不動産の相続対策について
不動産の相続対策として活用できる主な制度や特例には、以下のようなものがあります。
- 贈与税の配偶者控除
配偶者への贈与に適用される特例で、一定額まで贈与税が非課税となります。 - 相続時精算課税制度
贈与時に課税を行い、相続時に精算する仕組みです。 - 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度
住宅取得資金の贈与について、一定の条件を満たす場合に非課税となります。 - 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続した財産を譲渡する際、取得費に相続税額を加算できる制度です。 - 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
一定の条件を満たす空き家を譲渡した場合、譲渡所得から特別控除が受けられます。
詳しくは、各リンク先のページをご確認ください。
相続対策としての保険活用について
生命保険の死亡保険金は現金同様に分割しやすいため、不動産のように分割が難しい財産が多い場合、遺産分割対策として有効です。
さらに、被保険者が保険料負担者である場合、生命保険の死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」までの金額が非課税となる特例があり、相続税の節税対策としても有効です。
加えて、生命保険の死亡保険金は、被保険者の死亡により受取人に現金が速やかに支払われ、名義変更などの手続きも不要なため、相続税の納税資金の確保にも役立ちます。
相続財産が多額で、相続人間で遺産分割が均等にならない場合には、代償分割と生命保険を併用することで、より円滑な分割が可能となります。
事業承継対策について
少子高齢化の進行に伴い、経営者の高齢化が進む一方で、親族内に後継者がいない企業も増えています。その結果、後継者不在を理由に廃業を選択するケースが増加しています。事業承継には時間がかかるため、早期に取り組むことが重要です。
主な事業承継対策として、以下の方法があります。
株価対策
株価評価を引き下げる方法としては、会社規模の変更や第三者割当増資などがあります。
会社規模の変更の場合、一般的に、純資産価額方式よりも類似業種比準方式の方が評価額が低くなる傾向があります。具体的には、売上高の増加などにより取引金額を大きくする方法が考えられます。
第三者割当増資の場合、従業員持株会の組成や中小企業投資育成会社などによる資本参加が代表的な手法です。
類似業種比準方式による株価引下げ策
類似業種比準方式で株価を引き下げる主な方法は、以下のとおりです。
- 直前2期間の配当引下げまたは無配
- 非継続性の配当の活用(通常配当を特別配当や記念配当に切り替え、株価算定上の配当金額に含めない方法)
- 会社分割による高収益部門の移転
- 役員給与の増額
- 役員退職金の支給
- 特別償却の実施
- 割増償却が可能な資産の購入
- 不要債権の処理
- 不良資産の除去(税務上、損金算入できる場合)
純資産価額方式による株価引下げ策
純資産価額方式で株価を引き下げる主な方法は、以下のとおりです。
- 株式や土地の含み損の実現や不良資産の処分による損失確定
- 相続税評価額が通常取引価額より低い資産の購入
- 役員退職金の支給
- 剰余金処分による社外流出
- 子会社設立による高収益部門の移転
- 会社の合併
株式数対策
経営者が生前に後継者へ自社株式を移転し、相続財産を減らしておくことは、事業承継において有効な手段です。
役員退職金の活用
役員退職金を支給すると、損金算入額が増加し、課税所得が減少することで利益が圧縮され、結果として株価が低下します。ただし、退職金は金額にかかわらず全額を損金算入できるわけではありません。
役員退職金の適正額は、以下の式で算出されます。
役員退職金の適正額 = 最終報酬月額 × 役員在任年数 × 功績倍率
※功績倍率は一般的に3倍程度が上限の目安とされています。
適正な算定基準がなく過大な金額を支払った場合、損金算入が認められない可能性があります。そのため、役員退職給与規程を整備し、計算式や功績倍率を明確に定めておくことが重要です。
また、退職金を支給するには原資が必要ですが、事業資金以外の余裕資金を潤沢に確保するのは容易ではありません。原資確保の手段として、役員保険の活用が有効です。
遺留分に関する民法の特例について
推定相続人が複数いる場合、後継者に事業用資産を集中して承継させようとしても、遺留分を侵害された相続人から遺留分侵害額の支払いを求められ、結果として事業用資産を処分せざるを得ず、資産が分散してしまうことがあります。これは事業継続の大きな妨げとなります。
遺留分に関する民法の特例とは、後継者が先代経営者(旧代表者)から生前に贈与を受けた自社株式等について、受贈後に後継者と遺留分権利者(親族など)が相続時の取り扱いを事前に合意できる制度です。
この制度は、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(中小企業経営承継円滑化法)に基づき設けられており、除外合意と固定合意の2種類が定められています。
除外合意
除外合意とは、先代経営者(旧代表者)から後継者が贈与を受けた株式について、遺留分算定基礎財産から除外することを推定相続人全員と後継者が合意する制度です。
この合意により、自社株式に関する遺留分侵害額請求権を未然に防ぎ、株式の分散を回避し、事業承継の円滑化に寄与するという効果があります。
さらに、後継者が取得した株式等以外の財産についても、除外合意により全部または一部を遺留分算定基礎財産から除外することが可能です。
加えて、後継者以外の推定相続人が先代経営者から贈与等により取得した財産についても、同様に全部または一部を遺留分算定基礎財産から除外することが可能です。
固定合意
固定合意とは、仙台経営者(旧代表者)から後継者が贈与を受けた株式について、遺留分算定基礎財産に算入する価格を合意時の時価に固定することを推定相続人全員と後継者が合意する制度です。
この合意により、後継者の貢献によって自社株式の価値が上昇しても、その増加分は遺留分侵害額請求権の対象外となり、後継者の経営意欲を阻害せず、事業承継を円滑に進められるという効果があります。
遺留分に関する民法の特例の主な適用要件
- 中小企業法に規定する一定の中小企業者であること。
- 合意時点で3年以上継続して事業を営んでいること。
- 非上場会社であること。
- 先代経営者(旧代表者)が過去または合意時点において会社の代表者であった(ある)こと。
- 後継者が合意時点において会社の代表者であること。
- 後継者が先代経営者(旧代表者)からの贈与等により株式を取得し、会社の過半数の議決権を有していること。
- 推定相続人および後継者全員の書面による合意があること。
- 経済産業大臣の確認を受けていること。
- 家庭裁判所の許可を得ていること。
事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予および免除制度)について
事業承継税制とは、後継者が非上場会社の株式等(法人の場合)や事業用資産(個人事業者の場合)を先代経営者から贈与または相続により取得した際、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受けることで、贈与税・相続税の納税が猶予または免除される制度です。
猶予された税額は、後継者が死亡した場合などには、その全部または一部が免除されます。ただし、免除前に特例の適用を受けた非上場株式等を譲渡するなど一定の場合には、猶予税額の全部または一部を利子税と併せて納付する必要があります。
この制度には、従来の一般措置に加え、2018(平成30)年度税制改正で創設された10年間の時限立法による特例措置があります。
一般措置と特例措置の主な違い
| 項目 |
一般措置 |
特例措置 |
| 事前の計画策定 |
不要 |
2018(平成30)年4月1日から2026(令和8)年3月31日までに特例承継計画を都道府県に提出し、確認を受ける |
| 適用期限 |
なし |
2018(平成30)年1月1日から2027(令和9)年12月31日までの10年以内の贈与・相続等 |
| 納税猶予対象株式数 |
発行済議決権株式の3分の2まで |
後継者が取得した株式全株 |
| 納税猶予割合 |
贈与税:100% |
贈与税:100% |
| 雇用確保要件 |
承継後5年間平均80%の雇用維持 | 原則として承継後5年間平均80%の雇用維持。維持できない場合は理由書提出で継続可 |
| 事業継続困難時の免除 |
なし | あり |
| 受贈者 |
後継経営者1人 | 最大3人まで(議決権10%以上、代表権を有する) |
| 相続時精算課税制度の適用 | 60歳以上の贈与者から18歳以上の推定相続人(直系卑属)・孫への贈与 | 60歳以上の贈与者から18歳以上の後継者への贈与 |
| 譲渡(M&A)・解散・合併時の納税猶予額の減免(5年間の特例承継期間経過後) | 原則として猶予税額を全額納付 | そのときの株式価値に基づき納税額を再計算して差額を減免 |
金融支援措置について
金融支援措置とは、日本政策金融公庫法の特例に基づき、低金利で融資を受けられる制度です。事業承継に支障があると認定された中小企業者に対し、相続により分散した株式や事業用資産の買取資金や、相続税・贈与税の納税資金など資金調達を支援します。この制度により、事業承継に伴う資金負担を軽減し、円滑な承継をサポートします。