ポートフォリオ理論
最終更新日: 2025-11-01

ポートフォリオ理論について

 
ポートフォリオとは、株式、債券、不動産、商品、預金、現金など、複数の資産を組み合わせた投資の集合体を指します。ポートフォリオを構築することは、複数の銘柄や資産、さらには地域や時間軸を分散させて投資する「分散投資」を行うことを意味します。
このような分散投資において、リターン(収益)リスク(価格変動の可能性)を基に、資産の最適な組み合わせを理論的に分析・研究するのが「ポートフォリオ理論」です。
ポートフォリオ理論で用いられるリターンとは、投資によって得られる収益の期待値、すなわち「期待収益率」を指します。一方、リスクとは、収益が期待値からどれだけ変動する可能性があるかを示すもので、「分散」や「標準偏差」によって数値化されます。
分散や標準偏差は、期待収益率からのばらつきの度合いを表す指標であり、これらの値が大きいほど、リスクも高いと判断されます。したがって、ポートフォリオ理論では、リターンとリスクのバランスを考慮しながら、資産配分を最適化することが重要な課題となります。


相関係数について

 
投資においてリスクをできるだけ抑えるためには、値動きの異なる資産や銘柄を組み合わせることが効果的です。この「値動きの違い」を数値で表す指標が相関係数です。
相関係数は、資産同士の値動きの関係性を示すもので、−1から+1までの範囲で表されます。

  • +1に近い場合:資産同士がほぼ同じ動きをすることを意味し、分散投資によるリスク低減効果は期待できません
  • −1に近い場合:資産同士が逆の動きをすることを意味し、リスクを相殺し合うため、リスク低減効果が高くなります
  • 0の場合:資産同士の値動きに関連性がなく、互いに独立して動いていることを示します。

このように、相関係数を活用することで、より効果的な分散投資が可能となり、ポートフォリオ全体のリスクを抑えることができます。


システマティックリスクと非システマティックリスクについて

 
分散投資は、投資リスクを軽減する有効な手段ですが、すべてのリスクを排除できるわけではありません。たとえば、景気の悪化や金利の変動、政治的不安定など、市場全体に影響を及ぼす要因によるリスクは、どれだけ分散しても避けることができません。このような、市場全体に共通して影響を与えるリスクをシステマティックリスク(市場リスク)といいます。
一方、特定の企業や業界に固有の要因によって生じるリスクは、異なる銘柄や資産に分散することで軽減することが可能です。このようなリスクを非システマティックリスク(個別リスク)と呼びます。
つまり、

  • システマティックリスク:分散投資では回避できない、市場全体に影響するリスク。
  • 非システマティックリスク:分散投資によって軽減可能な、個別の資産に特有のリスク。

この2つのリスクを理解することで、より効果的なリスク管理と資産運用が可能になります。


資本資産価格モデル(Capital Asset Pricing Model:CAPM)について

 
CAPMとは、分散投資によるリスク低減効果を前提に、資産のリスクと期待リターンの関係を数式で表した均衡モデルです。
このモデルでは、ある資産の期待リターンは、以下の2つの要素の合計として表されます。

  • 安全資産のリターン(無リスク利子率)
  • 市場全体の変動と連動するリスクに対する見返り(リスク・プレミアム)

この関係は、以下のような式で表されます。
 

理想的な期待リターンの計算式

 
CAPMが前提とするリスクは、市場全体の動きに起因するシステマティックリスクのみであり、これはベータ(β)という指標で表されます。ベータが高いほど、市場の変動に対して資産の価格も大きく変動しやすく、リスクが高いとされます。


シャープ・レシオ(Sharpe Ratio)について

 
シャープ・レシオは、投資の運用効率を測る指標のひとつで、リスク(標準偏差)あたりの超過リターンを表します。数値が大きいほど、リスクに対して効率的にリターンを得ていることを意味します。異なる投資対象を比較する際に、同じリスク水準でどちらの運用がより効率的かを判断するために用いられます。
ただし、ファンドの基準価額の変動は、ある程度の運用期間が経過しないと安定したデータが得られないため、運用期間が短いファンドには適していません。また、ポートフォリオのリターンがマイナスの場合は、シャープ・レシオを用いて運用実績を評価することができません。
シャープ・レシオは、以下の式で計算されます。
 

シャープ・レシオの計算式

 
投資判断において、リターンだけでなくリスクとのバランスを考慮するための重要な指標です。


トレイナー尺度(Treynor Ratio)について

 
トレイナー尺度は、リスク(ベータ)あたりの超過リターンを測定する指標であり、数値が大きいほど、より効率的な運用が行われていることを示します。異なる投資対象の運用効率を比較する際に有用です。
ここで使われるベータ(β)とは、資本資産評価モデル(CAPM)におけるリスクの尺度であり、市場全体(市場ポートフォリオ)の変動に対して、個別資産のリターンがどれだけ連動して動くかを示すものです。ベータが高いほど、市場の動きに敏感な資産であるといえます。
トレイナー尺度は、以下の式で計算されます。
 

xトレイナー尺度の計算式

 
この式は、市場リスクに対する超過リターンの効率性を評価するものであり、特に市場全体の影響を重視する投資判断において有効です。


インフォメーション・レシオ(Information Ratio)について

 
インフォメーション・レシオは、ベンチマークに対する超過リターン(アクティブ・リターン)を、どれだけ効率的に獲得できたかを測る指標です。数値が大きいほど、低いリスクで高いリターンを得られたことを意味し、主にアクティブ・ファンドの運用効率を評価する際に用いられます。
インフォメーション・レシオは、以下の式で計算されます。
 

インフォメーション・レシオの計算式

 
トラッキング・エラーは、ポートフォリオのリターンとベンチマークのリターンとの乖離の大きさを示す指標で、アクティブ・リスクとも呼ばれます。これは、ポートフォリオのリターンとベンチマークとの差の標準偏差によって測定され、値が大きいほど、ベンチマークとの乖離が大きいことを意味します。
トラッキング・エラーが生じる主な要因には、以下のようなものがあります。

  • 運用手数料
  • 売買コスト
  • ポートフォリオの組み替えタイミング
  • 現金保有比率の違い
  • 税金の影響
  • 運用の巧拙(運用者の判断力)

ジェンセンのアルファ(Jensen's Alpha)について

 
ジェンセンのアルファは、ポートフォリオの実際のリターンが、理論的に期待されるリターンをどれだけ上回ったか(または下回ったか)を測る指標です。数値が大きいほど、市場の動き以上に優れた運用成果を上げたことを意味し、運用効率の高さを示します。
理論的な期待リターンの算出には、一般的に資本資産評価モデル(CAPM)が用いられます。CAPMでは、資産のリスクをベータ(β)という指標で表し、市場全体の変動に対して資産のリターンがどれだけ連動するかを示します。
ジェンセンのアルファは、以下の式で計算されます。
 

ジェンセンのアルファの計算式

 
この式は、CAPMで求められる理論的リターンと、実際のリターンとの差を表しています。プラスのアルファは、ポートフォリオが市場の期待を上回る成果を出したことを示し、マイナスのアルファは期待を下回ったことを意味します。