最終更新日: 2024-03-13

不動産の有効活用

 
不動産の有効活用のイメージ

土地活用事業手法

 
土地を有効に活用する主な事業手法は、次のとおりです。

自己建設方式

 
自己建設方式とは、土地所有者が自ら土地の有効活用を計画し、直接業者等に工事を発注し、事業を行う方式のことです。
自己建設方式のメリットは、収益のすべてを享受できることや、不動産賃貸事業等に関するノウハウを蓄積できる等が挙げられます。
ただし、建物の建設資金も土地所有者自ら調達する必要があるため、建築資金を借り入れた場合は、借入金の返済が必要となります。

事業受託方式

 
事業受託方式とは、事業計画、建物の企画、設計、建設、管理、運営までのすべてを一括してデベロッパーが請け負う方式のことです。
事業受託方式のメリットは、デベロッパーが土地建物を一括借り上げしてテナントへ転貸することにより、安定した収益を確保することができる点です。
ただし、建物の建設資金は土地所有者自ら調達するため、資金調達における借入金の返済が必要となります。

建設協力金方式

 
建設協力金方式とは、賃借予定者であるテナントが建築主である土地所有者に差し入れる建設協力金を事業資金とし、テナントが要求する仕様の建物を建設して賃貸する方式のことです。
建設協力金方式のメリットは、建設前からテナントが確保できていることや、入居者のノウハウで事業の立案が可能なこと、金融機関からの借入れよりも有利な条件での借入れが可能な場合があること等が挙げられます。
ただし、建物はテナントの仕様に合わせた構造となるため、用途の汎用性は低くなります。

等価交換方式

 
等価交換方式とは、土地所有者が提供した土地にデベロッパーが建物を建設し、建物が完成したあとに、土地所有者とデベロッパーが土地と建物のそれぞれ一部を交換し、それぞれの出資比率に応じた割合で土地建物を取得する方式のことです。
等価交換方式には、土地所有者が土地の一部をデベロッパーに譲渡し、その譲渡価額に応じた建物の一部を取得する部分譲渡方式と、土地の全部を譲渡し、建物完成後、出資割合に応じた土地と建物の一部を取得する全部譲渡方式があります。
等価交換方式のメリットは、建物の建設資金はデベロッパーが調達するため、土地所有者自ら事業資金を調達せずに建物を取得できます。
そのため、地主にとってリスクが少ない事業であるといえ、採算性も良い点が挙げられます。
また、デベロッパーは土地を先行取得するための資金が不要となる等、双方にメリットがある方式です。

土地信託方式

 
土地信託方式とは、土地所有者が土地を信託銀行に信託し、信託銀行が事業計画、資金調達、建物建設の発注、管理、運営までのすべてを一括して行う方式のことです。
信託期間中の土地や建物の所有名義は信託銀行となるが、信託期間終了後は、信託財産は土地所有者に返還されます。
土地信託方式では、建物の建設資金は信託銀行名義で調達するため、自己資金を用意する必要がありません。
また、ノウハウがなくても土地の有効活用ができることや、相続対策として有効といったメリットがあります。
ただし、開発リスクは基本的に土地所有者側にあり、元本保証がありません。
事業が赤字となって信託期間が終了した場合、その損失は、原則として土地所有者が負うことになります。

定期借地権方式

 
定期借地権方式とは、土地に定期借地権を設定して、土地を賃貸する方式のことです。
土地の所有権を移転せず、また期間の更新はなく、更地で返還されます。
定期借地権方式のメリットは、土地の所有権を手放すことなく土地活用を行えることや、土地所有者に土地活用のノウハウが必要ないこと、賃貸料による比較的安定した収入を一定期間得られること等が挙げられます。


不動産の投資判断

 
不動産投資をする場合、採算が取れるかどうか検討しなければなりません。
採算性や収益性を評価する主な指標は、次のとおりです。 

総投下資本総収益利回り(表面利回り)

 
総投下資本総収益利回り(表面利回り)とは、物件の価格に対して現時点で家賃収入をどの程度得られているか、という収益性を表す指標です。
アパート経営であれば、年間の家賃収入の合計金額をアパートの建築費用で割って求めます。
 
総投下資本総収益利回り(表面利回り)は、次の式で計算します。
 

総投下資本純収益利回り(実質利回り、NOI利回り)

 
総投下資本純収益利回り(実質利回り、NOI利回り)とは、諸経費(減価償却費や借入金の支払い利子は含まない)を考慮した上で、購入時の出費に対して手元に残る現金をどれだけ効率よく得られるかを表す指標のことです。
 
総投下資本純収益利回り(実質利回り、NOI利回り)は、次の式で計算します。
 

キャッシュ・オン・キャッシュ(自己資本手取額利回り)

 
キャッシュ・オン・キャッシュ(自己資本手取額利回り)とは、自己資本に対する現金手取額の割合のことです。
他人資本(借入金等)を除いた自己資本に対する利回りです。
 
キャッシュ・オン・キャッシュ(自己資本手取額利回り)は、次の式で計算します。
 

直接還元法

 
直接還元法とは、不動産の単年度の純収益を還元利回りで還元することにより収益価格を算出する手法のことです。

DCF法(Discounted Cash Flow Method)

 
DCF法とは、対象不動産が現在から将来にわたって生み出すであろうキャッシュフローの現在価値の合計額と、保有期間終了時の復帰価格(売却価格)の現在価値を合算して収益価格を算出する手法のことです。
 
代表的なDCF法には、次の2つがあります。

正味現在価値法(NPV法:Net Present Value Method)

 
正味現在価値法とは、対象不動産が現在から将来にわたって生み出すであろうキャッシュフローの現在価値の合計額と、投資予定額の現在価値を比較して、投資の適否を判断する手法のことです。
対象不動産が現在から将来にわたって生み出すであろうキャッシュフローの現在価値の合計額が、投資予定額の現在価値の合計を上回る場合、その投資は適格であると判定することができます。

内部収益率法(IRR法:Internal Rate of Return Method)

 
内部収益率法とは、投資対象不動産の内部収益率に着目して投資の適否を判断する手法のことです。
内部収益率とは、一定の投資期間において想定される投資対象不動産の予測収益率のことです。
投資家の期待収益率よりも内部収益率が上回る場合、その投資は適格であると判定することができます。

借入金償還余裕率(DSCR:Debt Service Coverage Ratio)

 
借入金償還余裕率とは、不動産が生み出す元利金返済前の年間キャッシュフロー(純収益)を借入金の年間元利金返済額で除した比率のことで、借入金返済の安全度を測る尺度として用いられます。
借入金償還余裕率が大きいほど、キャッシュフローに余裕があるといえます。

デュー・デリジェンス

 
デュー・デリジェンスとは、投資対象に対するリスク分析のことで、投資対象の経済的・法的・物理的側面等に関する専門家による詳細な調査をいいます。
不動産取引におけるデュー・デリジェンスとは、法律的、経済的側面等に関する多角的、詳細な調査をいいます。


不動産投資信託

 
不動産等で運用する投資信託のことを、不動産投資信託(REIT)といいます。
日本における不動産投資信託をJ-REITといい、投資法人の形態で設定され、取引所に上場しています。
 
J-REITには、次のような特徴があります。
 

  • 不動産投資の専門家が複数の物件に投資して運用するため、リスク分散される
  • 一般に証券会社を通じて自由に売買できるため、流動性が高い
  • 多数の物件の賃料や売却代金等が分配金の原資になっているため、相対的に安定した分配金と比較的高い利回りを期待できる
  • 運用期間中は元本の払戻しをしない換金方式であるクローズドエンド型である

 
個人が支払いを受けた分配金は配当所得となり、原則として上場株式等の配当所得とほぼ同じ扱いとなります(配当控除は受けられません)。
また、譲渡益は譲渡所得となり、上場株式等の譲渡所得と同じ扱いとなります。