所得控除
最終更新日: 2025-11-15

所得控除について

 
所得控除とは、所得税を計算する際に、納税者の個人的な事情を考慮して税負担を軽減する仕組みです。これにより、生活状況や支出に応じた公平な課税が行われます。
所得控除には、以下の16種類があります。
 

  1. 基礎控除
  2. 配偶者控除
  3. 配偶者特別控除
  4. 扶養控除
  5. 特定親族特別控除
  6. 障害者控除
  7. 寡婦控除
  8. ひとり親控除
  9. 勤労学生控除
  10. 社会保険料控除
  11. 生命保険料控除
  12. 地震保険料控除
  13. 小規模企業共済等掛金控除
  14. 医療費控除
  15. 雑損控除
  16. 寄付金控除

基礎控除について

 
基礎控除とは、所得税を計算する際に、納税者本人の合計所得金額に応じて一定額を差し引くことができる制度です。すべての納税者が対象ですが、合計所得金額が2,500万円を超える場合は適用されません。
 

控除額

 

合計所得金額

2025(令和7)年分・2026(令和8)年分

2027(令和9)年分以降
132万円以下 95万円
132万円超336万円以下 88万円 58万円
336万円超489万円以下 68万円
489万円超655万円以下 63万円
655万円超2,350万円以下 58万円

2,350万円超2,400万円以下

48万円

2,400万円超2,450万円以下

32万円

2,450万円超2,500万円以下

16万円


配偶者控除について

 
配偶者控除は、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下で、同一生計の配偶者の合計所得金額が58万円以下(給与収入のみの場合は123万円以下)の場合に、一定額を所得から差し引ける制度です。これにより、所得税の負担が軽減されます。
 

配偶者控除の対象となる配偶者の主な要件

 

  • 民法上の配偶者であること(内縁関係は対象外)。
  • 納税者と生計を一にしていること。
  • 配偶者の年間合計所得金額58万円以下(給与のみの場合は給与収入123万円以下)であること。
  • 青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと。
  • 納税者本人の合計所得金額1,000万円以下であること。

 

控除額

 
控除額は、納税者本人の合計所得金額と、控除対象配偶者の年齢によって、以下のとおりです。
 

納税者の合計所得金額

一般の控除対象配偶者

老人控除対象配偶者 ※

900万円以下

38万円 48万円

900万円超950万円以下

26万円

32万円

950万円超1,000万円以下

13万円

16万円

※「老人控除対象配偶者」とは、その年の12月31日時点で70歳以上の配偶者です。


配偶者特別控除について

 
配偶者特別控除は、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下で、同一生計の配偶者の合計所得金額が58万円超133万円以下の場合に、一定額を所得から差し引ける制度です。配偶者控除の対象外となる場合でも、条件を満たせば適用できます。
 

配偶者特別控除の対象となる配偶者の主な要件

 

  • 民法上の配偶者であること(内縁関係は対象外)。
  • 納税者と生計を一にしていること。
  • 青色申告者の事業従事者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業従事者でないこと。
  • 配偶者の年間合計所得金額58万円超133万円以下(給与収入のみの場合は給与収入123万円超201万円以下)であること。
  • 配偶者が、他の控除(配偶者控除や源泉控除対象配偶者)を適用していないこと。
  • 納税者本人の合計所得金額1,000万円以下であること。

 

控除額

 
控除額は、納税者本人の合計所得金額と、配偶者の合計所得金額によって、以下のとおりです。
 

配偶者の合計所得金額

納税者の合計所得金額

900万円以下

900万円超950万円以下 950万円超1,000万円以下

48万円超95万円以下

 38万円 26万円 13万円

95万円超100万円以下

36万円

24万円

12万円

100万円超105万円以下

31万円

21万円

11万円

105万円超110万円以下

26万円

18万円

9万円

110万円超115万円以下

21万円

14万円

7万円

115万円超120万円以下

16万円

11万円

6万円

120万円超125万円以下

11万円

8万円

4万円

125万円超130万円以下

6万円

4万円

2万円

130万円超133万円以下

3万円

2万円

1万円


扶養控除について

 
扶養控除は、納税者と生計を一にする「控除対象扶養親族」がいる場合に、一定額を所得から差し引ける制度です。これにより、所得税の負担が軽減されます。
 

控除対象扶養親族の主な要件

 

  • 配偶者以外の親族、または都道府県知事から養育を委託された児童(里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
  • 納税者と生計を一にしていること。
  • その親族の年間合計所得金額58万円以下(給与のみの場合は給与収入123万円以下)であること。
  • 青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払いをうけていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと。
  • その年の12月31日時点で16歳以上であること。

 

控除額

 
控除額は、扶養親族の年齢や同居の有無に応じて、以下のとおりです。
 

区分

年齢(12月31日時点)

控除額(1人あたり)

一般の控除対象扶養親族

16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満 38万円

特定扶養親族

19歳以上23歳未満

63万円

老人扶養親族

同居老親等

70歳以上

58万円

同居老親等以外

48万円


特定親族特別控除について

 
特定親族特別控除は、納税者と生計を一にする「特定親族」がいる場合に、その親族の所得に応じて一定額を控除できる制度です。この制度は、2025(令和7)年税制改正で新設され、大学生などの働き控えを緩和する目的があります。
 

控除対象特定親族の主な要件

 

  • 配偶者以外の親族(6親等内の血族、3親等内の姻族)、または児童福祉法に基づき養育を委託された児童(里子)であること。
  • 納税者と生計を一にしていること(同居または仕送りなど)。
  • その親族の年間合計所得金額58万円超123万円以下(給与のみの場合は給与収入123万円超188万円以下)であること。
  • 青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払いをうけていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと。
  • 扶養控除の対象になっていないこと。
  • 年齢が19歳以上23歳未満であること。

 

控除額

 

特定親族の合計所得金額

控除額(1人あたり)

58万円超85万円以下

63万円

85万円超90万円以下

61万円

90万円超95万円以下

51万円

95万円超100万円以下

41万円

100万円超105万円以下

31万円

105万円超110万円以下

21万円

110万円超115万円以下

11万円

115万円超120万円以下

6万円

120万円超123万円以下

3万円


障害者控除について

 
障害者控除は、納税者本人、同一生計の配偶者、または扶養親族が障害者に該当する場合に、所得税の計算上、一定額を控除できる制度です。
 

控除額

 

区分

控除額(1人あたり)

一般障害者

27万円

特別障害者(障害等級1級・2級)

40万円

同居特別障害者

75万円


寡婦控除について

 
寡婦控除は、女性の納税者が所得税法上の「寡婦」に該当する場合に、所得から27万円を差し引ける制度です。
 

控除対象寡婦の主な要件

 

  • 夫と離婚後、再婚しておらず、扶養親族がいる女性で、合計所得金額500万円以下であること。
  • 夫と死別後、再婚していない女性、または夫の生死が不明な女性で、合計所得金額500万円以下であること。
  • 事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいないこと。
  • ひとり親控除の適用を受けていないこと。

 

控除額

 

区分

控除額

寡婦控除

27万円

ひとり親控除について

 
ひとり親控除は、納税者本人が所得税法上の「ひとり親」に該当する場合に、所得から35万円を差し引ける制度です。
 

控除対象ひとり親の主な要件

 

  • 婚姻をしていない、または配偶者の生死が不明であること。
  • 生計を一にする子(その年の合計所得金額58万円以下)を扶養していること。
  • 納税者の合計所得金額500万円以下であること。
  • 事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいないこと。
  • 寡婦控除の適用を受けていないこと。

 

控除額

 

区分

控除額

ひとり親控除

35万円

勤労学生控除について

 
勤労学生控除は、納税者本人が所得税法上の「勤労学生」に該当する場合に、所得税の計算上、27万円を控除できる制度です。
 

控除対象勤労学生の主な要件

 

  • 給与所得など、勤労による所得があること。
  • 合計所得金額85万円以下で、勤労に基づく所得以外の所得10万円以下であること。
  • 学校教育法に定める学校や一定の教育機関の学生・生徒であること。

 

控除額

 

区分

控除額

勤労学生控除

27万円

社会保険料控除について

 
社会保険料控除は、納税者本人、または本人と生計を一にする配偶者や親族のために負担した社会保険料の全額を、所得税の計算上控除できる制度です。
 

控除対象となる主な社会保険料

 

  • 健康保険、国民年金、厚生年金保険、船員保険の保険料(被保険者負担分)
  • 国民健康保険料または国民健康保険税
  • 高齢者医療制度の保険料
  • 介護保険料
  • 雇用保険料(被保険者負担分)
  • 国民年金基金の掛金
  • 農業者年金の保険料
  • 厚生年金基金の掛金
  • 共済組合の掛金(国家公務員・地方公務員・私学教職員など)
  • 労働者災害補償保険の特別加入者保険料
  • 条例に基づく互助会掛金(税務署長承認制度)
  • 租税条約に基づき外国の社会保障制度に支払う一定の保険料

 

控除額

 

区分

控除額

社会保険料控除

その年に支払った金額または給与・公的年金等から控除された金額の全額

生命保険料控除について

 
生命保険料控除は、納税者本人が支払った一般の生命保険料介護医療保険料個人年金保険料について、一定額を所得税の計算上控除できる制度です。契約日によって控除額の計算方法が異なり、旧契約(2011(平成23)年12月31日以前)新契約(2012(平成24)年1月1日以降)に分かれます。
 

旧契約の控除額(一般・個人年金)

 

年間支払保険料等

控除額

25,000円以下

支払保険料等の全額

25,000円超50,000円以下

支払保険料等 × 1/2 + 12,500円

50,000円超100,000円以下

支払保険料等 × 1/4 + 25,000円

100,000円超

一律50,000円

 

新契約の控除額(一般・介護医療・個人年金)

 

年間の支払保険料等

控除額

20,000円以下

支払保険料等の全額

20,000円超40,000円以下

支払保険料等 × 1/2 + 10,000円

40,000円超80,000円以下

支払保険料等 × 1/4 + 20,000円

80,000円超

一律40,000円

 

旧契約と新契約の最高控除額

 

 区分

一般の生命保険料控除

個人年金保険料控除

介護医療保険料控除

合計

旧契約

所得税

最高50,000円

最高50,000円 最高100,000円

住民税

最高35,000円

最高35,000円 最高70,000円

新契約

所得税

最高40,000円

最高40,000円 最高40,000円 最高120,000円

住民税

最高28,000円

最高28,000円 最高28,000円 最高70,000円

地震保険料控除について

 
地震保険料控除は、納税者本人または本人と生計を一にする配偶者や親族が所有する居住用家屋や生活用動産に対して締結した地震保険契約の保険料を、所得税の計算上控除できる制度です。
 

控除額

 

区分

年間の支払保険料の合計

控除額

①地震保険料

50,000円以下

支払金額の全額

50,000円超

一律50,000円
②旧長期損害保険料

10,000円以下

支払金額の全額

10,000円超20,000円以下

支払金額 × 1/2 + 5,000円

20,000円超

一律15,000円
①と②の両方がある場合

①と②の計算額の合計(最高50,000円)

 

控除対象となる旧長期損害保険契約の主な要件

 

  • 2006(平成18)年12月31日までに締結した契約であること。
  • 満期返戻金等があり、保険期間または共済期間が10年以上であること。
  • 2007(平成19)年1月1日以降に契約内容の変更をしていないこと。

小規模企業共済等掛金控除について

 
小規模企業共済等掛金控除は、納税者本人が一定の共済契約や年金制度に基づいて支払った掛金を、所得税の計算上全額控除できる制度です。
 

控除対象掛金

 

  • 小規模企業共済法に基づき、独立行政法人中小企業基盤整備機構と締結した共済契約の掛金。
  • 確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金または個人型年金加入者掛金。
  • 地方公共団体が実施する心身障害者扶養共済制度の掛金。

 

控除額

 

区分

控除額

小規模企業共済等掛金控除

その年に支払った掛金の全額

医療費控除について

 
医療費控除は、その年(1月1日~12月31日)に、納税者本人または同一生計の配偶者・親族のために支払った医療費のうち、一定額(最高200万円)を所得から差し引ける制度です。なお、12月31日時点で未払いの医療費は対象外となり、実際に支払った年に控除できます。医療費控除を受けるには確定申告が必要です。
 

控除額

 

区分

控除額

医療費控除

その年中の医療費支払額 − 保険金等で補填される金額 − 10万円 ※(最高200万円)

※「10万円」についてはその年の総所得金額等200万円未満の場合、総所得金額等の5%です。

 

医療費控除の対象外となる主な費用

 

  • 未払いの医療費
  • 人間ドック・健康診断の費用(重大な疾病が発見され治療を行った場合は対象
  • 美容整形や審美目的の歯列矯正
  • 病気の予防や健康増進目的の医薬品や健康食品
  • 疲労回復目的のマッサージ
  • 自己都合の差額ベット費
  • 自家用車通院の駐車場代・ガソリン代
  • 電車やバスの通院圏内でのタクシー代(やむを得ない場合を除く)
  • メガネ・コンタクトレンズ代
  • 感染予防のためのマスク購入費
  • 自己判断で受けたPCR検査費用(陽性判明後の治療や医師等の指示による検査は対象

セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について

 
セルフメディケーション税制は、健康維持や疾病予防の取り組み(特定健診、予防接種、がん検診など)を行う個人が、スイッチOTC医薬品(医療用から転用された市販薬)を購入した場合に、所得控除を受けられる制度です。適用期間は、2017(平成29)年1月1日から2026(令和8)年12月31日までとなっています。なお、セルフメディケーション税制と通常の医療費控除は選択適用となり、併用することはできません。
 

控除費

 

区分

控除額

セルフメディケーション税制

特定一般用医薬品等購入費の合計額 − 保険金等で補填される金額 − 12,000円(最高88,000円)

雑損控除について

 
雑損控除は、納税者本人または本人と生計を一にする配偶者や親族(その年の合計所得金額が48万円以下)が所有する生活に通常必要な資産について、災害・盗難・横領(詐欺・恐喝は対象外)による損害を受けた場合に、その損失額の一部を所得税の計算上控除できる制度です。なお、控除適用には確定申告が必要です。
 

損害の主な原因

 

  • 自然災害(震災・風水害・冷害・雪害・落雷など)
  • 人為的災害(火災・爆発など)
  • 生物による異常災害(害虫など)
  • 盗難
  • 横領

 

控除額

 

区分

控除額

雑損控除

災害関連支出が5万円以下
損失の金額 − 総所得金額 × 10%
災害関連支出が5万円超 以下の①または②の少ない方
①差引損失額 − ( 災害関連支出額 − 5万円 )
②総所得金額 × 10%
損失のすべてが災害関連支出 以下の①または②の少ない方
①5万円
②総所得金額 × 10%

※差引損失額 = 損害額 + 災害関連支出 − 保険金等補填額
※災害関連支出額 = 滅失した住宅や家財の取り壊し・除去費用など

 

繰越控除

 
その年の所得金額から控除しきれない損失額は、翌年以降3年間繰り越し可能です。また、住宅家財等につき特定非常災害(2023(令和5)年4月1日以降発生)の指定を受けた災害による損失は、翌年以降5年間繰り越し可能です。


災害減免法について

 
災害減免法は、災害によって住宅や家財に損害を受けた場合、所得税を軽減または免除する制度です。雑損控除との選択適用で、有利な方を選べます。
 

主な適用要件

 

  • 災害のあった年の所得金額1,000万円以下であること。
  • 損害額が住宅または家財の価額の50%以上であること。

 

軽減・免除額

 

所得金額

軽減・免除される所得税

500万円以下

全額免除

500万円超750万円以下

所得税額の50%

750万円超1,000万円以下

所得税額の25%

寄附金控除について

 
寄附金控除は、納税者本人が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対して特定寄附金を支出した場合、その寄附額の一部を所得税の計算上控除できる制度です。なお、適用には確定申告が必要です。
 

控除対象となる主な寄附金

 

  • 国または地方公共団体への寄附
  • 財務大臣が指定した公益法人等への寄附
  • 特定公益増進法人(日本赤十字社、公益社団法人、公益財団法人など)への寄附
  • 一定の特定公益信託への金銭支出
  • 政党等への寄附(政治資金規正法に基づくもの)
  • 認定NPO法人や国立大学法人等への寄附
  • 特定新規中小会社への出資金(一定要件あり)

 

控除額

 

区分

控除額

寄附金控除

以下の①または②の少ない方 − 2,000円
①その年に支出した特定寄附金の合計額

②その年の総所得金額 × 40%

 

控除額(特定新規中小企業への出資)

 

区分

控除額

寄附金控除

以下の①または②の少ない方 − 2,000円
①特定新規株式の取得に要した金額(800万円を限度)

②その年の総所得金額 × 40%

ふるさと納税制度について

 
ふるさと納税制度は、納税者が選んだ地方公共団体に寄附を行うと、寄附額のうち2,000円を超える部分が所得税・住民税から控除される仕組みです(一定の上限あり)。控除適用には、原則として寄付を行った翌年に確定申告が必要です。ただし、給与所得者等で確定申告不要の場合、ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用可能寄付先が5団体以内)です。この場合、所得税からの控除はなく、翌年度の住民税でまとめて控除されます。
 

控除対象となる寄付

 

  • 総務大臣が定める基準を満たす地方公共団体への寄付
  • 返礼品を送付する場合は、以下を満たすこと
    • 返礼割合が3割以下
    • 返礼品が地場産品