地震保険料控除(個人契約の場合)
地震保険料控除とは、1月1日から12月31日までの1年間に支払った地震保険料について、所得税および住民税の控除を受けられる制度です。この制度を活用することで、税負担を軽減することができます。
控除の対象となる保険料
控除の対象となるのは、以下の条件を満たす地震保険契約の保険料です。
- 契約者本人または生計を一にする配偶者・親族が所有し、常時居住している建物や家財を対象とした地震保険契約
- 火災保険に付帯された地震保険部分の保険料(火災保険料そのものは対象外)
地震保険料控除額
税目 |
控除額の計算方法 | 控除額の上限 |
所得税控除額 |
支払った保険料の全額 |
最大50,000円 |
住民税控除額 |
支払った保険料の1/2 |
最大25,000円 |
複数年分を一括で支払った場合
複数年分の地震保険料を一括で支払った場合は、支払った保険料を年数で按分し、各年ごとにその金額を控除対象とします。
例:5年分の保険料100,000円を一括払いした場合、1年あたりの控除対象額は20,000円となります。
店舗併用住宅の地震保険料控除
独立した店舗や事務所などの事業用建物は、地震保険の契約および控除の対象外です。ただし、店舗併用住宅(例:1階が店舗、2階が住居など)の場合は、以下のように取り扱われます。
- 住居部分の床面積が家屋全体の90%以上を占める場合:支払った地震保険料の全額が控除対象となります。
- 住居部分が90%未満の場合:以下の算式で控除対象額を計算します。
控除対象保険料 = 支払った保険料 × 住居部分の床面積 ÷ 家屋の総床面積
この割合に応じた金額が、所得税・住民税の控除対象となります。
保険金等を受け取ったときの税金(個人契約の場合)
個人が損害保険契約に基づいて受け取る保険金については、原則として非課税です。たとえば、建物の焼失や事故による身体の傷害・疾病などにより支払われる保険金(火災保険金、入院保険金、通院保険金、後遺障害保険金など)は、所得税法上、非課税とされています。
ただし、以下のようなケースでは課税対象となる場合があります。
- 死亡保険金:契約者・被保険者・受取人の関係によって、相続税・所得税・贈与税のいずれかが課税されます。
- 積立型保険の満期返戻金:一時所得として所得税の課税対象となります。
- 契約者配当金・解約返戻金:一時所得として課税されることがあります。
これらの取り扱いは、生命保険と同様のルールが適用されます。詳細については、生命保険に係る税金の項目をご参照ください。
損害保険料を支払ったときの税金(法人契約の場合)
法人が支払う損害保険料は、原則として損金算入が可能です。ただし、保険期間が3年以上で、満期時に返戻金を受け取れるタイプの損害保険契約については、支払保険料の一部を「保険積立金」として資産計上する必要があります。
個人事業主が支払った損害保険料は、原則として事業に関連する部分を必要経費として全額計上できます。
ただし、以下のようなプライベート用途に関する保険料は必要経費として認められません。
- 店舗併用住宅の住居部分にかかる地震保険料
- 自家用車にかかる自動車保険料
- 個人事業主自身の傷害保険料
なお、法人が保険料を負担し、役員や従業員を被保険者とする傷害保険契約については、契約形態に応じて以下のように処理されます。
契約タイプ |
法人の経費処理 |
被保険者の課税 |
普遍的加入型(全員対象) | 損金算入(福利厚生費) | 給与課税なし |
選択付保型(特定者対象) | 損金算入(給与) | 給与課税あり |
法人受取型(保険金受取人が法人) | 損金算入(損害保険料) | 給与課税なし |
※選択付保型で、保険金の受取人が法人以外(役員・従業員本人や遺族など)の場合、保険料は給与として課税対象になります。
満期返戻金・解約返戻金の経理処理と税金(法人契約の場合)
損害保険契約において、満期返戻金や解約返戻金を受け取った際の税務処理は、契約者が個人事業主か法人かによって異なります。
個人事業主 |
一時所得 |
法人 |
損金算入 |
※契約期間中に資産計上していた積立保険料や前払保険料がある場合は、返戻金の受領と同時にそれらを取り崩して損金算入します。
傷害保険の保険金の経理処理と税金(法人契約の場合)
法人契約または個人事業主契約において、傷害保険の保険金を受け取った場合の経理処理と税務上の取り扱いは、保険金の受取人が誰かによって異なります。
保険金の受取人 |
個人事業主 |
法人 |
被保険者(役員・従業員)またはその遺族 | 経費処理なし (遺族の受け取る死亡保険金は、相続税の対象) (被保険者の受け取る見舞金等は、非課税) |
|
契約者(個人事業主・法人) | 事業収入に算入 ※ | 益金算入 ※ |
※法人が受け取った保険金を、弔慰金・死亡退職金・見舞金などとして役員や従業員に支給した場合は、その支給額を損金算入することができます。
火災保険の保険金の経理処理と税金(法人契約の場合)
火災保険契約に基づいて、個人事業主または法人が保険金を受け取った場合の経理処理と税務上の取り扱いは、補償の対象となる内容によって異なります。
補償の対象 |
個人事業主 |
法人 |
建物 | 非課税(保険金で補填しきれなかった損失分は必要経費として計上) | 益金算入(損失分は損金算入可能。圧縮記帳による課税繰延も可能) |
休業損失 | 事業収入に算入 | 益金算入 |
自動車保険の保険金の経理処理と税金(法人契約の場合)
自動車保険に基づいて、個人事業主または法人が保険金を受け取った場合の経理処理と税務上の取り扱いは、保険の種類によって異なります。
保険の種類 |
個人事業主 |
法人 |
車両保険 | 非課税(保険金で補填しきれなかった損失分は必要経費として計上。修繕費を必要経費に計上する場合は、同額の保険金を事業収入に算入) | 益金算入(修繕費は損金算入、全損の場合は圧縮記帳が可能) |
対人・対物賠償保険 | 経理処理なし | 経理処理なし |
搭乗者傷害保険 自損事故保険 人身傷害補償保険 無保険者傷害保険 |
経理処理なし | 経理処理なし |
圧縮記帳
圧縮記帳とは、法人が固定資産の損害に対して保険金を受け取り、一定期間内に代替資産を取得する場合に、一時的に課税を繰り延べることができる法人税法上の制度です。
通常、固定資産の損害に対して受け取った保険金は「益金」として計上され、損害額は「損金」として処理されます。このとき、保険金が損害額を上回ると「保険差益」が発生し、課税対象となります。しかし、保険差益に課税されると、受け取った保険金の全額を代替資産の取得に充てることが難しくなるため、税負担を一時的に繰り延べるための措置として圧縮記帳が認められています。
圧縮記帳の適用要件
圧縮記帳を適用するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 法人のみが対象(個人・個人事業主は対象外)
- 対象資産の滅失または損壊から3年以内に保険金の支払いが確定していること
- 保険差益が発生していること(損害額より保険金が多い場合)
- 棚卸資産(商品など)に対する保険金は対象外
- 保険金等を受け取った翌事業年度の期首から原則2年以内に、代替資産の取得または改良の見込みがあること
圧縮限度額の計算式
圧縮限度額は、以下の式で算出されます。


損害賠償金の経理処理と税金(法人契約の場合)
損害賠償責任保険により支払われる保険金(損害賠償金)の税務上の取り扱いは、受取人が個人か法人かによって異なります。
個人(被害者またはその遺族)が受け取る損害賠償金は、被害者の損失を補填する性質のものであるため、所得税法上、課税対象にはなりません。
法人が受け取った損害賠償金は、収益として扱われ、法人税の課税対象となります。また、損害により発生した費用や損失は、損金として計上され、課税所得の計算上控除されます。