最終更新日: 2024-03-13

雇用保険

 
失業認定申告書

雇用保険とは

 
雇用保険とは、労働者の生活及び雇用の安定と就職の促進のために、失業した人や教育訓練を受ける人等に対して、失業等給付を支給する制度のことです。
また、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進等をはかるための二事業を行っています。
雇用保険の保険者は政府で、窓口は公共職業安定所ハローワーク)となっています。
労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険を総称して労働保険と言います。
保険給付は両保険制度で個別に行われていますが、保険料の徴収については、両保険は労働保険として一体のものとして取り扱っています。
事業主は、労働者を一人でも雇っていれば労働保険に加入し、労働保険料を納付する必要があります。


雇用保険の加入対象者

 
次に該当する労働者は、事業所規模に関わりなく、原則としてすべて雇用保険の被保険者となります。
 

  • 所定労働時間が週20時間以上であること
  • 雇用期間が31日以上見込まれること

雇用保険の保険料

 
保険料率は業種ごとに異なり、保険料は事業主と労働者が業種ごとに定められた割合で負担します。
 
雇用保険料は、次の式で計算します。
 

労働者負担雇用保険料 = 賃金総額 × 労働者負担保険料率
事業主負担雇用保険料 = 賃金総額 × 事業主負担保険料率
雇用保険料 = 労働者負担雇用保険料 + 事業主負担雇用保険料


雇用保険の給付の種類

 
雇用保険の給付には、
 
失業等給付

 
育児休業給付

 
があります。


求職者給付

 
求職者給付の種類は、下表のとおりです。
 

 対象

給付の名称

概要

一般被保険者

基本手当

被保険者が、定年、倒産、解雇、自己都合等により離職し、失業した場合に支給される給付金

技能習得手当

公共職業訓練を受講する場合に支給される給付金

寄宿手当 公共職業訓練を受講するにあたり、同居の親族と別居し、寄宿する場合に支給される給付金
傷病手当 病気や怪我により職業に就くことができない求職者に基本手当の代わりに支給される給付金
高年齢被保険者 高年齢求職者給付金 高年齢被保険者(65歳以上)が失業した場合に支給される一時金
短期雇用特例被保険者 特例一時金 短期雇用特例被保険者が失業した場合に支給される一時金
日雇労働被保険者 日雇労働求職者給付金 日雇労働被保険者が失業した場合に、条件により普通給付または特例給付を支給

 
求職者給付の基本手当は、雇用保険の給付の中心となるもので、一般に失業手当と呼ばれるものです。
 
基本手当の主な受給要件は、次のとおりです。
 

  • 65歳未満であること
  • 離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること
    ただし、特定受給資格者または特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上あること
  • 公共職業安定所ハローワーク)に来所し、求職の申し込みを行い、失業の認定を受けること

※「失業」とは、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない状態にあることです。

 
基本手当には、受給資格決定日から7日間待機期間があります。
さらに、自己都合退職の場合、待機期間の7日間に加え、原則として2か月間(5年間で3回以上の離職については3か月間)の給付制限があります。
 
求職者給付として受給資格者に支給される1日あたりの支給額を基本手当日額といい、次の式で計算します。
 

基本手当日額 = 賃金日額 × 45%〜80%

※離職時における年齢と賃金日額によって異なります。

 
賃金日額とは、原則として算定対象期間において被保険者期間として計算された最後の6か月間に支払われた賃金総額(賞与等、臨時に支払われた賃金等を除く)を180で除した金額のことです。
 

賃金日額 = 被保険者期間として計算された最後の6か月間の賃金総額 ÷ 180

 
なお、下限額と離職日の年齢に応じた上限額が別途定められています。
 
基本手当を支給する上限の日数を所定給付日数といい、算定基礎期間、離職日における年齢、離職理由等に応じて日数が異なります。
 
一般の離職者の所定給付日数は、下表のとおりです。
 

年齢

 被保険者期間

1年以上
10年未満

10年以上
20年未満

20年以上

全年齢

90日

120日

150日

※「一般の離職者」とは、自己都合や定年により退職した人のことです。

 
特定受給資格者および一部の特定理由離職者の所定給付日数は、下表のとおりです。
 

年齢

 被保険者期間

1年未満

1年以上
5年未満

5年以上
10年未満

10年以上
20年未満

20年以上

30歳未満

90日

90日

120日

180日

30歳以上
35歳未満

120日

180日 210日 240日

35歳以上
45歳未満

150日

180日 240日 270日

45歳以上
60歳未満

180日

240日 270日 330日

60歳以上
65歳未満

150日

180日 210日 240日

※「特定受給資格者」とは、倒産や解雇等により離職した人のことです。
※「特定理由離職者」とは、期間の定めがある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した人や不当な理由のある自己都合退職により離職した人のことです。

 
就職困難者の所定給付日数は、下表のとおりです。
 

年齢

被保険者期間

1年未満

1年以上
5年未満

5年以上
10年未満

10年以上
20年未満

20年以上

45歳未満

150日

300日

45歳以上
65歳未満

360日

 
基本手当の受給期間は、原則として離職した日の翌日から原則1年間です。
ただし、所定給付日数が330日の場合は「1年間+30日」、所定給付日数が360日の場合は「1年間+60日」となります。
基本手当は、受給期間中の失業の状態にある日について所定給付日数を限度として支給されます。
受給期間が過ぎてしまうと、所定給付日数が残っていても基本手当は支給されません。
なお、病気、怪我、妊娠、出産、育児、親族の看護等の理由により、引き続き30日以上働くことができないときは、最長3年までを受給期間に加算し、最長4年まで受給期間を延長することができます。


雇用継続給付 

 
雇用継続給付の種類は、下表のとおりです。
 

給付の名称

概要

高年齢雇用継続給付

所定の要件を満たした高齢者に対する雇用継続の援助や再就職促進を目的とした給付

介護休業給付 所定の要件を満たした家族の介護をするために休業中の被保険者に対する雇用継続の援助等を目的とした給付

高年齢雇用継続給付

 
高年齢雇用継続給付には、基本手当を受給せずに雇用を継続する人に支給される高年齢雇用継続基本給付金と、基本手当を受給した後に再就職した人に支給される高年齢再就職給付金があります。
 
両給付金に共通する支給要件は、次のとおりです。
 

  • 60歳以上65歳未満であること
  • 雇用保険の被保険者期間が5年以上あること
  • 賃金が60歳時点に比べて75%未満であること

 
高年齢雇用継続基本給付金は、上記3つの支給要件を満たし、かつ基本手当等を受給せずに引き続き雇用されている人に対して支給されます。
支給される給付金は、支給対象月の賃金の最大15%(賃金が60歳時点に比べて61%以下に低下した場合は15%相当額となり、61%超75%未満に低下した場合は低下率に応じて15%相当額未満となります)となります。
支給期間は、60歳到達月から65歳到達月までとなります。
 
高年齢再就職給付金は、上記3つの支給要件および次の3つの要件を満たす人に対して支給されます。
 

  • 60歳を過ぎて基本手当の支給を受けたことがあること
  • 60歳到達後、就職し雇用保険の被保険者となったこと
  • 60歳到達後、就職した日の前日で基本手当の支給残日数が100日以上あること

 
支給額は、高年齢雇用継続基本給付金と同じです。
支給期間は、基本手当の支給残日数が200日以上の場合は2年間、支給残日数が100日以上200日未満の場合は1年間となります(途中で65歳になるときは、65歳到達月まで)。

介護休業給付

 
介護休業給付の主な支給要件は、次のとおりです。
 

  • 対象家族を介護するための休業であること
    対象家族とは、配偶者、父母、子、配偶者の父母、被保険者が同居し、かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹、孫になります
  • 介護休業開始前の2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること
  • 介護休業期間中の1か月ごとに、休業開始前の1か月あたりの賃金の80%以上の賃金が支払われていないこと
  • 就業日数が支給単位期間(1か月)ごとに、10日以下であること
  • 有期契約労働者の場合は、介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに雇用契約が満了することが明らかでないこと

 
介護休業給付の支給額は、次の式で計算します。
 

支給額 = 介護休業開始時の賃金日額 × 支給日数 × 67%

 
支給期間は、対象家族1人につき、通算93日まで(最大3回まで分割して休業可能)となります。


就職促進給付

 
就職促進給付の種類は、下表のとおりです。
 

給付の名称

概要

就業促進手当

再就職手当

基本手当を受給中に安定した職業に就いた場合に支給
基本手当の支給残日数が所定給付日数の1/3以上あることが条件

就業促進定着手当

再就職手当の支給を受けた人が、再就職先に6か月以上雇用され、再就職先での賃金が、離職前の賃金よりも低い場合に支給

就業手当

再就職手当の支給対象とならない職業(パート、契約社員等)に就職した場合に支給

基本手当の支給残日数が一定以上なければ支給されません

常用就職支度手当

中高齢者や身体障害者等の就職が困難な人が安定した職業に就いた場合に支給

移転費

公共職業安定所(ハローワーク)の紹介した職業に就くため、または、公共職業訓練等を受けるために住所または居所を変更する場合に支給

広域求職活動費

公共職業安定所(ハローワーク)の紹介により、広範囲の地域にわたる求職活動を行う場合に支給


教育訓練給付

 
教育訓練給付制度とは、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講し修了した場合、受講のために支払った費用の一部が教育訓練給付金として支給される制度のことです。
教育訓練には、雇用の安定や就職の促進を目的とした「一般教育訓練」と中長期的なキャリア形成を目的とする「専門実践教育訓練」があります。
また、一般教育訓練については、特に速やかな再就職および早期のキャリア形成が目的の「特定一般教育訓練」が2019年10月から開始されています。
 
教育訓練給付制度の概要は、下表のとおりです。
 

給付の種類 

雇用保険の被保険者期間

支給額

一般教育訓練給付金

過去に給付を受けたことがある場合は、3年以上
初めて給付を受ける場合は、1年以上

教育訓練経費 × 20%(上限10万円

特定一般教育訓練給付金

教育訓練経費 × 40%(上限20万円

専門実践教育訓練給付金

過去に給付を受けたことがある場合は、3年以上
初めて給付を受ける場合は、2年以上
教育訓練経費 × 50%(年間上限40万円、給付期間は最長3年間
追加給付 ※:教育訓練経費 × 20%(年間上限16万円、給付期間は最長3年間

※専門実践教育訓練の受講を修了した後、1年以内に資格取得等をし、かつ雇用保険の一般被保険者として雇用された場合


育児休業給付 

 
育児休業給付の種類は、次のとおりです。

出生時育児休業給付

 
出生時育児休業給付の主な支給要件は、次のとおりです。
 

  • 子の出生日から8週間を経過する日の翌日までの期間内に、4週間28日)以内の期間を定めて、子を養育するための出生時育児休業(産後パパ育休)であること
  • 出生時育児休業開始前の2年間に、11日以上または80時間以上働いた月数が12か月以上あること
  • 就業日数が支給単位期間(1か月)ごとに、10日(10日超の場合は、就業時間が80時間以下であること
  • 有期契約労働者の場合は、子の出生日から8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに、雇用契約が満了することが明らかでないこと

 
出生時育児休業給付の支給額は、次の式で計算します。
 

出生時育児休業開始時の賃金日額 = 出生時育児休業開始前6か月間の賃金 ÷ 180
支給対象期間(1か月)あたり支給額 = 出生時育児休業開始時の賃金日額 × 支給日数(28日が上限) × 67%

育児休業給付

 
育児休業給付の主な支給要件は、次のとおりです。
 

  • 1歳未満の子を養育するための育児休業であること
    パパママ育休プラス制度を利用する場合は、1歳2か月まで
    保育所に入所できない等特別な事情がある場合は、最大2歳未満
  • 育児休業開始前の2年間に、11日以上または80時間以上働いた月数が12か月以上あること
  • 育児休業期間中の1か月ごとに、休業開始前の1か月あたりの賃金の80%以上の賃金が支払われていないこと
  • 就業日数が支給単位期間(1か月)ごとに、10日(10日超の場合は、就業時間が80時間以下であること
  • 有期契約労働者の場合は、同事業所のもとで1年以上継続して働いており、子が1歳6か月になるまでに雇用契約が満了することが明らかでないこと

 
育児休業給付の支給額は、次の式で計算します。
 

育児休業開始時の賃金日額 = 育児休業開始前6か月間の賃金 ÷ 180
支給対象期間(1か月)あたり支給額 = 育児休業開始時の賃金日額 × 支給日数(30日) × 50%または67%

※育児休業を開始してから180日目までは67%、181日目以降は50%となります。

 
育児休業給付の給付率は、次のように覚えましょう!
 

FP検定語呂合わせ暗記_育児休業給付の給付率

雇用保険二事業

 
雇用保険二事業には、雇用安定事業能力開発事業があります。

雇用安定事業

 
事業主に対する助成金

  • 若年者や中高年齢者の試行雇用を促進(試行雇用奨励金)
  • 高齢者や障害者を雇用する事業主を支援(特定求職者雇用開発助成金)
  • 創業や雇用を増やす事業主を支援(自立就業支援助成金、地域雇用開発助成金)
  • 失業予防に努める事業主を支援(雇用調整助成金)
  • 仕事と子育ての両立を支援(育児・介護雇用安定等助成金)
    など

 
中高年齢者等再就職の緊要度が高い求職者に対する再就職支援

  • 就職支援ナビゲーターや再チャレンジプランナーによるきめ細かい就職相談・職業紹介
    など

若者や子育て女性に対する就労支援

  • ジョブカフェ、マザーズハローワーク等における職業紹介・情報提供
    など

能力開発事業

 
在職者や離職者に対する訓練

  • 日本版デュアルシステムの実施
  • 公共職業能力開発施設の設置・運営
  • 専修学校等の民間教育機関を活用した職業訓練の推進

 
事業主が行う教育訓練への支援

  • キャリア形成促進助成金
    など

 
職業能力評価制度の整備
 
ジョブ・カード制度の構築