自己資金の目安
住宅購入にあたっては、自己資金は多いほど安心です。資金計画を立てる際には、住宅ローンの借入額をできるだけ抑えることが望ましく、自己資金として物件価格の2割程度を目安に準備することをおすすめします。
また、住宅の購入には物件価格以外にも、税金や各種手数料などの諸経費がかかります。これらの諸経費は、一般的に物件価格の5〜10%程度が目安とされており、契約時などに現金で支払うケースが多いため、頭金とは別に予算を確保しておくことが重要です。
したがって、自己資金の目安としては、頭金(物件価格の約2割)と諸経費(約5〜10%)を合わせて、物件価格の3割程度を準備しておくと安心です。
主な諸経費
住宅を購入する際には、物件価格以外にもさまざまな諸経費が発生します。以下に、主な費用項目を分類してご紹介します。
取得にかかる費用
- 印紙税:建築請負契約書、売買契約書、金銭消費貸借契約書などに貼付する印紙代
- 登録免許税:所有権移転登記、保存登記、住宅ローン利用時の抵当権設定登記にかかる税金
- 不動産取得税:不動産を取得した際に課される地方税
- 仲介手数料:不動産会社を通じて物件を購入した場合に支払う手数料
- 登記手数料:登記手続きを司法書士に依頼する際の報酬
住宅ローンにかかる費用
- 事務手数料:住宅ローンの申込・契約に伴い、金融機関に支払う手数料
- 保証料:連帯保証人の代わりに保証会社を利用する場合に支払う費用
- 登録免許税(抵当権設定):住宅ローンの担保として抵当権を設定する際にかかる税金
- 団体信用生命保険料:ローン契約者が死亡または高度障害となった場合に備える保険料(金融機関によっては金利に含まれる場合もあり)。
- 火災保険料:建物を担保とする場合に加入が求められる保険
その他
- 引越し費用
- 家具・家電の購入費用
- 地鎮祭・上棟式の費用(新築戸建ての場合)
- 水道引き込み費用(新築戸建ての場合)
- 修繕積立金(新築マンションの場合)
などがあります。必要に応じて、これらの費用を事前に見積もり、資金計画にしっかりと組み込んでおくことが大切です。
住宅ローンの金利体系
住宅ローンの金利には、主に以下の3つのタイプがあります。それぞれの特徴を理解し、自分のライフプランや返済計画に合った金利タイプを選ぶことが重要です。
固定金利型
固定金利型とは、借入期間中ずっと金利が変わらないタイプです。主に以下の2種類があります。
全期間固定型は、借入時に決定した金利が、完済まで変わりません。返済額が一定のため、家計管理がしやすく、長期的な返済計画を立てやすいのが特徴です。
段階金利型は、一定期間ごとに金利が段階的に変わるタイプです。将来的な金利変動をある程度見越した設計が可能です。
変動金利型
変動金利型は、市中金利の動向に応じて定期的に金利が見直されるタイプです。
金利は一般的に半年ごとに見直されます。返済額は5年ごとに見直され、増額される場合でも、それまでの返済額の1.25倍が上限となります。
注意点としては、金利が急上昇した場合、月々の返済額が利息にも満たないケースがあり、その差額は未払い利息として翌月以降に繰り越されます。未払い利息が積み重なると、返済期間内に完済できず、一括返済が必要になる可能性があるため、慎重な検討が必要です。
固定金利選択型
固定金利選択型は、返済開始から一定期間は固定金利が適用され、その後に固定金利型または変動金利型を選択できるタイプです。
固定金利期間終了後は、その時点の金利で再計算され、返済額が変更されます。固定期間が長いほど、当初の金利は高くなる傾向があります。
このタイプは、将来の金利動向が読みにくい場合や、ライフイベントに合わせて柔軟に対応したい場合に適しています。
住宅ローンの返済方法
住宅ローンの返済方法には、主に以下の2種類があります。それぞれの特徴を理解し、自分のライフスタイルや資金計画に合った方法を選びましょう。
元利均等返済
元利均等返済とは、元金(借入額)と利息の合計額が毎月一定となる返済方法です。
毎月の返済額が一定のため、家計管理がしやすいのがメリットです。
返済開始当初は利息の割合が高く、徐々に元金の返済割合が増えていきます。
元金均等返済
元金均等返済とは、毎月の元金返済額が一定で、利息分は残高に応じて変動する返済方法です。
返済が進むにつれて利息が減るため、月々の返済額は徐々に少なくなっていきます。
初期の返済額は元利均等返済よりも高くなる傾向がありますが、総返済額は少なくなるのが特徴です。

同じ借入額・返済期間の場合、総返済額は「元利均等返済 > 元金均等返済」となります。
住宅ローンの種類
住宅ローンには、大きく分けて公的融資と民間融資の2種類があります。
公的融資
公的融資とは、政府系金融機関や地方自治体が提供する住宅ローンです。代表的なものに以下があります。
財形住宅融資は、勤務先で財政貯蓄制度を1年以上継続利用し、残高が50万円以上ある方が対象です。融資額は財形貯蓄残高の10倍(最大4,000万円)、かつ取得価格の80%までとなります。申込時点の金利が適用され、5年固定金利です。5年ごとに金利・返済額が見直されます(最大1.5倍までの増額制限あり)。
自治体融資は、都道府県や市町村が独自に提供する住宅ローン制度です。融資条件は自治体ごとに異なり、制度がない自治体もあります。
財形貯蓄制度
財形住宅融資を利用するには、財形貯蓄制度の利用が前提となります。会社員向けの制度には一般財形貯蓄のほか、以下の2種類があります。
勤労者財産形成年金貯蓄制度(財形年金貯蓄)
財形年金貯蓄は、国内に住所を有する55歳未満の勤労者が対象となる制度です。以下の主な条件を満たすことで、元本550万円までの利子等が非課税となります。
- 勤務先に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していること
- 給与天引きによる積立を5年以上継続していること
- 60歳以降に年金として受け取ること
- 積立終了後、5年以内の据置期間を経て、5年以上20年以内の期間で年金として受け取ること
など
財形住宅貯蓄を併用する場合、両制度を合わせて元本550万円までの利子等が非課税となります。
保険型(生命保険料・共済掛金・損害保険料)は385万円までの利子等が非課税で、残りの165万円は住宅貯蓄の非課税枠として利用可能です。
対象となる貯蓄商品等は、預貯金、合同運用信託、有価証券、生命保険料、生命共済掛金、損害保険料で、「勤労者財産形成年金貯蓄契約」に基づき、1人1契約までとなります。
初回預入前に「財産形成非課税年金貯蓄申告書」を勤務先・金融機関を通じて税務署長に提出するとともに、原則として預入の都度、「財産形成非課税年金貯蓄申込書」を勤務先経由で金融機関へ提出する必要があります。
勤労者財産形成住宅貯蓄制度(財形住宅貯蓄)
財形住宅貯蓄は、住宅の取得や増改築の資金を目的とした貯蓄制度です。以下の主な条件を満たすことで、元本550万円までの利子等が非課税となります。
- 国内に住所を有する55歳未満の勤労者
- 勤務先に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していること
- 給与天引きによる積立を5年以上継続していること
- 積立金が住宅取得や増改築等の頭金として払い出されること
など
財形年金貯蓄と併用する場合、両制度を合わせて元本550万円までの利子等が非課税となります。
対象となる貯蓄商品等は、預貯金、合同運用信託、有価証券、生命保険料、生命共済掛金、損害保険料で、「勤労者財産形成住宅貯蓄契約」に基づき、1人1契約までとなります。
初回預入前に「財産形成非課税住宅貯蓄申告書」を勤務先・金融機関を通じて税務署長へ提出するとともに、原則として預入の都度、「財産形成非課税住宅貯蓄申込書」を勤務先経由で金融機関へ提出する必要があります。
財形貯蓄制度の比較
3種類の財形貯蓄制度の違いは、以下の表にまとめられます。
一般財形貯蓄 |
財形年金貯蓄 |
財形住宅貯蓄 |
|
用途 |
自由 |
年金(60歳以降に5年以上20年以内で受給) |
住宅取得・増改築 |
加入条件 |
勤労者 |
55歳未満の勤労者 |
|
積立期間 |
3年以上 |
5年以上 |
|
税制優遇 |
なし |
元本550万円までの利子等が非課税(保険型は元本385万円まで) |
元本550万円までの利子等が非課税(年金貯蓄と合算で最大550万円) |
※財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄を併用する場合、非課税枠は合計で550万円までの利子等となります。
各制度の利用には、申告書の提出や契約条件の確認が必要です。詳細は勤務先または金融機関にご確認ください。
民間融資
民間融資は、銀行、保険会社、ノンバンクなどが提供する住宅ローンです。主な特徴は以下の通りです。
- 金利タイプや返済方法の選択肢が豊富
- 審査基準やサービス内容が金融機関によって異なる
- 不動産会社やハウスメーカーと提携した提携住宅ローンもあり、金利優遇や手続きの簡略化が期待できる
フラット35
フラット35は、民間金融機関が独立行政法人住宅金融支援機構と提携して提供する、全期間固定金利型の住宅ローンです。融資を行うのは民間金融機関であり、住宅金融支援機構が直接融資するわけではない点に注意が必要です。
フラット35は、買取型と保証型の2種類があります。
買取型は、民間金融機関が貸し出した住宅ローン債権を住宅金融支援機構が買い取り、証券化して投資家に販売する仕組みです。金利や手数料は金融機関ごとに異なりますが、商品内容は原則共通です。
保証型は、民間金融機関が貸し出した住宅ローンに対し、住宅金融支援機構が保証を行う仕組みです。商品内容は金融機関ごとに異なります。現在は買取型が主流で、保証型を扱う金融機関は一部に限られます。
申込要件
- 申込時の年齢が70歳未満であること(親子リレー返済の場合は70歳以上も可)
- 日本国籍または永久許可・特別永住者であること
- 年収に対する年間返済額の割合(総返済負担率)が以下の基準を満たすこと
- 年収400万円未満:30%以下
- 年収400万円以上:35%以下
資金使途
- 申込者または親族が居住する新築住宅の建設・購入または中古住宅の購入
- セカンドハウスも対象
住宅要件
- 住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合すること
- 住宅の床面積が、次の基準に適合すること
- 一戸建て、連続建て、重ね建て:70㎡以上
- 共同建て(マンション等):30㎡以上
- 店舗付き住宅等の併用住宅:住宅部分の床面積が全体の1/2以上
- 2023年4月以降の設計検査申請分の新築住宅の場合、以下の省エネルギー基準のいずれかに適合すること
- 断熱等性能等級が4以上かつ一次エネルギー消費量等級が4以上
- 建築物エネルギー消費性能基準(結露防止措置の基準を含む)
借入額
- 100万円以上8,000万円以下(1万円単位)
- 建設費と土地取得費の合計または購入価額以内
- 併用住宅の非住宅部分に係る建設費または購入価額は対象外
借入期間
- 15年から35年(申込者または連帯債務者が60歳以上は10年から)
- 上限は「80歳 − 申込時の年齢(1歳未満切り上げ)」
借入金利
- 全期間固定金利で、資金受取時の金利を適用
- 金融機関ごとに異なる
- 借入期間(20年以下・21年以上)、融資率(9割以下・9割超)、団体信用生命保険の加入内容などに応じて変動
返済方法
- 元利均等返済または元金均等返済
- ボーナス返済併用可(借入総額の40%以内、1万円単位)
繰上返済
- 一部繰上返済は毎月の返済日に実施
- 返済額は、インターネットサービス「住・My Note」利用時は10万円以上、金融機関窓口利用時は100万円以上
- 手数料無料
その他
- 担保:対象住宅および敷地に、住宅金融支援機構を抵当権者とする第1順位の抵当権を設定
- 保証人:不要
- 保証料:不要
- 火災保険:返済期間中は加入が必要
フラット35の金利引下げ制度
フラット35には、家族構成や住宅の性能・地域の特性などに応じてポイントが加算され、積算ポイント数に応じて金利の引下げ幅と期間が決定される仕組みがあります。以下は、金利引下げ制度に関連する主な商品です。
フラット35 子育てプラス
子育て世代(申込年度の4月1日時点で子どもが18歳未満)または若年夫婦世帯(申込年度の4月1日時点で夫婦のいずれかが40歳未満)である場合に、子どもの人数などに応じて、一定期間金利が引き下げられます。
フラット35 S
長期優良住宅、省エネルギー性、耐震性など、住宅の性能に応じて、一定期間金利が引き下げられます。
フラット35 S(ZEH)
高断熱・高効率設備を備え、再生可能エネルギー等により年間の一次エネルギー消費量がゼロまたはマイナスの住宅(ZEH:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を取得する場合に、一定期間金利が引き下げられます
フラット35 リノベ
中古住宅の購入と同時に、性能向上リフォームを実施する場合に、一定期間金利が引き下げられます。購入後に自らリフォームを行う「リフォーム一体タイプ」と、事業者がリフォームを行った住宅を購入する「買取再販タイプ」があります。
フラット35 維持保全型
維持保全・維持管理に配慮された住宅や、既存住宅の流通促進に資する住宅を取得する場合に、一定期間金利が引き下げられます。
フラット35 地域連携型
子育て支援や移住促進などに取り組む地域において、地方公共団体と住宅金融支援機構が連携し、地方公共団体による補助金交付などの財政的支援と合わせて、一定期間金利が引き下げられます。
フラット35 地方移住支援型
地方公共団体による移住支援金の交付を受ける場合に、支援金とセットで一定期間金利が引き下げられます。
団体信用生命保険
団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンの契約者が返済期間中に死亡または所定の高度障害状態になった場合に、保険会社がローン残高相当の保険金を金融機関に支払い、ローンが完済される制度です。これにより、遺族にローン返済の負担が残らないよう配慮されています。
多くの住宅ローンでは、団信の保険料が金利に含まれているため、別途保険料を支払う必要はありません。つまり、毎月の返済額に保険料が組み込まれており、追加の負担は発生しないのが一般的です。
住宅ローンの借換え
住宅ローンの借換えとは、現在返済中の住宅ローンよりも低金利のローンに切り替えることで、既存のローンを一括返済する仕組みです。金利差によって利息負担を軽減し、総返済額を減らすことが主な目的です。
借換えを検討する際は、金利差だけで判断するのは危険です。事務手数料、保証料、印紙税、司法書士報酬、抵当権抹消登記費用、新規融資に伴う抵当権設定登記費用などの諸経費が発生するため、総合的な費用対効果を見極める必要があります。
また、団体信用生命保険(団信)は、借換え先の金融機関の団信に再加入が必要となるのが一般的です。
借換えによるメリットが得られるかどうかは、以下の条件が目安となります。
- ローン残高:1,000万円以上
- 残りの返済期間:10年以上
- 金利差:1%以上
金利差が1%未満の場合、諸経費を上回る利息軽減効果が得られない可能性があります。
住宅ローンの繰上げ返済
繰上げ返済とは、手元資金を使って住宅ローンの元金の一部または全額を予定より早く返済することです。元金を減らすことで、将来支払う予定だった利息が不要となり、総返済額を軽減できます。繰上げ返済には、以下の2つの方法があります。
- 返済期間短縮型:毎月の返済額は変えずに、返済期間を短縮する方法です。利息軽減効果が最も大きくなります。
- 返済額軽減型:返済期間はそのままで、毎月の返済額を減らす方法です。家計の負担を軽くしたい場合に有効です。
金融機関によって最低返済額や手数料の有無・金額が異なるため、事前の確認が必要です。また、一部の金融機関では、インターネット経由の手続きで手数料無料となる場合もあります。