最終更新日: 2024-03-13

損益通算

 
損益通算のイメージ

損益通算とは

 
損益通算とは、不動産所得事業所得譲渡所得山林所得の各金額のうち、損失の金額がある場合には、一定の規則にしたがって、他の黒字の各種所得の金額から控除することです。
 
損益通算の対象となる所得は、次のように覚えましょう!
 

FP検定語呂合わせ暗記_損益通算の対象となる所得

損益通算のできない損失

 
損益通算の対象となる所得の損失でも、次のような損失は損益通算することができません。
 

不動産所得において損益通算できない主な損失

 

  • 別荘等の生活に通常必要でない資産の貸付けに係る損失
  • 土地取得のための借入金の利子に相当する金額

 

譲渡所得において損益通算できない主な損失

 

  • 申告分離課税の株式等の譲渡損失
  • 土地建物等の譲渡損失(一定の居住用財産の譲渡損失を除く)
  • 生活に通常必要でない資産の譲渡等による損失

 
生活に通常必要でない主な資産は、次のとおりです。
 

  • 競走馬、その他射こう的行為の手段となる動産
  • 主として、趣味、娯楽、保養、鑑賞の目的で所有する不動産
  • 主として、趣味、娯楽、保養、鑑賞の目的で所有する不動産以外の資産(ゴルフ会員権等)
  • 生活の用に供する動産で、1個または1組の価額が30万円超の貴金属、書画、骨董等

損益通算の順序

 
損益通算は、次の順序で行います。
 

損益通算の順序

 
第1次通算
不動産所得または事業所得の損失を、他の経常所得グループ(利子所得配当所得不動産所得事業所得給与所得雑所得)の黒字と通算します。
譲渡所得の損失は、譲渡所得間で通算し、残った損失は一時所得(1/2を乗じる前)から差し引きます。
 
第2次通算
第1次通算でも通算しきれない不動産所得または事業所得の損失は、譲渡所得から差し引き、それでも損失が残る場合は、一時所得(第1次通算を行っている場合は、通算後の金額)から差し引きます。
また、第1次通算で、譲渡所得の損失が残った場合、経常所得グループの金額から差し引きます。
 
第3次通算
第2次通算でも通算しきれない損失は、次のように通算します。
 

  1. 第2次通算の結果が赤字で、山林所得が黒字の場合
    第2次通算で残った損失を山林所得から差し引き、それでも残る損失は退職所得から差し引きます。

  2. 第2次通算の結果が黒字で、山林所得が赤字の場合
    山林所得の損失を第2次通算後の経常所得グループの金額から差し引き、それでも残る損失は第2次通算後の譲渡所得一時所得退職所得の順に差し引きます。

  3. 第2次通算の結果が赤字で、山林所得も赤字の場合
    第2次通算で残った損失を退職所得から差し引き、次に山林所得の損失を退職所得から差し引きます。

損益通算時の注意点

 
損益通算時の主な注意点は、次のとおりです。
 

  • 源泉分離課税の対象となるものは除きます
  • 一時所得は、特別控除後で1/2を乗ずる前の金額をもとに行います
  • 総合課税の短期譲渡所得は、特別控除後の金額をもとに行います
  • 総合課税の長期譲渡所得は、特別控除後で1/2を乗ずる前の金額をもとに行います
  • 山林所得は、特別控除後の金額をもとに行います
  • 退職所得は、退職所得控除額を差し引き、原則として1/2を乗じた後の金額をもとに行います

純損失の繰越控除

 
損益通算しても残った損失を、純損失といいます。
一定の要件を満たす場合、純損失を翌年以降3年間にわたって繰り越し、各年の黒字の所得の金額から控除することができます。
 
青色申告者は、損益通算後の不動産所得事業所得山林所得譲渡所得の損失に限り、翌年以降3年間にわたって繰り越して控除することができます。
また、その金額を前年へ繰り戻すこともできます。
 
白色申告者は、変動所得と被災事業用資産の損失(棚卸資産、事業用固定資産、山林について生じた損失で変動所得の損失に該当しないもの)に限り、翌年以降3年間にわたって繰り越して控除することができます。
 
なお、上場株式等に係る譲渡損失についても繰越控除が認められています。
その年の前年以前3年間の各年において生じた譲渡損失の金額は、株式等に係る譲渡所得等の金額を限度として、その年分の株式等に係る譲渡所得等の金額から控除することができます。
 
また、先物取引の差金等決済に係る損失についても同様に3年間の繰越控除が認められています。

特定非常災害に係る純損失の繰越控除の特例

 
事業所得者等の有する棚卸資産、事業用資産等につき、特定非常災害の指定を受けた災害により生じた損失特定被災事業用資産の損失)を有する者の特定被災事業用資産の損失による純損失の金額および特定非常災害発生年において生じた純損失の金額のうち、次に掲げる損失金額の繰越期間は5年間となります。
 

  • 青色申告者で、その有する事業用資産等の価額のうち、特定被災事業用資産の損失額の占める割合が10%以上であるものは、特定非常災害発生年において生じた純損失の金額

  • 青色申告者以外の者で、その有する事業用資産等の価額のうち、特定被災事業用資産の損失額の占める割合が10%以上であるものは、特定非常災害発生年において生じた被災事業用資産の損失による純損失と変動所得に係る損失による純損失との合計額

 
この特例は、2023(令和5)年4月1日以後に発生する特定非常災害について適用されます。


雑損失の繰越控除

 
災害や盗難等によって損失が生じた場合、その損失を総所得金額等から控除することができます。
これを雑損控除といいます。
 
雑損控除を適用してその年分の総所得金額等から控除しても控除しきれない損失額は、繰越期間が3年間となります。
 
なお、雑損失の繰越控除は、青色申告者でも白色申告者でも適用することができます。

特定非常災害に係る雑損失の繰越控除の特例

 
居住者の有する住宅家財等につき、特定非常災害の指定を受けた災害により生じた損失について、雑損控除を適用してその年分の総所得金額等から控除しても控除しきれない損失額は、繰越期間が5年間となります。
 
この特例は、2023(令和5)年4月1日以後に発生する特定非常災害について適用されます。