企業年金・個人年金等
最終更新日: 2024-10-12

年金制度の全体像

 
日本の年金制度は、全国民に共通した基礎年金を基礎に、被用者年金企業年金・個人年金等の3階建ての構造となっています。
企業年金とは、厚生年金保険の上乗せとして年金が受け取れるように、企業が任意に設けている私的年金制度です。
 

年金制度の全体像

 

3階部分
企業年金・個人年金等

確定給付企業年金

厚生年金基金

確定拠出年金(企業型)

確定拠出年金(個人型)
愛称:iDeCo(イデコ)

保険会社が運営する私的年金

2階部分
被用者年金

厚生年金保険

1階部分
基礎年金

国民年金


確定給付企業年金

 
確定給付企業年金とは、将来の給付額があらかじめ確定している企業年金制度のことです。
企業が厚生労働大臣の認可を受けて法人格をもつ企業年金基金を設立する基金型と、労使合意の年金規約を企業が作成し、厚生労働大臣の承認を受けて実施する規約型があります。
基金型は企業年金基金が、規約型は企業が委託した資産管理運用機関(信託会社や生命保険会社等)が年金資産の管理・運用・給付を行います。

確定給付企業年金の掛金

 
確定給付企業年金の掛金は、原則として企業が負担しますが、年金規約で定め、本人の同意があれば、加入者が掛金の一部を負担することができます。その場合、加入者の負担割合は半分を超えてはいけません。
 
なお、確定給付企業年金の掛金の税制上の取扱いとして、
 

  • 企業が負担した掛金は、全額損金算入
  • 従業員が負担した掛金は、生命保険料控除

 
の対象となります。

確定給付企業年金の給付

 
企業等は、老齢給付金と脱退一時金の給付に加え、規約で定めることで障害給付金と遺族給付金の給付を行うことができます。
また、企業等は、これらの給付が将来にわたって支給できるように年金資産の積立義務を課されています。
老齢給付金は、60歳以上70歳以下の規約の定める支給開始年齢から終身または5年以上の有期年金として給付しますが、一時金での支給も認められています。
 
なお、各種給付金の税制上の取扱いとして、
 

  • 一時金として受け取る老齢給付金は、退職所得
  • 年金として受け取る老齢給付金は、雑所得
  • 脱退一時金は、原則として一時所得
  • 障害給付金は、非課税
  • 遺族給付金は、みなし相続財産として相続税の課税対象

 
となります。


厚生年金基金 

 
厚生年金基金とは、従業員に対して老齢厚生年金の報酬比例部分の一部を国に代わって支給(代行部分)し、合わせて独自の年金を上乗せして支給(加算部分)する確定給付型の企業年金制度のことです。
現在、基金の解散や他の企業年金制度への移行が促進されているほか、2014(平成26)年4月以降は厚生年金基金の新設はできなくなりました。

厚生年金基金の掛金

 
厚生年金基金の掛金は、原則として従業員(加入者)と企業が折半して負担しますが、加算部分については、規約を定めることにより、企業の負担割合を増やすことができます。

厚生年金基金の給付

 
厚生年金基金の給付には、原則として加入者が老齢厚生年金の受給権を取得したときに支給する代行部分と加算部分(老齢給付金)と、規約に定めた場合に死亡や障害に対する給付があります。


確定拠出年金

 
確定拠出年金とは、拠出された掛金が個人ごとに明確に区分され、加入者個人が自己責任のもと掛金を運用し、その運用成果をもとに年金給付額が決定する年金制度のことです。
確定拠出年金制度は、英語表記のDefined Contribution Planを略して「DC」ともいわれます。
確定拠出年金には、企業型個人型の2種類があります。
個人型確定拠出年金の加入については、実施主体である国民年金基金連合会に申し込みます。

確定拠出年金の加入対象者

 
企業型確定拠出年金の加入対象者は、企業型確定拠出年金を実施している企業の60歳未満(一定の要件を満たした場合は、65歳未満)の厚生年金保険の被保険者になります。
 
個人型確定拠出年金の加入対象者は、下表のとおりです。
 

加入区分

加入対象者

国民年金の第1号被保険者

日本国内に居住している20歳以上60歳未満の自営業者、フリーランス、学生等

国民年金の第2号被保険者

60歳未満の厚生年金の被保険者(サラリーマン、公務員)の人 

国民年金の第3号被保険者

20歳以上60歳未満の厚生年金に加入している人の被扶養配偶者の人

 
ただし、企業型年金の加入者については、規約で個人年金への加入が認められている場合に限ります。
また、免除や滞納により国民年金の保険料を支払っていない人は、加入対象外となります。

確定拠出年金の掛金

 
企業型確定拠出年金の掛金は、原則として企業が拠出します。
個人型確定拠出年金の掛金は、加入者個人が拠出します。
個人型確定拠出年金の場合、毎月の掛金は5,000円以上1,000円単位で設定することができます。
 
企業型・個人型確定拠出年金の拠出限度額は、下表のとおりです。
 

種類

条件

掛金の拠出限度額

企業型

確定給付企業年金を実施していない場合

年額660,000円
(月額55,000円)

確定給付企業年金を実施しておらず、規約において個人型年金への加入が認められている場合

 年額420,000円
(月額35,000円) 

確定給付企業年金を実施している場合

年額330,000円
(月額27,500円)

確定給付企業年金を実施していて、規約において個人型年金への加入が認められている場合

年額186,000円
(月額15,500円)

個人型

国民年金の第1号被保険者(自営業者等)の場合

年額816,000円
(月額68,000円)

厚生年金保険の被保険者で、確定給付企業年金も企業型確定拠出年金も実施していない場合

年額276,000円
(月額23,000円)

厚生年金保険の被保険者で、企業型確定拠出年金を実施している場合

年額240,000円
(月額20,000円)

厚生年金保険の被保険者で、確定給付企業年金を実施している場合

年額144,000円
(月額12,000円)

厚生年金保険の被保険者で、公務員等の場合

年額144,000円
(月額12,000円)

国民年金の第3号被保険者(専業主婦等)の場合

年額276,000円
(月額23,000円)

 
なお、確定拠出年金の掛金の税制上の取扱いとして、
 

  • 企業が拠出した掛金は、全額損金算入
  • 加入者が拠出した掛金は、小規模企業共済等掛金控除

 
の対象となります。

確定拠出年金の運用

 
確定拠出年金の運用商品には、預貯金等の元本確保型商品のほかに、投資信託等の元本変動商品もあります。
運営管理機関は、加入者に対し、原則としてリスク・リターン特性の異なる3以上35以下の運用商品を提示しなければなりません。
確定拠出年金は、加入者が自己責任のもとに掛金を運用します。
運営管理機関は、各加入者からの運用指図を取りまとめ、企業型年金については資産管理機関に、個人型年金については国民年金基金連合会に運用指図を行います。

確定拠出年金の移換措置

 
確定拠出年金は、加入者ごとに年金資産が記録管理されており、加入者が転職したり、退職したりした場合には、すでに拠出・運用している年金資産を移換することができます。

確定拠出年金の給付

 
確定拠出年金の給付には、老齢給付金障害給付金死亡一時金脱退一時金があります。 
老齢給付金は、60歳までの通算加入期間が10年以上ある場合は、60歳から受給できます。
しかし、通算加入期間が10年に満たない場合、受給開始年齢は60歳よりも遅くなります。
 

加入期間

支給開始年齢

10年以上

60歳

8年以上10年未満

 61歳 

6年以上8年未満

62歳

4年以上6年未満

63歳

2年以上4年未満

64歳

1月以上2年未満

65歳

 
老齢給付金は、受給権者本人の選択により、5年以上の有期年金または終身年金として受給し、規約により一時金として受給することもできます。
 
なお、老齢給付金の税制上の取扱いとして
 

  • 年金として受け取る場合、雑所得として課税対象(公的年金等控除が適用)
  • 一時金として受け取る場合、退職所得として課税対象(退職所得控除が適用)

 
となります。
 
障害給付金は、加入者等が一定の障害状態になった場合に、年金または一時金として支給されます。
障害給付金は、非課税です。
 
死亡一時金は、加入者等が死亡した場合に、その遺族に支給されます。
死亡一時金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。
 
確定拠出年金は、原則として中途解約して払戻しを受けることはできません。
ただし、企業型年金の場合は、資産額が15,000円以下であること等の要件を満たした場合、個人型年金の場合は、国民年金保険料免除者であること等の要件を満たした場合に限り、脱退一時金を受け取り、脱退することができます。
脱退一時金は、原則として一時所得として課税対象となります。


小規模企業共済制度

 
小規模企業共済制度とは、個人事業主または小規模会社等の役員が、事業を廃業したり、退職したりした場合に、生活の安定や事業の再建を図るための資金をあらかじめ準備しておく制度のことです。
常用従業員数が20人以下(商業・サービス業のうち、宿泊業と娯楽業以外については、常用従業員数が5人以下)の個人事業主または会社の役員が加入することができます。
なお、個人事業主で共同経営者がいる場合、2人までは加入することができます。
小規模企業共済制度の掛金は、加入者本人が全額負担します。月額1,000円から70,000円の範囲で自由に選択することができます。
税制上の取り扱いとして、掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となります。
 
小規模企業共済制度の共済金の受取り方法と税制上の取扱いは、
 

  • 一括受取りの場合、退職所得として課税対象(退職所得控除が適用)
  • 分割受取りの場合、雑所得として課税対象(公的年金等控除が適用)
  • 一括受取りと分割受取りの併用

 
となります。


中小企業退職金共済制度(中退共)

 
中小企業退職金共済制度(中退共)とは、単独では退職金制度をもつことが困難な中小企業の従業員のために、退職金を確保することを目的とした制度のことです。
勤労者退職金共済機構等が運営を行っており、雇用する従業員を被保険者として、事業主が勤労者退職金共済機構等と退職金共済契約を締結します。
中小企業退職金共済制度に加入できる中小企業の要件として、業種ごとの常用従業員数や資本金の額による制限があります。
 
加入者は、原則として従業員のみとなり、会社役員(使用人兼務役員を除く)や個人事業主は加入できません。
なお、従業員については、原則として全従業員を加入させなければなりません。
被共済者が退職後に中小企業者に雇用され、3年以内に再び被共済者となった場合は、前後の退職金共済契約に係る掛金納付月数を通算することができます。
 
中小企業退職金共済制度の掛金は、事業主が全額負担します。
月額5,000円から30,000円の範囲内の16種類から任意に選択することができます。
短時間労働者については、2,000円3,000円4,000円からも選択することができます。
ただし、新たに加入する事業主に対して、掛金月額の1/2(従業員1人につき上限5,000円)を加入後4か月目から1年間、国が助成します。
 
なお、掛金の税制上の取扱いとして、
 

  • 企業が負担した掛金は、全額損金算入
  • 個人事業主が負担した掛金は、全額必要経費

 
となります。
 
中小企業退職金共済制度の給付は、勤労者退職金共済機構等から直接、退職時に従業員に一時金として支給され、税制上は退職所得となります。
ただし、退職金額が一定額以上等の要件を満たした場合、5年間または10年間分割での支給も選択することができ、税制上は雑所得となります。


国民年金基金制度

 
国民年金基金制度とは、国民年金法の規定に基づく公的な年金であり、国民年金老齢基礎年金)とセットで、自営業者等の国民年金の第1号被保険者の老後の所得保障の役割を担う年金制度のことです。
全国国民年金基金と、3つの職種別に設立された職能型国民年金基金の2種類があります。
国民年金基金への加入は任意ですが、自己都合による途中解約はできません。
 
国民年金基金の加入対象者は、
 

  • 国民年金の第1号被保険者(20歳以上60歳未満の自営業者や自由業者等)
  • 国内に住所のある60歳以上65歳未満の国民年金の任意加入被保険者
  • 外国に居住する20歳以上65歳未満の国民年金の任意加入被保険者

 
になります。
 
ただし、第1号被保険者であっても、保険料の免除や滞納をしている人は加入することはできません。
また、付加年金保険料を納付している第1号被保険者は、納付期間中は国民年金基金に加入することはできません。
 
国民年金基金の掛金の拠出限度額は、個人型確定拠出年金の掛金と合算して年額816,000円(月額68,000円)となっており、全額が社会保険料控除の対象となります。
 
国民年金基金の加入は口数制で、年齢が50歳以下の場合、1口目2種類終身年金の中から選択し、2口目以降は2種類の終身年金に5種類の確定年金を加えた計7種類の中から選択することができます。
掛金の額は選択した給付の型、加入口数、加入時の年齢、性別によって異なります。
 
国民年金基金の給付には老齢年金遺族一時金があり、老齢年金は全額が公的年金等控除の対象となり、遺族一時金は全額が非課税となります。
なお、老齢年金の支給額は、加入口数によって異なります。