事業所得
最終更新日: 2025-11-08

事業所得について

 
事業所得とは、農業、漁業、畜産業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、建築業、または医師・弁護士などの自由業といった事業活動から得られる所得を指します。
事業所得と認められるかどうかは、その活動が継続的に対価を得る目的で行われているかにより判断されます。単発的・一時的な事業による収入は、事業所得ではなく雑所得として扱われる場合があります。
なお、不動産の貸付による所得や山林の譲渡による所得は、事業所得ではなく、原則として不動産所得または山林所得に分類されます。


事業所得の計算方法について

 
事業所得の金額は、以下の式で算出されます。
 

事業所得 = 総収入金額 − 必要経費

 

総収入金額に含まれる主な項目

 
事業から得られる売上金額のほか、以下のような収入も総収入金額に含まれます。

  • 金銭以外の物品や権利、その他の経済的利益の価額
  • 商品を自家用に消費または贈与した場合のその商品の価額
  • 棚卸資産に損失が生じたことによる保険金や損害賠償金
  • 空き箱や作業くず等の売却代金
  • 仕入割引やリベート収入

 

必要経費に含まれる主な項目

 
事業の遂行に必要な支出で、以下のようなものが必要経費として認められます。

  • 売上原価( = 年初棚卸高 + 当年仕入高 − 年末棚卸高 )
  • 給与・賃金
  • 地代・家賃
  • 減価償却費
  • 広告宣伝費
  • 水道光熱費

 
なお、必要経費には、以下のような特例が認められています。

家内労働者等の必要経費の特例

 
家内労働者については、必要経費が55万円に満たない場合でも、最高55万円までを必要経費として認めることができます。

青色事業専従者給与(青色申告者の場合)

 
青色申告者である事業主と生計を一にする配偶者や親族(15歳以上)で、原則として6か月を超えて事業に従事する者を「青色事業専従者」といいます。
その年の3月15日までに税務署へ提出した「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載された金額の範囲内で、実際に支払った給与は必要経費として算入できます。

事業専従者控除額(白色申告者の場合)

 
白色申告者の場合も、事業主と生計を一にする配偶者や親族(15歳以上)で、原則として6か月超の期間事業に従事する者を「事業専従者」といいます。
控除額は、以下の①または②のいずれか少ない方の金額となります。
 

年間50万円(配偶者の場合は年間86万円
② ( 事業所得 + 不動産所得 + 山林所得 ) ÷ ( 事業専従者の数 + 1 )


減価償却について

 
事業に使用する建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、使用するにつれて価値が徐々に減少していきます。これらの資産を減価償却資産と呼びます。
一方で、土地や骨董品など、時間の経過によって価値が減少しない資産は、減価償却資産には該当しません
減価償却資産を取得した際の費用は、取得時に一括して必要経費に計上するのではなく、法定耐用年数に基づいて、資産の使用可能期間にわたって分割して経費に計上します。これが「減価償却」という手続きです。
 

減価償却の特例

 
以下のような資産については、取得費用を特例的に処理することができます。

  • 使用可能期間が1年未満の資産
    取得費用の全額をその年の必要経費として計上できます。
  • 取得価額が10万円未満の資産
    取得費用の全額をその年の必要経費として計上できます。
  • 取得価額が10万円以上20万円未満の資産
    資産の全部または一部をまとめて一括管理し、その取得価額の合計額の3分の1相当額を、業務の用に供した年以降3年間にわたり、各年均等に必要経費として計上できます。
  • 青色申告者の場合
    取得価額が10万円以上30万円未満の資産については、年間合計300万円までの範囲で、全額をその年の必要経費とすることができます。

 

減価償却の方法

 
減価償却には主に以下の2つの方法があります。

  • 定額法:毎年、一定額を経費として計上する方法です。
  • 定率法:毎年、残存価額に一定率を掛けて償却する方法で、初期に多く償却されます。

 

減価償却方法の適用例

 

  • 1998(平成10)年4月1日以降に取得した建物:定額法
  • 2016(平成28)年4月1日以降に取得した建物附属設備・構築物:定額法
  • その他の減価償却資産:定額法または定率法を選択可能

なお、法定の償却方法は定額法です。
 

減価償却費の計算式

 
定額法による減価償却費(2017(平成29)年4月以降に取得した資産 )は、以下の式で算出されます。
 

 
定率法による減価償却費は、以下の式で算出されます。
 


事業所得の税額の計算方法について

 
事業所得は総合課税の対象となり、確定申告が必要です。
所得税は、他の所得(給与所得や不動産所得など)と合算して課税されます。
また、以下のような専門職の報酬については、支払時に源泉徴収が行われます。

  • 弁護士
  • 公認会計士
  • 税理士
  • 社会保険労務士
  • 建築士
    など

 
なお、事業所得が赤字(損失)となった場合は、他の所得(例:給与所得や不動産所得など)と損益通算することが可能です。これにより、課税所得を減らすことができ、結果として所得税額が軽減される場合があります。