譲渡所得
最終更新日: 2025-11-09

譲渡所得について

 
譲渡所得とは、資産を譲渡(売却など)することによって得られる所得を指します。対象となる資産には、以下のようなものが含まれます。

  • 土地、借地権、建物
  • 機械装置、船舶、航空機、車両、工具・器具・備品
  • 牛馬などの家畜
  • 株式、公社債、公社債投資信託
  • 鉱業権、漁業権、特許権、著作権
  • ゴルフ会員権、書画、骨董品、宝石
    など

 
「譲渡」とは、有償・無償を問わず、資産の所有権を他者に移転するすべての行為を指します。通常の売買のほか、以下のような取引も含まれます。

  • 資産の交換、競売、収用、代物弁済、現物出資
  • 負担付贈与、財産分与、限定承認による相続
  • 法人への贈与
  • 地上権や賃借権の設定に伴う権利金の受け取り
    など

 

課税されない譲渡所得

 
以下のような場合に得られる所得は、譲渡所得として課税されません。

  • 家具、通勤用自動車、衣服などの生活用動産の譲渡による所得
    ただし、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属、宝石、書画、骨董などは課税対象となります。
  • 強制換価手続き等により資産が競売された場合の所得
  • 貸付信託の受益権などの譲渡による所得
  • 国や地方公共団体への寄付、または国税庁長官の承認を受けた公益法人への寄付による所得
  • 文化財保護法に基づき、重要文化財として指定された資産を国等に譲渡した場合の所得
  • 相続税の物納に充てた財産の譲渡による所得
  • 債務整理計画に基づく資産の贈与による所得

 

譲渡所得に該当しない所得

 
以下のような所得は、資産の譲渡によるものであっても譲渡所得には該当しません。

  • 事業所得者が商品や製品、仕掛品、原材料などの棚卸資産を譲渡した場合(→事業所得
  • 不動産所得山林所得雑所得の業務において、棚卸資産に準ずる資産を譲渡した場合(→雑所得
  • 以下のような減価償却資産の譲渡による所得(→事業所得または雑所得
    • 使用可能期間が1年未満のもの
    • 取得価額が10万円未満のもの(業務上重要なものを除く)
    • 取得価額が20万円未満で、「一括償却資産」として処理されたもの(業務上重要なものを除く)
  • 山林を伐採して譲渡した場合、または立木のまま譲渡した場合(→山林所得
  • 上記以外の資産を、相当の期間にわたり継続的に譲渡している場合(→事業所得または雑所得

譲渡所得の計算方法について

 
譲渡所得の計算方法は、譲渡する資産の種類によって異なります。主に以下の3つのケースに分けて算出されます。

  • 土地・建物の譲渡
  • 株式等の譲渡
  • その他の資産の譲渡

土地・建物の譲渡による譲渡所得の計算方法について

 
譲渡所得の金額は、以下の式で算出されます。
 

譲渡所得 = 譲渡価額 − ( 取得費 + 譲渡費用 ) − 特別控除額

 

取得費に含まれる主な費用

 

  • 土地・建物の購入費用
  • 仲介手数料
  • 印紙代
  • 登録免許税
  • 登記費用(登記内容により譲渡費用となる場合あり)
  • 不動産取得税
  • 設備費用
  • 取得後の改良費用

 
取得費は、購入時の費用に加え、改良費・設備費を加算し、所有期間中の減価償却費相当額を控除した金額です。
建物が事業に使用されていない場合、減価償却の耐用年数は法定耐用年数の1.5倍となります。
取得費が不明、または譲渡価額の5%未満の場合は、譲渡価額の5%を概算取得費として計上できます。
 

譲渡費用に含まれる主な費用

 

  • 売却のための広告料
  • 不動産鑑定評価手数料
  • 測量費
  • 仲介手数料
  • 登記費用(登記内容により取得費となる場合あり)
  • 印紙代
  • 立退料
  • 建物の取り壊し費用

 

取得費・譲渡費用のいずれにも該当しない主な費用

 

  • 修繕費
  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 土地の維持管理費

 

特別控除額の一覧

 

譲渡の区分

譲渡の内容

特別控除額

短期・長期

公共事業等のための譲渡

5,000万円

短期・長期

マイホーム(居住用財産)の譲渡

3,000万円

短期・長期

特定土地区画整理事業等のための土地譲渡

2,000万円

短期・長期

特定住宅地造成事業等のための土地譲渡

1,500万円

長期

2009(平成21)年および2010(平成22)年取得の国内土地の譲渡

1,000万円

短期・長期

農地保有の合理化等のための農地譲渡

800万円

長期

低未利用土地等の譲渡

100万円

長期譲渡所得:譲渡年の1月1日時点で所有期間が5年の資産の譲渡による所得
短期譲渡所得:譲渡年の1月1日時点で所有期間が5年以下の資産の譲渡による所得


株式等の譲渡による譲渡所得の計算方法について

 
譲渡所得の金額は、以下の式で算出されます。
 

譲渡所得 = 譲渡価額 − ( 取得費 + 譲渡費用 + 負債利子 )
※「負債利子」とは、譲渡した株式等の取得に要した借入金の利子のうち、譲渡年に支払った金額のうち、株式等の所有期間に対応する部分を指します。


その他の資産の譲渡による譲渡所得の計算方法について

 
譲渡所得の金額は、以下の式で算出されます。
 

譲渡所得 = { 短期譲渡所得の総収入金額 − ( 取得費 + 譲渡費用 ) } + { 長期譲渡所得の総収入金額 − ( 取得費 + 譲渡費用 ) } − 特別控除額
長期譲渡所得:譲渡年の1月1日時点で所有期間が5年の資産の譲渡による所得
短期譲渡所得:譲渡年の1月1日時点で所有期間が5年以下の資産の譲渡による所得

 

特別控除額

 
短期譲渡所得と長期譲渡所得の合計に対して、最高50万円まで控除されます。
まず短期譲渡所得から控除し、残額があれば長期譲渡所得から控除します。


譲渡所得の税額の計算方法について

 
譲渡所得に対する所得税の計算方法は、譲渡する資産の種類によって異なります。
土地・建物の譲渡所得、および株式等の譲渡所得は、分離課税の対象となり、他の所得とは分けて税額を計算します。
その他の資産の譲渡所得は、他の所得と合算して総所得金額を算出する総合課税の対象となり、確定申告が必要です。
なお、総所得金額に算入する譲渡所得の金額は、短期譲渡所得は全額を算入し、長期譲渡所得特別控除後の金額の1/2を算入します。
 

譲渡所得の税率一覧

 

譲渡の内容

所得の区分

税率

土地・建物の譲渡

分離短期譲渡所得

39.63%(所得税30.0%、復興特別所得税0.63%、住民税9.0%)

分離長期譲渡所得

20.315%(所得税15.0%、復興特別所得税0.315%、住民税5.0%)

株式等の譲渡

株式等に係る譲渡所得

20.315%(所得税15.0%、復興特別所得税0.315%、住民税5.0%)

その他の資産の譲渡

総合短期譲渡所得

他の所得と合計して超過累進税率(5〜45%)

総合長期譲渡所得