所得税の税額控除
最終更新日: 2025-11-16

税額控除について

 
税額控除とは、課税所得金額に税率を乗じて算出した所得税額から、一定の金額を直接差し引く制度です。
主な税額控除には、配当控除住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)住宅特定改修特別税額控除外国税額控除などがあります。


配当控除について

 
配当控除とは、内国法人から支払われる剰余金の配当や利益の配当、剰余金の分配などによる配当所得がある場合に適用される税額控除制度です。
配当所得について総合課税を選択し、確定申告を行うことで適用を受けることができます
 

配当控除の対象となる主なもの

 
日本国内に本店のある法人から受け取る

  • 剰余金の配当
  • 利益の配当
  • 剰余金の分配
  • 金銭の分配
  • 証券投資信託の収益の分配

 

配当控除の対象外となる主なもの

 

  • 基金利息
  • 私募公社債等運用投資信託等の収益分配に係る配当等
  • 国外私募公社債等運用投資信託等の配当等
  • 外国株価指数連動型特定株式投資信託の収益分配に係る配当等
  • 特定外貨建等証券投資信託の収益分配に係る配当等
  • 適格機関投資家私募による投資信託からの配当等
  • 特定目的信託・特定目的会社・投資法人からの配当等
  • 確定申告不要制度を選択したもの
  • 申告分離課税制度を選択したもの

 

配当控除の控除額

 
課税総所得金額等が1,000万円以下の場合

  • 余剰金の配当等に係る配当所得金額の10%
  • 証券投資信託の収益分配金に係る配当所得金額の5%

 
課税総所得金額等が1,000万円を超える場合、その超過部分に対して

  • 余剰金の配当等に係る配当所得金額の5%
  • 証券投資信託の収益分配金に係る配当所得金額の2.5%

住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)について

 
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)とは、個人が住宅ローンを利用してマイホームを新築・取得・増改築し、一定の要件を満たす場合に、住宅ローンの年末残高に応じた金額を所得税から控除できる制度です。
初年度は確定申告が必要ですが、給与所得者の場合、2年目以降は年末調整で適用可能です。

対象となるローン

 
対象となるローンは、銀行・信用金庫・農業協同組合・独立行政法人住宅金融支援機構・独立行政法人福祉医療機構などから借り入れたローンや、給与所得者が勤務先から借り入れたローンで、償還期間が10年以上の割賦償還方式で返済されるもの、または割賦払い期間が10年以上のものとなります。また、一定の要件を満たす借り換えローンも対象となります。
ここでいう「期間」とは、ローンの債務を負っている全体の期間ではなく、最初の返済または支払いを開始した時点から、返済が完了するまでの期間を指します。返済が進み、途中で償還期間が10年未満になった場合でも、当初の償還期間が10年以上であれば住宅ローン控除の適用を受けることができます。ただし、繰上げ返済によって償還期間を短縮した場合や、借り換えによって当初からの償還期間が10年未満となる場合は、控除の適用を受けることはできません
 

対象外となるローン

 

  • 親族知人からのローン
  • 給与所得者の勤務先からの無利子または0.2%未満の利率のローン
  • 給与所得者の勤務先から利子補給を受けて実質金利が0.2%未満の利率となるローン
  • 勤務先から時価の1/2未満の価格で取得したマイホームのローン

適用条件

 

  • 新築または取得の日から6か月以内に居住し、特別控除を受ける各年12月31日まで引き続き居住していること。
  • 特別控除を受ける年の合計所得金額2,000万円以下であること。
  • 住宅の床面積が50㎡以上合計所得金額1,000万円以下なら40㎡以上)であること。
  • 住宅の床面積の1/2以上が居住用であること。
  • 既存住宅の場合、以下のいずれかに該当すること。
    • 耐震基準適合または1982(昭和57)年1月1日以降に建築されたものであること。
    • 耐震基準に適合しない場合、その住宅の取得日までに耐震改修工事の申請等をし、かつ、その取得日から6か月以内の居住日までに耐震改修工事を完了し、その住宅が耐震基準に適合することが証明されるものであること。
  • 10年以上分割返済する新築または取得のためのローンがあること。

 

適用対象外となる場合

 

  • 居住開始年、その前年、その前々年において、以下の特例を受ける場合
    • 居住用財産の3,000万円控除の特例
    • 居住用財産の軽減税率の特例
    • 特定の居住用財産の買換え・交換の特例
    • 既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え・交換の特例
    • 民間都市開発推進法に基づく一定の土地交換の特例
      など
  • 居住開始年の翌年以後3年以内の年中に、それまでに居住していた居住用家屋とその敷地などを譲渡した時に、上記の特例を受ける場合
  • 一定の親族から中古住宅を取得した場合

 
また、共有名義で住宅を購入した場合は、ローンの組み方により住宅ローン控除の適用の有無が異なります。 
 

夫婦別々のローンの債務者である場合

夫妻それぞれで住宅ローン控除の適用可能

住宅ローンが1本である場合 夫の単特債務 夫の所得税において、共有持分のうち夫の持分部分のみ住宅ローン控除の適用可能(たとえ共働きであっても)
妻が連帯債務者 夫婦ともにそれぞれの持分部分に対応する金額につき、各負担割合に応じて住宅ローン控除の適用可能
妻が連帯保証人 夫の所得税において、共有持分のうち夫の持分部分のみ住宅ローン控除の適用可能(たとえ共働きであっても)

 
連帯債務とは、複数の債務者が同一の債務について、それぞれが独立して全額の返済義務を負う契約を指します。いずれかの債務者が返済すれば、他の債務者の債務もすべて消滅します。
連帯保証とは、保証人が主たる債務者と連帯して保証債務を負担する契約です。連帯債務と似ていますが、連帯保証人は債務者ではないため、住宅ローン控除の対象外となります。

控除の内容

 

区分

住宅の種類

居住年での借入限度額

控除期間

控除率

 2022(令和4)年 2023(令和5)年 2024(令和6)年 2025(令和7)年

新築住宅・買取再販

認定長期優良住宅・低炭素住宅  5,000万円 4,500万円 ※1 13年 0.7%
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 3,500万円 ※2
省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円 ※3
その他の住宅 3,000万円 0円 ※4 13年(2024年以降入居は10年)
既存住宅 認定長期優良住宅・低炭素住宅 3,000万円 10年
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
その他の住宅 2,000万円

※1:子育て世帯等(夫婦のいずれかが40歳未満の者または19歳未満の扶養親族がいる世帯)は、5,000万円となります。
※2:子育て世帯等(夫婦のいずれかが40歳未満の者または19歳未満の扶養親族がいる世帯)は、4,500万円となります。
※3:子育て世帯等(夫婦のいずれかが40歳未満の者または19歳未満の扶養親族がいる世帯)は、4,000万円となります。
※4:2023(令和5)年までに建築確認を受けた新築等住宅については、2,000万円となります。
※4:2024(令和6)年1月1日以後に建築確認を受ける新築等住宅(登記簿上の建築日付が2024(令和6)年6月30日以前のものを除く)のうち、一定の省エネ基準に適合しない住宅は、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の対象外となります。


住宅特定改修特別税額控除について

 
住宅特定改修特別税額控除とは、一般省エネ改修工事、バリアフリー改修工事、多世帯同居改修工事、耐久性向上改修工事、子育て対応改修工事を行った場合に、一定の所得税控除を受けられる制度です。
 

控除対象限度額と控除率

 

対象工事

控除対象限度額

控除率

一般省エネ改修工事

250万円(350万円)

10%

バリアフリー改修工事

200万円

多世帯同居改修工事

250万円

住宅耐震改修と併せて行う耐久性向上改修工事

250万円

一般省エネ改修工事と併せて行う耐久性向上改修工事

250万円(350万円)

住宅耐震改修および一般省エネ改修工事と併せて行う耐久性向上改修工事

500万円(600万円)

子育て対応改修工事

250万円

※カッコ内の金額は、太陽光発電設備設置工事を含む場合の限度額です。


一般省エネ改修工事をした場合

 

控除の適用要件

 
個人が一般省エネ改修工事を行い、住宅特定改修特別税額控除を受けるためには、以下のすべての要件を満たす必要があります。

  • 自己所有の家屋に一般省エネ改修工事を行い、2014(平成26)年4月1日から2025(令和7)年12月31日までの間に居住用として使用していること。
  • 工事日から6か月以内に居住を開始していること。
  • 控除を受ける年の合計所得金額2,000万円以下であること。
  • 工事後の住宅の床面積が50㎡以上であり、1/2以上が自己居住用であること。
  • 複数の住宅を所有する場合、主として居住している住宅であること。
  • 一般省エネ改修工事に係る標準的な工事費用が50万円超であること。
  • 工事費用の1/2以上が居住用部分の工事費用であること。

 

一般省エネ改修工事の要件

 

  • 居室の窓の改修工事、またはその工事と併せて行う床等の断熱工事、天井の断熱工事、壁の断熱工事で、その改修部位の省エネ性能がいずれも2016(平成28)年基準相当以上であること(2022(令和4)年1月1日以後に居住の用に供する場合)。
  • 上記工事と一体となって効用を果たす太陽熱利用冷温熱装置の取替え・取付け工事。
  • 上記工事と一体となって効用を果たす太陽光発電装置の取替え・取付け工事。

バリアフリー改修工事をした場合

 

控除の適用要件

 
個人がバリアフリー改修工事を行い、住宅特定改修特別税額控除を受けるためには、以下のすべての要件を満たす必要があります。

  • 自己所有の居住用家屋にバリアフリー改修工事を行い、2014(平成26)年4月1日から2025(令和7)年12月31日までの間に居住用として使用していること。
  • 工事日から6か月以内に居住を開始していること。
  • 控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること。
  • 工事後の住宅の床面積が50㎡以上であり、1/2以上が自己居住用であること。
  • 複数の住宅を所有する場合、主として居住している住宅であること。
  • バリアフリー改修工事に係る標準的な工事費用が50万円超であること。
  • 工事費用の1/2以上が居住用部分の工事費用であること。

 

バリアフリー改修工事の要件

 

  • 工事を行う者が、以下の1から4のいずれかに該当する特定個人であること。
    1. 50歳以上
    2. 介護保険法に基づく要介護・要支援認定を受けている方
    3. 所得税法上の障害者
    4. 高齢者等と同居している方
  • 高齢者等が自立した日常生活を営むのに必要な構造及び設備の基準に適合させるための修繕又は模様替えで、以下のいずれかに該当するバリアフリー改修工事を含む増改築等であること。
    • 介助用の車椅子で容易に移動するために通路または出入口の幅を拡張する工事。
    • 階段の設置または改良によりその勾配を緩和する工事。
    • 浴室を改良する工事で、以下のいずれかに該当するもの。
      1. 入浴またはその介助を容易に行うために浴室の床面積を増加させる工事。
      2. 浴槽をまたぎ高さの低いものに取り替える工事。
      3. 固定式の移乗台、踏み台その他の高齢者等の浴槽の出入りを容易にする設備を設置する工事。
      4. 高齢者等の身体の洗浄を容易にする水栓器具を設置しまたは同器具に取り替える工事。
    • 便所を改良する工事で、以下のいずれかに該当するもの。
      1. 排泄またはその介助を容易に行うために便所の床面積を増加させる工事。
      2. 便器を座便式のものに取り替える工事。
      3. 座便式の便器の座高を高くする工事。
    • 便所、浴室、脱衣室、居室、玄関、これらを結ぶ経路に手すりを取り付ける工事。
    • 便所、浴室、脱衣室、居室、玄関、これらを結ぶ経路の床の段差を解消する工事。
    • 出入口の戸を改良する工事で、以下のいずれかに該当するもの。
      1. 開戸を引戸、折戸等に取り替える工事。
      2. 開戸のドアノブをレバーハンドル等に取り替える工事。
      3. 戸に戸車その他の戸の開閉を容易にする器具を設置する工事。
    • 便所、浴室、脱衣室、居室、玄関、これらを結ぶ経路の床の材料を滑りにくいものに取り替える工事。

多世帯同居改修工事をした場合

 

控除の適用要件

 
個人が多世帯同居改修工事を行い、住宅特定改修特別税額控除を受けるためには、以下のすべての要件を満たす必要があります。

  • 自己所有の居住用家屋に多世帯同居改修工事を行い、2016(平成28)年4月1日から2025(令和7)年12月31日までの間に居住用として使用いること。
  • 工事日から6か月以内に居住を開始していること。
  • 控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること。
  • 工事後の住宅の床面積が50㎡以上であり、1/2以上が自己居住用であること。
  • 複数の住宅を所有する場合、主として居住している住宅であること。
  • 多世帯同居改修工事に係る標準的な工事費用が50万円超であること。
  • 工事費用の1/2以上が居住用部分の工事費用であること。

 

多世帯同居改修工事の要件

 

  • 他の世帯との同居に必要な設備を増設するための増築・改築・修繕・模様替え工事であること。
  • 調理室・浴室・便所・玄関のいずれかの設備を増設する工事を含むこと。
  • 自己居住用部分において調理室・浴室・便所・玄関のうち2室以上が複数設置されていること。

耐久性向上改修工事をした場合

 

控除の適用要件

 
個人が耐久性向上改修工事を行い、住宅特定改修特別税額控除を受けるためには、以下のすべての要件を満たす必要があります。

  • 補助金等を差し引いた標準的な費用が50万円超である住宅耐震改修または(および)一般省エネ改修工事を併せて行うこと。
  • 自己所有の居住用家屋に耐久性向上改修工事を行い、2017(平成29)年4月1日から2025(令和7)年12月31日までの間に居住用として使用していること。
  • 工事日から6か月以内に居住を開始していること。
  • 控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること。
  • 工事後の住宅の床面積が50㎡以上であり、1/2以上が自己居住用であること。
  • 複数の住宅を所有する場合、主として居住している住宅であること。
  • 耐久性向上改修工事に係る標準的な工事費用が50万円超であること。
  • 工事費用の1/2以上が居住用部分の工事費用であること。

 

耐久性向上改修工事の要件

 

  • 小屋裏、外壁、浴室、脱衣室、土台、軸組等、床下、基礎、地盤に関する劣化対策工事。
  • 給排水管や給湯管の維持管理・更新を容易にする工事。
  • 認定長期優良住宅建築等計画に基づく工事。

 

住宅耐震改修の要件

 

  • 地震に対する安全性を高めるための増改築・修繕・模様替え工事。
  • 改修後の家屋が現行の耐震基準に適合することが証明されたものであること。

 

一般省エネ改修工事の要件

 

  • エアーコンディショナーの省エネルギー基準達成率が107%以上であること(令和6年4月1日以降居住の場合)。
  • 上記の工事と一体となって効用を果たす太陽熱利用冷温熱装置の取替え・取付け工事。
  • 上記の工事と一体となって効用を果たす太陽光発電装置の取替え・取付け工事。

子育て対応改修工事をした場合

 

控除の適用要件

 
特例対象個人子育て対応改修工事を行い、住宅特定改修特別税額控除を受けるためには、以下のすべての要件を満たす必要があります。

  • 自己所有の居住用家屋に子育て対応改修工事を行い、2025(令和7)年12月31日までの間に居住用として使用していること。
  • 工事日から6か月以内に居住を開始していること。
  • 控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること。
  • 工事後の住宅の床面積が50㎡以上であり、1/2以上が自己居住用であること。
  • 複数の住宅を所有する場合、主として居住している住宅であること。
  • 子育て対応改修工事に係る標準的な工事費用が50万円超であること。
  • 工事費用の1/2以上が居住用部分の工事費用であること。

 
特例対象個人とは、以下のいずれかに該当する人です。

  • 年齢40歳未満で配偶者がいる方
  • 年齢40歳以上で、40歳未満の配偶者がいる方
  • 年齢19歳未満の扶養親族がいる方

 

子育て対応改修工事の要件

 

  • 子どもの事故を防止するために行う工事で、以下のいずれかに該当するもの。
    • 壁や柱の角を衝突防止構造に改良する工事。
    • 床仕上げ材を転倒防止構造に切り替える工事。
    • 転落防止の手すりを取り付ける工事。
    • 戸を指挟み込み防止構造に切り替える工事。
    • 乳幼児侵入防止の柵を取り付ける工事。
    • コンセントを感電防止にするものとして、以下の基準のいずれかに適合するものに切り替える工事。
      1. その差込口が開閉する構造であること。
      2. 乳幼児の手が届かない高さにあること。
  • キッチンを対面式に取り替える工事。
  • 開口部を侵入防止対策を実施する工事。
  • 収納設備を増設する工事。
  • 開口部や界壁、界床の防音性を高める工事で、以下のいずれかに該当するもの。
    • 窓の防音性を高める工事。
    • 界壁に防音材を取り付ける工事。
    • 床構造を衝撃音低減仕様にするための工事。
  • 間仕切壁の位置を変更する工事で、以下のいずれかに該当するもの。
    • 子どもの就寝・学習用居室を増設する工事。
    • 調理室、洗面所、脱衣所を近接させる工事。
    • 調理をしながら居室を見渡せる構造にする工事。

外国税額控除について

 
外国税額控除とは、日本で課税される所得の中に外国で生じた所得があり、その所得に対して外国の法令に基づく所得税(外国所得税)を納付した場合、二重課税を調整するために一定額を控除できる制度です。
 

控除額の計算方法

 
外国税額控除額は、以下の式で計算されます。
 

所得税の控除限度額 = その年の所得税額 × その年の国外所得金額 ÷ その年の所得総額

 
外国所得税額が上記の控除限度額を超える場合は、以下の式で計算した金額を限度として、復興特別所得税額から差し引くことができます。
 

復興特別所得税の控除限度額 = その年の復興特別所得税額 × その年の国外所得金額 ÷ その年の所得総額