所得税の税額控除
最終更新日: 2024-11-03

税額控除とは

 
税額控除とは、課税所得金額に税率を乗じて算出した所得税額から、一定額を控除するというものです。
税額控除には、配当控除住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)住宅特定改修特別税額控除外国税額控除等があります。


配当控除

 
配当控除とは、内国法人から支払いを受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配等による配当所得がある場合に適用を受けられる税額控除のことです。
配当所得について総合課税を選択し、確定申告を行うことにより、税額控除の適用を受けることができます。
 
配当控除の対象となる主なものは、次のとおりです。
 
日本国内に本店のある法人から受ける

  • 剰余金の配当
  • 利益の配当
  • 剰余金の分配
  • 金銭の分配
  • 証券投資信託の収益の分配

 
配当控除の対象外となる主なものは、次のとおりです。
 

  • 基金利息
  • 私募公社債等運用投資信託等の収益の分配に係る配当等
  • 国外私募公社債等運用投資信託等の配当等
  • 外国株価指数連動型特定株式投資信託の収益の分配に係る配当等
  • 特定外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当等
  • 適格機関投資家私募による投資信託から支払いを受けるべき配当等
  • 特定目的信託から支払いを受けるべき配当等
  • 特定目的会社から支払いを受けるべき配当等
  • 投資法人から支払いを受けるべき配当等
  • 確定申告不要制度を選択したもの
  • 申告分離課税制度を選択したもの

 
配当控除の控除額は、
 

  • 余剰金の配当等に係る配当所得の金額の10%
  • 証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得の金額の5%

 
ですが、課税総所得金額等1,000万円超の場合には、その超過分の金に対しては
 

  • 余剰金の配当等に係る配当所得の金額の5%
  • 証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得の金額の2.5%

 
となります。


住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)

 
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)とは、個人が住宅ローン等を利用してマイホームの新築、取得、増改築等をし、一定の要件を満たす場合、住宅ローン等の年末残高の合計額等を基に計算した金額を、居住した年以降の各年分の所得税額から控除することができる制度のことです。
 
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の適用を受けるためには確定申告が必要となります(給与所得者の場合、2年目以降は年末調整で適用を受けることが可能)。

対象となるローン

 
対象となるローン等とは、銀行、信用金庫、農業協同組合、独立行政法人住宅金融支援機構、独立行政法人福祉医療機構等から借り入れた借入金等や給与所得者がその人の使用者から借り入れた借入金等で、償還期間が10年以上の割賦償還の方法により返済されるもの、または割賦払いの期間が10年以上のものとなります。
また、一定の要件を満たす借換による借入金も対象となります。
 
償還期間や賦払期間の期間とは、借入金等の債務を負っている期間ではなく、最初の返済または支払の時から返済が終了するまでの期間のことです。
返済が進み、償還期間が10年未満になったとしてもローン控除の適用を受けることはできますが、繰り上げ返済により償還期間を短縮した場合や、借換をした場合に、当初からの償還期間が10年未満になる場合は適用を受けることはできません。
 
なお、次の借入金等は、この特別控除の適用対象外となります。
 

  • 親族知人からの借入金等
  • 給与所得者の勤務先からの無利子または0.2%未満の利率による借入金等
  • 給与所得者の勤務先から利子補給を受けたため、実質金利が0.2%未満の利率となる借入金等
  • 勤務先から時価の1/2未満の価格で取得したマイホームの借入金等

適用条件

 
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の主な適用要件は、次のとおりです。
 

  • 新築または取得の日から6か月以内に居住し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて居住していること
  • 特別控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること
  • 住宅の床面積が50㎡以上(適用を受ける年の合計所得金額が1,000万円以下であれば40㎡以上)であること
  • 住宅の床面積の1/2以上の部分が自己の居住用であること
  • 10年以上にわたり分割して返済する方法になっている新築または取得のための一定の借入金または債務があること

 
なお、次のような場合には、この特別控除の適用対象外となります。
 

  • 居住を開始した年、その前年、その前々年において、次の特例を受ける場合
    • 居住用財産の軽減税率の特例
    • 居住用財産の3,000万円控除の特例
    • 特定の居住用財産の買換え・交換の特例
    • 民間都市開発推進法に基づく一定の土地交換の特例 等
  • 居住を開始した年の翌年以後3年以内の年中に、それまでに居住していた居住用家屋とその敷地等を譲渡した時に、上記の特例を受ける場合
  • 一定の親族から中古住宅を取得した場合

 
また、共有名義で住宅を購入した場合は、ローンの組み方により住宅ローン控除の適用の有無が異なります。 
 

夫婦で別々のローンの債務者である場合

夫と妻で個別に住宅ローン控除を受ける

住宅ローンが1本である場合 夫の単特債務 夫の所得税において、共有持分のうち夫の持分部分のみ住宅ローン控除の適用を受ける(たとえ共働きであっても)
妻が連帯債務者 夫婦ともにそれぞれの持分部分に対応する金額につき、各負担割合に応じて住宅ローン控除を受ける
妻が連帯保証人 夫の所得税において、共有持分のうち夫の持分部分のみ住宅ローン控除の適用を受ける(たとえ共働きであっても)

 
連帯債務とは、数人の債務者が同一内容の債務について、各自が独立して全部の返済をなすべき義務を負い、かつ、債務者の返済があれば、他の債務者の債務もすべて消滅する債務のことです。
 
連帯保証とは、保証人が主たる債務者と連帯して保証債務を負担することです。
連帯債務と似ていますが、連帯保証人は債務者ではないため、住宅ローン控除の適用対象外です。

控除の内容

 
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の借入限度額、控除期間、控除率は、下表のとおりです。
 

区分

住宅の種類

居住年での借入限度額

控除期間

控除率

 2022(令和4)年 2023(令和5)年 2024(令和6)年 2025(令和7)年

新築住宅・買取再販

認定長期優良住宅・低炭素住宅  5,000万円 4,500万円 13年 0.7%
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 3,500万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円
その他の住宅 3,000万円 0円 ※ 13年(2024年以降入居は10年)
既存住宅 認定長期優良住宅・低炭素住宅 3,000万円 10年
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
その他の住宅 2,000万円

※2023(令和5)年までに建築確認を受けた新築等住宅については2,000万円となります。
※2024(令和6)年1月1日以後に建築確認を受ける新築等住宅(登記簿上の建築日付が2024(令和6)年6月30日以前のものを除く)のうち、一定の省エネ基準に適合しない住宅は、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の対象外となります。


住宅特定改修特別税額控除

 
住宅特定改修特別税額控除とは、省エネ改修工事、バリアフリー改修工事、三世代同居改修工事、耐震改修工事、省エネ改修工事と併せて行う耐久性向上改修工事等、既存住宅で増改築工事を行った場合に、一定の所得税の控除が受けられる制度のことです。
適用期限は、2023(令和5)年12月31日までとなります。
 
標準的な工事費用の控除対象限度額と控除率は、下表のとおりです。
 

居住年

対象工事

控除対象限度額

控除率

2022(令和4)年
2023(令和5)年

省エネ改修工事

250万円
(350万円)

10%

バリアフリー改修工事

200万円

三世代同居改修工事

250万円

耐震改修工事または省エネ改修工事と併せて行う耐久性向上改修工事

250万円
(350万円)

耐震改修工事および省エネ改修工事と併せて行う耐久性向上改修工事

500万円
(600万円)

※カッコ内の金額は、省エネ改修工事と併せて太陽光発電装置を設置する場合の控除対象限度額となります。

省エネ改修工事をした場合

 
省エネ改修工事をした場合の住宅特定改修特別税額控除の主な適用要件は、次のとおりです。
 

  • 居住用家屋の一般省エネ改修工事をして、2014(平成26)年4月1日から2023(令和5)年12月31日までの間に居住していること
  • 一般省エネ改修工事の日から6ヶ月以内に居住していること
  • この税額控除を受ける年分の合計所得金額が、3,000万円以下であること
  • 一般省エネ改修工事に係る標準的な費用の額が50万円を超えるものであること
  • 工事をした後の住宅の床面積が50㎡以上であり、床面積の1/2以上の部分が自己の居住用であること
  • 工事費用の1/2以上の額が自己の居住用部分の工事費用であること

バリアフリー改修工事をした場合

 
バリアフリー改修工事をした場合の住宅特定改修特別税額控除の主な適用要件は、次のとおりです。
 

  • 居住用家屋のバリアフリー改修工事等を行い、2014(平成26)年4月1日から2023(令和5)年12月31日までの間に居住していること
  • バリアフリー改修工事等の日から6ヶ月以内に居住していること
  • バリアフリー改修工事等に係る標準的な費用の額が50万円を超えるものであること
  • 工事をした後の住宅の床面積が50㎡以上であり、床面積の1/2以上の部分が自己の居住用であること
  • 工事費用の1/2以上の額が自己の居住用部分の工事費用であること

 
適用対象者は、次のいずれかに該当する居住者となります。
 

  • 50歳以上の者
  • 介護保険法に規定する要介護または要支援の認定を受けている者
  • 所得税法上の障害者である者
  • 要介護または要支援の認定を受けている者、障害者である者または65歳以上の親族のいずれかと同居している者
  • この税額控除を受ける年分の合計所得金額が、3,000万円以下であること

三世代同居改修工事をした場合

 
三世代同居改修工事をした場合の住宅特定改修特別税額控除の主な適用要件は、次のとおりです。
 

  • 居住用家屋の三世代同居改修工事をして、2016(平成28)年4月1日から2023(令和5)年12月31日までの間に居住していること
  • 三世代同居改修工事の日から6ヶ月以内に居住していること
  • この税額控除を受ける年分の合計所得金額が、3,000万円以下であること
  • 三世代同居改修工事に係る標準的な費用の額が50万円を超えるものであること
  • 工事をした後の住宅の床面積が50㎡以上であり、床面積の1/2以上の部分が自己の居住用であること
  • 工事費用の1/2以上の額が自己の居住用部分の工事費用であること

耐震改修工事をした場合

 
耐久性向上改修工事をした場合の住宅耐震改修特別控除の主な適用要件は、次のとおりです。
 

  • 1981(昭和56)年5月31日以前に建築された一定の家屋であって、居住用家屋であること
  • 耐震改修をした家屋が、現行の耐震基準に適合するものであること

耐久性向上改修工事をした場合

 
耐久性向上改修工事をした場合の住宅特定改修特別税額控除の主な適用要件は、次のとおりです。
 

  • 住宅耐震改修または(および)一般省エネ改修工事を行うこと
  • 居住用家屋の耐久性向上改修工事をして、2017(平成29)年4月1日から2023(令和5)年12月31日までの間に居住していること
  • 耐久性向上改修工事の日から6ヶ月以内に居住していること
  • この税額控除を受ける年分の合計所得金額が、3,000万円以下であること
  • 耐久性向上改修工事に係る標準的な費用の額が50万円を超えるものであること
  • 工事をした後の住宅の床面積が50㎡以上であり、床面積の1/2以上の部分が自己の居住用であること
  • 工事費用の1/2以上の額が自己の居住用部分の工事費用であること

外国税額控除

 
外国税額控除とは、日本で課税される所得の中に外国で生じた所得があり、その所得に対して外国の法令により所得税に相当する税金(外国所得税)を納付した場合、二重課税を調整するために一定額を控除することができる制度のことです。
 
外国税額控除額は、次の式で計算します。
 

所得税の控除限度額 = その年の所得税額 × その年の国外所得金額 ÷ その年の所得総額

 
また、外国所得税額が所得税の控除限度額を超える場合には、次の式で計算した金額を限度として、超える金額をその年の復興特別所得税額から差し引くことができます。
 

復興特別所得税の控除限度額 = その年の復興特別所得税額 × その年の国外所得金額 ÷ その年の所得総額