債券とは
債券とは、国や企業等が不特定多数の人から一度に多くの資金を集めるために発行する有価証券のことです。
債券は、一般に、元金の返済日や利子の支払い等の条件が明確にされています。
債券は発行体によって分類され、国の発行する債券を国債、地方公共団体の発行する債券を地方債、企業が発行する債券を社債、金融機関が発行する債券を金融債といいます。
なお、日本の債券市場において、発行額が最も多いのは、日本政府が発行する債券(国債)です。
債券の発行条件
債券の主な発行条件は、次のとおりです。
発行価格
発行価格とは、一定額の額面(通常100円)の債券を新規発行時に購入するときの価格のことです。
表面利率
表面利率とは、額面価格に対して1年間に支払われる利子の割合のことです。
クーポンレートともいいます。
償還期限
紹介期限とは、債券が償還される期日のことです。
額面価格よりも高い価格で債券を発行することを、オーバーパー発行といいます。
オーバーパー発行の債券が額面価格で償還されれば、償還差損が発生します。
一方、額面価格よりも低い価格で債券を発行することを、アンダーパー発行といいます。
アンダーパー発行の債券が額面価格で償還されれば、償還差益が発生します。
なお、額面価格と発行価格が同じ場合をパー発行といいます。
パー発行の債券の場合、償還差損や償還差益は発生しません。
債券市場
債券市場は、機能面から発行市場と流通市場に分けられます。
発行市場とは、企業等が新たに発行した債券を発行者から直接取得する市場のことです。
流通市場とは、すでに発行された債券が売買される市場のことです。
流通市場には、証券取引所で行われる取引所取引と、証券会社等が顧客の相手方となって相対で行われる店頭取引があります。
日本の債券取引の大部分は、店頭取引で行われています。
店頭取引は相対取引なので、同一銘柄、同一日時の取引であっても、証券会社等によって、取引価格が異なる場合があります。
債券の種類
債券の主な種類には、次のようなものがあります。
個人向け国債
個人向け国債とは、政府が個人でも購入できるようにした国が発行する債券のことです。
個人向け国債には次の3種類があり、いずれも基準となる国債の利回りに連動して金利が決まりますが、最低金利が保証されています。
商品名 | 変動金利型10年満期 |
固定金利型5年満期 | 固定金利型3年満期 |
満期 | 10年 |
5年 | 3年 |
金利タイプ | 変動金利 |
固定金利 | |
金利設定方法 | 基準金利 × 0.66 |
基準金利 − 0.05% | 基準金利 − 0.03% |
最低保証金利 | 0.05%(年率) |
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利子の受け取り | 半年ごとに年2回 |
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購入単位 | 最低1万円から1万円単位 |
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償還金額 | 額面金額100円につき100円 |
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中途換金 | 発行後1年経過すれば、いつでも中途換金が可能 |
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発行月 | 毎月 |
なお、それぞれの基準金利は、次のとおりです。
変更10年 | 利子計算期間の開始日の前月までの最後に行われた、10年固定利付国債の入札における平均落札価格を基に計算される利回り |
固定5年 | 募集期間開始日の2営業日前(10年固定利付国債入札日)における市場実勢利回りを基に計算した期間5年の固定利付国債の想定利回り |
固定3年 | 募集期間開始日の2営業日前(10年固定利付国債入札日)における市場実勢利回りを基に計算した期間3年の固定利付国債の想定利回り |
新窓販国債
新窓販国債とは、新しい窓口販売方式により発行される国債のことです。
この方式は、従来、郵便局のみで行われていた一定期間、一定価格で募集する一種の委託販売方式を民間金融機関に拡大したものです。
新窓販国債には、次の3種類があります。
商品名 | 10年固定利付国債 |
5年固定利付国債 | 2年固定利付国債 |
満期 | 10年 |
5年 | 2年 |
金利タイプ | 固定金利 |
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金利設定方法 | 発行ごとに市場実勢に基づき財務省で決定 |
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利子の受け取り | 半年ごとに年2回 |
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購入単位 | 最低5万円から5万円単位 |
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発行価格 | 発行ごとに財務省で決定 |
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中途換金 | 市場でいつでも売却が可能 |
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発行月 | 毎月 |
転換社債型新株予約権付社債(転換社債)
転換社債型新株予約権付社債とは、発行時に定められた価格(転換価格)で株式へ転換できる社債のことです。
転換社債は、当初は社債として発行されます。
そのため、他の債券と同じように毎年一定の利息を受け取ることができ、満期時には額面金額で償還されます。
一方で、発行時に定められた価格(転換価格)で株式へ転換できるという側面も持つため、その発行会社の株価が値上がりした場合には、株式に転換して売却することで利益を得たり、株価に連動して転換社債の価格そのものも値上がりするため、転換社債のまま売却して利益を得たりすることも可能です。
仕組債
仕組債とは、複数の債券や株式、デリバティブ等を組み込むことにより、一般的な債券にはない特別な仕組みを持つ債券のことです。
主な仕組債には、次のようなものがあります。
リバース・フローター債
リバース・フローター債とは、利率が市場金利の変動と逆方向に変動する仕組債のことです。
インバースフローター債や逆変動利付債ともいわれます。
為替リンク債
為替リンク債とは、為替レートに応じて利率が変動する仕組債のことです。
CMS(コンスタント・マチュリティ・スワップ)フローター債
CMSフローター債とは、利率が特定の期間のスワップレート等に連動する仕組債のことです。
リバース・デュアル・カレンシー債
リバース・ディアル・カレンシー債とは、発行通貨と異なる通貨で利子の支払いがなされる仕組債のことです。
デュアル・カレンシー債
ディアル・カレンシー債とは、償還金の支払いが発行通貨と異なる仕組債のことです。
外国債券
外国債券とは、債券の発行体、発行通貨、発行場所のいずれかが外国に属する債券のことです。
円建外債(サムライ債)
円建外債とは、海外の発行体が日本国内において円建てで発行する債券のことです。
円建てなので、為替変更リスクはありません。
外貨建外債
外貨建外債とは、海外の発行体が外貨建てで発行する債券のことです。
日本国内で発行されたものをショーグン債といいます。
外貨建てなので、為替変動リスクがあります。
債券の利回り
債券の利回りとは、利息収入と償還差損益を含めた債券全体の年間収益の割合のことです。
債券が満期なった償還日に受け取ることができる償還金は、債券の購入金額ではなく、債券の額面金額に基づき、これを償還差損益といいます。
債券の利回りには、次の4種類があります。
直接利回り
直接利回りとは、購入価格に対する毎年の利息収入の割合のことです。
償還差損益は考慮しません。
直接利回りは、次の式で計算します。
応募者利回り
応募者利回りとは、債券の発行から満期まで債券を運用した場合の利回りのことです。
応募者利回りは、次の式で計算します。
最終利回り
最終利回りとは、すでに発行されている債券を購入し、満期まで債券を運用した場合の利回りのことです。
最終利回りは、次の式で計算します。
所有期間利回り
所有期間利回りとは、債券を購入し、満期になる前に売却した場合の利回りのことです。
所有期間利回りは、次の式で計算します。
デュレーション
デュレーションとは、債券を保有していることにより利子と元本を受け取ることができるまでの期間を加重平均したもの、つまり債券投資の平均回収期間のことです。
デュレーションは年単位で考えます。
デュレーションによって金利の変動に対する債券価格の変動度合いを表すことができ、デュレーションが長い債券の方が短い債券よりも金利変動に対する価格変動が大きくなります。
なお、表面利率が同じであれば、残存期間の長い債券の方がデュレーションは長くなり、残存期間が同じであれば、表面利率の低い債券の方がデュレーションは長くなることが一般的です。
現在価値と将来価値
現在価値とは、将来のキャッシュ・フローを現在の価値に置き直した場合の価値を表すものです。
将来価値とは、あるものの現在の価値が将来いくらになっているかを算出したものです。
将来価値は、次の式で計算します。
イールドカーブ(利回り曲線)
イールドカーブとは、座標の横軸に債券の残存期間、縦軸に利回りをとった利回り曲線のことです。
債券は、一般に残存年数が同じで、信用リスクが同程度であれば、利回りも同程度になりますが、残存年数が異なると利回りは異なってきます。
こ
将来、金利が上昇すると予想される場合、債券の残存期間が長いほど、イールドカーブは右上がりの曲線を描き、これを順イールドといいます。
通常、短期金利は長期金利よりも低く、また、債券は残存期間が長いほど不確実性が高くなるため、利回りは高くなる傾向があります。
よって、順イールドを描くことが多いのです。
将来、金利が低下すると予想される場合、イールドカーブは右下がりの曲線を描き、これを逆イールドといいます。
この現象は、過度の金融引き締めにより短期金利が急上昇すること等により発生します。
なお、一般的に逆イールドの発生は景気後退の兆しとされています。
債券のリスク
債券投資の主なリスクには、次のようなものがあります。
価格変動リスク
債券の売買において、市場金利の変動により売却価格が購入価格を下回る可能性があります。
一般的に、市場金利が上昇すると、債券価格が下落し、債券の利回りは上昇します。
また、市場金利が下落すると、債券価格が上昇し、債券の利回りは下落します。
為替変動リスク
外国債券の場合には、換金時に為替レートの変動により為替差損が生じる可能性があります。
信用リスク
購入した債券の発行体の経営・財務状況が悪化した場合またはそれが予想された場合もしくはこれらに関する外部評価の悪化があった場合等には、債券価格の下落やその価値がなくなること、または利払いや償還金の支払いが滞る可能性があります。
信用リスクの目安として、Moody's(ムーディーズ)やS&P(スタンダード&プアーズ)等に代表される第三者格付機関が、発行体の財務内容・組織の沿革・事業内容・財務政策等を調査し、総合的に判断して信用格付けを行っています。
一般的に、格付けの高い債券ほど利回りは低く、債券価格は高くなります。
その一方、格付けの低い債券ほど利回りは高く、債券価格は低くなります。
BBB以上の債券は投資適格債と呼ばれ、BB以下の債券は投資不適格債や投機的債券(ジャンク債)と呼ばれます。
流動性リスク
債券の売買において、市場に十分な需要と供給がない場合や取引規制等により十分な流動性の下での取引を行えない場合または取引が不可能となる場合、市場実勢から期待される価格より不利な価格での取引となる可能性があります。
カントリーリスク
外国債券の場合には、発行体の所在する国や地域におけるクーデターや重大な政治体制の変更、資産凍結を含む重大な規制の導入、政府のデフォルト等の発生による影響を受けることにより、価格変動、為替変動、信用、流動性の各リスクが大きくなる可能性があります。
債券に係る税金
債券投資では、得られた利益に対して税金がかかります。
債券投資で得られる利益には、利子、譲渡益、償還差益があります。
特定公社債に係る税金
特定公社債とは、国債、地方債、公募公社債、外国国債、外国地方債、公募公社債投資信託等のことです。
特定公社債の利子は、利子所得として課税されます。
所得税(15%)+復興特別所得税(0.315%)+住民税(5%)=20.315%の源泉分離課税で、申告不要または確定申告による申告分離課税の対象となります。
また、特定公社債の売却や償還によって得られた譲渡益や償還差益は、上場株式等の譲渡所得として課税されます。
所得税(15%)+復興特別所得税(0.315%)+住民税(5%)=20.315%の申告分離課税の対象となります。
さらに、特定公社債の利子、譲渡益、償還差益は、上場株式等の配当金や譲渡損失との損益通算ができます。
一般公社債に係る税金
一般公社債とは、特定公社債以外の公社債、市場で広く流通していない私募公社債等のことです。
一般公社債の場合には、同族会社役員が保有しているものか、そうでないかによって課税内容が異なります。
同族役員が保有している一般公社債の利子は、利子所得として課税されます。
所得税(15%)+復興特別所得税(0.315%)=15.315%の総合課税の対象となります。
また、譲渡益と償還差益は、一般株式等の譲渡所得として課税され、一般株式等の譲渡損失と損益通算ができます。
同族役員が保有していない一般公社債の利子は、利子所得として課税されます。
所得税(15%)+復興特別所得税(0.315%)+住民税(5%)=20.315%の源泉分離課税の対象となります。
また、譲渡益は、一般株式等の譲渡所得として課税され、一般株式等の譲渡損失と損益通算ができます。
償還差益については、雑所得として総合課税の対象となります。