由により変動するものをいいます。
業績連動給与は、次のすべての要件を満たす必要があります。
 

  • 内国法人(同族会社の場合には、非同族会社による完全支配関係があるものに限る)であること
  • 損金経理されていること(損金経理により引当金勘定に繰り入れた金額を取り崩す方法を含む)
  • 確定額等を限度として利益指標等を基礎として客観的な計算方法によって算定されていること
  • 報酬委員会による決定等の適正な手続きを経ていること
  • 有価証券報告書等で開示されていること
  • 利益指標等が確定後1か月(一定のものは2か月)以内に支払われ、または支払われる見込みであること
  • 業務執行役員すべてについても同様の条件となっていること

 
役員退職給与
退職給与とは、退職によって支払われるすべての給与のことです。
法人が役員に対して支払う退職給与は、原則として損金に算入されます。
よって、退職した役員に対して支給する退職給与を損金の額に算入するために、あらかじめ税務署長に対して支給時期および支給額を届け出る必要はありません。
 
使用人給与(給料、賞与、退職給与)
役員の親族等特殊な関係にある使用人に対する給与等の額のうち、不相当に高額な部分の金額については、損金の額に算入されません。
 
ストックオプション等に係る費用
会社法施行日(2006(平成18)年5月1日)以降に、内国法人が個人に対して役務提供に係る費用の対価として一定の新株予約権の発行決議をし、それが税制非適格ストックオプションにあたる場合には、個人において所得税法の規定により給与等課税事由が生じた日(権利行使日)に、当該役務提供を受けたものとし、原則としてその内国法人では付与対象者の権利行使日にストックオプション費用の損金算入ができます(一定のものを除く)。
 
譲渡制限付株式を対価とする費用
法人が個人から受ける将来の役務提供対価として、一定の譲渡制限付株式を交付した場合には、当該役務提供に係る費用の額は、原則としてその譲渡制限付株式の譲渡制限が解除された日の属する事業年度の損金に算入されます。
 
役員等に対する経済的利益
下表のような役員等に対する法人の行為は、実質的にその相手に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすものであり、経済的利益に該当します。
 

役員等に対する法人の行為の内容

経済的利益の額

物品等を贈与した場合

時価

役員等に資産を低い価額で譲渡した場合

資産の価額と譲渡価額との差額

役員等から高い価額で資産を買い入れた場合

資産の価額と買入価額との差額

債権を放棄または免除した場合

免除した債権額

債務を無償で引き受けた場合

引き受けた債務額

居住用の土地または家屋を無償または低い価額で賃貸した場合

通常の賃貸料と実際に徴収した賃貸料との差額

金銭を無償または低い利率で貸し付けた場合

通常の利息と実際に徴収した利息との差額

毎月定額により支給される渡切交際費

支給される額

個人的費用(住宅の光熱費、家事使用人給料等)を負担した場合

毎月負担するその費用

役員等が社交団体等の会員であるための社交団体の経常会費等を法人が負担した場合

負担した費用

役員等を被保険者および保険金受取人とする生命保険料の全部または一部を負担した場合

負担した保険料

 
役員等に対するこれらの額が毎月おおむね一定しているものについては、定期同額給与として取り扱います。
したがって、通常の給与にこれらの経済的利益を合計した金額が、不相応に高額でなければ、損金の額に算入できる定期同額給与として取り扱われます。

寄附金

 
法人税法上、国や地方公共団体に対する寄附金や指定寄付金は、その全額を損金に算入することができます。
指定寄付金とは、公益法人等に対する寄付金で、一定の要件に該当するものとして財務大臣がしていしたものをいい、日本学生支援機構に対する寄付金等がこれに該当します。
ただし、特定公益増進法人および認定NPO法人等に対する寄附金については、損金算入の額について制限があります。
特定公益増進法人とは、公共法人、公益法人(一定のものを除く)等のうち、教育・科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与する法人のことで、日本赤十字社等がこれに該当します。
なお、いずれも確定申告書に明細を記載した書類を添付する必要があります。

交際費等

 
法人税法上の交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先や仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用のことです。
交際費等は、原則として損金に算入することはできません。
 
ただし、次のような費用は交際費等に該当せず、全額を損金に算入することができます。
 

  • 福利厚生費(専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用)
  • 飲食費等(1人あたり10,000円以下の一定の要件を満たした飲食費用)
  • 広告宣伝費(カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐい等の物品を贈与するために通常要する費用)
  • 会議費(会議での茶菓子、弁当等の飲食物を提供するために通常要する費用)

 
法人が支出する交際費等は、原則としてその全額が損金不算入とされていますが、2014(平成26)年4月1日から2027(令和9)年3月31日までの間に開始する各事業年度において支出する交際費等の額については、下表のとおり、一定の限度で損金に算入することができる特例措置が設けられています。
 

 期末資本金の額

損金に算入される額

1億円以下

次の①または②のうち、いずれかの金額
①接待飲食費(社内飲食費を除く)の50%
②800万円/年

1億円超100億円以下

接待飲食費(社内飲食費を除く)の50%

100億円超

 なし

貸倒引当金

 
貸倒引当金とは、取引先の倒産等の理由で債権(売掛金や受取手形等)を回収できなくなる貸倒損失によるリスクに備え、損失になるかもしれない金額を予想して、あらかじめ計上した引当金のことです。
損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額のうち、繰入限度額に達するまでの金額は損金に算入することができます。
損金算入した貸倒引当金の金額は、翌事業年度の所得金額の計算上益金に算入します。

貸倒損失

 
貸倒損失とは、取引先の倒産等の理由で債権(売掛金や受取手形等)を回収できなくなることです。
法人の有する金銭債権について、貸倒損失として損金の額に算入される要件は、下表のとおりです。
 

区分

内容

税務上の取り扱い

法令の規定による貸倒れ

①会社更生法等の規定による更生計画認可の決定、民事再生法による再生計画認可の決定
②会社法の規定による特別精算に係る協定の認可の決定

金銭債権のうち、左記により切り捨てられることになった部分の金額は、その事実が発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入します。

一定の関係者の協議決定によるもの

①債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
②金融機関等第三者の斡旋による当事者間の協議により締結された契約で、その内容が①に準ずるもの

債務免除によるもの

債権者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債権者に対して書面により債務免除額を明らかにしたもの

回収不能の場合

金銭債権について債権者の資産状況、支払い能力等からみて、その全額が回収できないことが明らかになった場合 その明らかになった事業年度において、左記の金銭債権の全額を貸倒損失として損金経理することができます。
ただし、担保物がある場合には、その担保分を処分した後でなければなりません。

一定期間取引停止後弁済がない場合等(売掛債権の特例)

①継続的な取引を行っていた債権者との継続的取引を停止したとき(最後の弁済期または最後の弁済のときが取引停止時以後の場合は、これらのうち最も遅いとき)以後1年以上したこと(その売掛債権について担保物がある場合を除く)
②同一地域の債権者について有する売掛債権の総額が、取り立て費用に満たない場合において、債務者に対し支払いを督促したにもかかわらず弁済がないとき
売掛債権の額から備忘価額(1円)を控除した残額を貸倒損失として損金経理したときは、損金に算入します。

圧縮記帳

 
圧縮記帳とは、資産の譲渡等により生じた利益の一定額を、取得した固定資産等の取得価額から控除(圧縮)し、その圧縮した額を損金とすることによって、その事業年度の利益が生じない、あるいは削減する方法のことです。
圧縮記帳の制度には、法人税法で規定されているものと租税特別措置法で規定されているものがあります。
代表的なものは、次のとおりです。
 
法人税法で規定されているもの

  • 国庫補助金等で取得した固定資産の圧縮記帳
  • 保険金、損害賠償金等で取得した固定資産の圧縮記帳
  • 交換により取得した固定資産の圧縮記帳

 
租税特別措置法で規定されているもの

  • 収用等に伴い取得した資産の圧縮記帳
  • 特定の資産の買換え等により取得した資産の圧縮記帳

租税公課

 
租税公課とは、国税や地方税等の税金である租税と、国や公共団体等に対する交付金や会費等の公的な課金である公課を合わせたものです。
法人税における租税公課の取扱いは、下表のとおりです。
 

 損金算入できる租税公課

固定資産税
不動産取得税
自動車税
法人事業税
特別法人事業税
税込み処理をした消費税
利子税
地方税法の納期の延長に係る延滞金
労働保険・社会保険の追徴金および延滞金
事業所税

損金算入できない租税公課

法人税
地方法人税
法人道府県民税
法人市町村民税
延滞税
過少申告加算税
無申告加算税
不納付加算税
重加算税
印紙税過怠税
罰金
過料
科料
法人税額から控除する所得税額
税額控除の対象とした外国税額


法人税の税額計算

 
法人税の税額は、次の式で計算します。
 

法人税の税額 = 法人の所得金額 × 法人税率

 
法人税の税率は、法人の区分に応じて異なります。
2019(平成31)年4月1日以降に事業を開始した場合の税率は、下表のとおりです。
 

法人の区分

所得金額

税率

普通法人

資本金1億円超

23.2%

資本金1億円以下

年800万円以下の部分

15%

年800万円超の部分

23.2%

協同組合等

年800万円超の部分 19%
年800万円以下の部分 15%

公益法人等

公益法人等とみなされているもの 年800万円超の部分

23.2%

年800万円以下の部分 15%
人格のない社団等 年800万円超の部分 23.2%
年800万円以下の部分 15%

特定同族会社の留保所得に対する特別税率

 
法人税法上の同族会社とは、3人以下の株主等およびこれらの同族関係者が有する株式等の総数が、その発行済株式等(その会社が有する自己株式を除きます)の総数の50%超に該当する会社、またはそれらの者の議決権の保有割合が50%超の会社のことです。
このうち、株主等の1人およびこれらの同族関係者が有する株式等の総数等で同族会社にあたる法人を特定同族会社といいます。
特定同族会社が、所得のうち一定の金額を超えて利益を社内留保した場合には、通常の法人税のほかに、その超える金額(課税留保金額)に対して留保金課税という特別の税金が課せられます。
ただし、2007(平成19)年4月1日以降に開始する事業年度から、資本金1億円以下の会社(資本金5億円以上の法人の100%子会社等を除く)は、特定同族会社とされず、留保金課税の対象外です。
 
課税留保金額は、次の式で計算します。
 

課税留保金額 = 留保金額 − 留保控除額
 
留保金額 = 所得等の金額のうち留保した金額 − ( 法人税額 + 地方法人税額 + 住民税額 )
 
留保控除額は、次の①〜③のうち、最も多い金額になります。
①所得基準額 = 所得等の金額 × 40%
②定額基準額 = 2,000万円 × 当期の月数 ÷ 12
③積立金基準額 = 期末資本金の額 × 25% − 期末利益積立金額

 
特別税額は、課税留保金額を下表の区分に応じて、それぞれの税率を乗じて計算した金額の合計額になります。
 

課税留保金額

税率

年3,000万円以下

10%

年3,000万円超 1億円以下

15%

年1億円超

20%


法人税の申告と納付

 
確定申告
法人は、原則として各事業年度終了後2か月以内に法人税の申告および納付をしなければなりません。
 
中間申告
事業年度が6か月を超え、前事業年度実績による予定申告に係る中間納付税額10万円超(前事業年度による確定法人税額20万円超)となる法人は、上半期分について中間申告をしなければなりません。
中間申告および納付は、各事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内にしなければなりません。
 
納税地
法人税の納税地は、内国法人の場合は、その法人の本店または主たる事業所の所在地となります。
また、外国法人で国内に事務所等がある法人の場合は、その事務所等の所在地となります。


地方法人税

 
地方法人税とは、地域間の税源の偏在性を是正し、財政力格差の縮小を図るため、法人住民税法人税割の税率を引き下げるとともに、当該引き下げ分に相当する、課税標準を法人税額とする国税のことです。
2014(平成26)年10月1日以後に開始する事業年度において、法人税を納める義務がある法人は、地方法人税を納める義務があります。
 
地方法人税は、次の式で計算します。
 

地方法人税 = 基準法人税額 × 税率

※「基準法人税額」とは、概ね所得税額控除や外国税額控除前の法人税額(連結納税を適用している法人は連結法人税額)となります。
※「税率」は、10.3%です。


法人住民税

 
法人住民税とは、法人に対する道府県民税(都を含む)と市町村民税(特別区を含む)を合わせたもので、法人税割均等割で成り立っています。
 
法人住民税の構成は、下表のとおりです。
 

 

都道府県民税

市区町村民税

法人税割

法人税額 × 税率
標準税率は1.0%

法人税額 × 税率
標準税率は6.0%

均等割

資本金の額に応じて課税

資本金の額および従業員数に応じて課税

※「標準税率」とは、地方自治体が課税する場合に通常用いるべき税率のことで、必要に応じてその他の税率を用いることができます。


法人事業税

 
法人事業税とは、事業を行う法人に対して課税される税金のことです。
事業を行う法人は、その事務所または事業所の所在する都道府県において、事業税を申告・納付する義務があります。
 
法人事業税は、次の式で計算します。
 

法人事業税 = 法人の所得金額 × 税率

 
なお、資本金1億円超の法人に対しては、所得金額以外の要素も考慮した外形標準課税が適用されます。


特別法人事業税

 
特別法人事業税とは、都市・地方の持続可能な発展のための地方税体系の構築の観点から、地方税の税源の偏在性を是正することとし、消費税率10%段階において復元後の法人事業税の約3割を分離した国税のことです。
2019(令和元年)年10月1日以後に開始する事業年度において、法人事業税を納める義務がある法人は、特別法人事業税を納める義務があります。
 
特別法人事業税は、次の式で計算します。
 

特別法人事業税 = 基準法人所得割額 × 税率

※「税率」は、資本金1億円以下の法人は37%、資本金1億円超の法人は260%となります。


事業所税

 
事業所税とは、都市環境の整備および改善に関する事業に要する費用に充てられるための目的税のことで、地方自治体で定められる指定都市で課税される市町村税です(特例で都税として課税されます)。
 
事業所税は、下表のとおりです。
 

 

課税標準

税率

免税店

資産割

事業床面積 (㎡)

600円/㎡ 1,000㎡以下

従業者割

従業者給与総額

0.25%

100人以下


決算書

 
決算書とは、企業活動の結果を利害関係者に伝える報告書のことです。
決算書は、主に損益計算書貸借対照表株主資本等変動計算書キャッシュフロー計算書の4つの書類で構成されます。

損益計算書(P/L)

 
損益計算書とは、1年間でどのくらい儲かったのか、または損したのかといった経営成績を表したものです。
 
損益計算書に記載される利益には、
 

  • 売上総利益 = 売上高 − 売上原価
  • 営業利益 = 売上総利益 − 販売費及び一般管理費
  • 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用
  • 税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 − 特別損失
  • 当期純利益 = 税引前当期純利益 − 法人税・住民税・事業税等 − 法人税等調整額

 
があります。

貸借対照表(B/S)

 
貸借対照表とは、どのくらいの資産を持っていて、どのくらいの負債を抱えているのかといった内容を記載した上で、資産から負債を差し引いた純資産がどの程度あるのかといった企業のある一時点でおける財政状態を表したものです。
貸借対照表では、表の左側に、資産流動資産固定資産繰延資産)が表示されていて、右側に、負債流動負債固定負債)と純資産株主資本評価・換算差額等新株予約権)が表示されています。
左側の合計金額と右側の合計金額は必ず一致するようになっています。

株主資本等変動計算書

 
株主資本等変動計算書とは、1事業年度における純資産の変動を表したものです。
株主資本等変動計算書には、株主資本の変動の様子を一覧にしたもので、株主資本が増加または減少した原因や、その増加または減少したものをどの項目に振り分けたのか表しています。

キャッシュフロー計算書

 
キャッシュフロー計算書とは、資金の流入および流出を表す財務諸表のことです。
資金の源泉となる企業活動を営業活動投資活動財務活動の3つに分類して、資金の流れを表示したもので、キャッシュを生み出す能力がわかります。
 
営業活動によるキャッシュフロー
営業活動によるキャッシュフローとは、外部からの調達ではなく企業自らの営業活動から生み出されたキャッシュの量を表します。
多ければ多いほどよいことを意味します。
 
投資活動によるキャッシュフロー
投資活動によるキャッシュフローとは、将来の営業キャッシュフローを生み出すために行った投資に使ったキャッシュの量の表します。
固定資産の購入・売却、投資有価証券の購入・売却が該当します。
現事業を維持するための設備投資は必要であり、将来の営業キャッシュフローを増加させるための投資も可能な限り行う必要があります。
そのため一会計期間のみの投資活動によるキャッシュフローがプラスかマイナスかで良いか悪いかを判断するのではなく、数期間累計した結果、営業キャッシュフロー内の投資であれば適切と判断します。
 
財務活動によるキャッシュフロー
財務活動によるキャッシュフローとは、営業活動や投資活動を維持するためにどのように資金を調達し返済したかを示します。
資金不足のときに増資、社債、借入金で調達し、資金が潤沢のときに借入金返済や配当支払いをしたことを表示します。
通常の営業業務で生み出したキャッシュの範囲内で投資することが望ましいですが、借入金による資金調達により経営拡大も必要な場合もあります。
 
3つのキャッシュフローの状況と会社の状態の関係は、下表のとおりです。
 

会社の状態

営業CF

投資CF

財務CF

超安定

非常に安定

安定

不安定

非常に不安定

超不安定


決算書の分析と主な指標

 
決算書の分析は、一般に収益性安全性生産性成長性の4つの観点から行われます。

収益性分析の主な指標

 
総資本経常利益率
総資本経常利益率とは、総資本に対する経常利益の割合を示すものであり、収益性を総合的に判断するための指標のことです。
 
総資本経常利益率は、次の式で計算します。
 

 
自己資本利益率(ROE)
自己資本利益率(ROE)とは、株主に帰属する自己資本に対する純利益の比率を示す指標のことです。
 
自己資本利益率(ROE)は、次の式で計算します。
 

安全性分析の主な指標

 
流動比率
流動比率とは、短期の負債(流動負債)に対して、返済に充当できる資産(流動資産)がどの程度あるのかを示すもので、短期的な支払能力を判断するための指標のことです。
 
流動比率は、次の式で計算します。
 

 
当座比率
当座比率とは、短期の負債(流動負債)に対して、より換金性の高い流動性資産である当座資産(現預金や売上債権、短期保有の有価証券等)がどの程度あるかを示すもので、流動比率よりもより実質的な支払能力を判断するための指標のことです。
一般にこの数値は高い方が望ましいとされています。
 
当座比率は、次の式で計算します。
 

 
固定比率
固定比率とは、自己資本によって固定資産への投資がどの程度賄えているのかを見るための指標のことです。
固定比率は100%以下であることが望ましいとされています。
 
固定比率は、次の式で計算します。
 

 
自己資本比率
自己資本比率とは、総資産の中に占める自己資本の割合を示すもので、自己資本比率が高いほど財務の健全性が高いと判断されます。
 
自己資本比率は、次の式で計算します。
 

生産性分析の主な指標

 
労働生産性
労働生産性とは、従業員1人あたりの生産性のことで、主に生産性を物量で捉える物的労働生産性と、生産性を金額で捉える価値的労働生産性の2つがあります。
 
物的労働生産性と価値的労働生産性は、次の式で計算します。
 

 

成長性分析の主な指標

 
売上高増加率経常利益増加率総資本増加率
売上高増加率、経常利益増加率、総資本増加率とは、前期と比較し、当期にどの程度売上、経常利益、総資本が増加したのかを示す指標のことです。
 
売上高増加率、経常利益増加率、総資本増加率は、次の式で計算します。
 

 

 

損益分岐点分析の主な指標

 
損益分岐点売上高
損益分岐点売上高とは、売上高と費用の額が等しくなる(=損益がゼロになる)売上高のことです。
実際の売上高が損益分岐点売上高よりも大きければ利益が発生し、小さければ損失が発生することになります。
 
損益分岐点売上高は、次の式で計算します。