経済指標
最終更新日: 2025-10-13

国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)

 
国内総生産(GDP)とは、一定期間内に国内で新たに生み出された財やサービスの付加価値の総額を指します。これは、国の経済活動の規模を示す重要な指標です。
GDPを見る際には、金額そのものよりも、前期や前年同期との比較による「伸び率」が重視されます。GDPが増加している場合、その国の経済が活発で、景気が拡大していると判断できます。
支出側から見たGDPの構成要素の中で、最も大きな割合を占めるのは民間最終消費支出で、全体の約50〜60%を占めています。
GDPの統計は、内閣府によって年4回(四半期ごと)公表されます。


経済成長率

 
経済成長率とは、国内総生産(GDP)などを用いて、一国の経済規模が一定期間にどれだけ変化したかを示す割合のことです。これは、経済の拡大や縮小の度合いを測る重要な指標です。
経済成長率には主に以下の2種類があります。

  • 名目経済成長率:時価で評価された名目GDPを用いて算出され、物価変動の影響を含みます。
  • 実質経済成長率:名目GDPから物価変動の影響を除いた実質GDPを用いて算出され、より正確に経済の実態を反映します。

一般的に「経済成長率」と言う場合は、物価の影響を除いた実質経済成長率を指すことが多いです。
名目経済成長率と実質経済成長率は、以下の式で算出されます。
 

名目経済成長率の計算式

 

実質経済成長率の計算式

景気動向指数

 
景気動向指数とは、生産や雇用など、景気に敏感に反応する複数の経済指標の動きを統合し、景気の現状や変化を把握するための統計指標です。内閣府が毎月公表しています。
景気動向指数には、以下の2つの指標があります。

  • コンポジット・インデックス(CI):景気の変動のテンポや大きさを把握するための指標
  • ディフュージョン・インデックス(DI):景気の変動が各経済部門にどの程度波及しているかを示す指標

CIとDIは共通の系列を用いており、景気の動きに対するタイミングによって、以下の3つの分類に分けられます。

  • 先行指数(11系列):景気に先行して動く指標
  • 一致指数(10系列):景気とほぼ同時に動く指標
  • 遅行指数(9系列):景気の変動に遅れて反応する指標

CIの一致指数が上昇している場合は景気の拡大局面、低下している場合は後退局面と判断されます。
 

景気動向指数の採用系列

 

先行系列(11系列)

最終需要財在庫率指数(逆サイクル)

鉱工業用生産財在庫率指数(逆サイクル)

新規求人数(除学卒)

実質機械受注(製造業)

新設住宅着工床面積

消費者態度指数

日経商品指数(42種総合)

マネーストック (M2)(前年同月比)

東証株価指数

投資環境指数(製造業)

中小企業売上げ見通しDI

一致系列(10系列)

生産指数(鉱工業)

鉱工業用生産財出荷指数

耐久消費財出荷指数

所定外労働時間指数(調査産業計)

投資財出荷指数(除輸送機械)

商業販売額(小売業、前年同月比)

商業販売額(卸売業、前年同月比)

営業利益(全産業)

有効求人倍率(除学卒)

輸出数量指数

遅行系列(9系列)

第3次産業活動指数(対事業所サービス業)

常用雇用指数(調査産業計、前年同月比)

実質法人企業設備投資(全産業)

家計消費支出(勤労者世帯、名目、前年同月比)

法人税収入

完全失業率(逆サイクル)

きまって支給する給与(製造業、名目)

消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、前年同月比)

最終需要財在庫指数

※「逆サイクル」とは、景気の動きと逆に反応する指標で、景気が悪化すると上昇し、景気が回復すると低下する傾向があります。


日銀短観(全国企業短期経済観測調査)

 
日銀短観(全国企業短期経済観測調査)とは、日本銀行が全国約1万社の企業を対象に、資金繰り、雇用状況、業況の見通しなどについてアンケート調査を行い、企業の景況感や経営状況を把握するためにまとめた報告書です。
この調査は、日本の主要な経済指標のひとつであり、金融市場や政策決定に大きな影響を与えることから、非常に高い注目を集めています。
調査は四半期ごとに実施され、4月、7月、10月初旬、12月中旬の年4回、日本銀行から公表されます。
日銀短観の中でも特に注目されるのが、企業の景況感を数値化した業況判断DI(Diffusion Index)です。これは、企業が現在の業況を「良い」と感じているか、「悪い」と感じているかを示す指標で、以下の式で算出されます。
 

業況判断DI (%) = 業況を「良い」と回答した企業の割合 − 業況を「悪い」と回答した企業の割合

 
このDIの値がプラスであれば、景況感が良好な企業が多いことを示し、マイナスであれば、景況感が悪化している企業が多いことを意味します。特に大企業・製造業の業況判断DIは、景気の先行きを占う上で重要な指標として、金融市場や政策立案者から強く注目されています。


マネーストック

 
マネーストックとは、一般法人、個人、地方公共団体などの通貨保有主体(金融機関、中央政府、非居住者を除く)が保有する通貨の残高を集計したもので、金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量を示す指標です。日本銀行が毎月公表しています。
マネーストックには、通貨の範囲に応じて複数の指標が定義されています。以下は代表的な分類です。
 

M1

M1 = 現金通貨 + 預金通貨
※ 預金通貨とは、当座預金などすぐに支払いに使える預金を指します。

M2

M2 = 現金通貨 + 国内銀行等に預けられた預金通貨・準通貨・CD(譲渡性預金)
※ 準通貨とは、定期預金、据置預金、定期積金、外貨預金など、すぐには引き出せない預金のことです。

M3

M3 = M1 + 準通貨 + CD(譲渡性預金)
※ M3はかつて公表されていた指標で、現在はM2が主に利用されています。

広義流動性

広義流動性 = M3 + 金銭の信託 + 投資信託 + 金融債 + 銀行発行普通社債 + 金融機関発行CP + 国債 + 外債
※ 広義流動性は、より広範な資金供給の状況を把握するための指標です。


企業物価指数

 
企業物価指数とは、企業間で取引される商品(サービスは対象外)の価格変動を示す経済指標です。主に原材料や中間財などの取引価格を対象としており、企業の仕入れコストの変化を把握するために用いられます。
この指数は、原材料価格や為替レートの変動が直接反映されるため、消費者物価指数(CPI)と比べて短期的な変動が大きく、景気の変化をより早く捉える傾向があります。
日本銀行が毎月公表しており、物価の先行指標として金融政策や経済分析に活用されています。


消費者物価指数

 
消費者物価指数(CPI)とは、一般消費者が購入する商品やサービスの小売価格の変動を調査・算出した経済指標です。食料品、衣料品、交通費、教育費など、日常生活に関わる幅広い品目が対象となります。ただし、税金、社会保険料、土地、住宅、株式などの有価証券の価格は対象外です。
CPIは、物価の動向を把握するための基本的な指標であり、経済政策の立案や、公的年金の支給額の改定などにも活用されます。この統計は、総務省が毎月公表しています。


貿易収支

 
貿易収支とは、一定期間における一国の輸出額と輸入額の差を示す経済指標です。輸出が輸入を上回れば「黒字」、逆に輸入が輸出を上回れば「赤字」となります。
日本では、以下の2種類の貿易収支が公表されています。

  • 通関ベースの貿易収支
    財務省が発表する「貿易統計」に基づくもので、税関での通関手続きに基づいて集計されます。実際の貨物の出入りを反映しており、物理的な貿易の動向を把握するのに適しています。
  • 決済ベースの貿易収支
    財務省と日本銀行が共同で発表する「国際収支統計」に基づくもので、実際の資金のやり取り(決済)に基づいて集計されます。国際的な経済取引の全体像を把握するために用いられます。