不動産の譲渡に係る税金
最終更新日: 2024-11-04

譲渡所得に対する所得税

 
土地や建物を譲渡(売却)して収入を得た場合には、譲渡所得として所得税が課せられます。
譲渡所得については、こちらをご参照ください。
 
なお、譲渡所得を軽減するための主な特例として、次のようなものがあります。


固定資産の交換の特例

 
固定資産の交換の特例とは、個人が土地や建物等の固定資産を同じ種類の固定資産と交換により取得した場合、次の要件をすべて満たすときは、その譲渡がなかったものとみなす制度のことです。
 
固定資産の交換の特例の主な適用要件は、次のとおりです。
 

  • 交換で譲渡する資産(交換譲渡資産)および交換で取得する資産(交換取得資産)は、土地(地上権、賃借権、耕作権を含む)、建物(附属する設備や構築物を含む)、機械および装置、船舶、鉱業権の固定資産であり、土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産の交換であること
  • 交換譲渡資産は、1年以上所有していたものであること
  • 交換取得資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと
  • 交換取得資産を交換譲渡資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること
  • 交換譲渡資産の時価と交換取得資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること

 
なお、この特例が受けられる場合でも、交換に伴って相手方から金銭等の交換差金を受け取ったときは、その交換差金が譲渡所得として所得税の課税対象となります。


居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例(3,000万円特別控除)

 
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例(3,000万円特別控除)とは、個人が自己の居住用財産を譲渡した場合、譲渡益から3,000万円(譲渡益が3,000万円以下の場合はその金額)を控除できる制度のことです。
譲渡資産の所有期間が長期でも短期でもこの特例を適用することができます。
そして、居住用財産の長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率の特例)と併用することができます。
なお、控除後の課税所得が0円となる場合でも確定申告が必要となります。
 
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例(3,000万円特別控除)の主な適用要件は、次のとおりです。
 

  • 自分が居住している家屋やその家屋とともにその敷地である土地(借地権を含む)を譲渡した場合
  • 自分が居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、その家屋やその家屋とともにその敷地である土地(借地権を含む)を譲渡した場合
  • 自分が居住していた家屋が災害で滅失し、その敷地であった土地(借地権を含む)をその滅失した家屋に居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡した場合

 
また、次のいずれかに該当する場合には、この特例の適用を受けることはできません。
 


居住用財産の長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率の特例)

 
居住用財産の長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率の特例)とは、譲渡した年の1月1日時点において所有期間が10年超の居住用財産を譲渡した場合、3,000万円の特別控除後の譲渡益に対して軽減税率が適用される制度のことです。
 
課税長期譲渡所得金額に対する税率は、下表のとおりです。
 

課税長期譲渡所得金額 ※

税率

6,000万円以下の部分

14.21%(所得税10%、住民税4%、復興特別所得税0.21%)

6,000万円超の部分

20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)

※居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除後

 
また、次のいずれかに該当する場合には、この特例の適用を受けることはできません。
 

  • 配偶者、直系血族、同一生計の親族、同族会社等へ譲渡した場合
  • その前年または前々年において、この特例の適用を受けている場合
  • その譲渡について、固定資産の交換の特例の適用を受ける場合
  • その譲渡について、特定の居住用財産の買換えの特例の適用を受ける場合
  •  
  • その譲渡について、優良住宅地造成等のための譲渡の特例の適用を受ける場合
  • その譲渡について、既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換えの特例の適用を受ける場合
  • その譲渡について、収用等による譲渡の特例の適用を受ける場合
  • その譲渡について、事業用資産の買換えの特例の適用を受ける場合

特定の居住用財産の買換えの特例

 
特定の居住用財産の買換えの特例とは、一定の要件を満たす居住用財産を譲渡し、代わりに別の居住用財産を取得した場合、原則として買い換えた時点では譲渡益がなかったものとして、課税を繰り延べることができる制度のことです。
適用期限は、2023(令和5)年12月31日までとなります。
 
この特例の譲渡資産の主な適用要件は、次のとおりです。
 

  • 譲渡した年の1月1日時点で所有期間10年超の居住用財産であること
  • 譲渡した人の居住期間10年以上の居住用財産であること
    • 譲渡時に居住していない場合は、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡であること
    • 災害で家屋が滅失した場合は、その敷地であった土地をその災害があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡であること
  • 譲渡する居住用財産の譲渡価額が1億円以下であること

 
この特例の買換資産の主な適用要件は、次のとおりです。
 

  • 自分が居住する家屋またはその敷地である土地であること
  • 譲渡資産を譲渡した年の前年1月1日から、その譲渡した年の翌年12月31日までの3年間に買換資産を取得すること
  • 取得した買換資産は、原則としてその取得をした年の翌年12月31日までに居住すること、または居住見込みであること
  • 買換資産は、建物の床面積50㎡以上かつ土地の面積500㎡以下のものであること
  • 買換資産が2024(令和6)年1月1日以後に建築確認を受ける住宅(登記簿上の建築日付が2024(令和6)年6月30日以前のものを除く)または建築確認を受けない住宅で登記簿上の建築日付が2024(令和6)年7月1日以後の住宅の場合、一定の省エネ基準を満たすものであること
  • 中古マンション購入の場合は、築後25年以内のものであること

 
この特例の適用を受けた場合には、譲渡所得の課税は次のとおりです。
 
譲渡資産の譲渡価額 ≦ 買換資産の取得価額 の場合は、課税されません。
譲渡資産の譲渡価額 > 買換資産の取得価額 の場合は、次の「① − ②」の金額が譲渡益として課税対象となります。
 

① 収入金額 = 譲渡資産の譲渡価額 − 買換資産の取得価額
② 取得費 + 譲渡費用 = ( 譲渡資産の取得費 + 譲渡費用 ) × 収入金額 ÷ 譲渡資産の譲渡価額

 
譲渡益が0円となる場合でも確定申告が必要となります。
 
なお、次のいずれかに該当する場合には、この特例の適用を受けることはできません。
 


特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

 
居住用財産を譲渡し、譲渡損失が生じた場合には、一定の要件を満たせば、譲渡損失をその年の他の所得と損益通算することができます。
また、その損失を控除しきれなかった場合、翌年以降3年間にわたって、その譲渡損失を他の所得から控除(繰越控除)することができます。
適用期限は、2023(令和5)年12月31日までとなります。
 
この特例の主な適用要件は、次のとおりです。
 

  • 譲渡した年の1月1日時点で所有期間5年超の居住用財産であること
  • 償還期間10年以上住宅ローン残高があること
  • 買換えとして新しい居住用財産を取得しないこと
  • 繰越控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること

 
損益通算繰越控除が認められる金額は、次の①か②のいずれか小さい方の金額となります。
 

① 住宅ローン残高 − 譲渡価格
② 譲渡損失

 
なお、この特例の適用を受けるためには、確定申告が必要です。
 
また、次のいずれかに該当する場合には、この特例の適用を受けることはできません。
 


居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

 
居住用財産を譲渡し、譲渡損失が生じた場合で、住宅ローンを利用して新たな居住用財産を取得したときは、一定の要件を満たせば、譲渡損失をその年の他の所得と損益通算することができます。
また、その損失を控除しきれなかった場合、翌年以降3年間にわたって、その譲渡損失を他の所得から控除(繰越控除)することができます。
適用期限は、2023(令和5)年12月31日までとなります。
 
この特例の主な適用要件は、次のとおりです。
 

  • 譲渡した年の1月1日時点で所有期間5年超の居住用財産であること
  • 譲渡した年の前年1月1日から翌年12月31日までに買換資産を取得すること
  • 10年以上住宅ローンを利用して、買換資産を取得すること
  • 買換資産を取得した日から翌年12月31日までの間にその買換資産に居住した場合、または居住する見込みであること
  • 買換資産の居住用部分の床面積50㎡以上であること
  • 繰越控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること

 
なお、この特例の適用を受けるためには、確定申告が必要です。
 
また、次のいずれかに該当する場合には、この特例の適用を受けることはできません。
 


空き家に係る居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除の特例

 
空き家に係る居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除の特例とは、相続もしくは遺贈により取得をした空き家となった居住用家屋または敷地等を相続人が一定期間内に譲渡した場合、その譲渡所得から3,000万円を控除することができる制度のことです。
 
ただし、空き家となった居住用家屋および敷地等の取得をした相続人の数が3人以上である場合、特別控除額は1人につき最大2,000万円となります。
 
この特例の主な適用要件は、次のとおりです。
 

  • 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ、2016(平成28)年4月1日から2027(令和9)年12月31日までに譲渡していること
  • 相続開始の直前において、被相続人が一人で居住していたものであること
  • 1981(昭和56)年5月31日以前に建築された家屋(マンション等を除く)であること
  • 相続により家屋および土地を取得すること
  • 相続時から譲渡時点まで、事業、貸付、居住の用に供されていないこと
  • 譲渡する居住用財産の譲渡価額が1億円以下であること
  • 譲渡前に売主が耐震改修を実施または家屋を除去すること
  • 譲渡年の翌年2月15日までに買主が耐震工事を実施または家屋を除去すること

 
なお、この特例は相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(相続税取得費加算の特例)との選択適用となります。