最終更新日: 2024-01-14

相続・事業承継対策

 
事業承継のイメージ


  相続対策として保険の活用

 
生命保険の死亡保険金は、現金同様分割しやすいため、不動産のように分割が難しい財産が多い場合の遺産分割対策として有効です。
また、被保険者が保険料負担者の場合の生命保険の死亡保険金は、
500万円 × 法定相続人の数
が非課税となるので、相続税の節税対策としても有効です。
さらに生命保険の死亡保険金は、被保険者の死亡により受取人に保険金という現金が名義変更等なく早めに支払われるため、相続税の納税資金対策としても有効です。
相続遺産が多額であり、相続人の間での遺産分割が等分にならない場合、代償分割と生命保険を併せて活用することが効果的です。


  事業承継対策

 
少子高齢化により、経営者の高齢化が進む一方で、親族内に後継者がおらず、後継者不在を理由に廃業を選択する企業も増えています。
事業承継対策は時間がかかるため、早期の取り組みが大切です。
 
 主な事業承継対策として、次のような方法があります。

株価対策

 
株価評価を引き下げる方法には、会社規模の変更や第三者割当増資等があります。
会社規模の変更の場合には、一般に純資産価額方式よりも類似業種比準方式の評価額が低くなる場合が多くなります。
具体的には、売上高の増加等により取引金額を大きくしていく方法等が考えられます。
第三者割当増資には、従業員持株会の組成、中小企業投資育成会社等の資本参加等があります。

類似業種比準方式の株価の引下げ策

 
類似業種比準方式の株価の主な引下げ策は、次のとおりです。
 

  • 直前2期間の配当引下げまたは無配
  • 通常配当を特別配当や記念配当といった株価算定上の配当金額に含まれない非継続性の配当等の利用
  • 会社分割により高収益部門を別会社に移行
  • 役員給与の増額
  • 役員退職金の支給
  • 特別償却
  • 割増償却が可能な資産購入の実施等
  • 不要債権の処理
  • 不良資産の除去(税務上、損金算入できる場合)

純資産価額方式の株価の引下げ策

 
純資産価額方式の株価の主な引下げ策は、次のとおりです。
 

  • 株式や土地の含み損の実現、不良資産の処分による損失の確定
  • 通常の取引価額よりも相続税評価額の方が低い資産の購入
  • 役員への退職金の支給
  • 剰余金処分で社外流出を図る
  • 子会社設立で高収益部門を移す
  • 会社の合併

株式数対策

 
経営者の生前に後継者に自社株式を移転して相続財産を減少させておくことは、事業承継対策において有効な方法です。

役員退職金の活用

 
役員退職金の支給により、損金算入額が増え、課税所得金額が減少することにより利益が圧縮されることから、株価は低下します。
ただし、役員退職金は、金額の多寡を問わず全額を損金算入できるわけではありません。
 
役員退職金の適正額は、次の式で計算します。
 

役員退職金の適正額 = 最終報酬月額 × 役員在任年数 × 功績倍率

※「功績倍率」は3倍程度までが上限の目安とされています。

 
適正な算定基準がなく、過大な金額を支払った場合は、損金算入が認められない場合もあるため、役員退職給与規程を設けて、金額の計算式や功績倍率を定めておくことが大切です。
会社が役員退職金を支給するためには、退職金の支給原資が必要となります。
しかし、事業資金以外の余裕資金を潤沢に有するのは簡単なことではないため、原資確保のために役員保険を活用することが有効です。


  遺留分に関する民法の特例

 
推定相続人が複数いる場合、後継者に事業用資産を集中して承継させようとしても、遺留分を侵害された相続人から遺留分侵害額に相当する金額の支払いを求められた結果、事業用資産を処分せざるを得なくなりそれが分散してしまう等、事業継続の妨げとなる場合があります。
遺留分に関する民法の特例とは、後継者が先代経営者(旧代表者)から生前に贈与を受ける自社株式等について、受贈後に後継者本人の親・兄弟等の遺留分権利者との間で相続時の扱いを予め合意しておくことのできる制度のことです。
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(中小企業経営承継円滑化法)には、遺留分に関する民法の特例制度が設けられており、除外合意固定合意について定められています。

除外合意

 
除外合意とは、先代経営者(旧代表者)から後継者が贈与を受けた株式について、遺留分算定基礎財産から除外することを推定相続人および後継者全員で合意する方法のことです。
自社株式に係る遺留分侵害額請求権を未然に防止でき、株式が分散することを回避できるという効果があります。
また、後継者が取得した株式等以外の財産についても、除外合意により、その全部または一部について、遺留分算定基礎財産から除外することができます。
さらに、後継者以外の推定相続人についても、先代経営者(旧代表者)から贈与等により取得した財産について、全部または一部について、遺留分算定基礎財産から除外することができます。

固定合意

 
固定合意とは、旧代表者から後継者が贈与を受けた株式について、遺留分算定基礎財産に算入する価格を合意時の時価に固定することを推定相続人および後継者全員で合意する方法のことです。
後継者の貢献による自社株式の価値の上昇分が遺留分侵害額請求権の対象外となるため、後継者の経営意欲が阻害されないという効果があります。

遺留分に関する民法の特例の主な適用要件は、次のとおりです。
 

  • 中小企業法に規定する一定の中小企業者であること
  • 合意時点において、3年以上継続して事業を営んでいること
  • 非上場会社であること
  • 先代経営者(旧代表者)は、過去または合意時点において会社の代表者であった(ある)こと
  • 後継者は、合意時点において会社の代表者であること
  • 後継者は、先代経営者(旧代表者)からの贈与等で株式を取得したことにより、会社の過半数の議決権を有すること
  • 推定相続人および後継者全員の書面による合意を得ること
  • 経済産業大臣の確認を受けること
  • 家庭裁判所の許可を受けること

  事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予および免除制度)

 
事業承継税制とは、後継者が非上場会社の株式等(法人の場合)や事業用資産(個人事業者の場合)を先代経営者から贈与、相続により取得した場合、経営承継円滑化法による都道府県知事の認定を受けると、贈与税・相続税の納税が猶予または免除される制度のことです。
この納税猶予税額は、後継者が死亡した場合等には、その全部または一部が免除されます。
なお、免除されるときまでに特例の適用を受けた非上場株式等を譲渡する等一定の場合には、非上場株式等納税猶予税額の全部または一部を利子税と併せて納付する必要があります。
事業承継税制には、従来からある一般措置に加え、2018(平成30)年度税制改正において、10年間の時限立法として特例措置が創設されました。
 
一般措置と特例措置の違いは、下表のとおりです。
 

 

一般措置

特例措置

事前の計画策定

不要

2018(平成30)年4月1日から2024(令和6)年3月31日までに特例承継計画を都道府県に提出し、その確認を受けていること

適用期限

なし

2018(平成30)年1月1日から2027(令和9)年12月31日までの10年以内の贈与、相続等

納税猶予対象株式数

発行済議決権株式の2/3まで

後継者が取得した株式全株

納税猶予割合

贈与税:100%
相続税:80%

贈与税:100%
相続税:100%

雇用確保要件

承継後5年間平均80%の雇用維持が必要 原則として承継後5年間平均80%の雇用維持

事業継続困難な場合の免除

なし あり

受贈者

後継経営者1人 最大3人まで猶予可能
※議決権10%以上の人、代表権を有する人
相続時精算課税の適用 60歳以上の贈与者から18歳以上の推定相続人(直系卑属)・孫への贈与 60歳以上の贈与者から18歳以上の後継者への贈与
譲渡(M&A)、解散、合併等の納税猶予額の減免(5年間の特例承継期間経過後) 会社を譲渡(M&A)、解散、合併等した場合は、原則として猶予税額の全額納付  会社を譲渡(M&A)、解散、合併等した場合でも、そのときの株式価値をもとに納税額を再計算して差額を減免

  金融支援措置

 
金融支援措置とは、日本政策金融公庫法の特例で受けられる低金利での融資のことです。事業承継に支障があると認定された中小企業者に、相続により分散した株式や事業用資産の買取資金、相続税、贈与税の納税資金等に対して、一定の金融支援措置を講じて資金調達を支援するものです。