給与所得
最終更新日: 2025-11-15

給与所得について

 
給与所得とは、給与等(俸給、給料、賃金、歳費、賞与など)に加え、事業専従者控除額や青色事業専従者給与による所得を指します。残業手当、休日出勤手当、職務手当、地域手当、家族(扶養)手当、住宅手当なども、すべて給与所得に含まれます。
ただし、以下のような手当等については、一定の条件を満たす場合に限り、例外として非課税となります。

  • 通勤手当
    役員や使用人に支給する通勤手当や通勤定期券等で、月額15万円以下のもの。
  • 食事の支給
    役員や使用人に支給する食事で、以下の2つの要件を満たすもの。
    • 食事代の半分以上を本人が負担していること。
    • 「食事代 − 本人負担金額」が月額3,500円(税別)以下であること。
  • 旅費
    転勤や出張などに伴う旅費で、通常必要と認められる範囲のもの。
  • 宿直・日直手当
    勤務1回につき4,000円以下のもの(食事の支給がある場合は、食事代を差し引いた金額)。
  • 創業記念品
    創業記念として支給される記念品で、以下の3つの要件を満たすもの。
    • 社会通念上、記念品としてふさわしいものであること。
    • 処分見込価額による評価額が1万円(税別)以下であること。
    • 支給がおおむね5年以上の間隔で行われていること。
  • 永年勤続記念品
    永年勤続者に支給される記念品等で、以下の3つの要件を満たすもの。
    • 勤続年数や地位に照らして、世間一般の水準内であること。
    • 勤続年数がおおむね10年以上であること。
    • 同一人物を2回以上表彰する場合、前回からおおむね5年以上の間隔があること。
  • 従業員レクリエーション旅行
    従業員に供与される経済的利益が少額で、以下の2つの要件を満たすもの。
    • 旅行期間が4泊5日以内であること(海外旅行の場合は現地滞在が4泊5日以内)。
    • 参加者が全体の半数以上であること(工場や支店単位の場合は各職場の半数以上)。

給与所得の計算方法について

 
給与所得の金額は、以下の式で算出されます。
 

給与所得 = 収入金額 − 給与所得控除額

 
ここでの「収入金額」には、支給された金銭のほか、以下のような経済的利益も含まれます。

  • 商品などを無償または著しく低い価額で受け取ったことによる利益
  • 土地や建物などを無償または低額で借りたことによる利益
  • 金銭を無利息または低利息で借りたことによる利益
  • ストックオプションの権利行使による利益

給与所得控除額

 
給与所得控除額は、年間の給与収入に応じて以下のように定められています。
 

給与等の収入金額

給与所得控除額

190万円以下

65万円

190万円超360万円以下

収入金額 × 30% + 8万円

360万円超660万円以下

収入金額 × 20% + 44万円

660万円超850万円以下

収入金額 × 10% + 110万円

850万円超

195万円

850万円超(子育て・介護世帯)

195万円 + ( 収入金額 − 850万円 ) × 10%(上限210万円)

所得金額調整控除

 
所得金額調整控除とは、一定の給与所得者が総所得金額を計算する際に、給与所得から一定額を控除できる制度です。以下の2つのケースがあります。
 
1.子どもや特別障害者等がいる場合
その年の給与収入が850万円を超え、以下のいずれかに該当する場合、控除が適用されます。

  • 本人が特別障害者である。
  • 23歳未満の扶養親族がいる。
  • 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる。

 
所得金額調整控除額は、以下の式で算出されます。
 

所得金額調整控除額 = ( 給与収入 − 850万円 ) ✕ 10%
※控除対象となる給与収入の上限は1,000万円です。
※1円未満の端数は切り上げます。

 
2.給与所得と年金所得の両方がある場合
給与所得控除後の給与と、公的年金等控除後の年金所得の合計が10万円を超える場合、以下の式で控除額が算出されます。
 

所得金額調整控除額 = 給与所得控除後の給与 + 公的年金等控除後の年金額 − 10万円
※それぞれ控除後金額の上限は10万円です。
※「子どもや特別障害者等がいる場合」の控除がある場合は、その適用後の給与所得から本控除額を差し引きます。

特定支出控除

 
特定支出控除とは、職務に関連する一定の支出が給与所得控除額の1/2を超える場合に、その超過分を所得から控除できる制度です。
主な対象支出は以下のとおりです。

  • 通勤に通常必要と認められる費用
  • 職務に伴う転居費用(一定の条件あり)
  • 職務に必要な研修費(教育訓練に限る)
  • 職務に必要な資格取得費(教育訓練に限る)
  • 単身赴任者の帰省旅費(一定の条件あり)
  • 職務関連の図書費、制服などの衣服費、交際費等
  • 出張などの通常必要な旅費
    など

なお、2023(令和5)年分以降、研修費や資格取得費については、給与支払者だけでなくキャリアコンサルタントによる証明書の添付でも控除が可能となりました。


給与所得の税額の計算方法について

 
給与所得は総合課税の対象となり、原則として確定申告が必要です。
ただし、毎月の給与支給時に源泉徴収が行われており、他に所得がない場合は、勤務先による年末調整によって税額が確定するため、確定申告は不要です。
 

確定申告が必要となるケース

 
以下のいずれかに該当する場合は、確定申告が必要です。
 

  • 給与の年間収入が2,000万円を超える場合
  • 給与所得・退職所得以外の所得が年間20万円を超える場合
  • 複数の会社から給与を受け取っている場合
  • 同族会社の役員などで、同族会社から利子や賃貸料などを受け取っている場合
  • 災害減免法により源泉徴収の猶予等を受けている場合
  • 源泉徴収義務のない者から給与等の支払いを受けている場合
  • 退職所得に関して、正規の方法で税額を計算した結果、源泉徴収された税額よりも多くなる場合