投資信託とは
投資信託(ファンド)とは、複数の投資家から集めたお金を、資産運用の専門家が株式や債券、不動産等に分散投資し、その運用の成果として生まれた利益を投資家に分配する金融商品のことです。
投資信託の主な魅力は、
- 投資の専門家が、投資家に代わって運用する
- 多額の資金を準備する必要がない
- 分散投資をする仕組みなので、リスクが軽減される
が挙げられますが、元本が保証されていない点はリスクとなります。
投資信託の仕組み
投資信託の仕組みは、次のとおりです。
- 販売会社は、投資信託の募集・販売を行い、投資家(受益者)から資金を集めます。
- 運用会社(委託者)は、投資信託の運用方針を決め、管理会社(受託者)に株式や債券等の売買を指図します。
- 管理会社(受託者)は、運用会社(委託者)からの指図をもとに、受託した資金を金融市場へ投資して、資金の管理を行います。
- 運用によって得られた収益は、分配金・償還金として管理会社、運用会社、販売会社、投資家に配分されます。
投資信託の制度上の種類
投資信託には、いろいろな側面からの分類の仕方があります。
制度的な側面からの分類は、次のとおりです。
形態による区分
契約型
契約型とは、運用会社と信託銀行が信託契約を結ぶことにより組成される投信信託のことです。
会社型
会社型とは、投資を目的とする法人を設立することによって組成される投資信託のことです。
日本においては契約型が主流で、会社型はJ-REIT(不動産投資法人)等を中心に用いられています。
J-REIT(不動産投資法人)
J-REITとは、投資家から集めた資金をもとに、オフィスビル、商業施設、マンション等の不動産を購入し、その賃料収入や売買益等を分配金として投資家に分配する仕組みの投資信託のことです。
多額の資金を持たない個人投資家でも、少額から不動産投資が可能となります。
証券取引所に上場しているので、上場株式と同様に流通市場で取引でき、成行注文や指値注文、信用取引等ができます。
ただし、配当控除は受けられません。
追加購入が可能かどうかによる区分
単位型(ユニット型)
単位型とは、投資信託が立ち上がる期間(当初募集期間)にのみ購入できる投資信託のことです。
追加型(オープン型)
追加型とは、原則として投資信託が運用されている期間中いつでも購入できる投資信託のことです。
勧誘対象とする投資家による区分
公募
公募とは、不特定多数(50人以上)の投資家を対象に勧誘を行う投資信託のことです。
私募
私募とは、特定またはごく少数の投資家を対象に勧誘を行う投資信託のことです。
2人から49人までの投資家を対象とする少人数私募(一般投資家私募)と、金融商品取引法に定める適格機関投資家のみを対象とする適格機関投資家私募(プロ私募)があります。
解約の可否による区分
オープンエンド型
オープンエンド型とは、原則として運用期間中、払い戻しに応じる投信信託のことです。
クローズドエンド型
クローズエンド型とは、運用期間中、払い戻しに応じない投資信託のことです。
換金するときは市場で売却します。
投資信託の商品分類
投資信託は、商品によって投資対象が様々で、複雑です。
投資信託協会では、統一的な投資信託の分類方法である次のような商品分類を制定しています。
単位型・追加型 |
単位型 |
投資対象地域 |
国内 |
投資対象資産 |
株式 |
独立区分 |
MMF |
補足分類 |
インデックス型 |
追加購入が可能かどうかによる区分
単位型(ユニット型)
単位型とは、投資信託が立ち上がる期間(当初募集期間)にのみ購入できる投資信託のことです。
追加型(オープン型)
追加型とは、原則として投資信託が運用されている期間中いつでも購入できる投資信託のことです。
投資対象地域による区分
国内
国内とは、主たる投資収益が実質的に国内の資産を源泉とする投資信託のことです。
海外
海外とは、主たる投資収益が実質的に海外の資産を源泉とする投資信託のことです。
内外
内外とは、主たる投資収益が実質的に国内および海外の資産を源泉とする投資信託のことです。
投資対象資産による区分
株式
株式とは、主たる投資収益が実質的に株式を源泉とする投資信託のことです。
投資信託約款上、株式の組入れが可能であれば、実際の株式組入比率がゼロであっても株式投資信託に分類されます。
債券
債券とは、主たる投資収益が実質的に債券を源泉とする投資信託のことです。
不動産投信(REIT・リート)
不動産投信とは、主たる投資収益が実質的に不動産投資信託および不動産投資法人を源泉とする投資信託のことです。
その他資産
その他資産とは、主たる投資収益が実質的に上記以外の資産を源泉とする投資信託のことです。
複合資産
複合資産とは、主たる投資収益が実質的に上記の複数の資産を源泉とする投資信託のことです。
独立した区分
MMF(マネー・マネージメント・ファンド)
MMFとは、毎日決算を行い、国内外の公社債や短期の金融商品を中心に運用する公社債投資信託のことです。
MRF(マネー・リザーブ・ファンド)
MRFとは、毎日決算を行い、安全性の高い国内外の公社債や短期の金融商品を運用する証券総合口座専用の公社債投資信託のことです。
ETF(上場投資信託・Exchange Traded Funds)
ETFとは、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)等の指標に連動するように運用され、証券取引所に上場されている投資信託のことです。
補足区分
インデックス型(パッシブ型)
インデックス型とは、各種株価指数の値動きに連動した運用成果を目指す投資信託のことです。
特殊型
特殊型とは、投資者に対して注意を喚起することが必要な特殊な仕組みや運用手法を用いる投資信託のことです。
また、投資信託協会が定める商品分類に関する指針には、さらなる詳細な投資信託の属性を示す属性区分も定められています。
投資対象資産 |
株式 |
決算頻度 |
年1回 |
投資対象地域 |
グローバル |
投資形態 |
ファミリーファンド |
為替ヘッジ |
あり |
対象インデックス |
日経225 |
特殊型 |
ブル・ベア型 |
投資形態
ファミリーファンド
ファミリーファンドとは、複数の投資信託の資金をまとめてマザーファンド(親投資信託)と呼ばれる投資信託に投資し、マザーファンドが株や債券等の資産に投資して運用する投資信託のことです。
一般の投資家は、ベビーファンドと呼ばれるファンドを購入し、ベビーファンドがマザーファンドに対して投資を行います。
ファンド・オブ・ファンズ
ファンド・オブ・ファンズとは、複数の投資信託や投資法人に分散投資する投資信託のことです。
通常の投資信託より高い分散投資効果が期待できますが、コスト面では割高になる傾向があります。
投資対象は投資信託に限定され、個別株式や債券への投資は認められていません。
特殊型
ブル・ベア型
ブル・ベア型とは、デリバティブを活用して利益を追求するハイリスク・ハイリターンの投資信託のことです。
ブル型は、ベンチマークとする相場が上昇すると基準価額が2倍以上に上昇することを目標に設計されています。
一方、ベア型は、ベンチマークとする相場が下落すると基準価額が上昇するように設計されています。
投資信託の必要な費用
投資信託の購入、保有、換金には、購入代金とは別に、次のような費用が必要となります。
購入時に直接負担する費用
購入時手数料
投資信託の購入代金とは別に、販売会社に支払う手数料のことです。
購入代金の中に含まれる内枠制、別途支払う外枠制の2種類があります。
ノーロードといわれる購入時手数料がかからないファンドもあります。
保有時に間接的に負担する費用
運用管理費用(信託報酬)
投資信託の運用・管理等にかかる費用で、信託財産の中から運用会社、管理会社、販売会社に対して支払われます。
個別のファンドにおける信託報酬率は、投資信託説明書(目論見書)に明記されています。
運用管理費用は、信託財産の純資産総額に信託報酬率を乗じて計算し、費用として毎日計上され、決算日に信託財産から現金が払い出されます。
監査報酬
投資信託は、決算ごとに監査法人から監査を受ける必要があり、その費用は信託財産から支払われ、基準価額に反映されます。
売買時等に直接負担する費用
売買委託手数料
投資信託が株式等を売買する際に発生する費用です。
売買頻度や金額の大きさにより費用は異なります。
信託財産留保額
信託期間の途中に換金する場合、組み入れ有価証券等の売却費用等が発生するため、保有し続ける投資家との公平性を確保するために、一部の投資信託において換金代金から差し引かれる金額のことです。
信託財産に留保され、基準価額に反映されます。
信託財産留保額は、償還時にはかかりません。
その他の費用や消費税
一部の投資信託では、解約時に販売会社に支払う解約手数料がかかる場合や、運用成績に応じた成功報酬を負担する場合もあります。
これらの費用については、投資信託説明書(目論見書)等に明記されていますので、必ず確認するようにしましょう。
また、購入時手数料や運用管理費用(信託報酬)については、消費税がかかります。
投資信託の購入や換金は、基準価額をもとに行います。
基準価額とは、投資信託の純資産総額を、その日の総口数で割った、1口あたりの資産価値のことです。
換金の方法には、投資家が運用会社に直接解約を請求する方法(解約請求)と、投資家が販売会社に受益証券を買い取ってもらう方法(買取請求)の2種類があります。
投資信託のディスクロージャー
投資信託では、投資家が投資判断を行えるよう、次のような法律で定められた情報開示の制度があります。
目論見書
目論見書とは、有価証券を発行するために投資家に開示する資料のことです。
目論見書は、投資信託委託会社が作成し、販売会社が投資家へ交付しますが、あらかじめ投資家の同意を得た場合には、ウェブサイトや電子メール等の方法により交付することも認められています。
投資信託の目論見書には、交付目論見書と請求目論見書があります。
交付目論見書とは、ファンドの特色や投資リスク等を記載したもので、販売会社には投資家への投資信託の販売に際して、あらかじめ、または販売と同時に交付することが義務付けられています。
請求目論見書とは、より詳細な情報を記載したもので、投資家から請求された場合に、直ちに交付することが義務付けられています。
運用報告書
投資信託の運用報告書とは、その投資信託の運用状況等について開示したもので、投資信託委託会社が作成し、販売会社が投資家に交付します。
また、金融庁長官にも提出されます。
運用報告書は、投資信託財産の計算期間の末日ごとに作成されることが一般的ですが、計算期間が6か月未満のファンドについては6か月ごと、MMFについては1年ごとに作成すればよいことになっています。
なお、ETFおよびMRFについては、運用報告書の作成・交付義務はありませんが、投資信託協会により運用状況の月次開示が定められているため、一般的にウェブサイト等で運用状況が開示されています。
投資信託の運用報告書は、交付運用報告書と運用報告書(全体版)の2段階で発行することが義務付けられています。
交付運用報告書とは、運用状況に関する極めて重要な情報が記載されたもので、郵送等による書面での交付が原則ですが、あらかじめ投資家の同意を得た場合には、ウェブサイトや電子メール等の方法により交付することも認められています。
運用報告書(全体版)とは、従来の運用報告書と同様の情報が記載されたもので、運用会社がウェブサイト等に掲載すれば交付したものとみなされ、投資家から請求があった場合にのみ書面での交付が義務付けられています。
投資信託に係る税金
投資信託では、得られた利益に対して税金がかかります。
投資信託で得られる利益には、譲渡益と分配金があります。
課税内容は、株式投資信託と公社債投資信託で異なります。
株式投資信託に係る税金
株式投資信託を換金したことによる譲渡益は、譲渡所得として課税されます。
所得税(15%)+復興特別所得税(0.315%)+住民税(5%)=20.315%の申告分離課税の対象となります。
なお、「源泉徴収あり」の特定口座を利用した場合には、税金が源泉徴収されますので、確定申告は不要となります。
株式投資信託の譲渡損失は、他の上場株式等の譲渡益と損益通算ができます。
また、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得、特定公社債等の利子所得とも損益通算ができます。
この損益通算後の最終的な譲渡所得等の金額に、申告分離課税の税率を掛けて算出した金額が、確定申告により納税する金額となります。
また、損益通算をしても、その年に控除しきれない譲渡損失の金額がある場合には、確定申告により、翌年以降3年間の上場株式等に係る譲渡益と損益通算ができます。これを3年間の譲渡損失の繰越控除といいます。
譲渡損失の金額を繰り越している間は、継続して確定申告する必要があります。
また、収益分配金のうち、普通分配金については、配当所得として課税されます。
所得税(15%)+復興特別所得税(0.315%)+住民税(5%)=20.315%の源泉徴収課税となり、確定申告の必要はありません。
ただし、総合課税または申告分離課税を選択して確定申告することもできます。
一方、収益分配金のうち、元本払戻金(特別分配金)については、非課税となります。
特定公社債投資信託に係る税金
特定公社債とは、国債、地方債、公募公社債、外国国債、外国地方債、公募公社債投資信託等のことです。
特定公社債の利子は、利子所得として課税されます。
所得税(15%)+復興特別所得税(0.315%)+住民税(5%)=20.315%の源泉分離課税で、申告不要または確定申告による申告分離課税の対象となります。
また、特定公社債の売却や償還によって得られた譲渡益や償還差益は、上場株式等の譲渡所得として課税されます。
所得税(15%)+復興特別所得税(0.315%)+住民税(5%)=20.315%の申告分離課税の対象となります。
さらに、特定公社債の利子、譲渡益、償還差益は、上場株式等の配当金や譲渡損失との損益通算ができます。
一般公社債投資信託に係る税金
一般公社債とは、特定公社債以外の公社債、市場で広く流通していない私募公社債等のことです。
一般公社債の場合には、同族会社役員が保有しているものか、そうでないかによって課税内容が異なります。
同族役員が保有している一般公社債の利子は、利子所得として課税されます。
所得税(15%)+復興特別所得税(0.315%)=15.315%の総合課税の対象となります。
また、譲渡益と償還差益は、一般株式等の譲渡所得として課税され、一般株式等の譲渡損失と損益通算ができます。
同族役員が保有していない一般公社債の利子は、利子所得として課税されます。
所得税(15%)+復興特別所得税(0.315%)+住民税(5%)=20.315%の源泉分離課税の対象となります。
また、譲渡益は、一般株式等の譲渡所得として課税され、一般株式等の譲渡損失と損益通算ができます。
償還差益については、雑所得として総合課税の対象となります。