損益通算のできない損失について
損益通算の対象となる所得に損失がある場合でも、以下のような損失は損益通算の対象外となります。
不動産所得において損益通算できない主な損失
- 別荘など、生活に通常必要とされない資産の貸付けによる損失
- 土地取得のための借入金の利子に相当する金額
譲渡所得において損益通算できない主な損失
- 申告分離課税の対象となる株式等の譲渡による損失
- 土地・建物等の譲渡による損失(一定の居住用財産の譲渡損失は除く)
- 生活に通常必要とされない資産の譲渡による損失
生活に通常必要とされない主な資産
- 競走馬など、射幸的行為の手段となる動産
- 趣味・娯楽・保養・鑑賞を目的として所有する不動産
- 趣味・娯楽・保養・鑑賞を目的として所有する不動産以外の資産(例:ゴルフ会員権など)
- 生活用の動産で、1個または1組の価額が30万円を超えるの貴金属、書画、骨董品など
損益通算の順序について
損益通算は、以下の順序に従って行われます。
第1次通算
- 不動産所得または事業所得の損失は、他の経常所得グループ(利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、雑所得)の黒字と通算します。
- 譲渡所得の損失は、まず譲渡所得同士で通算し、残った損失は一時所得(1/2を乗じる前の金額)から差し引きます。
第2次通算
- 第1次通算で控除しきれなかった不動産所得または事業所得の損失は、譲渡所得から差し引きます。
- それでも損失が残る場合は、一時所得(第1次通算後の金額)から差し引きます。
- また、第1次通算で控除しきれなかった譲渡所得の損失は、経常所得グループの黒字から差し引きます。
第3次通算
第2次通算でも控除しきれなかった損失は、以下の条件に応じて通算されます。
純損失の繰越控除について
損益通算を行っても控除しきれずに残った損失は「純損失」と呼ばれます。一定の要件を満たす場合、この純損失は翌年以降3年間にわたって繰り越し、各年の黒字所得から控除することができます。
青色申告者の場合
損益通算後の不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得(総合課税)の損失を対象に、翌年以降3年間にわたって繰越控除が可能です。
なお、その金額を前年に繰り戻して控除することも可能です。
白色申告者の場合
変動所得および被災事業用資産の損失(棚卸資産、事業用固定資産、山林に関する損失で変動所得に該当しないもの)を対象に、翌年以降3年間にわたって繰越控除が可能です。
上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
上場株式等に係る譲渡損失についても繰越控除が認められています。その年の株式等に係る譲渡所得等の金額を限度として、過去3年間に生じた譲渡損失を控除可能です。
先物取引に係る損失の繰越控除
先物取引の差金決済等による損失についても同様に3年間の繰越控除が認められています。
特定非常災害に係る純損失の繰越控除の特例
特定非常災害(政府が指定する大規模災害)により事業用資産等に損失が生じた場合、以下の要件を満たすと、繰越控除期間が5年間に延長されます。
- 青色申告者
事業用資産等の価額に対して、特定被災事業用資産の損失額が10%以上を占める場合、特定非常災害発生年に生じた純損失の金額が対象となります。 - 白色申告者等(青色申告者以外)
事業用資産等の価額に対して、特定被災事業用資産の損失額が10%以上を占める場合、特定非常災害発生年に生じた被災事業用資産の損失による純損失と、変動所得に係る損失による純損失の合計額が対象となります。
この特例は、2023(令和5)年4月1日以降に発生した特定非常災害に適用されます。
雑損失の繰越控除について
災害や盗難などにより損失が生じた場合、その損失を総所得金額等から控除できる制度を「雑損控除」といいます。雑損控除を適用しても、その年の総所得金額等から控除しきれなかった損失額については、翌年以降3年間にわたり繰り越して控除することが可能です。この繰越控除は、青色申告者・白色申告者のいずれにも適用されます。
特定非常災害に係る雑損失の繰越控除の特例
居住者が所有する住宅や家財などが、特定非常災害(政府が指定する大規模災害)によって損害を受けた場合、雑損控除を適用しても控除しきれなかった損失額については、繰越期間が5年間に延長されます。
この特例は、2023(令和5)年4月1日以降に発生した特定非常災害に適用されます。