建築基準法
最終更新日: 2025-12-06

建築基準法について

 
建築基準法は、建築物の敷地・構造・設備・用途に関する最低限の基準を定めることで、国民の生命・健康・財産を保護し、公共の福祉の向上に寄与することを目的とした法律です。


建築物の建築等に関する申請および確認について

 
建築主は、建築基準法で定められた一定の建築物を建築・増築する場合、または大規模な修繕や模様替えを行う場合、工事に着手する前に確認申請書を提出し、建築主事の確認を受けて確認済証の交付を受けなければなりません
工事が完了した際には、建築主事による検査を申請する必要があります。検査申請は、工事完了日から4日以内に建築主事に到達するよう行わなければなりません。
建築主事または委任を受けた市町村・都道府県の職員は、申請受理日から7日以内に、当該建築物および敷地が建築基準関係規定に適合しているかを検査します。適合が認められた場合、建築主に検査済証が交付されます。
検査済証の交付を受ける前に、当該建築物またはその一部を使用したり、他人に使用させたりすることはできません。


用途制限について

 
都市計画法では、用途地域を住居系・商業系・工業系の3区分に分け、計13種類を定めています。建築基準法では、各用途地域内で建築できる建物とできない建物を規定しており、これを「用途制限」といいます。
敷地が複数の用途地域にまたがる場合は、面積の大きい用途地域の用途制限が敷地全体に適用されます。
 

用途地域と用途制限の概要

 

 

住居系

商業系

工業系 備考

 

第一種低層住居専用地域

第二種低層住居専用地域

第一種中高層住居専用地域

第二種中高層住居専用地域

第一種住居地域

第二種住居地域

準住居地域

田園住居地域

近隣商業地域 商業地域 準工業地域 工業地域 工業専用地域  

神社、寺院、教会、保育所、公衆浴場、診療所、巡査派出所、一定規模以下の郵便局、公衆電話所など

 

住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館、老人ホーム、身体障害者福祉ホームなど

 

老人福祉センター、児童厚生施設など

▲600㎡以下

幼稚園、小学校、中学校、高等学校

 

大学、高等専門学校、専修学校、病院

 

ボーリング場、スケート場、水泳場、ゴルフ練習場など

▲3,000㎡以下

カラオケボックス、ダンスホール

▲10,000㎡以下

ホテル、旅館

▲3,000㎡以下

劇場、映画館、演芸場、観覧場など

▲客席の用途に使用する部分の床面積200㎡未満

道路について

 
建築基準法でいう「道路」とは、幅員4m以上(特定行政庁が指定する区域では6m以上)のものを指します。
ただし、建築基準法の適用時に既に建物が立ち並んでいる幅員4m未満の道で、特定行政庁が指定したものは「道路」とみなし、その中心線から水平距離2m(指定区域では3m)の線を道路境界線とします。このような道路は、建築基準法第42条第2項で規定されているため「2項道路」と呼ばれます。
また、当該道が中心線から2m未満で崖地や川、線路敷地などに沿う場合は、その崖地等の境界線と、そこから道路側に水平距離4mの線を道路境界線とみなします。
道路境界線とみなされて後退した部分は「セットバック」と呼ばれます。セットバック部分は建蔽率や容積率の算定上、敷地面積に含めることができず、建築もできません
さらに、建築物の敷地は、道路(自動車専用道路を除く)に2m以上接していなければなりません。
以下の図は、さまざまなセットバックの例です。

一方の道路が4mで、他方の道路が4m未満の場合

 

2つの道路とも4m未満の場合

 

3方向の道路が4m未満の場合

 

容積率について

 
容積率とは、建築物の延べ面積(各階の床面積の合計)を敷地面積で割った割合のことで、以下の式で算出されます。
 

容積率 (%) = 延べ面積 ÷ 敷地面積 × 100

 
敷地が異なる容積率の地域にまたがる場合は、それぞれの地域の容積率に敷地面積の割合を乗じ、その合計を敷地全体の容積率とします。
災害時を想定し、建築物の容積と道路の交通処理能力のバランスを取るため、前面道路の幅員が12m未満の場合には、容積率に上限が設けられています。
また、複数の道路に面している場合は、幅員の広い道路が前面道路となります。
 

適用される容積率は、以下の①または②のうち小さい方です。
①指定容積率
②前面道路の幅員 × 法定定数
※ 前面道路が2項道路の場合、幅員は4mとします。
※ 法定乗数は用途地域によって異なり、住居系は4/10(40%)、その他は6/10(60%)です。


建蔽率について

 
建蔽率とは、建築物の建築面積が敷地面積に占める割合のことで、以下の式で算出されます。
 

建蔽率 (%) = 建築面積 ÷ 敷地面積 × 100
同一敷地内に複数の建築物がある場合は、建築面積の合計で計算します。

 
敷地が異なる建蔽率の地域にまたがる場合は、それぞれの地域の建蔽率に敷地面積の割合を乗じ、その合計を敷地全体の建蔽率とします。
 

建蔽率の緩和要件

 
以下の条件を満たす場合、建蔽率が緩和されます。

  1. 建蔽率の限度が8/10(80%)とされる地域外で、防火地域内にある耐火建築物、または同等以上の延焼防止性能を有する建築物
  2. 準防火地域内にある耐火建築物準耐火建築物、または同等以上の延焼防止性能を有する建築物
  3. 特定行政庁が指定する角地内の建築物

要件1または2を満たす場合:元の建蔽率に1/10(10%)加算。
要件3を満たす場合:元の建蔽率に1/10(10%)加算。
要件1または2と3の両方満たす場合:元の建蔽率に2/10(20%)加算。
 

建蔽率の制限がない建築物

 
以下の条件を満たす建築物には、建蔽率の制限がありません。

  • 建蔽率の限度が8/10(80%)とされる地域内で、防火地域内にある耐火建築物または同等以上の延焼防止性能を有する建築物
  • 巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊などこれに類する建築物
  • 公園、広場、道路、川などの敷地内にあり、特定行政庁が安全上・防火上・衛生上支障がないと認めて許可した建築物

防火地域と準防火地域について

 
都市計画法では、市街地における火災の危険を防ぐため、防火地域または準防火地域を指定しています。
建築基準法では、これらの地域にある建築物の構造などに一定の制限を設けています。
敷地が防火地域と準防火地域にまたがる場合、原則として厳しい方(防火地域)の規定が敷地全体に適用されます。
 

防火地域と準防火地域における建築物の構造制限

 

地域

建築物の規模等

構造の基準

防火地域

階数3階以上または延べ面積100㎡超

原則として耐火建築物

上記以外

原則として耐火建築物または準耐火建築物

準防火地域

地階を除く階数4階以上または延べ面積1,500㎡超

原則として耐火建築物

上記以外で、延べ面積500㎡超1,500㎡以下

原則として耐火建築物または準耐火建築物

上記以外で、地階を除く階数3階

耐火建築物、準耐火建築物または外壁の開口部の構造および面積、主要構造部の防火の措置等が防火上必要な一定の技術的基準に適合する建築物

上記以外で、木造(準耐火建築物を除く)

外壁および軒裏で延焼の恐れのある部分を防火構造とすること等


絶対高さ制限について

 
第一種低層住居専用地域第二種低層住居専用地域、または田園住居地域では、低層住宅の良好な住環境を守るため、建築物の高さは都市計画で定められた限度(10mまたは12m)を超えてはいけません。


斜線制限について

 
斜線制限とは、地面から斜線を設定し、その内側にのみ建築を認めることで建築物の高さを制限する仕組みです。採光や通風を確保し、良好な住環境を維持することを目的としています。
斜線制限には、以下の3種類があります。

道路斜線制限

 
道路斜線制限とは、採光や通風を確保し、ビルの谷間を防ぐために、建築物の高さを前面道路の幅員に応じて制限するものです。
建物の各部分の高さは、その部分から前面道路の反対側境界線までの水平距離に1.5(住居系用途地域の場合は1.25)を乗じた値以下でなければなりません。
また、前面道路から後退(セットバック)して建てる場合は、その後退距離を道路幅員に加えて算定できます(緩和規定)。さらに、道路斜線制限は用途地域や容積率に応じ、道路反対側の境界線から一定距離(20m・25m・30mのいずれか)の範囲内で適用されます。
この制限は、都市計画区域および準都市計画区域のすべての区域(用途地域の指定がない区域も含む)に適用されます。

隣地斜線制限

 
隣地斜線制限とは、隣地の採光や通風を確保するため、建築物の高さを隣地境界線までの距離に応じて制限するものです。
ただし、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、または田園住居地域では、絶対高さ制限(10mまたは12m)が適用されるため、隣地斜線制限は適用されません。

北側斜線制限

 
北側斜線制限とは、北側にある建築物の日照を確保するため、建築物の高さを前面道路の反対側境界線または隣地境界線から真北方向の水平距離に応じて制限するものです。
この制限は、特に日照確保を目的としているため、第一種低層住居専用地域第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域(日影に関する条例が定められている区域は除く)内のみに適用されます。


日影規制について

 
日影規制とは、日影が一定時間を超えないように建築物の形態を制限し、周辺の居住環境を保つことを目的とした建築基準法上の規制です。
日照確保を目的とした高さ制限という点では、斜線制限と共通しています。
ただし、対象区域や具体的な制限内容は地方公共団体の条例で定められるため、条例の指定がない限り日影規制は適用されません。
また、商業地域・工業地域・工業専用地域には、原則として日影規制は適用されません。


用途地域ごとの高さ制限について

 
用途地域ごとに適用される高さ制限は、以下のとおりです。
 

 

住居系

商業系

工業系 その他

 

第一種低層住居専用地域

第二種低層住居専用地域

第一種中高層住居専用地域

第二種中高層住居専用地域

第一種住居地域

第二種住居地域

準住居地域

田園住居地域

近隣商業地域 商業地域 準工業地域 工業地域 工業専用地域 無指定地域 

絶対高さ制限

         

 

 

       

道路斜線制限

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隣地斜線制限

 

 

 

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北側斜線制限

     

 

 

       

日影規制

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