譲渡所得
最終更新日: 2024-11-03

譲渡所得とは

 
譲渡所得とは、土地、借地権、建物、機械装置、船舶、航空機、車両、工具器具備品、牛馬、株式、公社債、公社債投資信託、鉱業権、漁業権、特許権、著作権、ゴルフ会員権、書画、骨董、宝石等の資産の譲渡(売却)による所得のことです。
また、譲渡には、有償無償を問わず所有する資産を移転する一切の行為をいいます。
通常の売買以外にも、交換、競売、収用、代物弁済、現物出資、負担付贈与、財産分与、限定承認による相続、(法人に対する)贈与、地上権や賃借権等の設定による権利金の受け取り等も含まれます。
 
ただし、資産の譲渡による所得のうち、次に掲げる所得については課税されません。
 

  • 家具、通勤用自動車、衣服等の生活用動産の譲渡による所得
    ただし、貴金属、宝石、書画、骨董等で、1個又は1組の価額が30万円超の物の譲渡による所得は課税対象
  • 強制換価手続等により資産が競売等をされたことによる所得
  • 貸付信託の受益権等の譲渡による所得
  • 国又は地方公共団体に対して財産を寄付した場合や、公益法人に対する財産の寄付で国税庁長官の承認を受けた場合の所得
  • 国等に対して文化財保護法の規定により重要文化財として指定された資産を譲渡した場合の所得
  • 財産を相続税の物納に充てた場合の所得
  • 債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の所得

 
また、資産の譲渡による所得であっても、次に掲げる所得は譲渡所得にはなりません。
 

  • 事業所得者が商品、製品、仕掛品、原材料等の棚卸資産を譲渡した場合の所得(事業所得
  • 不動産所得山林所得雑所得の生ずる業務を行う者が、棚卸資産に準ずる資産を譲渡した場合の所得(雑所得
  • 使用可能期間が1年未満の減価償却資産、取得価額が10万円未満である減価償却資産(業務の性質上基本的に重要なものを除く)、取得価額が20万円未満である減価償却資産で取得時に「一括償却資産の必要経費算入」の規定の適用を受けたもの(業務の性質上基本的に重要なものを除く)を譲渡した場合の所得(事業所得又は雑所得
  • 山林を伐採して譲渡した場合または立木のまま譲渡した場合の所得(山林所得
  • 上記以外の資産を相当の期間、継続的に譲渡している場合の所得(事業所得又は雑所得

譲渡所得の計算

 
譲渡所得は、
 

  • 土地建物の譲渡の場合
  • 株式等の譲渡の場合
  • その他の資産の譲渡の場合

 
で計算方法が異なります。

土地建物の譲渡の場合

 
土地建物の譲渡による譲渡所得の金額は、次の式で計算します。
 

譲渡所得 = 譲渡価額 − ( 取得費 + 譲渡費用 ) − 特別控除額

 
「取得費」に該当する主なものは、次のとおりです。
 

  • 土地や建物の購入費用
  • 仲介手数料
  • 印紙代
  • 登録免許税
  • 登記費用(登記の内容により譲渡費用等になる場合があります)
  • 不動産取得税
  • 設備に要した費用
  • 取得後の改良に要した費用

 
なお、取得費は、土地や建物を買入れたときの購入代金や購入手数料等の資産の取得に要した金額に、その後支出した改良費、設備費の額を加え、さらに所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額となります。
減価償却費相当額は、その建物が事業に使われていた場合とそれ以外の場合とで異なり、事業に使われていなかった場合の耐用年数は、法定耐用年数の1.5倍となります。
取得費が不明の場合や実際の取得費が譲渡価額の5%よりも小さい場合には、譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)とすることができます。
 
「譲渡費用」に該当する主なものは、次のとおりです。
 

  • 売却のための広告料
  • 不動産鑑定評価手数料
  • 測量費
  • 仲介手数料
  • 登記費用(登記の内容により取得費等になる場合があります)
  • 印紙代
  • 立退料
  • 建物の取り壊し費用

 
なお、次の費用は、取得費にも譲渡費用にも該当しません。
 

  • 修繕費
  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 土地の維持管理に要する費用

 
「特別控除額」は、下表のとおりです。
 

譲渡の区分

譲渡の内容

特別控除額

短期譲渡所得
長期譲渡所得

公共事業等のために土地建物を譲渡した場合

5,000万円

短期譲渡所得
長期譲渡所得

マイホーム(居住用財産)を譲渡した場合

3,000万円

短期譲渡所得
長期譲渡所得

特定土地区画整理事業等のために土地を譲渡した場合

2,000万円

短期譲渡所得
長期譲渡所得

特定住宅地造成事業等のために土地を譲渡した場合

1,500万円

長期譲渡所得

2009(平成21)年及び2010(平成22)年に取得した国内にある土地を譲渡した場合

1,000万円

短期譲渡所得
長期譲渡所得

農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合

800万円

長期譲渡所得

低未利用土地等を譲渡した場合

100万円

※「長期譲渡所得」とは、譲渡した年の1月1日時点において、所有期間が5年の土地建物の譲渡により生じる所得のことです。
※「短期譲渡所得」とは、譲渡した年の1月1日時点において、所有期間が5年以下の土地建物の譲渡により生じる所得のことです。

株式等の譲渡の場合

 
株式等の譲渡による譲渡所得の金額は、次の式で計算します。
 

譲渡所得 = 譲渡価額 − ( 取得費 + 譲渡費用 + 負債利子 )

※「負債利子」とは、譲渡した株式等を取得するための負債の利子のことで、譲渡した年に支払う金額のうち株式等の所有期間に対応する金額になります。

その他の資産の譲渡の場合

 
その他の資産の譲渡による譲渡所得の金額は、次の式で計算します。
 

譲渡所得 = { 短期譲渡所得の総収入金額 − ( 取得費 + 譲渡費用 ) } + { 長期譲渡所得の総収入金額 − ( 取得費 + 譲渡費用 ) } − 特別控除額

※「長期譲渡所得」とは、譲渡した年の1月1日時点において、所有期間が5年のその他の資産の譲渡により生じる所得のことです。
※「短期譲渡所得」とは、譲渡した年の1月1日時点において、所有期間が5年以下のその他の資産の譲渡により生じる所得のことです。

 
「特別控除額」は、短期譲渡所得と長期譲渡所得の合計で最高50万円です。
まず短期譲渡所得の譲渡益から控除し、残りがあれば長期譲渡所得の譲渡益から控除します。


譲渡所得の税額の計算

 
土地建物の譲渡による所得と株式等の譲渡による所得は、他の所得と分離して所得税額を計算する分離課税の対象となります。
一方、その他の資産の譲渡による所得は、他の所得と合計して総所得金額を求め、所得税額を計算する総合課税の対象となり、確定申告が必要となります。
なお、総所得金額を求めるときに算入する所得金額は、短期譲渡所得の場合全額ですが、長期譲渡所得の場合特別控除後の金額を1/2した金額となります。
 
譲渡所得の税率は、下表のとおりです。
 

譲渡の内容

譲渡所得の区分

税率

土地建物の譲渡

分離短期譲渡所得

39.63%(所得税30% + 復興特別所得税0.63% + 住民税9%)

分離長期譲渡所得

20.315%(所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%)

株式等の譲渡

株式等に係る譲渡所得

20.315%(所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%)

その他の資産の譲渡

総合短期譲渡所得

他の所得と合計して超過累進(5〜45%)

総合長期譲渡所得