株式のきほん
最終更新日: 2025-10-26

株式について

 
株式とは、企業が資金を調達するために投資家に対して発行する証券のことです。


株主について

 
株主とは、企業に資金を提供し、株式を購入した投資家のことです。株主には、さまざまな権利と責任が与えられます。
例えば、企業が利益を上げた場合には、保有する株式数に応じて利益の分配を受ける権利(余剰金配当請求権)があります。また、株主は企業の出資者の一人であるため、企業の経営に参加する権利(議決権)も有しています。さらに、企業が解散した際には、保有株式数に応じて残った財産の分配を受ける権利(残余財産分配請求権)も認められています。なお、株式の購入にあたって提供した資金は、原則として返還されません。
加えて、企業によっては、保有株式数に応じて自社の商品やサービス、優待券などを株主に提供することがあります。これを株主優待と呼びます。


株式を売買する場所について

 
株式は通常、一定の資格を持つ証券会社を通じて、証券取引所で売買されます。
株式の売買を行うには、まず証券会社に口座を開設する必要があります。口座開設の際には、所定の申込書類に加えて、マイナンバーや本人確認書類(運転免許証、印鑑証明書、住民票の写しなど)の提出が求められます。
証券会社は株式売買の仲介を行うため、売買を行う際には証券会社に対して手数料(株式売買手数料)を支払う必要があります。
日本には以下の4つの主要な証券取引所があります。

  • 東京証券取引所(東証)
  • 名古屋証券取引所(名証)
  • 福岡証券取引所(福証)
  • 札幌証券取引所(札証)

東京証券取引所では、企業の規模や成長性などに応じて、プライム市場スタンダード市場グロース市場の3つの市場区分が設けられています。
名古屋証券取引所では、プレミア市場メイン市場ネクスト市場の3つの区分があります。


株式の売買単位について

 
株式の売買単位は「単元株」と呼ばれます。証券取引所で株式を売買する際には、各銘柄ごとに定められた単元株の整数倍で注文を出す必要があります。
日本の内国株式においては、2018(平成30)年10月1日から、1単元の株数が100株に統一されました。


株式の注文方法について

 
証券取引所に上場している株式の注文方法には、以下の2種類があります。

  • 指値注文:売買価格を指定して注文する方法
  • 成行注文:売買価格を指定せずに注文する方法

 
証券取引所では、注文の成立にあたって次の3つの原則が適用されます。

  • 成行注文優先の原則
    指値注文よりも成行注文が優先されます。
  • 価格優先の原則
    買い注文では、より高い価格の注文が優先され、売り注文では、より低い価格の注文が優先されます。
  • 時間優先の原則
    同じ価格の注文が複数ある場合は、先に出された注文が優先されます。

株式の値幅制限について

 
日本国内の証券取引所では、株価の急激な変動を防ぐために、1日の売買における値動きの幅に制限が設けられています。これを値幅制限といいます。この範囲は、前日の終値などを基準とした「基準値段」に対して、価格帯ごとに定められた「制限値幅」を加減することで決まります。
株価がこの制限の上限まで上昇した場合は「ストップ高」、下限まで下落した場合は「ストップ安」と呼ばれます。


株式の決済(受け渡し)について

 
株式の売買には、以下の3種類の取引形態があります。

  • 普通取引
  • 当日決済取引
  • 発行日決済取引

このうち最も一般的な普通取引では、売買が成立した日(約定日)から起算して3営業日目に株式の受け渡し(決済)が行われます。
また、国内の証券取引所に上場している外国株式を国内委託取引により売買した場合も、決済日は同様に約定日から3営業日目となります。


信用取引について

 
信用取引とは、投資家が一定の委託保証金を証券会社に担保として預け、買付資金や売付株式を借りて行う取引のことです。自己資金以上の取引が可能となるため、レバレッジ効果を活用できる一方で、損失も大きくなるリスクがあります。
信用取引では、買い(信用買い)から始めることも、売り(信用売り)から始めることも可能です。
 

決済方法と期限

 
信用取引は、所定の期限内に決済を行う必要があります。決済方法には以下の2種類があります。

  • 差金決済(反対売買):買った株式を売却、または売った株式を買い戻して決済する方法。
  • 現物決済
    • 現引き:買った株式の代金を支払って現物株を受け取る。
    • 現渡し:売った株式を保有株で返却する。

 

委託保証金とリスク

 
一般的に、委託保証金率は30%以上とされており、委託保証金の約3.3倍までの取引が可能です。委託保証金は、現金のほか、一定の有価証券で代用することも認められています。
株価が予想と反対方向に動いた場合、損失が拡大する可能性があり、委託保証金維持率が一定の水準を下回ると、追加保証金(追証)の差し入れが必要になります。
 

制度信用取引と一般信用取引

 
信用取引には、以下の2種類があります。

  • 制度信用取引:取引所が定めたルールに基づき、対象銘柄や返済期限などがあらかじめ決められています。
  • 一般信用取引:対象銘柄、返済期限、品貸料(貸株料)、権利処理方法などを、顧客と証券会社の間で自由に取り決めることができます。

 

 種類

制度信用取引

一般信用取引

対象銘柄

取引所が定めた制度信用銘柄

証券会社が選定した銘柄

返済期限

最長6か月

証券会社が自由に決定(無期限も可)

その他の条件

取引所が定める

顧客と証券会社の合意による


株式ミニ投資(ミニ株)について

 
株式ミニ投資(ミニ株)とは、通常の株式取引よりも少ない資金で株式を購入できる取引方法です。通常の株式取引では、単元株の整数倍でしか株式を購入できませんが、ミニ株では単元株の1/10の株数を売買単位として取引することが可能です。
ただし、ミニ株では指値注文ができず、売買注文を出した日の翌取引日の始値や売買高加重平均価格などが売買価格として適用されます。
また、ミニ株で購入した株式の名義人は、取扱証券会社の株式ミニ投資口名義となるため、株主としての権利の一部、特に議決権の行使はできません


株式累積投資(るいとう)について

 
株式累積投資(るいとう)とは、毎月一定額で株式を継続的に購入する投資方法です。少額から始められるため、初心者にも利用しやすい仕組みです。
この取引では指値注文はできず、売買注文を出した日の翌取引日の始値や売買高加重平均価格などが売買価格として適用されます。
定期的に定額で株式を購入することで、株価が高いときには少ない株数を、安いときには多くの株数を購入することになり、結果として平均買付コストを抑える効果が期待できます。このような投資手法は、ドル・コスト平均法と呼ばれています。
なお、株式累積投資で購入した株式の名義人は、取扱証券会社の株式累積投資口名義となるため、株主の権利のひとつである議決権の行使はできません


株式の投資指標について

 
株式投資を行う際には、企業の財務状況や株価の割安・割高を判断するための投資指標が重要です。代表的な指標には以下のようなものがあります。

株価収益率(PER:Price Earnings Ratio)

 
株価収益率(PER)は、株価が1株あたりの純利益(EPS)の何倍かを示す指標です。企業の収益力に対する株価の割安・割高を判断する際に用いられます。
PERは、以下の式で計算されます。
 

株価収益率の計算式

 
PERが高いと、利益に対して株価が高く、割高と判断される傾向にあります。一方で、PERが低いと、割安と判断される可能性があります。ただし、業種によって適正なPERは異なるため、同業種内での比較が基本です。

株価純資産倍率(PBR:Price Book-value Ratio)

 
株価純資産倍率(PBR)は、株価が1株あたりの純資産(BPS)の何倍かを示す指標です。企業の資産価値に対する株価の水準を測る際に使われます。
PBRは、以下の式で計算されます。
 

株価純資産倍率の計算式

 
PBRが高いと、純資産に対して株価が割高と判断されます。PBRが1倍超ならば、企業が株主資本を活用して価値を生み出していると評価されます。逆に、PBRが1倍未満ならば、企業の時価総額が解散価値を下回っており、市場から過小評価されている可能性があります。

自己資本利益率(ROE:Return on Equity)

 
自己資本利益率(ROE)は、株主が出資した自己資本に対して、どれだけの利益(当期純利益)を上げたかを示す指標です。企業の資本効率や収益性を測るのに使われます。
ROEは、以下の式で計算されます。
 

自己資本利益率の計算式

 
ROEが高いと、株主資本を効率的に活用して利益を上げていると評価されます。投資家にとっては、経営効率の良さや投資価値の高さを判断する材料になります

配当利回り

 
配当利回りは、株価に対する年間配当金の割合を示す指標で、投資による収益性を測る際に使われます。
配当利回りは、以下の式で計算されます。
 

配当利回りの計算式

 
高い配当利回りは、安定した配当収入を期待する投資家にとって魅力的です。

配当性向

 
配当性向は、企業が得た利益のうち、どれだけを株主に配当として還元しているかを示す指標です。
配当性向は、以下の式で計算されます。
 

配当性向の計算式

 
高すぎる配当性向は、将来の成長投資に回す資金が不足している可能性もあるため、バランスが重要です。

自己資本比率

 
自己資本比率は、企業の総資本に対する自己資本(純資産)の割合を示す指標で、財務の健全性を測る際に使われます。
自己資本比率は、以下の式で計算されます。
 

自己資本比率の計算式

 
一般的に40〜50%以上が望ましいとされています。

総資本回転率

 
総資本回転率は、企業が保有する総資本に対して、どれだけの売上高を生み出しているかを示す指標です。資本の効率的な活用度合いを測るのに使われます。
総資本回転率は、以下の式で計算されます。
 

総資産回転率の計算式

 
数値が高いほど、資本を効率的に使って売上を上げていると評価されます。


株式に係る税金について

 
株式取引で得られる利益には主に譲渡益配当金があり、それぞれに対して税金が課されます。以下に、上場株式等に関する税制の概要を示します。
 

上場株式等の譲渡益に係る税金

 
株式を売却して得た利益(譲渡益)は、譲渡所得として課税され、申告分離課税の対象となります。
所得税 (15.0%) + 復興特別所得税 (0.315%) + 住民税 (5.0%) = 20.315%
特定口座(源泉徴収あり)を利用する場合は、税金は証券会社によって源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要です。
 
譲渡損失は、他の上場株式等の譲渡益や、申告分離課税を選択した配当所得・特定公社債の利子所得損益通算が可能です。
 
また、損益通算しても控除しきれない譲渡損失は、確定申告を行うことで翌年以降3年間繰り越し、将来の譲渡益と損益通算することができます。繰越期間中は、毎年継続して確定申告を行う必要があります。
 

上場株式等の配当金に係る税金


配当金は配当所得として課税され、以下の2つの課税方法から選択できます。
 
一つ目の課税方法は、総合課税の対象として、以下の税率が課されます。
所得税 (15.0%) + 復興特別所得税 (0.315%) + 住民税 (5.0%) = 20.315%
特定口座(源泉徴収あり)を利用する場合は、税金は証券会社によって源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要です。
ただし、総合課税を選択し、確定申告を行うことで税額控除としての配当控除の適用が可能です。
 
二つ目は、申告分離課税を選択して確定申告を行う方法です。
この場合は、上場株式等の譲渡損失と損益通算が可能ですが、配当控除は適用されません。