日本学生支援機構の奨学金制度
代表的な奨学金制度として、独立行政法人日本学生支援機構の実施する制度があります。
この奨学金には、返済が不要な「給付型奨学金」と、返済が必要な「貸与型奨学金」の2種類があります。
貸与型奨学金はさらに、利子のない「第一種奨学金」と、利子のある「第二種奨学金」に分かれます。
奨学金の申込みは、進学前(予約採用)と進学後(在学採用)のいずれも可能ですが、申込資格が異なります。
奨学金の受給には、学力基準と家計基準の2つの選考基準があります。
給付型奨学金の選考基準
給付型奨学金の主な選考基準は以下のとおりです。
- 一定の成績を修めている、または進学先で学ぶ意欲があること
- 住民税非課税世帯、またはそれに準ずる世帯であること
対象者は、収入基準に応じて以下の「支援区分」に認定されます。
| 支援区分 |
収入基準 |
| 第1区分 |
本人および生計維持者の市町村民税所得割が非課税(支給額算定基準額の合計が100円未満) |
| 第2区分 |
本人および生計維持者の支給額算定基準額の合計が100円以上25,600円未満 |
| 第3区分 |
本人および生計維持者の支給額算定基準額の合計が25,600円以上51,300円未満 |
給付型奨学金の適格認定
奨学金の支給期間中、学校は本人の学修状況などを定期的に日本学生支援機構へ報告します。
学業不振が著しい場合などは、支給が停止されることがあります。
また、毎年10月には収入基準に基づき支給額の見直しが行われます。
貸与型奨学金の選考基準
貸与型奨学金の主な選考基準は以下のとおりです。
- 一定の成績を修めている、または進学先で学ぶ意欲があること
- 生計維持者(父母など)の年収が収入基準以下であること
貸与型奨学金の保証制度
貸与型奨学金には、以下のいずれかの保証が必要です。
- 機関保証:保証料を支払い、公益財団法人日本国際教育支援協会による連帯保証を受ける
- 人的保証:条件を満たす連帯保証人(父または母)と保証人(叔父・叔母など)を依頼する(※連帯保証人は、奨学金返還において本人と同等の責任を負います)
貸与型奨学金の利率
貸与型奨学金のうち、第二種奨学金の利率は、申込時に選択した方式により、貸与終了時に決定されます。
- 利率固定方式:貸与終了時に決定した利率が返還完了まで適用されます(市場金利が変動しても利率は変わりません)
- 利率見直し方式:貸与終了時に決定した利率を、おおむね5年ごとに見直します(市場金利の変動に応じて利率も変動します)
いずれの方式でも、利率の上限は年3.0%です。
貸与型奨学金の適格認定
貸与期間中、学校は本人の学修状況などを定期的に日本学生支援機構へ報告します。
学業不振が著しい場合などは、貸与が停止されることがあります。
貸与型奨学金の返還
貸与型奨学金の返還は、貸与終了(卒業)後7か月目から開始されます。
返還方法には以下の2種類があります。
- 定額返還方式:返還完了まで毎月同じ金額を返済
- 所得連動返還方式:前年の所得に応じて毎年返済額を見直す(第一種奨学金のみ選択可能)
第二種奨学金は定額返還方式に固定されています。
また、返還中に病気や失業などで返済が困難になった場合、以下の救済制度が利用できます。
- 減額返還:一定期間、毎月の返還額を1/2または1/3に減額(返還期間は延びるが、利子や総額は増えない)
- 返還期限猶予:一定期間、返還を一時的に猶予(返還終了は遅れるが、利子や総額は増えない)
日本政策金融公庫の教育一般貸付
教育一般貸付とは、日本政策金融公庫が提供する公的な教育ローンです。
公的ローンのため、金利は民間の金融機関よりも低めに設定されていますが、融資限度額は民間の金融機関より少なめである点が特徴です。
また、子どもの人数に応じて世帯年収の条件が定められており、日本学生支援機構の奨学金との併用も可能です。
教育一般貸付の世帯年収の上限額
教育一般貸付を利用できるのは、融資対象となる学校に入学・在学する学生の保護者で、世帯年収(または所得)が以下の上限額以内である方です。
扶養している子どもの人数によって、上限額が異なります。
| 子どもの人数 |
世帯年収(所得)の上限額 |
| 1人 |
790万円(600万円)※ |
| 2人 |
890万円(690万円)※ |
| 3人 |
990万円(790万円) |
| 4人 |
1,090万円(890万円) |
| 5人 |
1,190万円(990万円) |
※子どもが2人以下の場合でも、一定の要件を満たせば、上限額が990万円(790万円)に緩和されることがあります。
教育一般貸付の融資対象となる学校
融資対象となるのは、修業年限が6か月以上(外国の教育施設は3か月以上)で、中学校卒業以上の人を対象とする教育施設です。
主な対象は以下のとおりです。
- 大学、大学院(法科大学院などの専門職大学院を含む)、短期大学
- 専修学校、各種学校(予備校、デザイン学校など)
- 高等学校、高等専門学校、特別支援学校の高等部
- 外国の高等学校、短期大学、大学、大学院、語学学校など
- 職業能力開発校などの教育施設
教育一般貸付の融資対象となる用途
教育一般貸付は、以下のような教育に関連する費用に利用できます。
- 学校納付金(入学金、授業料、施設設備費など)
- 受験費用(受験料、交通費、宿泊費など)
- 住居費(敷金、家賃など)
- 教科書・教材費、パソコン購入費
- 通学費用
- 修学旅行費用
- 学生の国民年金保険料
教育一般貸付の融資限度額
教育一般貸付の融資限度額は、以下のとおりです。
| 対象者の条件 |
融資限度額(子ども1人あたり) |
| 以下のいずれかに該当する場合: |
450万円 |
| 上記以外の場合 |
350万円 |
教育一般貸付の利率
教育一般貸付の利率は固定金利です。
2025(令和7)年9月1日時点では、年3.15%となっています。
以下の条件に該当する場合は、上記利率のマイナス0.4%になります
- 交通遺児家庭
- 母子家庭
- 父子家庭
- 世帯年収200万円(所得132万円)以内
- 子ども3人以上かつ世帯年収500万円(所得356万円)以内
教育一般貸付の保証制度
教育一般貸付には、以下のいずれかの保証が必要です。
- 機関保証:保証料を支払い、公益財団法人教育資金融資保証基金による連帯保証を受ける
- 人的保証:進学者・在学者の4親等以内の別居・別生計の親族(配偶者は除く)を連帯保証人として依頼する
教育一般貸付の返済
教育一般貸付の返済期間は、最長18年以内です。
返済方法には以下の2種類があります。
- 元利均等返済:元金と利息を合わせた毎月の返済額が一定
- 元金据置返済:在学期間中は利息のみを返済し、卒業後に元金の返済を開始
貸与型奨学金と教育一般貸付の比較
貸与型奨学金と教育一般貸付には、それぞれ異なる特徴があります。
両制度の主な違いは、以下の表のとおりです。
| 貸与型奨学金 |
教育一般貸付 |
|
| 提供期間 |
日本学生支援機構 |
日本政策金融公庫 |
| 対象者 |
学生本人 |
学生の保護者 |
| 申込時期 |
高校在学中(予約採用)または進学後(在学採用) |
随時(入学前・在学中) |
| 審査基準 |
学力・家計基準 |
世帯年収(所得)基準 |
| 金利 |
第一種:無利子 |
固定金利 |
| 返済開始時期 |
卒業後7か月から |
借入後すぐ(元金据置可) |
| 返済期間 |
原則20年以内(貸与額により異なる) |
最長18年以内 |
| 返済方法 |
定額返済方式または所得連動返済方式(第一種のみ) | 元利均等返済または元金据置返済 |
| 保証制度 |
機関保証または人的保証 | 機関保証または人的保証 |
| 併用可否 |
教育一般貸付との併用可 | 奨学金との併用可 |
高等教育の修学支援新制度
文部科学省が2020(令和2)年4月から開始した高等教育の修学支援新制度は、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校など、制度の対象となる教育機関に通う学生のうち、住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯の学生を支援対象としています。
この制度は、従来の教育ローンや日本学生支援機構の貸与奨学金のように、学生本人や保護者が返済義務を負うことによる経済的負担を軽減することを目的としています。
例えば、奨学金の返済を抱えたまま就職することに不安を感じたり、保護者が返済を負担することで老後資金の準備が難しくなったりするなどの理由で、進学をあきらめざるを得なかった学生にも、進学の可能性を広げる制度となっています。
高等教育の修学支援新制度の概要は、以下のとおりです。
| 支援対象となる学校 |
大学院、大学、短期大学、専門学校(専修学校専門課程)、高等専門学校 |
| 支援内容 |
①各大学などによる授業料や入学金の免除または減額 ②日本学生支援機構による返還不要の給付型奨学金の支給 |
| 支援対象となる学生 |
住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯の学生 |