事業所得の計算方法について
事業所得の金額は、以下の式で算出されます。
事業所得 = 総収入金額 − 必要経費
総収入金額に含まれる主な項目
事業から得られる売上金額のほか、以下のような収入も総収入金額に含まれます。
- 金銭以外の物品や権利、その他の経済的利益の価額
- 商品を自家用に消費または贈与した場合のその商品の価額
- 棚卸資産に損失が生じたことによる保険金や損害賠償金
- 空き箱や作業くず等の売却代金
- 仕入割引やリベート収入
必要経費に含まれる主な項目
事業の遂行に必要な支出で、以下のようなものが必要経費として認められます。
- 売上原価( = 年初棚卸高 + 当年仕入高 − 年末棚卸高 )
- 給与・賃金
- 地代・家賃
- 減価償却費
- 広告宣伝費
- 水道光熱費
なお、必要経費には、以下のような特例が認められています。
家内労働者等の必要経費の特例
家内労働者については、必要経費が55万円に満たない場合でも、最高55万円までを必要経費として認めることができます。
青色事業専従者給与(青色申告者の場合)
青色申告者である事業主と生計を一にする配偶者や親族(15歳以上)で、原則として6か月を超えて事業に従事する者を「青色事業専従者」といいます。
その年の3月15日までに税務署へ提出した「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載された金額の範囲内で、実際に支払った給与は必要経費として算入できます。
事業専従者控除額(白色申告者の場合)
白色申告者の場合も、事業主と生計を一にする配偶者や親族(15歳以上)で、原則として6か月超の期間事業に従事する者を「事業専従者」といいます。
控除額は、以下の①または②のいずれか少ない方の金額となります。
① 年間50万円(配偶者の場合は年間86万円)
② ( 事業所得 + 不動産所得 + 山林所得 ) ÷ ( 事業専従者の数 + 1 )
減価償却について
事業に使用する建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、使用するにつれて価値が徐々に減少していきます。これらの資産を減価償却資産と呼びます。
一方で、土地や骨董品など、時間の経過によって価値が減少しない資産は、減価償却資産には該当しません。
減価償却資産を取得した際の費用は、取得時に一括して必要経費に計上するのではなく、法定耐用年数に基づいて、資産の使用可能期間にわたって分割して経費に計上します。これが「減価償却」という手続きです。
減価償却の特例
以下のような資産については、取得費用を特例的に処理することができます。
- 使用可能期間が1年未満の資産
取得費用の全額をその年の必要経費として計上できます。 - 取得価額が10万円未満の資産
取得費用の全額をその年の必要経費として計上できます。 - 取得価額が10万円以上20万円未満の資産
資産の全部または一部をまとめて一括管理し、その取得価額の合計額の3分の1相当額を、業務の用に供した年以降3年間にわたり、各年均等に必要経費として計上できます。 - 青色申告者の場合
取得価額が10万円以上30万円未満の資産については、年間合計300万円までの範囲で、全額をその年の必要経費とすることができます。
減価償却の方法
減価償却には主に以下の2つの方法があります。
- 定額法:毎年、一定額を経費として計上する方法です。
- 定率法:毎年、残存価額に一定率を掛けて償却する方法で、初期に多く償却されます。
減価償却方法の適用例
- 1998(平成10)年4月1日以降に取得した建物:定額法
- 2016(平成28)年4月1日以降に取得した建物附属設備・構築物:定額法
- その他の減価償却資産:定額法または定率法を選択可能
なお、法定の償却方法は定額法です。
減価償却費の計算式
定額法による減価償却費(2017(平成29)年4月以降に取得した資産 )は、以下の式で算出されます。
定率法による減価償却費は、以下の式で算出されます。
事業所得の税額の計算方法について
事業所得は総合課税の対象となり、確定申告が必要です。
所得税は、他の所得(給与所得や不動産所得など)と合算して課税されます。
また、以下のような専門職の報酬については、支払時に源泉徴収が行われます。
- 弁護士
- 公認会計士
- 税理士
- 社会保険労務士
- 建築士
など
なお、事業所得が赤字(損失)となった場合は、他の所得(例:給与所得や不動産所得など)と損益通算することが可能です。これにより、課税所得を減らすことができ、結果として所得税額が軽減される場合があります。